公開日 2010年06月09日
更新日 2014年03月19日
平成22年6月高知県議会定例会での知事提案説明 (6月9日)
1 現在の状況と今後の対応について
(経済状況) (新内閣の発足) (国と地方の協議の場)
2 産業振興計画について
(1)地産外商戦略の加速化 (2)「ものづくりの地産地消」の促進 (3)ポスト龍馬博の推進
(4)地域の取り組みのステップアップ推進と、地域産業を創造・リードする人材の育成・確保
(5)地域アクションプラン取り組み事例シンポジウム (6)アンテナショップ (7)観光分野の取り組み
3 日本一の健康長寿県づくりについて
(1)県民自らが病気を予防し、生涯を健康に暮らす
(2)県民とともに医療環境を守り育てる
(3)ともに支え合いながら生き生きと暮らす『高知型福祉』の実現 (あったかふれあいセンター)
4 教育の充実について
(1)学力向上に向けた取り組み (2)いじめ・不登校等対策 (3)高校授業料無償化等
5 インフラ整備の取り組みについて
(インフラ整備) (四国8の字ネットワークの整備) (高速道路の料金)
6 中心市街地の活性化等について
(1)東西軸エリアの活性化 (2)新資料館の整備 (3)県立図書館の整備
7 口蹄疫への対応について
8 高知県事業継続計画(BCP)策定推進プロジェクトについて
9 議案
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成22年6月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
(経済状況)
我が国の景気は、輸出や生産の増加、設備投資や個人消費の持ち直しなどから、緩やかに回復しつつあると見られております。県内の経済概況に目を転じましても、雇用や所得に下げ止まりの動きがあることや、龍馬ブームの影響が観光関連産業のみならず、周辺産業にも広がってきたことなどから、「厳しい水準にあるが、持ち直しつつある」といった見方もなされるようになっております。 こうした上向きの流れが持続していくよう、県として、地産外商戦略の加速化やポスト龍馬博の推進など、フルスピードで施策を展開していかなければなりません。
引き続き、私自身が率先して汗をかき、官民協働で県勢浮揚に向けた歩みをスピード感を持って進めてまいります。
昨日、新しい内閣が発足いたしました。
現在、我が国は、財政再建への取り組みや成長戦略の策定をはじめ、来年度予算に向けた議論など、多くの課題に直面しておりますし、対外的にも今月カナダで主要国首脳会議が開催されるなど、重要な時期を迎えております。新内閣には、これらの諸課題に速やかに対応し、解決していただきたいと思っております。特に、地方を重視し再生させるといった視点は、今後の国政の運営にあたってもしっかりと維持していただきたいと考えております。
地方分権を取り巻く動きといたしましては、国と地方の協議の場の設置や国の義務付けの見直しなど、国と地方のあり方についての改革関連法案が国会で審議されているところであります。特に、「国と地方の協議の場に関する法律」につきましては、かねてから私が強く訴えてまいりました、国の政策の企画立案段階から地方と協議を行うことや、専門的に詰めた議論をしていくための分科会の開催など、地方分権を進める上で重要な2つの仕組みが盛り込まれております。
今日、国と地方は、子ども手当や高齢者医療制度の見直しなど重要課題が山積しておりますことから、この2つの仕組みを有効に活用し、国が具体的な制度設計に取りかかる予算編成の時点から、地方の意見を打ち込んでいくことができるよう、1日も早く法案が成立することを願っております。
次に、産業振興計画についてご説明申し上げます。本県産業の振興を目指して官民一体となって進めております産業振興計画の取り組みも、実行2年目を迎えました。昨年度1年間、「本気で実行」を合言葉に多方面にわたって取り組みを進め、産業の底上げへの地固めは、課題はありながらも着実に進展していると感じております。
本年度は、こうした取り組みを軌道に乗せていく重要な年であります。より具体的な成果を生み出していくため、取り組みの一層の加速化を図っていかなければならないと考えております。このため、本年度バージョンアップした計画において産業成長戦略に位置付けられた344件の施策や地域アクションプランの238件の取り組みを、引き続きPDCAサイクルの下で着実に進め、重点に掲げた改定の5つの柱も含め、さらに上のレベルを目指して挑戦しているところであります。
改定の柱の第一は、地産外商戦略の加速化であります。既に本年4月から7月までの高知フェアや商談会など県産品を売り出す機会は、前年同期と比較して倍増しております。今後も引き続き多くの売り込み機会が得られますよう地産外商公社を中心に県外への外商活動を本格的に展開してまいります。
このため、地産外商公社では、仲介・あっせんなど外商活動に専任する職員4名を東京に配置しております。また、県内にも4名の職員を配置して、外商する商品の発掘を行っておりますし、引き続き事業者の皆様への情報のフィードバックを充実・強化し、商品の魅力をより一層高めていく活動も積極的に進めてまいります。
また、海外におきましても、この4月に開催されたシンガポールでの食品見本市において、本県から出展したユズ製品に441件に上る商談があり、現在、シンガポール事務所や貿易促進コーディネーターが中心となってフォローアップを行っているところであります。引き続き、より多くの成約に結び付くよう支援してまいります。
改定の柱の第二は、「ものづくりの地産地消」の促進であります。まず、機械・装置の製造や商品の加工などの需要と、供給できる企業の情報とがタイムリーに結びつくように、産業振興推進地域本部をはじめ本庁各部や関係団体などでの情報の共有を図る仕組みを整えております。
また、「ものづくりの地産地消」を進めるためにも、全国に通用する商品の開発が必要であります。このため、例えば食品加工の分野では、県内の農水産物やその加工品について、企業のネットワークやノウハウを生かした販売拡大戦略の実施と検証や、魅力ある商品づくりなどを総合的に行うため、先般、大手広告代理店との協定を締結いたしました。今後、その協力も得て、県内の生産者、県内企業の間で、開発段階から商品づくりを行うなどの取り組みを進めます。
こうした取り組みの積み重ねによって、県内での製造・加工が広がれば、機械等についても県内発注の機会が一層拡大し、さらには、関連する産業の集積度が高まることで、経済波及効果が県内で享受できる「ものづくりの地産地消」の促進にもつながるものと考えております。
改定の柱の第三は、ポスト龍馬博の推進であります。 今年は、大河ドラマ龍馬伝の放送と、土佐・龍馬であい博の開催という追い風により、全国から多くの観光客の皆様にお越しいただいておりますが、この効果を来年度以降も持続させ、本県観光の底上げにつなげていくことが必要です。
そのため、官民挙げた組織体制で龍馬博を成功させ、ポスト龍馬博への展開を図りますため、先月31日、「ポスト龍馬博推進委員会」を立ち上げました。 県としましても、ポスト龍馬博の推進のためには、受け入れのための二次交通基盤の整備や、文化施設や歴史、さらには農林水産業を生かした観光資源の磨き上げ、情報提供のあり方の工夫などに、観光振興部だけでなく総力を挙げて臨まなければなりません。このため、産業振興推進本部の中に関係部の副部長と地域産業振興監からなる「ポスト龍馬博推進プロジェクトチーム」を発足させるとともに、その活動を補佐するため、プロジェクトチームの下に27の関係課長からなるサポートチームを設置いたしました。
(4)地域の取り組みのステップアップ推進と、地域産業を創造・リードする人材の育成・確保
改定の柱の第四は、地域の取り組みのステップアップ推進、第五は、地域産業を創造・リードする人材の育成・確保であります。地域の取り組みの立ち上がりを支援するため、本年度から産業振興のためのいわゆる総合補助金のメニューを拡充し、事業化に至る前のアイデアや芽出しの段階のものも含め、熟度に応じて柔軟に後押ししていくこととしております。 また、先月下旬に、県内3会場で「目指せ!弥太郎 商人塾」と銘打った人材育成研修を開講し、地域資源を活用した商品企画や販売戦略づくりの専門家を講師にお招きして、ビジネスの基礎を学ぶ集合研修や個別相談を実施いたしました。 各会場とも定員の100名を上回る参加があり、総勢で369名のビジネスに様々なアイデアや熱い思いをお持ちの方々が真剣に講義に聞き入り、熱心な質疑がなされたところであります。
また、県と慶應義塾大学の協力の下、土佐市と本山町が実施するテレビ会議システムを活用したビジネス講座「土佐経営塾」も、幅広い年代の経営者や起業を目指す方、地域振興にかかわる方々などが参加して、先月末からスタートし、活発な討議が行われております。 どの講座も熱意あふれる方々が集まっておられますことから、今後、研修と実践を重ねる中で力を付け、それぞれの地域でさらにステップアップしていただけるのではないかと、大きな期待を抱いております。
こうしたことに加えまして、地域の様々な取り組みの成果を県全体に波及させてまいりますため、地域アクションプランの実践者の方々から、取り組みにかける熱い思いや課題への対処法などを直接お話しいただく「地域アクションプラン取り組み事例発表シンポジウム」を、先月から今月にかけて、7つの地域ごとに順次開催しております。
既に、6つの地域で開催いたしましたが、どちらの会場も、休日や夜間の開催にもかかわらず、大勢の皆様にご参加いただき、非常に熱心に耳を傾けていただいておりますし、参加者からは「理解が深まった」「今後の取り組みの参考になった」といった声が寄せられるなど、今後、取り組みを一層広げていく上で、大きな手ごたえを感じております。 このように、本年度の改定の5つの柱についても、既に様々な取り組みが進んでおりますが、特に、アンテナショップと観光分野の取り組みについてご説明申し上げます。
(6)アンテナショップ
設置を進めております首都圏の新たなアンテナショップにつきましては、4月の企画建設委員会におきまして、ハード、ソフトの両面から様々なご意見を賜りました。 あわせて、アンテナショップの名称募集に4,700を超える応募をいただくなど、県内外の方々の関心も高く、企画建設委員会でのご議論を契機に、様々なご意見、ご提案をいただきました。 この4月に、アンテナショップを運営する地産外商公社のスタッフがほぼそろったことも踏まえ、こうしたご意見を真摯に受け止め、今一度、県、公社において、総点検を行ったところであります。
点検を行うにあたって、2階の用途変更の手続きを一時見合わせたことから、当初の予定より工事の完成が遅れることとはなりましたが、結果として、2階のレストランのお客様の出入りの確保や、より人目を引く外観デザインへの変更、在庫の保管場所の確保などを行うことで、地産外商の拠点として、より有効に活用できる店づくりにつながったと考えております。
ハード面では、既に2階の用途変更の手続きを終え、現在順調に工事を進めております。あわせて、ソフト面では、まず、物販につきましては、開業時に取り扱う商品は確保できており、現在は、売上目標を達成するための商品の陳列や販売の計画を策定しているところであります。また、飲食では、本県の食材を使ったメニューの作成をほぼ終え、今後、専門の方々を招いた検討会も開催し、決定していくことにしております。
さらに、運営する職員の研修につきましては、今月中旬から1カ月程度、本県の歴史、文化、商品や食材の知識と、専門の方による接遇の研修を入念に行ってまいります。また、新聞や雑誌による広告をはじめ、近隣のデパートや他県のアンテナショップと連携したイベントの開催、メールを活用したリピーター確保など、プロモーション活動にも本格的に取り組んでまいります。
こうしたハード、ソフト面の準備状況を踏まえますと、8月中にはオープンできると考えておりますが、具体的な開業日につきましては、今議会で準備状況などを十分ご説明し、ご理解をいただいた上で、最も効果的なタイミングを吟味し、改めて決定してまいりたいと考えております。
次に、観光分野の取り組みについてご説明申し上げます。 先ほど申し上げましたとおり、今年は、たくさんの観光客の皆様に本県を訪れていただいております。1月から4月までの主要観光施設への入込客数は120万人を超え、前年度と比べ1.7倍、50万人を超える増加となっております。 特に、坂本龍馬記念館など龍馬関連施設の入込客数は大幅に増加し、前年度と比べ平均でおよそ2.8倍、中には4倍を超える施設もあります。また、地域別に見ますと、中央部は前年度に比べ2倍近く伸び、東部、西部においても1.2倍を超える伸びとなっております。
龍馬博4会場の状況は、まずJR高知駅前の「高知・龍馬ろまん社中」では、当初の見込みより約3カ月も早く、先月27日に入館者が25万人を突破し、さらに31日には、土佐二十四万石博のパビリオンの合計入場者数26万903人を上回るなど、引き続き好調に推移しております。
また、3つのサテライト会場の入場者数も予定を上回るペースで順調に推移しております。連日、各会場とも多くの観光客でにぎわっており、今月7日には、4会場の合計入場者数が40万人を突破いたしました。 こうした状況を踏まえ、日本銀行高知支店では、昨年10月に大河ドラマ龍馬伝の経済波及効果を234億円と試算していましたが、宿泊客数、日帰り客数とも想定を超えておりますことから、4月28日にはこれを大幅に上方修正し、仮にこのペースが続いた場合には、夏には当初試算の234億円を超え、最終的には409億円に達すると発表されました。
龍馬博は、産業振興計画の成長戦略の一つとして実施しているプロジェクトであり、このブームを生かして、より幅広く産業全般の振興につなげていかなければなりません。そのためには、2つの取り組みが重要だと考えております。
第一の取り組みは、大河ドラマの放送と龍馬博の効果を生かして本県の各地域の知名度をさらに押し上げることであります。全国から高知に目が向いている今、ぜひ高知にお越しいただいた多くのお客様に、龍馬ゆかりの地を巡りながらも、さらにもう一歩周辺の観光地や観光施設にも足を運んでいただきたいと思っております。そして幕末の先達を育んだ豊かな自然や食、人情といった龍馬以外の多くの高知の魅力も発見していただき、高知のファンになっていただく。さらに言えば、そうしてファンになっていただいた方に対して旬な高知の観光情報をお知らせする。そうした仕組みが龍馬博の終了後を見据えれば、重要になってくるものと思っております。
各地域においても、ぜひとも龍馬博効果のにぎわいを自らの地元に呼び込むといった攻めの姿勢で臨んでいただきたいと思いますし、そういった主体的な取り組みを県も積極的に支援していきたいと考えております。
第二の取り組みは、今のブームを生かして高知県産品の県外への売り込みを加速することであります。龍馬博は単なる観光イベントにとどまるものではなく、産業振興計画の地産外商を加速するための大きなツールでもあります。
県外の旅行会社やホテル、バイヤーの方々に、県産品のPRや売り込みの機会を作っていただき、昨年度は地産外商の機会を大幅に増やすことができました。こうした龍馬博からより幅の広い地産外商へ、という取り組みを、本年度も一層進めてまいります。 さらに、こうした取り組みと合わせて、龍馬博での盛り上がりを継続して、誘客に生かすため、ポスト龍馬博のための5つの重点的な取り組みを行ってまいります。
第一に「400万人観光推進チームによる現状分析とそれを生かした取り組みの強化」、第二に「龍馬人気を生かし、さらに広がりを持たせた観光PR、プロモーションの展開」、第三に「オフシーズンにおける観光入込客の底上げ」、第四に「東部、中央部、西部に分けた広域ブロックごとに一泊以上滞在できる観光地づくりの推進」、第五に「外国人観光客の積極的な誘致活動の展開」であります。
これらの実現に向けましては、先ほどご説明いたしました「ポスト龍馬博推進委員会」や「ポスト龍馬博推進プロジェクトチーム」といった組織体制の下、官民を挙げて取り組み、400万人観光の実現と1千億円産業への飛躍を目指し、果敢に挑戦してまいります。
次に、「日本一の健康長寿県づくり」の取り組みについてご説明申し上げます。
「日本一の健康長寿県づくり」につきましては、本年2月に取りまとめました「日本一の健康長寿県構想」における「県民自らが病気を予防し、生涯を健康に暮らす」「県民とともに医療環境を守り育てる」「ともに支え合いながら生き生きと暮らす『高知型福祉』の実現」の3つの政策の方向に沿って、保健、医療、福祉のそれぞれの分野で新たな取り組みがスタートいたしました。
第一に、保健分野の取り組みであります。本県では、乳児や働き盛りの40歳代、50歳代の方々の死亡率が全国と比べて高いことから、妊婦健診や特定健診、がん検診の受診の促進に重点的に取り組むこととし、これまでより一歩踏み込んだ取り組みを市町村とともに開始しております。
具体的には、本年度から新たな補助制度を設け、対象者に対する個別通知、電話や個別訪問による直接的な働きかけなど、今まで以上にきめ細やかな受診勧奨を行う市町村を支援しております。また、既に個別通知を開始した高知市などでは、特定健診の受診券の送付と併せて、県が作成した受診を勧めるチラシを送付しています。
こうした取り組みの効果を高めるためには、対象者の皆様に、健康に対する意識を高め、健診の意義や重要性を理解していただくとともに、「運動」や「食生活の改善」などの健康づくりに自発的に取り組んでいただくことも必要であります。
このため、4月以降、各市町村や企業の特定健診のスタートに合わせて、受診の呼びかけや食生活の改善などについて、広報や啓発活動を行ってまいりました。今後におきましても、新聞広告やテレビCM、健康づくり情報誌などを使いながら、工夫を凝らして健康への関心を高めていただけるよう取り組んでまいります。
また、県民の皆様の健康づくりには、周囲の方々からの声かけや、健康づくりに関する研修の場へのお誘いなども重要であり、地域を巻き込んだすそ野の広い運動として、盛り上げていかなければなりません。このため、県民の皆様に「日本一の健康長寿県構想」を分かりやすく説明したパンフレットやリーフレットを配布させていただくとともに、健康づくり婦人会や食生活改善推進員の皆様など、地域の保健福祉活動に積極的にかかわっていただいております方々には、総会等の場へ私自身がお伺いし、直接、健康づくりに関する声かけなど、様々な取り組みにご協力いただけるよう、お願いしております。
(2)県民とともに医療環境を守り育てる
第二に、医療分野の取り組みであります。県民の健康を守る要となる医師の確保につきましては、これまでに私自身、国へ直接本県の実情をお伝えし、医師養成数の増員などを要望してまいりました。高知大学のご努力もあり、平成21年以降、医学部の入学定員は17名増加いたしました。
また、入学者のうち、卒業後も県内で医療に従事することが期待される地域枠の入学者も、平成20年4月の2名から本年4月には22名へと大幅に増加いたしました。県としましては、これらの学生が将来にわたって本県で医療に従事していただけるよう支援していくことが必要だと考えております。
このたび、こうした若手医師を確保するための核となる「高知医療再生機構」が始動いたしました。先月25日には、「高知医療再生機構」の総会が開催され、医師のキャリア形成支援をはじめとする一連の医師確保に向けた事業計画が承認されたところであります。
今後は機構と一体となって高知大学医学部での教育研修拠点の整備や医師としてのキャリアステージに応じた資格取得への支援の充実など、研修医や若手の医師にとって、「高知が一番働きやすい、学びやすい」そういう環境づくりを強力に推進してまいります。
(3)ともに支え合いながら生き生きと暮らす『高知型福祉』の実現
第三に、福祉分野の取り組みであります。福祉に関しましては、本県の福祉を取り巻く現状や課題を踏まえ、子どもから高齢者、障害者など、すべての県民の皆様が住み慣れた地域で安心して、ともに支え合いながら生き生きと暮らすことができる地域づくりを推進するとともに、これまでの福祉という概念を超えて、本県の中山間地域などの実情に即した、新しい福祉の形を地域、地域で作り上げていくという考え方の下、本県の実情に合った福祉、「高知型福祉」の実現に取り組んでおります。
(あったかふれあいセンター)
ともに支え合う地域づくりの代表的な取り組みである「あったかふれあいセンター」は、年齢や障害の有無にかかわらず1カ所で必要なサービスを提供する地域の支え合いの拠点として、昨年度は22市町村28カ所で開設され、本年度は、全市町村44カ所を予定していますが、現時点で28市町村36カ所で実施されているところであります。
高齢者や障害者など対象者ごとの縦割りでなく、誰でも身近に集える機能を基本に、高齢者の送迎や外出支援、配食サービス、高齢者や障害者、子どもの一時預かりなど、地域のニーズに応じて多様なサービスが提供されており、日頃、外出や会話の機会が少なかった方々が集うことで、生きがいを感じていただいたり、これまでの縦割りのサービスでは少なかった世代を超えたふれあいも増えております。
この4月と5月には、国に対しまして、本県の中山間地域の現状と、現在取り組んでいる「あったかふれあいセンター」の必要性について政策提言してまいりました。人口減少と高齢化が先行する本県の取り組みが全国のモデルとなるように、地域でのニーズの掘り起こしや事業評価などによるサービス内容の検討を行い、よりよい仕組みとなるよう取り組んでまいります。
4 教育の充実について
(1)学力向上に向けた取り組み
本県では、これまでの全国学力・学習状況調査結果で見られた課題を踏まえ、学力向上に向けた具体的な取り組みとして、各学校に配信される算数・数学単元テストによって、一人ひとりの学習の定着度を把握できる体制を小学校、中学校の全学年で整えるとともに、学習の進度に応じて段階的に活用できる、算数・数学シートを小学校4年生以上の全生徒を対象に配布して、学習の質の向上と量の確保を図っております。
さらに、本年度は、国語学習シートを新たに作成、配布し、継続して活用することで家庭学習の習慣化を図るなど、各学校の取り組みを支援してまいります。
去る4月20日に、第4回目となります全国学力・学習状況調査が実施されました。今回の調査は、これまでの悉皆調査から抽出調査に変更されましたが、本県においては、抽出されなかった学校もすべてが希望により参加し、実質的に全県一斉調査として実施されました。全校参加には大きな意義があると考えているところですが、全国的に見ても抽出調査と希望調査を合わせて70パーセント以上の小中学校が参加しており、本県と同様に100パーセントの実施率の県も13県となりました。このことは、全国的に学力向上への取り組みに全国学力・学習状況調査が必要であることが広く認識されている結果であり、今後も、同調査が悉皆調査として継続実施されることを、国に要望していきたいと考えております。
今回の調査結果につきましては、8月には公表される見通しですが、既に、独自に採点して結果を分析し課題の見られた問題についての事後指導を実施している学校や、授業内容の見直しを行っている学校など、それぞれの学校で実情に応じた取り組みを始めております。全国との比較など詳細な分析は、調査結果の発表を待って行うこととなりますが、これまでの学力向上に向けた取り組みの成果と課題を検証し、引き続き学力向上に取り組んでまいります。
いじめや不登校など、児童生徒の問題行動が特に中学1年段階で急増する傾向にあるため、昨年度からは、高知市など4市に中学校の新入生に対する中1ガイダンスや仲間づくりを目的とした集団合宿などを委託し、中学1年段階に焦点をあてた小中連携を進めてまいりました。
その結果、この4市においては、長期欠席児童生徒数が大きく減少するなどの成果が出ておりますことから、度れまでの悉皆調査から抽出調査に改められましたが、本県におい 本年度は、不登校などの課題を解決しようと努力している中学校10校を新たに指定し、中1ガイダンスなどの取り組みをさらに広げてまいります。
国が創設した公立高等学校の授業料無償化の制度により、県立の高等学校の授業料につきましては、専門教育である専攻科や実質的に社会人教育と同等である聴講生を除き、原則として無償化され、その授業料に相当する交付金が国から交付されることとなりました。
ただし、この交付金の算定においては、留年生などは考慮されず、無償化の対象範囲の決定については、各県の判断とされております。 本県におきましては、家庭の経済状況にかかわらず、すべての意志ある高校生が安心して教育を受けることができるよう、本県独自の措置として、留年生や既卒者などに対しても授業料を無償化することといたしました。
一方で、モラルハザードを助長することがないようにするという観点から、授業料を徴収しないことがあまりにも公平を欠く場合などは徴収することといたしました。そのために必要な条例改正の議案を今議会に提案いたしております。
私立の高等学校等につきましては、国において公立の授業料の額に相当する就学支援金の助成を行うこととされましたが、公立高等学校と同様に留年生や既卒者については対象とされておりません。このため、本県では、県立の高等学校と同様の就学環境を整えるため、本県独自の就学支援金を支給したいと考えております。
社会全体で高校生の学びを支えることで、高校生達が勉学に励み、将来を担う人材となるという今回の制度改正の目的が実現するよう、あわせて、教育力向上施策をより一層充実させてまいりたいと考えております。
5 インフラ整備の取り組みについて
次に、インフラ整備の取り組みについてご説明申し上げます。
昨今公共工事に対する国民の視線は厳しく、インフラ整備に対しては少なからず否定的な評価がなされることもありますが、社会資本の整備が全国水準から大きく立ち遅れ、人の命を守る最低限の整備すら十分にできていない本県では、この整備水準を少しでも引き上げ、安全安心を確保するとともに地域間競争力を高めることは、県勢浮揚のために必要不可欠であります。
現在、河川関係では国の有識者会議によってダム事業を検証する基準づくりが進められており、港湾関係では直轄事業で整備する対象を絞り込む重点港湾の選定作業が進んでおります。こういった状況の下では、ダムや港湾をはじめ本県の社会資本が引き続き着実に整備できるよう、地方の実情を国に訴えていくことが重要です。
このため年度当初から、政策提言という形で本県の実情を踏まえた政策の必要性を訴えてまいりました。今後も積極的に情報を収集し、しかるべきタイミングでインフラ整備の必要性を訴えるとともに、その主張が地域のわがままと取られないよう全国レベルで通用する論理展開を図っていくことが必要だと考えております。
また、国の公共事業費を削減する方向性の中、道路整備に関する予算も大変厳しい状況となっております。本年度末には、四国横断自動車道の須崎西インターチェンジから中土佐インターチェンジ間、高知東部自動車道の夜須インターチェンジから芸西西インターチェンジ間が供用される見込みとなっておりますが、国は総延長1万4千キロメートルの高速道路ネットワークの見直しを本年中に行うこととしており、未着工区間については現時点では不透明な状況にあります。 このため、先月13日には、第一次的な高速道路のネットワークが連結していない部分、いわゆる「ミッシングリンク」を抱える9県知事と合同で、昨年に引き続き2度目の政策提言を行い、社会基盤として最低限必要な四国8の字ネットワークなどの早期連結を国が責任を持って行うことを提言してまいりました。
今後とも、同じ課題を抱える他県の知事や、議会、市町村長の皆様と一体となって、四国8の字ネットワークが早期に連結されるよう全力で取り組んでまいります。
(高速道路の料金)
また、この4月に発表された高速道路の新しい上限料金制度につきましては、国会の審議を経て総合的に判断されることとなっておりますが、地域経済への影響という観点から今後の動向を注視し、必要に応じて地方の切実な声を訴えていかなければならないと考えております。
6 中心市街地の活性化等について
次に、県都高知市の中心市街地の活性化に向けた取り組みなどについてご説明申し上げます。
(1)東西軸エリアの活性化
はりまや橋周辺から高知城までの東西軸エリアの活性化につきましては、昨年来の取り組みにより、検討会での協議にとどまらず、県議会・市議会においてもご議論をいただき、また、中間まとめに関するパブリックコメントでは290項目ものご意見をいただきますなど、県民・市民の皆様の中で様々な議論が始まっております。
こうした状況を踏まえ、この3月末に、議論の出発点となるたたき台をとりまとめた上で、5月には、検討会の下に当面の課題となっている「まんが文化」「商店街活性化」「よさこい」といったテーマについて、それぞれのテーマに識見を有する方などで構成するプロジェクトチームを設置いたしました。今後、商工団体をはじめ、関係団体との意見交換の場を設定するほか、様々な機会を通じて県民・市民の皆様のご意見を積極的にお聴きしながら、検討会やプロジェクトチームにおいて、より専門的な検討を深め、本年度末までにプランを策定してまいります。
(2)新資料館の整備
山内家資料を核とした新資料館の整備につきましては、本年度、基本構想の策定などを行うこととし、民間の有識者の方々などを委員とする基本構想検討委員会を立ち上げ、具体的な検討を進めることとしております。 今後は、東西軸エリア活性化プランの検討状況もにらみながら、検討委員会で議論を深めていただき、新資料館が資料の保存、調査研究や活用を十分に行うことはもとより、歴史文化を生かした東西軸エリアの中核施設として、その役割を果たしていけるものとなりますよう基本構想を策定してまいります。
(3)県立図書館の整備
現在の県立図書館は、築36年を経過する中で、年々増加する蔵書を保管する場所もないほどに施設が狭隘化したことや、老朽化・耐震化の課題に加え、バリアフリー対応施設となっていないこと、さらには、高知城史跡に隣接し、施設を増改築して使用することが困難なことから、移転を含めた整備等を検討しなければならない状況にあると考えております。 このため、できるだけ早い時期に県民の皆様にお示しできるよう、県立図書館の果たすべき役割やその機能を発揮することができる新しい県立図書館の整備のあり方について検討してまいります。
次に、口蹄疫への対応についてご説明申し上げます。 去る4月20日に宮崎県において、牛や豚など偶蹄類の家畜伝染病である口蹄疫が国内では10年振りに発生いたしました。その後、感染の拡大防止のために懸命の防疫活動が行われてきましたが、感染力が強く、先月18日には宮崎県知事による非常事態宣言が発せられました。
宮崎県の事態の推移を見ましても、口蹄疫は、ひとたび発生した場合には、人体には影響を及ぼさないものの、畜産業への影響のみならず、県民生活全般に大きな影響を及ぼすものであります。このため、既に農家全戸に対する2度の消石灰の配布をはじめ、牛や豚などの家畜の全頭調査の実施や畜産施設における消毒の徹底、九州からフェリーが入港する宿毛湾港での車輌消毒の実施などの本県への侵入防止対策はもとより、消毒薬の確保や緊急連絡体制の構築など、県内での発生に備え迅速かつ的確な初動防疫の準備に万全を期して取り組んでおります。
さらに、万一、県内で発生した場合には、市町村や関係機関と連携し、県庁組織の総力を挙げて一刻も早い封じ込めに取り組んでまいります。
8 高知県事業継続計画(BCP)策定推進プロジェクトについて
次に、「高知県事業継続計画策定推進プロジェクト」についてご説明申し上げます。 今月2日、地震時などに中核となる事業を継続するための事業継続計画、いわゆるBCPの策定について、県内事業者を官民協働で支援するプロジェクトに関する協定を、大手損害保険会社、商工会議所などの団体と県との間で締結いたしました。
BCPの策定は、南海地震などの自然災害、新型インフルエンザの大流行などの緊急事態に遭遇した場合において、県内事業者の事業資産の損害を最小限にとどめつつ、事業の継続、早期復旧を可能とすることはもとより、雇用や経済活動等、県民生活全般への影響をできる限り抑えるためにも、極めて重要な取り組みであります。この協定の締結を契機に、県を挙げて事業者の防災対策を進めてまいります。
9 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず条例議案は、高知県税条例の一部を改正する条例議案など12件です。その他の議案は、有料道路「高知桂浜道路」の事業の一部変更に関する議案の1件であります。報告議案は、平成21年度高知県一般会計補正予算の専決処分報告など6件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。