公開日 2011年12月12日
更新日 2014年03月19日
平成23年12月高知県議会定例会での知事提案説明 (12月12日)
3 次の産業振興計画の考え方
(1)これまでの計画の取り組みを定着させ、さらなる成長・発展を図る
(2)より大きな動き、大きな産業を目指す
(3)地域地域で産業振興に取り組む実践者のすそ野を広げる
4 日本一の健康長寿県づくり
(保健分野)
(医療分野:医師・看護職員の確保対策)
(医療分野:在宅医療の普及促進)
(医療分野:救急医療の充実・強化)
(福祉分野:地域福祉の推進)
(福祉分野:中山間地域の介護サービス、施設・在宅サービスの確保、認知症支援)
(福祉分野:発達障害に関する支援体制づくり)
(福祉分野:働きながら子育てを行う家庭への支援、子育てに孤立感や不安感を持つ家庭への支援)
5 中山間対策の抜本強化について
(集落調査での実態把握)
(集落の維持・再生)
6 南海地震対策の加速化と抜本的な強化
(基本的な考え方)
(12月補正)
(様々な観点からの対策の推進)
7 インフラの充実と有効活用
(四国8の字ネットワークの整備促進)
8 教育の充実
(1)学力、体力・運動能力の向上に向けた取り組みの一層の推進
(2)意欲を引き出す教育の推進
(キャリア教育の推進)
(読書活動の推進)
(3)新図書館等複合施設の整備
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成23年12月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
1 これからの県政運営にあたって
私は、このたびの知事選挙の結果、再び知事として県民の皆様方と共に働く機会を与えていただきました。
改めて気持ちを引き締め、「対話と実行」との姿勢をより一層強化し、県勢浮揚に向けてさらなる具体的な成果を生み出すため、粉骨砕身、努力を重ねてまいる所存であります。
県民の皆様方、議員の皆様方におかれましても、これまで以上のご指導とご鞭撻を心よりお願い申し上げます。
私は、これからの4年間に本県が目指すべき方向は、課題解決の先進県となることであると考えております。
本県は人口減少、高齢化の波に真っ先にさらされ、これに伴います経済規模の縮小や過疎化の進展といった様々な課題に直面してまいりました。そしてまた、災害が多発する県でもあります。しかしながら、人口減少は全国的に進展しており、他の地域もいずれ同じ課題に直面することとなります。また、災害対応も全国的な課題であります。
私は、本県がいわば課題の先進県であるからこそ、本県を人口減少や災害に負けない課題解決の先進県としていきたい、そうすることで、県勢浮揚につなげていきたい、と考えております。長年悩まされてきたからこそ蓄積されてきた知恵を生かし、時代を生き抜く処方箋を全国に先駆けて示すことで、高知を後続の県に頼られる、時代に必要とされる県にしていきたいと思っております。
そのために、私は、これまでの4年間の様々な取り組みを3つの「絆のネットワーク」へと発展させていくことを目指してまいります。
第一に、人と人とを結ぶ温かいつながりを「絆のネットワーク」として県内各地に張り巡らせていくことを目指します。「あったかふれあいセンター」に代表される支え合いのネットワークや自主防災組織を充実させる等、過疎化や災害に負けない県土づくりを行ってまいります。
第二に、この4年間に築いた県外・世界とのつながりをより強固な「絆のネットワーク」に発展させていくことを目指します。地産外商・観光振興のほか、ものづくりの地産地消をさらに推進し、人口減少に負けない経済体質づくりを進め、さらなる可能性に満ち満ちた高知をつくることを目指してまいります。
第三に、県民の皆様の志を形にできる、志の「絆のネットワーク」を育むことを目指します。学力向上等の教育改革を進め、大学改革を通じた生涯学習の機会等を充実させ、加えて地域発のプロジェクトを数多く後押しすることなどを通じて、県民の皆様お一人お一人が志をかなえる機会にあふれた県を目指してまいります。
こうした基本的な方向性の下、私は、これからの4年間におきましても5つの基本政策をしっかりと堅持し、さらにバージョンアップして取り組みを進めてまいりたいと考えております。
第一に、県経済全体の底上げに向け、腰を据えて継続的な取り組みを行うとともに、より高いレベルを目指して、また、より多くの県民参加を目指して、新たな挑戦を展開するなど、産業振興計画のさらなるバージョンアップを図ることにより、雇用を生み出し、経済の活性化を図ってまいります。
第二に、南海地震の強い揺れと大津波から県民の皆様の命を守ることを最優先に、南海地震対策のさらなる加速化と抜本強化を図ってまいります。
第三に、「日本一の健康長寿県構想」のさらなるバージョンアップを通じて、保健、医療、福祉の一層の充実を図ってまいります。
第四に、子どもたちの夢や志をかなえる基となる力を育む教育の確立に向けた取り組みを一層推進してまいります。
第五に、極端に遅れた本県のインフラ整備を着実に推進するため、効果的な政策提言を図るなどして国予算の確保に努め、あわせて、必要な県予算の措置に努めてまいります。
さらに、こうした5つの基本政策を融合させ、発展させることを通じて、中山間対策の抜本強化といった喫緊の課題への対応をスピード感を持って行ってまいります。
私は、以上の取り組みを進めていくためには、官民協働、市町村政との連携協調といった姿勢が重要であると改めて確信いたしております。2期目においては、県内各地域地域をよりきめ細かく訪問させていただき、直接県民の皆様と対話させていただく機会を数多く設けさせていただきたいと考えております。
「対話と実行」との知事を志して以来の基本の基本となる姿勢を一層強化し、自戒の念を常に忘れず、2期目の県政運営にあたってまいります。
2 12月補正予算について
今議会では、喫緊の課題であります防災・減災対策等に取り組んでまいりますため、「国の3次補正への対応」、「地域医療再生臨時特例基金の追加」、「永国寺キャンパスの整備」、「産業振興計画の推進」の4つを柱として、総額117億円余りの補正予算を提案しております。
第一の柱である「国の3次補正への対応」では、国の3次補正を活用して南海地震に備えた防災・減災対策を加速するとともに、台風12号等への災害に迅速に対応することとしております。
また、第二の柱である「地域医療再生臨時特例基金の追加」では、現在の高知県地域医療再生計画に加えて、医師の短期的緊急確保対策等を実施するため、地域医療再生臨時特例基金に追加して積み立てを行うこととしております。第三の柱である「永国寺キャンパスの整備」では、永国寺キャンパスを社会貢献する「知の拠点」として整備するための基本計画を策定することとしております。さらに、第四の柱では「産業振興計画の推進」として、企業誘致や企業立地に対する助成のほか、早期の給水開始が課題となっておりました香南工業用水道につきまして、企業から設備の増設に伴う給水依頼がありましたため、一部稼動を行うこととしております。
3 次の産業振興計画の考え方
次に、今後の産業振興計画の推進についてご説明申し上げます。
県経済の活性化を進めるための大きな柱である産業振興計画につきましては、これまでの取り組みにより、積年の課題に立ち向かうためのいくつかの「仕組み」が整い、各産業分野、各地域地域で、具体的な取り組みが動き出し、雇用の創出や所得の向上といった成果も一部に表れつつあります。
動き始めたこれらの取り組みを軌道に乗せ、県勢浮揚に向けさらに飛躍させていくために、次の3つの視点を持って現在の計画をバージョンアップした第2期計画を策定し、腰を据えて継続的な取り組みを行うとともに、より高いレベルを目指した新たな挑戦を行ってまいります。
(1)これまでの計画の取り組みを定着させ、さらなる成長・発展を図る
第一の視点は、産業振興計画の取り組みの経済効果を県全体に一層波及させていくことができるように、動き出した数々の事業を定着、さらには成長、発展させていくことであります。
具体的には、引き続き、「ものづくりの地産地消」のさらなる推進や「食品加工」の一層の展開によって、付加価値を高める工程を県内で拡大、強化してまいりますとともに、メイドイン高知の製品が首都圏や関西・中部地区、海外で認知され、その販路が広がるよう、もう一段踏み込んだ外商活動を行ってまいります。
また、第一次産業につきましては、他県との競争に打ち勝つことができるよう、生産から流通、販売までを見通した足腰の強い生産地づくりをさらに強化してまいります。
特に、極めて厳しい環境に置かれている林業に関しては、新たな大型製材工場の稼働というチャンスを生かし切り、本県の成熟した森林資源をダイナミックに動かしていけるよう、考えられる課題を官民協働で克服していきたいと考えております。これにより、本県林業を将来に希望が持てる産業とすることを目指して、全力で取り組んでまいります。
さらに、観光分野では、世界認定を受けた室戸ジオパークのように、現計画での取り組みによって大きく飛躍したものや芽生えてきたものをさらに後押しし、県外から多くの観光客を呼び込める核となる観光拠点を育ててまいりたいと考えております。
また、本県が根源的に抱えている地理的ハンディキャップを克服していくためには、地理的な利便性よりも個人の嗜好が旅行動機に大きく影響を与えるスポーツツーリズムを推進することが有効だと考えております。これまでも多くの皆様方のご協力を賜り、スポーツの大会や合宿の誘致などに取り組んできたところでありますが、さらに多くの方々に訪れていただけるよう、何らかのスポーツイベントが年間を通じて本県で展開されていくことを目指して、取り組みの一層の強化を図ってまいります。
まずは、その一環として、誘客効果が高く、春のキャンプ地という本県の実績を生かすことができる取り組みとして、来年2月末から3月初めにかけて、複数のプロ野球チームによる本格的な練習試合である「プレシーズンマッチ」を開催するための予算を今議会に提案しております。
これまで大きな誘客効果をもたらしてきたプロ野球のキャンプに関しましては、阪神タイガースの1軍が春季キャンプより撤退する方向であるなど厳しい状況にあります。食の魅力や近畿圏等への近さ、シーズン直前の選手のコンディションづくりに適した気候などといった本県の強みをPRするとともに、練習相手が少ないという弱みを克服していきたいと考えています。
本年度の取り組みをさらに継続、発展させ、より多くのプロ野球チームが実戦練習できる環境を整備することで、「プレシーズンマッチと言えば高知県」というブランドの確立を目指していきたいと考えております。あわせて、施設などのハード面と、受け入れ側の態勢などソフト面の整備をトータルで進め、スポーツツーリズムによる本県観光底上げにつなげてまいりたいと考えております。
(2)より大きな動き、大きな産業を目指す
第二の視点は、本県産業が長期にわたって成長、発展し続ける礎を築いていくことができるよう、防災や新エネルギーなど、将来に大きな可能性を秘めている分野に思い切って挑戦し、より大きな動き、大きな産業を目指していくことであります。
人口減少や高齢化が続く厳しい状況下において、経済を上昇に転じ、県勢浮揚を図るためには、従来の取り組みとともに、新しい産業を創出していくことが重要であります。このため、企業誘致や県内企業の投資誘発策の充実を図るとともに、今後、全国的にも大きな需要が見込まれる防災関連産業や新エネルギー関連産業の本県での展開を推し進めます。
防災分野では、台風や南海地震といった自然災害の経験を防災に生かしてきた本県の素地を土台として、今後、さらなる南海地震対策の加速化と併せ、県内企業の育成や企業誘致を図り、防災産業の育成、集積を図ってまいりたいと考えております。
また、新エネルギー分野では、トップクラスの日照量や降水量、森林率を誇る本県の優位な環境を、新エネルギー研究における全国有数の実証フィールドとして提供していくことで、関連企業の育成や誘致を図り、集積化に挑戦してまいります。
(3)地域地域で産業振興に取り組む実践者のすそ野を広げる
第三の視点は、地域アクションプランのさらなる推進や、中山間対策の抜本強化などによりまして、より多くの県民の皆様に産業振興計画に参画いただき、その経済波及効果を県内の各地域地域にもたらすことであります。
具体的には、地域アクションプランの取り組みでは、動き出した事業を、粘り強く支援し、地域の基幹産業として根付かせていくとともに、より大きな事業、より多くの雇用を生む事業の展開を推進してまいります。加えて、少子高齢化や過疎化が著しい中山間地域において、日々の生活が少しでも改善され、住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、中山間対策の側面をさらに強化し、地域の潜在力を引き出してまいります。これにより、こうち型集落営農の推進による拠点ビジネスの広がりや、各集落での加工品づくりといった小さなビジネスの展開など、地域地域で暮らしの向上に向けた取り組みを根付かせてまいります。
この3つの視点を具体の形にしていくためには、各産業分野、各地域地域において、新たなことに果敢に挑戦しようとする志と、そのための知識や技術を持った人材が何よりも重要であります。このため、市町村や産業界、大学などと連携し、そうした人材の発掘、育成に力を注いでまいります。
これからの4年間、さらに高いところを目指していくために、具体的にどのような施策を展開していくべきか、以上の方向に沿って現在議論を深めているところであります。
これまでの取り組みで見えてきた乗り越えるべき課題や残された課題の解決に向けて計画をバージョンアップし、若者が地域で新たな取り組みに志を持ってチャレンジできるような可能性に満ちた高知県をつくるために、さらなる挑戦を続けてまいります。
4 日本一の健康長寿県づくり
次に、日本一の健康長寿県づくりについてご説明申し上げます。
この2年間、「日本一の健康長寿県構想」に基づき、住み慣れた地域で安心して健康に暮らし続けることができる高知県を目指し、保健、医療、福祉の各対策を進めてまいりました。
今後は、現在の取り組みで成果が表れてきたものは、しっかりとその定着を図るとともに、残る課題にも正面から挑戦するという考え方で構想のバージョンアップを図り、個々の政策を充実させてまいりたいと考えております。
(保健分野)
同構想に係る今後の取り組みに関し、まず、保健の分野についてご説明申し上げます。
生涯を健康に暮らすための健康づくりを推進する取り組みといたしまして、特定健診やがん検診の受診促進など、本県の課題である40歳、50歳代の死亡率を改善するための取り組みを引き続きしっかりと進めてまいります。 加えて、今後は新たに、生活習慣に起因する慢性腎臓病の重症化予防などにも取り組んでまいりたいと考えております。
また、歯と口の健康づくりにつきましては、本年度実施した大規模な歯科保健に関する実態調査の結果を踏まえ、今後5年間の本県における歯科保健対策の方向性を定める基本計画の策定を進めているところであります。
(医療分野:医師・看護職員の確保対策)
次に、医療の分野についてご説明申し上げます。
医師の確保対策につきましては、医学生や若手医師の定着率向上に向けた中長期的な医師確保対策や、県外在住医師の招へいなどの短期的な医師確保対策を引き続き着実に進めてまいります。
あわせて、中山間地域等では看護職員の確保が厳しい状況にあることを踏まえ、看護職員の確保対策も強化していく必要があると考えております。
(医療分野:在宅医療の普及促進)
また、本年9月に実施いたしました県民世論調査では、4人に1人の方が、長期の療養が必要となった場合に訪問診療や訪問看護などを受けて在宅で療養したいと回答されるなど、在宅医療に対するニーズには大きなものがありますため、その環境整備をしっかりと進めてまいります。
(医療分野:救急医療の充実・強化)
救急医療体制の整備につきましては、ドクターヘリの有効活用や、県民の皆様への適正受診の啓発強化などに引き続き取り組んでまいります。あわせて、夜間や休日の輪番制の維持が厳しくなっている小児の二次救急につきましては、輪番病院に勤務する小児科医師への手当に対する新たな補助制度を創設するなど、救急医療提供体制の一層の充実に努めてまいります。
また、災害時の医療救護計画につきましては、東日本大震災で明らかになった多くの課題を、南海地震が発生した場合の本県の状況に当てはめ、より具体的で実態に即した救護体制となりますよう、引き続き見直しを進めてまいります。
(福祉分野:地域福祉の推進)
次に、福祉の分野についてご説明申し上げます。
平成21年度から整備を進めてまいりました「あったかふれあいセンター」は、人口減少、高齢化が進む本県において、県民の皆様誰もが住み慣れた地域で必要なサービスを受け、安心して暮らせる高知型福祉の実現のため、必要不可欠な事業であります。このため、来年度以降も市町村と連携し、事業を継続するとともに、地域の実情に応じて泊まり機能や移送支援、配食サービスなどの機能を付加し、新たな展開を図ってまいります。
また、現在、多くの市町村で策定されております地域福祉アクションプランにつきましては、その実効性を確保し、実践活動につなげることが重要であります。このため、県としましても、自主防災組織と連動して地域の防災力を高めるといった観点も加味しながら、高知県社会福祉協議会と連携して支援を行ってまいります。
(福祉分野:中山間地域の介護サービス、施設・在宅サービスの確保、認知症支援)
次に、医療、介護の充実につきましては、県内にお住まいの多くの方々の「たとえ介護が必要となった場合でも住み慣れた自宅で暮らしていきたい。」との思いにお応えするため、医療、介護、福祉に携わる様々な専門職の方々の連携体制の構築や、地域包括支援センターの機能強化を進めていくことで、医療・介護・生活支援サービスなどを切れ目なく提供する体制づくりを県内全域に広げてまいります。
また、介護サービスの充実強化につきましては、現在策定中の第5期介護保険事業支援計画に基づき、施設サービスの充実と併せて、ショートステイベッドの拡充をはじめ在宅生活を支えるサービスを地域の実情に応じて充実できるよう取り組んでまいります。
さらに、認知症の方やそのご家族に対する支援につきましては、基幹型の認知症疾患医療センターの設置や専門医の確保と併せて、地域で支えるネットワークづくりに取り組んでまいります。
(福祉分野:発達障害に関する支援体制づくり)
次に、発達障害に関する支援体制づくりについてご説明申し上げます。
県立療育福祉センターにおける発達障害の受診者数は、この10年間で3倍に増加する一方、県内の専門医師は大幅に不足しており、長期の診療待ちを解消することが課題となっております。
このため、児童精神医学分野の世界的な権威であるスウェーデン・ヨーテボリ大学のギルバーグ博士と連携して専門医師の養成に取り組むこととしており、先月18日には、博士に来高いただき、ヨーテボリ大学と本県との間で協定を締結いたしました。
今後は、博士のご指導の下、来年4月に、共同研究や症例検討などを行う「高知ギルバーグ発達神経精神医学センター」を設置し、児童精神医学を志す全国の若手医師の受け入れ先ともなるように取り組みを進めてまいります。
(福祉分野:働きながら子育てを行う家庭への支援、子育てに孤立感や不安感を持つ家庭への支援)
次に、子ども・子育て支援につきましては、県民の皆様が安心して子どもを健やかに育てることができるよう、福祉分野の重点施策の一つとして、一層の強化を図ってまいります。
具体的には、女性の労働力率が高く、共働き世帯が多いといった本県の状況を踏まえ、保育サービスや市町村独自の子育て支援サービスへの支援、放課後子ども教室や放課後児童クラブを活用した「放課後学びの場」の充実など、保護者の方々の多様な働き方に応じた保育・子育て支援サービスの充実に取り組んでまいります。
また、核家族化が進む中、子育ての孤立感や不安感を解消していただくため、地域子育て支援センターの交流促進や新たな取り組みに対する支援などを通じて、センターの機能充実や子育てサークル等のネットワークづくりに取り組んでまいります。
5 中山間対策の抜本強化について
私は、これからの4年間、中山間対策の抜本強化に全力で取り組んでまいりたいと考えております。現在、関係部局が連携して鋭意検討を重ねているところでありますが、その検討の方向性について、ここでご説明申し上げます。
(集落調査での実態把握)
本県の県土の多くを占める中山間地域の実態を把握し、住民の皆様の声を今後の中山間対策につなげるため、現在、県内全域で集落実態調査を実施しております。
まだ、調査の途中段階ではありますが、多くの集落において、人口の流出や高齢化による地域を担う人材の不足や、集落活動の沈滞化が課題として挙げられており、このままでは集落が消滅するという強い危機感を感じている地域もあるなど、中山間地域の厳しさが一層深刻になってきている実態が全県的かつ詳細に明らかになってまいりました。
私自身も、県内各地の中山間地域にお伺いし、住民の皆様の声を直接お聞きする中で、改めてその厳しさを身をもって感じ、現行の対策を抜本強化する必要性を再認識したところであります。
(集落の維持・再生)
このような中山間地域の現状を踏まえ、集落の維持・再生を進めていくため、まずは、日常生活に不可欠な食料品や飲料水、さらには移動手段の確保など、市町村や地域が行います住環境整備への支援をこれまで以上に強化してまいります。
また、それぞれの地域で、住民の皆様に安全に安心して生き生きと暮らし続けていただくためには、集落を支える人づくりや集落機能の維持に向けた仕組みづくりが重要であると考えております。
このため、地域の後継者となる若手人材の育成と併せて、都市部からの移住や二地域居住などの取り組みを進めることで、地域を支える人材を確保してまいります。また、集落活動を支える拠点づくりを進めることで、高齢者の見守りや集いの場づくり、集落の共同作業のサポート体制なども整備してまいります。さらには、地域資源を生かした都市部との交流や、道の駅や直販所などを活用した特産品の販売といった取り組みを、地域へ人を呼び込む仕組みや、中山間地域における住民の皆様方の生活の向上につなげてまいりたいと考えております。
加えて、現在、鳥獣被害が農林業などの産業だけでなく、住民の皆様方の日常の生活にまで影響し、各地域で大きな問題となっており、その対策も強化してまいります。
これまでも、過疎化、高齢化が進む中山間地域において、住民の皆様の生活を守り、産業をつくるための対策を推進してまいりましたが、これをさらに実効あるものとしていくため、産業振興計画や日本一の健康長寿県構想の取り組みを融合し、発展させ、さらに南海地震対策などの防災対策の観点も加味しながら、全庁を挙げて中山間対策の抜本強化を進めてまいります。
6 南海地震対策の加速化と抜本的な強化
次に、南海地震対策の加速化と抜本的な強化についてご説明申し上げます。
(基本的な考え方)
このたび、県内の各地域を回り県民の皆様とお話をさせていただく中で、南海地震への危機感が非常に高まっていることを改めて実感いたしますとともに、津波からの避難路や避難場所の整備を望む多くの声をお聞きいたしました。
津波避難対策につきましては、昨年12月に補助率をかさ上げした新たな制度を創設しており、本年度は、東日本大震災を受けて、さらなるスピードアップを図っております。2度の補正を経て5億4千万円余りの予算を計上し、津波避難計画の策定をはじめ、合計87カ所の避難路や避難場所、7基の津波避難タワーの整備など、沿岸19市町村すべてで対策を講じているところです。
今後も引き続き、県民の皆様の生命を津波から守るため、津波避難対策をスピード感を持って進め、平成25年度を目処に概ね避難場所の確保を完了させたいと考えております。
(12月補正)
今議会には、国の3次補正を受けまして、ハード事業も含め、さらに対策を進めていくための予算を提案しております。
まず、揺れ対策といたしまして、県有施設の耐震化スケジュールを前倒しするほか、浦戸湾に流れ込む河川の堤防の耐震化や、橋梁の耐震補強などを加速してまいります。
また、今回の震災で、東北地方整備局が自治体や建設会社などと協力して、道路のがれきなどを取り除き緊急輸送路を確保した、いわゆる「くしの歯作戦」が大きくクローズアップされましたように、被災地への救助救出、支援などには迅速な道路啓開が欠かせません。本県においても、可能な限り速やかに緊急輸送道路ネットワークを確保するべく基礎的な調査を実施してまいります。
さらには、海岸堤の整備や液状化対策、排水機場の耐震化なども進めていくこととしております。
本年度当初から取り組んでおります「今すぐできる対策」と並行して、こうした対策も本格的に進めながら、南海地震対策の加速化と抜本的な強化を図ってまいります。
(様々な観点からの対策の推進)
さらに、今後の南海地震対策の推進にあたりましては、限られた財源を最大限有効に活用した対策とするためにも、例えば地域の活性化、あるいは地域福祉の推進といった観点も加味しながら避難場所や防災施設を整備するなど、日ごろから様々な分野で防災施設を活用できる形での対策も進めてまいりたいと考えております。
7 インフラの充実と有効活用
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
(四国8の字ネットワークの整備促進)
四国横断自動車道の窪川佐賀道路につきましては、先月10日、その全区間を平成24年度、新規に予算化することについて、国からの意見照会があり、来年度の予算化と早期完成を求める意見書を提出いたしました。
窪川佐賀道路は、四国8の字ネットワークを構成する道路であり、南海地震に備えなければならない本県にとりまして、幡多地域の安全・安心を確保するための「命の道」として、また、観光振興、産業振興の基盤として整備を待ち望んでいる道路です。
このたび、平成24年度の新規事業として手続きを進めていただけることとなりましたのは、早期の事業化に向けた関係者の皆様の熱心な取り組みが実を結んだものであり、皆様のご尽力に感謝申し上げます。
今後とも、確実に来年度の事業着手が決定されますよう、気を緩めることなく国に働きかけてまいります。
また、今月中に都市計画決定を予定している阿南安芸自動車道の安芸道路につきましても、平成24年度からの事業化を国に訴えてまいります。
8 教育の充実
次に、教育の充実の取り組みについてご説明申し上げます。
(1)学力、体力・運動能力の向上に向けた取り組みの一層の推進
教育においては、子どもたち一人ひとりの「夢」や「志」を喚起いたしますとともに、それを実現するための基盤となる力を育むことが重要であります。そのため、行政には、確かな学力、豊かな心、健やかな体をしっかりと育む責任があります。
本県の教育は、私の1期目の就任当時には、学力、体力、生徒指導上の諸問題のいずれも厳しい状況にありましたが、早急に解決すべき対策を取りまとめた「学力向上・いじめ問題等対策計画」と、10年後を見通した中長期的な総合計画である「教育振興基本計画」を着実に実施することによりまして、この4年の間に、徐々にではありますが改善してきております。
学力に関しては、「全国学力・学習状況調査」を活用したPDCAサイクルに基づく組織的な取り組みの定着や、教科ごとに作成した学習シートや問題集を活用した授業や家庭学習、放課後学習などが、子どもたち一人ひとりの学力の定着、向上につながってきております。
また、体力・運動能力につきましても、教職員の授業改善への意識の高まりに加え、体力の向上につながる運動プログラムの活用や実技を伴った研修会などによって授業内容が充実し、学力同様、改善傾向にあります。
本年度は、「学力向上・いじめ問題等対策計画」の最終年度であり、教育委員会では、改善傾向をより確実なものとするため、目標達成に向けた詰めを行うとともに、新たな計画を策定することとしております。授業や放課後の学び場の質的向上など学力や体力・運動能力のさらなる向上を目指して、引き続き取り組みを進めてまいりたいと考えております。
(2)意欲を引き出す教育の推進
(キャリア教育の推進)
さらに、今後は、子どもたちの学力や体力の向上、生徒指導上の諸問題などの教育課題を抜本的に解決していくという視点から、子どもたちの意欲を引き出す教育の推進にさらに力を入れていきたいと考えております。
具体的には、子どもの実態や学校・学科の特色、地域の実状など、様々な観点で現状を把握した上で、学校・家庭・地域の連携の下、発達段階に応じた系統的、体系的な教育である「キャリア教育」を推進したいと考えております。
例えば中学校では、郷土出身の著名人や郷土を代表する産業や観光、自然等を学習することを通して、郷土を愛する態度を育成するとともに、自らの生き方について考えることのできる生徒を育てたいと思っております。
また、高等学校においては、自らの将来を切り開くことのできる人材育成を目指して、上級学校や企業など外部との連携をさらに意識しながら、大学キャンパス訪問、企業見学やインターンシップなど、卒業後の進路を見定めるための体験活動を通して、生徒自らがキャリア形成を行う力を身に付けていくことが重要だと考えております。
このように、小学校・中学校・高等学校でのつながりをもった「キャリア教育」を行うことで、社会で働くことの喜び、世の中の実態や厳しさを子どもたちに体感させたいと考えております。また、そのことによりまして、子どもたちから、将来の生き方や進路に対する夢や希望、さらには、その実現を目指した学校生活や学びへの意欲的な取り組みを引き出すことができるものと考えております。
(読書活動の推進)
また、子どもたちが、豊かな心と感性を醸成し、考える力や表現力を身に付けるとともに、人との絆を育むためには、読書の習慣を定着させ、読書の質を高めることが重要と考えております。これまでも「第一次高知県子ども読書活動推進計画」に沿って、学校図書館の充実などを行ってきましたが、この度、さらに充実した取り組みを進めるため、教育委員会において「第二次高知県子ども読書活動推進計画」を策定いたしました。第二次計画では、「早ね早おき朝ごはん」運動に読書を明確に位置付けるなど、家庭における読書を推進していくこととしております。
また、県立図書館と市町村立図書館、学校図書館等との連携を強め、子どもが身近な場所において本に触れる機会を充実させていきたいと考えております。さらに、学校等では、学校経営計画や教育計画に読書活動を位置付け、全ての教科等で学校図書館の活用を進めるとともに、学校図書館活動推進校における研究と成果の普及を推進していくこととなっております。
第二次計画については、その進捗状況を有識者による推進協議会で検証するなど、PDCAサイクルに基づく計画の推進を図っていきたいと考えております。
(3)新図書館等複合施設の整備
新図書館等複合施設の整備につきましては、6月議会でご承認をいただきました基本計画に基づき、基本設計の作成に取り組んでいるところです。基本設計の作成にあたっては、設計分野ごとに詳細な検討を行う分科会や、新図書館等に必要な機能やサービスを確保していくための検討を行うワーキンググループを設置しております。
今議会では、基本設計の中間報告といたしまして、現時点での平面図や断面図などについてご説明をさせていただくこととしております。
あわせまして、県民・市民の皆様からも広くご意見をいただくため、来年1月には、県内3カ所で住民説明会を開催した上で、3月末には基本設計を取りまとめることとしております。
9 永国寺キャンパスの整備について
次に、永国寺キャンパスの整備についてご説明申し上げます。
県が関与する大学の3つのキャンパスにつきましては、本県の高等教育が目指す方向性を踏まえ、香美市キャンパスを「工学・産業振興のキャンパス」として位置付けるとともに、池キャンパスを「保健・医療・福祉のキャンパス」として整備してまいりました。また、永国寺キャンパスについては「社会貢献する知の拠点」として位置付け、県内学生の進学先の確保と若者の県外流出の防止、県内産業の振興など様々な分野で貢献できる人材養成に向けた社会人教育の充実等を目的として、県と関係する3大学で検討を行ってまいりました。
そのような中、永国寺キャンパスに高知工科大学が新たな社会科学系学部を設置し、高知県立大学も文化学部の拡充を行うこととなり、両大学において高知短期大学と領域が重なる分野での教育研究体制の充実が図られることとなりました。これに加え、両大学は、その連携の下、高知短期大学の担ってきた社会人教育や生涯教育の充実を図ることとしております。
こうしたことから、高知県公立大学法人は、10月に開催した理事会において、高知短期大学が担っている機能については4年制での教育や制度を充実させる中で引き継ぐこととし、高知短期大学を発展的に解消することについて、県と協議していくことを決定しております。そして、11月には、こうした考えを法人から学生自治会や学友会に説明するとともに、今月7日には、南理事長から直接、私にご説明をいただいたところです。
公立大学法人の設置者である県といたしましても、この法人の考えは、県内高校生の進学先の拡充を図るとともに、これまで高知短期大学が担ってきた社会人教育や生涯教育を、より充実していくものと受け止めております。
このため、公立大学法人の意向も尊重し、こうした考え方を関係する3大学とともに「永国寺キャンパスに関する基本方針案」の中で取りまとめたところであります。この基本方針案につきまして今議会でご議論をいただき、さらに年明けには、高知短期大学の発展的解消等につきまして、パブリックコメントなどを通じ、県民の皆様のご意見もお聞きした上で、さらに検討を深めていきたいと考えております。
10 新資料館の整備について
次に、新資料館の整備についてご説明申し上げます。
新資料館は、山内家資料を核とした高知の歴史・文化に関する資料等を保存継承するとともに広く展示公開し、全国的な学術研究の拠点としての役割を果たすことができる施設として整備いたします。
また、生涯学習や学校教育などにも活用することにより、個性豊かな県民文化の振興を図ってまいります。
さらには、高知城周辺という立地特性を生かし、県内の文化施設を結ぶハブ機能を持たせることで各施設への誘客を促すなど、地域振興や観光振興にも寄与する施設として整備することとしております。
本年8月にはJA高知信連から南側部分の用地を取得し、残る北側の旧高知財務事務所跡地につきましては、本年度中の取得に向けて協議を進めております。埋蔵文化財調査につきましても、用地を取得した部分から順次行っており、現地での調査は来年度中に終了する予定であります。
あわせまして、昨年末に策定いたしました基本構想に基づき、本年3月から進めてまいりました基本設計も、建築に関するものは先月に取りまとめ、展示に関して最終の調整を行っているところであります。
建築に関する基本設計は、基本構想で示しております新資料館が果たすべき機能を十分に発揮できるよう、「保存と活用の両立」、「高度な博物館機能」、「人と歴史・地域との懸け橋」、「新たな景観の創造」の4つを設計理念としております。
また、南海地震への対応策として中間層免震構造を導入するなど、災害時には施設利用者をはじめ周辺住民の方々の一時避難施設としても活用していきたいと考えております。
今後は実施設計などと並行しまして、効率的な管理運営の仕組みづくりや、新資料館の魅力をアピールする事業計画などのソフト面につきましても、有識者のご意見をお聞きしながら検討を深めてまいります。
新しい資料館が、高知の歴史を過去から未来へとつなぎ、その魅力を全国に発信する施設となるよう、開館に向けて取り組んでまいります。
11 公正取引委員会による立ち入り検査について
今月6日、県内の複数の建設業者及び関係先に対しまして、談合の疑いで公正取引委員会による立ち入り検査が行われました。
談合は法律に違反する行為であり、決して許されるべきではありません。
現在は検査が始められたところであり、予断を排さなければなりませんが、談合の疑いが持たれたことにつきましては、大変残念に思っております。
この件に関しまして、県としましては、翌7日、公正取引委員会からの協力要請に応じ、本県の入札契約制度に係る規程や工事の関係書類などを提出したところであります。引き続き、公正取引委員会の検査に協力し、その進展を見守りながら適切に対応してまいりたいと考えております。
12 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成23年度高知県一般会計補正予算など6件です。
このうち一般会計補正予算は、先ほど申し上げました国の3次補正を活用した防災・減災対策の加速化などに必要な事業の経費として、117億円余りを計上しております。
条例議案は、高知県住民基本台帳法施行条例の一部を改正する条例議案など7件であります。
その他の議案は、平成24年度当せん金付証票の発売総額に関する議案など21件でございます。
報告議案は、損害賠償の額の決定の専決処分報告の1件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。