公開日 2012年02月21日
更新日 2014年03月19日
平成24年2月高知県議会定例会での知事提案説明 (2月21日)
1 平成24年度の県政運営について
(1)飛躍への挑戦の年に向けて
(2)国の動向
ア 社会保障と税の一体改革
イ 国の出先機関改革への対応
ウ TPPへの対応
(3)平成24年度当初予算及び平成23年度補正予算について
2 5つの基本政策に基づく県づくり
(1)経済の活性化
ア 第2期産業振興計画の策定
イ 第2期産業振興計画の推進
(ア)これまでの取り組みを定着、さらに成長・発展させて、より大きな動き、大きな産業を目指す視点
a これまでの成果・財産を活用した効果的な外商活動の展開
b 食品加工、ものづくりの地産地消の一層の展開
c 第一次産業
(a)農業分野
(b)林業分野
(c)水産業分野
d 龍馬ふるさと博終了後の観光戦略
(イ)将来に大きな可能性を秘めている分野に挑戦し、新たな産業集積の形成を目指す視点
a 県内中小企業の設備投資を後押しする助成制度の創設
b 防災関連産業
c 新エネルギー関連産業
(ウ)産業振興の取り組みをより地域地域に広げる視点
a 地域アクションプランなどの地域の取り組み
b 産業人材育成プログラムによる人材育成
ウ 雇用対策
(2)日本一の健康長寿県づくり
ア 日本一の健康長寿県構想の改訂
イ 保健の分野
(ア)壮年期の死亡率の抑制
a 特定健診、がん検診の受診率向上対策
b 慢性腎臓病(CKD)対策
(イ)歯科保健対策
ウ 医療の分野
(ア)医師確保対策
(イ)看護職員確保対策
(ウ)県立あき総合病院
エ 福祉の分野
(ア)ともに支え合う地域づくり
a 地域福祉アクションプラン
b あったかふれあいセンター
c 福祉・介護の人材育成
(イ)高齢者が安心して暮らせる地域づくり
(ウ)障害者が生き生きと暮らせる地域づくり
(エ)次代を担う子ども達を守り育てる環境づくり
(3)県民の安全・安心の確保に向けた地域の防犯、防災の基盤づくり
ア 南海地震対策の加速化と抜本的な強化
(ア)被害想定
(イ)総論
a 今すぐできる対策
b 抜本的対策
c 全庁的な見直し
(ウ)各論
a 津波避難対策
b 揺れ対策
c 総合防災拠点構想
d 保健・医療・福祉分野
e 産業分野
f 教育分野
(4)教育の充実と子育て支援
ア 高知県教育振興基本計画重点プランの検証及び次期プランの策定
(ア)学力向上に向けた取り組み
a 高知県独自の学力定着状況調査
b 高知市への重点支援
c 教員の指導力の向上
d 放課後対策
(イ)キャリア教育
(ウ)読書活動の推進
イ 発達障害のある児童生徒への指導支援
ウ 学びの拠点となる教育機関等の整備
(ア)新県立図書館の整備
(イ)新資料館の整備
(ウ)永国寺キャンパスの整備
(5)インフラの充実と有効活用
ア 総論
イ 道の駅の防災拠点化
ウ 四国8の字ネットワークの整備
エ 本四高速の料金
オ 高知新港の利活用(高知新港振興プラン)
カ 談合防止対策
キ 南海地震に備え地域の防災力を維持・確保していくための取り組み
(6)中山間対策の抜本強化
ア 機構改革
イ 集落活動センター
ウ 中山間地域の孤立化対策
エ 移動手段確保対策
オ 鳥獣被害対策
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成24年2月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
1 平成24年度の県政運営について
(1)飛躍への挑戦の年に向けて
平成24年度は、私にとりまして県政運営2期目の実質的な初年度であります。これまで申し上げてまいりましたとおり、私は、この4年間で、多くの県民の皆様に県勢浮揚の実感を持っていただけるよう取り組みを進めたいと考えており、そのために、本県を時代の後押しを得られる課題解決の先進県とすることを目指していきたいと考えております。
このため、私は、来年度、5つの基本政策をはじめとする県の取り組みをもう一段飛躍させていくことを目指してまいります。
産業振興計画や日本一の健康長寿県構想を大幅にバージョンアップするとともに、南海地震対策のさらなる加速化と抜本強化を図り、教育改革やインフラ整備を一層推進するなど、これまでの取り組みの熟度をさらに高めてまいります。
加えて、前例にとらわれることなく、新たな取り組みにも挑戦してまいります。その最たるものが、中山間対策の抜本強化であります。中山間地域の住民の皆様の暮らしを守り、向上させるための取り組み、若者が中山間地域で暮らせる県土をつくるための取り組みとして、産業振興計画による地域地域の産業の振興、日本一の健康長寿県構想における地域の支え合いの仕組みづくり、さらには南海地震対策を通じた防災対策など、5つの基本政策の下での各々の取り組みを融合、発展させた総合的な中山間対策を全力で講じてまいりたいと考えております。
私は、平成24年度を、課題解決の先進県を目指した新たな挑戦を行っていく年、「飛躍への挑戦の年」と位置付け、この4年間に築き上げてきた土台の上に立って、より一層県民の皆様方と共に知恵を出し合い、汗をかきながら、県勢浮揚に向けて取り組んでまいります。
(2)国の動向
先月13日に発足した野田改造内閣において、野田総理は、本年を日本再生元年と位置付け、最重要課題である東日本大震災からの復旧・復興、原発事故との戦い及び日本経済の再生に向けて引き続き全力で取り組むとともに、社会保障と税の一体改革、行政改革、地方分権改革といった課題についても、国民の理解を得るために不退転の決意で取り組むことを表明されました。
ア 社会保障と税の一体改革
政府は、社会保障制度の再構築と安定財源の確保を通じて財政の健全化を目指す「社会保障・税一体改革大綱」の閣議決定を受け、関連法案の提出に向けた作業を急いでいるものと承知しております。
私も、今後本格化する人口の減少と高齢化に柔軟に対応できる社会保障制度と税制の確立を図ることは、国民、県民の皆様の暮らしを先々にわたり守っていくために、もはや先送りのできない課題だと認識しております。
今後、国において活発な議論が展開されることを大いに期待しておりますし、また、県民生活の安心につながる改革となりますよう、サービスの提供を担う地方の意見を「国と地方の協議の場」を通じて反映させるなど、引き続き全国知事会と連携した活動などに積極的に取り組んでまいります。
イ 国の出先機関改革への対応
行政の無駄遣いの根絶にもつながる国の地方出先機関の原則廃止については、現在、国において、地方移管を行うための関連法案の提出に向けた本格的な作業が行われております。
私は、こうした国の流れを四国としてもしっかりと受け止め、地域の実情に合った政策の展開に向けて、今後の対応方針などについて早急に協議を行う必要があるものと考え、臨時の四国知事会議を今月4日に開催するよう提案いたしました。
その結果、まずは「四国経済産業局」を平成26年度中に受け入れることを目指して、国が法整備を行う新たな制度に則った広域連合を設立することとし、その際には、四国における共通の政策課題などを持ち寄り、効果的な運営を図っていくことを4県知事の間で合意いたしました。
こうした取り組みの方向性について、今議会でご議論をいただき、ご理解をいただくことができますならば、国に対して正式な意思表明を行いますとともに、平成26年度中の移管に向け、具体的な組織や執行体制のあり方等について、県民の皆様や県議会のご意見などもいただきながら検討を進めてまいります。
ウ TPPへの対応
県民生活への多大な影響が心配される環太平洋連携協定、いわゆるTPPへの対応については、先月、東京事務所をはじめとする庁内の関係部局からなる「TPP対策プロジェクトチーム」を設置し、情報の収集や県民生活への影響の把握などに努めているところであります。
また、TPPに対する地方の考えや意見を表明し、政府の判断に反映させていくことも必要と考え、今月7日、政府関係者をお迎えし、県及び市町村の職員や業界関係者の皆様を対象とする説明会を開催いたしました。限られた時間ではありましたが、TPP交渉の現状や課題などを把握する一方、政府関係者の方々には、この問題に対する地方の疑問や心配の声を肌で感じていただくことができたのではないかと考えております。
今後とも、影響が心配される業界関係者の皆様や利害を共通にする関係県などとの情報交換に努めながら、県民生活を守るための積極的な取り組みを進めてまいります。
(3)平成24年度当初予算及び平成23年度補正予算について
次に、本県の来年度の予算についてご説明申し上げます。
今回の予算編成にあたっては、国の経済対策による基金事業が本年度末で大幅に縮小し168億円もの減少となる中、喫緊の課題である南海地震対策など様々な課題の解決に向けて、限られた財源で最大限の事業を実施できるよう、知恵を出し、工夫を徹底いたしました。
その結果、来年度の一般会計当初予算は、4年連続で前年度を上回る4,340億円余りと、飛躍への挑戦を行う積極型の予算として提案させていただいております。
また、景気の下支えに配慮するとともに、立ち遅れているインフラの整備促進や南海地震対策のさらなる加速化に対応するため、4年連続で前年度を上回る普通建設事業費を確保いたしました。
他方、南海地震対策のさらなる加速化などに取り組みつつも、財政規律をしっかりと維持し、引き続き将来に向けて安定的な財政運営を行っていくよう努めたところであります。
歳出面では、人件費の抑制や事務事業の徹底した見直しを行い、歳入面では、地方交付税など財源の確保を図るとともに、国庫補助金や有利な地方債制度などを積極的に活用し、財源不足額の圧縮に努めました。
南海地震対策については、国の有利な地方債制度を活用し、県、市町村ともに有利となる新たな交付金制度を創設するほか、雇用対策などについては県単独の事業を創設して基金事業の終了に対応しながらも、過疎債のソフト枠を活用し県と市町村の双方の負担を軽減する交付金制度を設けるなど、徹底した工夫を行うこととしております。
その上でなお生じる財源不足への対応については、南海地震対策など今後の財政需要を見据え、3年振りに退職手当債を発行することで、財政調整的な基金の取り崩しを抑制することといたしました。
あわせて、本年度の2月補正予算において、国の補正予算に伴い森林整備加速化・林業再生基金54億円余りをはじめ各種基金の積み増しを行うとともに、財政調整的な基金の取り崩しを30億円余り取りやめることといたしました。
こうした取り組みの結果、実質的な地方交付税である臨時財政対策債を除く県債残高は114億円の減少となり、引き続き減少傾向を維持するとともに、来年度末の財政調整的な基金残高については、昨年9月の財政収支の試算による146億円を上回る166億円程度を確保できる見通しとなっております。
このように、当初予算及び2月補正予算の編成を通じて、基金事業の終了という逆風の中にあっても、南海地震対策や飛躍に向けた前向きな取り組みを行いながら、財政の健全化に向けて後年度負担の軽減と将来への一定の備えの確保を図ることができたものと考えております。
2 5つの基本政策に基づく県づくり
次に、来年度の施策や体制などについて、5つの基本政策に沿ってご説明申し上げます。
(1)経済の活性化
まず、経済の活性化についてご説明申し上げます。
ア 第2期産業振興計画の策定
産業振興計画につきましては、これまでの取り組みを土台として、今後4年間を計画期間とする第2期の計画を策定し、飛躍への挑戦を行ってまいります。
第2期計画では、今まで以上に官民協働の取り組みを進めるためにも、県民の皆様と成功のイメージを共有できるよう、目指すべき10年後の将来像や各施策についての目標を明確に掲げることとし、現在その最終的な詰めを行っているところであります。
今議会でご議論をいただき、現在実施しておりますパブリックコメントによるご意見なども踏まえ、官民協働で取り組める納得感のある計画にしてまいりたいと考えております。
イ 第2期産業振興計画の推進
第2期産業振興計画では、本県経済の浮揚を図るため、これまでの取り組みを以下の3つの視点に立って大幅にバージョンアップしていきたいと考えております。
(ア)これまでの取り組みを定着、さらに成長・発展させて、より大きな動き、大きな産業を目指す視点
第一の視点として、地産外商や、ものづくりの地産地消、第一次産業の振興などのこれまでの取り組みを定着、さらに成長・発展させて、より大きな産業となることを目指してまいります。
a これまでの成果・財産を活用した効果的な外商活動の展開
まず、地産外商の取り組みについては、地産外商公社が首都圏において企業への個別訪問や展示・商談会への出展などを精力的に行ってきたことにより、本年度、12月末までの成約件数が385件となるなど、昨年度を上回るペースで外商活動の成果が表れております。
また、今月初めに出展した国内最大級の展示・商談会である「スーパーマーケット・トレードショー」では、消費者や料理研究家など100人が選ぶ「スーパーマーケットで買いたいと思う食品30選」に、本県から全国最多の7商品が選定されました。こうした評価を得られたことは、本県産品の潜在力の高さを示すものであるのはもとより、官民協働で地産外商を進める中で県内の事業者の皆様方が熱意を持って商品の磨き上げを進めてこられた大きな成果だと思っております。
引き続き、地産外商公社の取り組みなどを通じて築いてきた県内、県外とのつながりを生かしながら精力的なプロモーション活動を展開し、さらなる販路の開拓に努めてまいりますとともに、期間限定のフェアの商品にとどまらない、定番の商品づくりを目標に、バイヤーの産地への招へいを強化するなど、もう一段高いレベルの外商活動を進めてまいります。
b 食品加工、ものづくりの地産地消の一層の展開
外商活動を支える県内の加工・製造の基盤強化に関しては、総合相談窓口として昨年6月に設置した「ものづくり地産地消センター」に、先月末現在で192件の相談が寄せられるなど、県内のものづくりのノウハウや技術を生かした製品開発の動きが活発になってきております。
こうした動きをさらに加速するため、「ものづくり地産地消センター」の体制を強化するとともに、県内の技術力をアピールする総合的な技術展示会の開催や、県内の食品加工事業者と加工用の原材料とのマッチング、さらには消費地が求める商品づくりの一層の展開などに取り組んでまいります。
c 第一次産業
また、第一次産業では、その強みを十分に生かすことができるよう、引き続き、生産から流通、販売までを見通した足腰の強い生産地づくりや、生産を支える担い手の確保、育成に積極的に取り組んでまいります。
(a)農業分野
まず、農業分野では、環境保全型農業の全地域、全品目への普及や、新施設園芸システムの構築などにより、本県農産物の品質を高め、生産量を増やす取り組みを進めてまいります。あわせて、基幹流通をさらに強化するとともに、顧客と産地をつなぐ受発注の仕組みづくりや、こだわりを持った生産者と多様なニーズを持った実需者とのマッチングなど、新たな流通・販売体制づくりを農業団体と共に進めてまいります。
また、集落営農組織の法人化や、農産物加工やグリーンツーリズムなどに取り組む「こうち型集落営農組織」の育成などにより、農業者の所得向上と雇用の確保を図ってまいります。
(b)林業分野
次に、林業分野では、先月24日、銘建工業株式会社と県内林業関係団体、大豊町が出資する新会社「高知おおとよ製材株式会社」が設立され、平成25年5月の操業開始に向け、本格的に動き始めたところであります。
県としましても、本県の林業振興の起爆剤となるこの新たな大型製材工場の整備に向けた支援を行うとともに、林業関係者の皆様と連携、協力しながら原木供給・増産体制の確立に向けた取り組みを進めてまいります。また、原木の増産により今後拡大が見込まれる伐採跡地については、シカ被害対策を含めた再造林を支援することで、森林の公益的機能の発揮や、森林資源の持続的な利用に向けた仕組みづくりに取り組んでまいります。
あわせて、平成26年度まで延長いたします森林整備加速化・林業再生基金を最大限に活用し、間伐や路網の整備、木材加工基盤の整備や木質バイオマスの利用の推進などの取り組みをさらに加速してまいります。
(c)水産業分野
さらに、水産業分野では、大阪や築地といった大消費地までの時間距離を短縮する新たな物流の構築や、海と資源にやさしい漁業の認証マーク「マリン・エコラベル」の認知度の向上により、水産物の付加価値を高めるとともに、民間活力を生かした養殖カンパチの高品質な人工種苗の量産化や、宿毛湾でのマグロ養殖漁業の振興などによって、養殖漁業の拡大を図ってまいります。あわせて、水産加工について、生産者と流通業者、加工業者の連携によるビジネス機会の拡大や、漁業者による6次産業化、本県の伝統的な水産加工業である宗田節やイワシシラス加工の振興などに取り組むことで、地域の雇用の場を確保してまいります。
d 龍馬ふるさと博終了後の観光戦略
次に、この3月末で閉幕いたします「志国高知 龍馬ふるさと博」後の観光戦略についてご説明申し上げます。
これまでの取り組みを通じて、県内では、世界認定を受けた室戸ジオパークや海洋堂ホビー館四万十、奇跡の清流として全国放送で取り上げられた仁淀川など、全国からの誘客の核となる観光資源も生まれてまいりました。
こうした動きを本県への観光客の増加につなげるため、来年度は、新たに地域観光課を設置し、地域の観光資源のさらなる磨き上げや、全国に通用する観光拠点づくりに取り組んでまいります。
あわせて、地域の観光を担う人材の育成にも取り組んでまいります。県内の7つのブロックで地域の魅力を再点検し観光商品となる周遊プランを作成するといった研修を行うことなどにより、持続的に地域の観光振興を担っていくことのできる人材を育成し、地域観光の底上げを図っていきたいと考えております。
また、来年度は「わざわざ行こう志国高知へ」をキャッチフレーズに、ふるさと博で取り上げてきた高知の歴史、花、食、体験といったテーマをさらに拡大した「リョーマの休日」キャンペーンを展開するほか、スポーツツーリズムの取り組みにおいてもプロスポーツやアマチュア合宿の誘致、市町村が行うスポーツイベントの支援等を積極的に推進することなどにより、本県への誘客の増大につなげていきたいと考えております。
こうした取り組みを進めるため、平成24年度から、観光振興部及び高知県観光コンベンション協会の体制を強化してまいります。
観光振興部については、先ほど申し上げました地域観光課の新設のほか、戦略的な観光プロモーションやスポーツツーリズムに対応するため、観光政策課の体制を強化いたします。加えて、あらゆる観光客の満足度の向上を目指して、様々な場面での受け入れ態勢の課題検証と改善に向けた取り組みを強化するため、おもてなし課の体制も充実することとしております。
また、高知県観光コンベンション協会についても、県との連携を強化し、各種施策の実行力を高めるための体制の見直しを行うこととしております。
県は観光政策の企画部門を、協会は施策の実践部門を担当するという基本的な考え方に立ちながら、個別のセクションごとに県と協会がカウンターパートとなり、チームとして一体となって各事業を推進することで、実践を踏まえた観光戦略の立案や、戦略に沿った事業の実施といった相互作用を発揮し、本県観光全体の飛躍を目指してまいりたいと考えております。
(イ)将来に大きな可能性を秘めている分野に挑戦し、新たな産業集積の形成を目指す視点
第二の視点として、企業誘致や県内産業の投資の誘発を進めるとともに、防災や新エネルギーといった将来に大きな可能性を秘めている分野に挑戦し、新たな産業集積の形成を目指してまいります。
a 県内中小企業の設備投資を後押しする助成制度の創設
これまで低い水準にとどまっておりました本県のものづくりを支える製造業の設備投資につきましては、いわゆる日銀短観のデータなどでも、これまでになく設備投資に向けた意欲が旺盛になってきていることが認められます。こうした動きを本県製造業の基盤を強固にするための絶好の機会と捉え、県内中小企業の設備投資の促進を図るため、来年度からの3年間、新規雇用や投資額に関する補助要件を大幅に緩和した新たな支援制度を設けることとし、必要な予算を今議会に提案しております。
また、東日本大震災以降、事業者の皆様の津波や長期浸水に対する危機感が高まる中で、生産拠点や事務所等の高台への立地についての相談が多く寄せられております。このため、新たな工業団地の造成に際しては、津波による浸水の可能性も考慮して適地を選定するなど、震災による影響を十分に踏まえて対応してまいりたいと考えております。
b 防災関連産業
さらに、南海地震への備えと連動させながら防災関連産業の振興を図り、「安心・安全の確保」と「経済の活性化」を同時に実現してまいりたいと考えております。
新たに「防災産業交流会」を立ち上げ、産学官民の連携の下、県内企業の持つ防災関連製品や技術の情報と、各市町村が求めるニーズ等を共有することで、新たな製品づくりや地産地消の意識を高めてまいります。あわせて、防災関連製品の開発への技術的、資金的支援や、県内での販路開拓、県外の防災関連の主要展示会への出展などそれぞれのステージに応じた総合的な支援を行ってまいります。
c 新エネルギー関連産業
加えて、本県が持つ全国トップクラスの日照時間や年間降水量など豊富な新エネルギー資源を産業振興に生かしてまいります。
本年7月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入されるというチャンスを生かし、県内の関係者が参画して新エネルギーによる発電施設を整備していく体制づくりを進めてまいります。
昨年11月からは、県内の企業、市民団体、地元市町村などによる協議会で、メガソーラーなどの導入に関し、事業スキームや資金調達の仕組みなどについて検討していただいております。本年度内には、メガソーラーの事業化の可能性について、地域への波及効果、県内の資源や資金の活用といった観点で取りまとめが行われることとなっております。
加えて、メガソーラー導入への本格的な取り組みの開始に向け、新たな補助制度を設け、早期に事業展開が図られるよう支援してまいります。また、災害時の防災拠点となる公共施設等に太陽光発電設備や蓄電池などを整備する取り組みへの支援制度も創設することとしております。
(ウ)産業振興の取り組みをより地域地域に広げる視点
第三の視点として、地域アクションプランのさらなる推進や、中山間対策の抜本強化などにより、産業振興の取り組みをさらに地域地域に広げてまいります。
a 地域アクションプランなどの地域の取り組み
地域アクションプランの取り組みでは、ユズやショウガ、ウルメなどの加工品の開発・販売や、地域の販売拠点となる直販所の整備、さらには首都圏や海外への外商活動など各地で様々な事業が動き出したところであります。
軌道に乗るまでには、もうしばらく時間がかかるものもありますが、引き続き、産業振興推進地域本部を中心に一連のソフト、ハードの施策を活用して粘り強く支援してまいります。
加えて、新しい産業の芽を掘り起こしていくため、民間の皆様方に積極的に参画いただける仕組みづくりや、成功事例を分かりやすくお知らせする方法などの工夫を凝らしてまいります。
あわせて、中山間地域の住民の皆様の生活を守り、産業をつくるため、中山間対策を抜本的に強化していく中で、こうち型集落営農の推進による拠点ビジネスの拡大や、各集落での加工品づくりといった小さなビジネスの展開などに取り組んでまいります。
なお、地域アクションプランなどの産業振興関連の取り組みのうち173事業については、国の「ふるさと雇用再生特別基金事業」を活用しておりますが、この基金事業は平成23年度末で終了いたします。これらの取り組みの本格的な定着には、今少し時間が必要であるとの考えの下、3年間限定で県単独の「産業振興推進ふるさと雇用事業」の制度を設け、125事業を対象として支援することとしております。
b 産業人材育成プログラムによる人材育成
次に、地域や産業を支える人材の育成についてご説明申し上げます。
平成22年度から実施しております「目指せ!弥太郎 商人塾」は、ビジネスの基礎から商品の企画、販売、さらには実践を交えて経営に至るノウハウを身に付けていくことができると大変、好評をいただいております。
来年度からは、この商人塾を産学官の連携を生かして、さらにバージョンアップしてまいります。具体的には、基礎から応用までの様々な研修メニューを、受講者のニーズやレベルに応じて受講できるよう体系化し、新たに「産業人材育成プログラム」として5月を目途にスタートさせる予定であります。多くの皆様にご利用いただき、ビジネスの実践活動に生かしていただきますことで、産業振興の取り組みを地域地域に広げていきたいと考えております。
ウ 雇用対策
次に、雇用対策についてご説明申し上げます。
昨年12月の本県の有効求人倍率は、0.59倍となっており、緩やかな改善傾向にはありますが、その度合いは鈍化してきております。このため、全庁一体でさらなる雇用対策に取り組み、この改善傾向を下支えしてまいります。
まずは緊急雇用対策として、昨年の12月補正予算で23億円余りの積み増しを行った緊急雇用創出臨時特例基金とふるさと雇用再生特別基金を有効に活用し、平成21年度から23年度までの3年間で9,100人の雇用創出を目標としている「あったか高知・雇用創出プラン」を見直し、24年度までの4年間で11,500人を新たな目標として取り組んでまいります。
さらには県単独の産業振興推進ふるさと雇用事業を活用した取り組みも進めてまいります。
(2)日本一の健康長寿県づくり
次に、日本一の健康長寿県づくりについてご説明申し上げます。
ア 日本一の健康長寿県構想の改訂
「日本一の健康長寿県構想」につきましては、今月15日、今後4年間を第2期と位置付け、目標をより一層明確にし、各種の施策を発展させる形で改訂いたしました。関係者の皆様のご協力を賜りながらバージョンアップした構想の実現に向けて、保健、医療、福祉の各対策に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
イ 保健の分野
同構想に係る今後の取り組みに関し、まず、保健の分野についてご説明申し上げます。
保健の分野では、10年後には県民の皆様お一人お一人が、自らの健康について考え、行動するとともに、各地域で家族や仲間の健康を気遣う機運が醸成されているという姿を目指してまいります。
(ア)壮年期の死亡率の抑制
a 特定健診、がん検診の受診率向上対策
40歳代、50歳代の方々の死亡率が全国に比べて高いという課題を解決するため、これまで、検診の個別通知や地域の健康づくり団体の方々による受診勧奨を支援するなど、がん検診や特定健診の受診促進に取り組んでまいりました。来年度は、こうした取り組みに加え、事業主の方々などと連携して、職場からも受診勧奨を行っていただくなど、取り組みをさらに強化してまいりたいと考えております。
b 慢性腎臓病(CKD)対策
また、心疾患・脳血管疾患の発症リスクを高める要因である慢性腎臓病の対策についても新たに取り組んでまいります。
慢性腎臓病は、県内に約7万人の患者がいると推定されておりますが、病気自体の認知度が低いため、まずはしっかりと普及啓発に努めてまいります。 あわせて、保健師やかかりつけ医に対する研修を実施するなど、治療管理を適切に行うためのフォローアップ体制を整備してまいります。
(イ)歯科保健対策
歯科保健対策については、本年度実施いたしました歯と口の健康づくり実態調査の結果を受け、基本計画の策定を進めております。現在実施しておりますパブリックコメントによるご意見も踏まえ、目標達成に向け、県民の皆様と共に取り組める計画にしてまいります。
この取り組みの第一歩として、来年度は、保健所ごとに講演会を開催し、正しい歯みがき方法やフッ素応用の具体的な方法を周知するなど、子どものむし歯・歯肉炎予防対策を実施してまいります。
また、毎月28日を「歯っぴぃデー」とし、歯周病啓発イベントを実施するなど、歯周病に関する知識と予防についての啓発を行ってまいります。
さらに、在宅歯科医療関係者が連携する仕組みづくりなど高齢者等の歯科保健対策に取り組みますとともに、圏域ごとの推進体制の構築を進めるなど、効果的に施策を展開してまいります。
ウ 医療の分野
次に、医療の分野についてご説明申し上げます。
医療の分野では、10年後にはどの地域でも安心して医療が受けられ、いざという時の救急医療体制も整備されているという姿を目指してまいります。
(ア)医師確保対策
医師の確保については、医師養成奨学金の貸付や、高知大学医学部での寄附講座の継続、さらには若手医師のキャリア形成支援など高知大学医学部の卒業生をはじめとする若手医師の県内定着を進める取り組みを継続してまいります。
また、即効性のある医師確保対策については、本県への医師の派遣等を通じた地域医療支援を目的とした寄附講座を神奈川県の聖マリアンナ医科大学に設置することとなりました。
あわせて、産婦人科医や麻酔科医など本県において特に不足する分野の医師の確保に向け、高知医療再生機構と連携し、県外大学のご協力も得ながら、県外からの医師の招へいなどに取り組んでまいります。
さらに、救急医や産科医などへの手当を支給する医療機関を支援し、医師の定着につなげてまいりますとともに、出産や育児などで現場から離れている女性医師の復職を支援するため、高知医療再生機構に相談窓口を設けるなど、限られた医療資源を最大限活用して、県民の皆様が必要とする医療をしっかりと提供できる体制づくりを進めてまいります。
(イ)看護職員確保対策
看護職員については、中山間地域や急性期の病院を中心に、人材の確保が厳しい状況となっております。
このため、引き続き看護学生への奨学金貸与事業などに取り組むとともに、離職中の看護職員に対する復職支援などの新たな取り組みを加え、県全体の看護人材の確保、定着を一層進めてまいります。
(ウ)県立あき総合病院
次に、県立あき総合病院についてご説明申し上げます。
本年4月、県立あき総合病院と県立芸陽病院を県立あき総合病院として統合いたします。
精神科医療も含めて一体となった総合病院として生まれ変わるメリットを生かし、まずは精神科の患者さんの身体合併症への対応などを充実するとともに、医師の招へいや設備の充実に合わせて、心臓カテーテル治療をはじめとする高度な医療や救急体制の拡充を図ってまいります。
さらに、安芸保健医療圏の二次救急など地域医療を支える中核病院にふさわしい施設内容となるよう、ハード、ソフトの両面からの整備を今後も継続していくこととしており、本年8月には精神科病棟をオープンし、平成26年4月には他の病棟も含めて全面的に新たな施設として開院することとしております。
免震構造の採用やヘリポートの整備、さらには津波対策の強化による災害への備えも充実し、安芸地域を中心とした県民の皆様の「こころ」と「からだ」の健康を守り抜く大きな砦としての役割をしっかりと果たせるよう取り組みを進めてまいります。
エ 福祉の分野
次に、福祉の分野についてご説明申し上げます。
福祉の分野では、それぞれの地域で子どもから高齢者、障害者などすべての県民の皆様が、ともに支え合いながら生き生きと暮らしていることを10年後のあるべき姿とし、この高知型福祉の実現に向けた取り組みを引き続き進めてまいります。
(ア)ともに支え合う地域づくり
a 地域福祉アクションプラン
現在、市町村では、地域福祉の推進に関する事項を取りまとめた、地域福祉計画の策定や見直しが進められており、本年度末には、市町村社会福祉協議会の策定する地域福祉活動計画と合わせ、24市町村で地域福祉のアクションプランが策定されることとなっております。
来年度からは、高知県社会福祉協議会と連携して、このプランを基に地域の皆様が主役となった実践活動が行われるよう支援してまいります。
b あったかふれあいセンター
平成21年度から整備を進めてまいりました「あったかふれあいセンター」は、集いの機能を中心とした取り組みにより、国の制度の隙間的なニーズへの対応、地域の支え合い機能の強化、支援の必要な方々の早期発見・早期支援など様々な役割を果たしております。
来年度以降は、これらの役割を基本としながら、新たに泊りや移動手段の確保、配食などの機能を地域の実情に応じて付加することとし、取り組みを強化してまいります。
c 福祉・介護の人材育成
また、高知型福祉の実現に向けた取り組みを進めるためには、保健・医療・福祉の専門職や、民生委員・児童委員の方々など地域を支える人材が不可欠であります。このため、高知県社会福祉協議会の福祉研修センター、福祉人材センターや、県内の大学、福祉施設を運営する法人等との産学官連携を推進し、質の高い地域福祉を支える担い手の育成と確保に取り組んでまいります。
(イ)高齢者が安心して暮らせる地域づくり
次に、高齢者の皆様が安心して暮らしていける地域づくりに関しては、たとえ介護が必要となっても住み慣れた自宅や地域で安心して暮らせるよう、地域の医師会や介護サービス事業者など関係機関の連携の下、医療・介護・福祉が一体となったサービスを提供する仕組みを県内各地に広げてまいります。
他方、来年度からスタートする第5期介護保険事業計画では、高齢化の進行やサービスの拡充などに伴い、介護保険料の上昇は避けられない状況となっております。
県としましては、保険料の上昇を抑制するため、高知県介護保険財政安定化基金を可能な限り活用し、市町村においても介護給付費準備基金を活用していただくこととしております。また、ご本人やご家族の安心を支える、より地域に密着した介護サービスの一層の充実に取り組んでいくこととしており、具体的には、特別養護老人ホーム等の入所待機者の解消に向けて、地域のニーズに沿った施設整備を行うほか、通い慣れた施設で夜間もサービスが受けられるよう、デイサービス事業所へのショートステイの併設を促進するなどの取り組みを行ってまいります。
(ウ)障害者が生き生きと暮らせる地域づくり
次に、発達障害への支援体制づくりについては、児童精神医学分野の世界的な権威であるスウェーデン・ヨーテボリ大学のギルバーグ博士と連携して「高知ギルバーグ発達神経精神医学センター」を4月に設置し、共同研究や症例検討などを行うほか、児童精神医学を志す全国の若手医師の受け入れ先ともなるよう取り組みを進めてまいります。
また、同じく4月には高知医療センター内に、本県の精神科医療の拠点となる「こころのサポートセンター」がオープンいたします。同センターでは、高知医療センターの高度な医療機能を活用して「精神科」と「児童精神科」の医療を担ってまいります。特に四国では初めてとなる児童精神科の専門病床では、発達障害や精神疾患などで入院治療が必要な子どもの受け入れや、児童虐待など心のケアが必要な子どもの診療も担ってまいります。
(エ)次代を担う子ども達を守り育てる環境づくり
次に、子ども・子育て支援施策の充実については、働きながら子育てを行う家庭への支援、子育てに孤立感や不安感を持つ家庭への支援に積極的に取り組んでまいります。
具体的には、市町村等が行う延長保育や小規模・多機能の保育事業を支援するなど、保護者の方々の多様な働き方に応じた保育サービス等を充実してまいります。
また、家庭訪問や出張相談の充実、専門職による相談業務への支援など地域子育て支援センターのさらなる機能強化や、子育てサークルのネットワークづくりなど、子育て家庭が気軽に集い、交流できる場づくりの充実に取り組んでまいります。
(3)県民の安全・安心の確保に向けた地域の防犯、防災の基盤づくり
ア 南海地震対策の加速化と抜本的な強化
次に、南海地震対策の加速化と抜本的な強化についてご説明申し上げます。
来年度から南海地震対策課の体制を一層強化し、取り組みのさらなる加速化と抜本強化に取り組んでまいります。
(ア)被害想定
本年4月には、国において現在考え得る最大クラスの地震、津波を想定した震度分布や津波高についての新たなシミュレーションが示されることとなっております。また、秋頃までには、それらに基づく被害想定も公表される予定であります。県としましては、これらの国の想定と津波の痕跡や古文書など県独自の調査を組み合わせて、地域ごとのよりきめ細かい想定を年内を目途に県民の皆様にお示ししたいと考えております。
(イ)総論
a 今すぐできる対策
この想定をお示しする前であっても、まずは引き続き、津波避難計画の策定や避難路、避難場所づくりなどの取り組みをスピード感を持って進めてまいりたいと考えております。特に、避難場所の確保については、平成25年度を目途に概ね完了させることを目指して、全速力で取り組んでまいります。
加えて、本年4月頃国から示される震度分布や津波高についての新たなシミュレーションでは、揺れの増大や、これまでの想定を大幅に上回る津波高となる可能性があるため、地域における追加的な津波避難計画の策定や見直しへの支援、また福祉施設や学校現場からの様々な要請などにも対応できるよう、防災等の専門家を派遣する体制も整えてまいります。
b 抜本的対策
また、河川や海岸の堤防の耐震対策や液状化対策など抜本的な対策となるハード整備についても、国の全国防災対策の方針を追い風として、着実に進めてまいりたいと考えております。
あわせて、ソフトとハードを組み合わせた多重防御の視点から、自主防災組織の結成に向けた取り組みや計画づくりなどソフト面の取り組みも、引き続き同時並行的に進めてまいります。
c 全庁的な見直し
こうした取り組みに加え、最大クラスの地震、津波を想定し、南海地震対策をもう一段充実させるため、現在、全庁的に南海地震対策関連の計画や対策の見直しを行っております。
中でも様々な分野を包括するトータルプランである、新しい南海地震対策行動計画については、新たな被害想定に対応した見直しを加えた上で、有識者の方々やパブリックコメントなどを通じた県民の皆様のご意見をお聞きしながら、来年度末までに策定を終え、平成25年度から新たな南海地震対策を展開できるよう取り組んでまいります。
(ウ)各論
a 津波避難対策
津波避難対策については、来年度、市町村において津波避難タワーの設計や設置8カ所、避難路や避難場所の整備152カ所、避難誘導灯の整備94基などが予定されております。県としましては、一日も早い津波避難困難地域の解消に向け、来年度からの2年間、全国防災対策で創設された有利な地方債を活用した新たな交付金制度を設け、取り組みのさらなる加速化を目指してまいります。具体的には、避難路や避難場所などの整備にあたり、この地方債を市町村に発行していただき、地方交付税による70パーセントの措置に加え、市町村の実質的な負担30パーセント相当額を県が翌年度に交付してまいります。これにより、市町村の実質的な負担を解消するとともに、県の負担も従来の3分の2から30パーセントまで軽減され、同額の県の一般財源でより多くの事業を実施することが可能となります。
市町村においてはこの制度を活用し津波避難対策を最大限加速していただくとともに、交付金を財源として避難所の備品や備蓄物資の充実などよりきめ細かな対策も進めていただきたいと考えております。
また、津波による災害から国民の生命、身体、財産の保護を図るため、昨年12月に制定された「津波防災地域づくりに関する法律」では、国が策定する基本指針に基づき市町村が津波防災地域づくりを総合的に推進するための計画を作成した場合の特別な措置などについて規定されております。現時点では制度の詳細が明らかにされておりませんが、今後の動向を注視し、本県における対策の有力なツールとして検討を深めてまいります。
b 揺れ対策
住宅の耐震対策については、本年度、改修工事への補助制度の30万円の上乗せ効果などにより、昨年度の1.5倍のペースで耐震化が進んでおります。さらに来年度は、避難路沿いの危険なブロック塀について単独で耐震対策を行う場合についても補助対象に加え、より一層の耐震対策の促進を図ってまいります。
また、学校施設の耐震化については、県立学校では現行の計画を前倒しし、平成27年度末までに実質的な耐震化率を100パーセントとするよう取り組んでまいります。公立小中学校に関しては、引き続き市町村が実施する耐震化事業を支援するとともに、予算確保や補助制度の充実を国に政策提言してまいります。
c 総合防災拠点構想
東日本大震災の教訓に照らせば、南海地震の発生時には、国、他県などからの救助、応援部隊や大量の支援物資などの円滑な受け入れと被災地域への迅速な展開を行うための前方展開型の拠点が重要な役割を果たすこととなるものと考えられます。
このため、県内複数箇所での大規模で機能的な総合防災拠点の整備を目指し、必要な施設・設備や、広域医療搬送拠点との関係、さらには平時における有効な活用方法なども含めた検討を行い、早期に基本構想を策定してまいります。
d 保健・医療・福祉分野
保健、医療、福祉の分野では、日本一の健康長寿県構想に南海地震対策の視点を加え、医療施設の耐震化など医療救護体制の強化や在宅要援護者の支援体制の整備などを進めてまいります。
特に、災害時の医療救護計画の見直しについては、現行計画の策定後に整備が進んだ災害派遣医療チーム、いわゆるDMATの運用や、航空機による重症患者の県外搬送など新たな体制を反映するとともに、東日本大震災で明らかとなった多くの課題も踏まえ、最終の取りまとめを行っております。
e 産業分野
産業の分野では、南海地震対策として設備投資を行う中小企業の皆様の負担軽減を図るため、県制度融資に地震対策用のメニューを創設するとともに、震災後の早期復旧に大きな役割を期待されるものづくり企業に対し、耐震診断や設計に対する助成を行うことで、中小企業の皆様の震災対策を支援してまいります。
また、新たな工業団地の造成に際しても高台移転の視点を持って対応してまいりたいと考えております。
f 教育分野
教育の分野では、教育委員会事務局に学校安全対策課を設置し、南海地震対策をはじめとする危機管理、防災対策、防災教育などハード、ソフトの両面から、学校の安全対策を推進してまいります。
来年度は、緊急地震速報等の防災科学技術を活用した避難訓練や、先進的・実践的な防災教育の研究成果を県全体に発信するためのモデル事業、学校防災アドバイザーの派遣、防災教育研修会等を行ってまいります。
(4)教育の充実と子育て支援
ア 高知県教育振興基本計画重点プランの検証及び次期プランの策定
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
(ア)学力向上に向けた取り組み
「学力向上・いじめ問題等対策計画」、いわゆる緊急プランに基づく取り組みにより、「全国学力・学習状況調査」では平成19年度から平成22年度にかけての改善率が小学校は全国第6位、中学校は全国第1位となり、また、「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」では平成20年度から平成22年度にかけての体力の伸び率が小学校・中学校、男子・女子とも全国トップの結果となるなど、この4年間で学力や体力は着実に向上し、また、不登校や暴力行為など生徒指導上の諸問題についても一定の改善が見られております。こうした結果は、多くの子どもたち、保護者の皆様、教職員の方々の努力の成果であると考えております。
しかしながら、中学校の学力や小中学校の体力は依然として全国水準に達しておらず、生徒指導上の諸問題もまだまだ厳しい状況が続いております。
このため、教育委員会では、これまでの取り組みの質の向上に加え、子どもたちの夢や志を喚起し、学ぶ意欲を引き出す取り組みを強化するなど、今後4年間で重点的に取り組む施策を高知県教育振興基本計画の重点プランとして策定することとしております。
a 高知県独自の学力定着状況調査
学力向上対策では、小学校中学年からの二極化や中1ギャップに対応するため、来年度から、小学校5年生及び中学校2年生の児童生徒を対象とした高知県独自の学力定着状況調査を実施することとしております。
この調査を継続的に実施し、個々の児童生徒の学力状況を踏まえた指導方法の改善に生かすことで、学力向上対策のPDCAサイクルをさらに充実させてまいりたいと考えております。
b 高知市への重点支援
高知市が行う学力向上対策への支援については、学習習慣の確立に向けた総合的な取り組みに対して、3年間の重点的な支援を行ってまいりました。その結果、学校の授業以外で全く勉強しない中学生の割合が平成19年度の17.8パーセントから平成23年度には4.6パーセントまで減少するなど、一定の成果が表れております。
しかしながら、高知市の中学生の学力は、いまだ県平均まで達していない状況であり、県全体の学力をもう一段高いレベルに引き上げていくためにも、引き続き高知市の学力向上の取り組みを支援していきたいと考えております。
c 教員の指導力の向上
本県の教員は、今後10年間で全体の約36パーセントが退職すると見込まれており、若年教員の実践指導力の向上は大きな課題であります。
このため、来年度は、臨時的任用教員を含めた若手教員の研修を体系的に見直すとともに、中堅教員と若手教員がチームを編成し共同で研究や研修などを行っていくこととしております。
さらに、教育センターでの集合研修と学校での日々の勤務を通したOJTの有機的な連携や、学校における教育実践を支援する教育センターのあり方など、教員の資質向上に向けたさらなる施策について検討を進めていくこととしております。
d 放課後対策
このほか、本県では、放課後における子どもたちの健やかな成長と学習習慣の定着を図るため、「放課後学びの場」の設置拡大を進めてまいりました。 今後、この「放課後学びの場」が、より安全で安心な居場所となり、宿題にとどまらない多様な学習の場となるよう、人材の配置や教材の充実を行う市町村に対する支援を一層充実させてまいります。
(イ)キャリア教育
また、来年度は、子どもたちに社会の一員として自らの責任を果たしながら人生を豊かに生きる力を身に付けさせるため、発達段階に応じた「キャリア教育」の質を高めていきたいと考えております。
中学校では、郷土出身の著名人や郷土を代表する産業や観光、自然などについて学習する「キャリア教育副読本」を作成し、自らの生き方について考える力や、郷土を愛する態度を育んでまいります。
また、高等学校では、大学キャンパス訪問やインターンシップなど生徒が卒業後の進路を見定めるための体験活動を実施するほか、難関大学への進学も視野に入れた教員の教科指導力を高める取り組みや、キャリア教育に関するカリキュラム開発などを進めてまいります。
(ウ)読書活動の推進
子どもたちの豊かな心と感性を醸成し、考える力や表現力、人との絆を育むため、来年度から「第二次高知県子ども読書活動推進計画」に基づき、子どもたちの自発的な読書をさらに進めてまいります。
具体的には、読書ボランティアの養成をはじめ、子ども読書活動支援員の継続的な配置、学校図書館支援員の配置の拡充を行ってまいります。
また、高等学校では、学校図書館を活用した授業方法を研究するとともに、司書教諭や司書の技能を高め、生徒の学習活動を支援してまいります。
イ 発達障害のある児童生徒への指導支援
発達障害等の特別な教育的ニーズのある児童生徒数は年々増加する傾向にあり、日本一の健康長寿県構想においても発達障害者支援の取り組みを強化することとしております。
来年度は、発達障害に関する専門性を有する教員の養成、障害の特性に合った資料集の作成、積み上げてきた指導や支援を就学・進学で途切れさせることなく円滑に引き継ぐ仕組みの構築など、発達障害のある幼児児童生徒への指導支援を体系的に充実することで、子どもたちの将来の自立と社会参加を目指してまいりたいと考えております。
ウ 学びの拠点となる教育機関等の整備
(ア)新県立図書館の整備
新図書館等複合施設の整備につきましては、基本設計の策定に向け、広く県民の皆様のご意見をお聞きするため、先月、高知市をはじめ県内3会場で住民説明会を開催いたしました。延べ125名の方々にご参加いただき、施設の外観など設計に関することはもとより、運営面も含めて、多くのご意見をいただいております。
こうしたご意見も踏まえて作成した基本設計の案につきまして、さらに今議会でご議論を賜り、ご理解をいただくことができますならば、教育委員会において取りまとめがなされるものと考えております。
これに基づき来年度は、実施設計を進めるとともに、具体的なサービスや運営についても専門家のご意見をいただきながら検討を深めるなど、教育委員会において着実に取り組みを進めていくものと考えております。
(イ)新資料館の整備
次に、新資料館の整備についてご説明申し上げます。
新資料館については、高知の歴史を過去から未来へとつなぎ、その魅力を全国に発信する拠点となるよう、「資料の保存と活用の両立」「高度な博物館機能」「人と歴史・地域との懸け橋」「新たな景観の創造」の4つの設計理念を基に、南海地震対策についても十分検討し、昨年末に基本設計を取りまとめたところであります。
平成26年度中の完成に向け、現在、実施設計を進めており、今議会には建設工事のための予算を提案しております。さらに今後は、開館後の効率的な管理運営体制や具体的な事業展開について、関係者や県内外の有識者の方々のご意見を伺いながら検討を深めてまいります。
(ウ)永国寺キャンパスの整備
次に、永国寺キャンパスに関してご説明申し上げます。
高知短期大学は、勤労者のための夜間の高等教育機関として重要な役割を担ってまいりましたが、進学志向の変化などにより4年制大学への編入希望者が増加し、就業者の割合が大きく低下するなど、その役割が変化しております。
他方、永国寺キャンパスでは高知工科大学による新たな社会科学系学部の設置と高知県立大学の文化学部の拡充により、高知短期大学と領域が重なる分野での教育研究体制の充実が図られることとなりました。加えて、両大学は、その連携の下、高知短期大学の担ってきた社会人教育や生涯教育の充実を図ることとしております。
こうしたことから、県と関係する3大学で取りまとめた、高知短期大学の発展的解消を含む「永国寺キャンパスに関する基本方針案」について、去る12月議会でご議論をいただいた後、本年1月から2月にかけてパブリックコメントを実施し、高知短期大学のあり方について県民の皆様のご意見を伺ってまいりました。
その結果、高知短期大学の発展的解消を支持するご意見がある一方で、存続を求める多くのご意見がありました。その理由は、働きながら学べることや、2年制という短期間だから学べ、学費も安いことなどであり、先般お会いした高知短期大学の学生の方々からも同様のご意見をいただきました。
こうした高知短期大学の存続を求める理由とされるものにつきまして、私は、関係する大学を含めた検討チームの皆様に改めて問いとして投げかけ、そのご意見をお聞きし、自らの考えを整理いたしました。
まず、学費に関しては、高知工科大学、高知県立大学には経済的に就学が困難な方のための授業料減免制度があり、日本学生支援機構の奨学金制度も拡充されてきております。また、両大学の定員の増加に伴い県内の大学への進学の道が広がることで経済的な負担の軽減にもつながります。
働きながら学ぶことに関しては、両大学とも大学入試センター試験を必要としない社会人特別入試制度を設けること、さらに高知県立大学は、社会人が夜間や土日に受講し4年間で学士の資格を取得する仕組みや、4年分の授業料で4年を超えて最大8年まで学ぶことができる長期履修制度を設けることとしております。
加えて、短期間で学ぶことに関しては、高知県立大学は、新たに1年又は2年の学習プログラムを提供し、修了者に対して学校教育法に基づく履修証明書を発行することとしております。
さらに、両大学の共同の窓口を設置し、これまで以上に、多様な社会人の学習ニーズに応える体制を整備していくこととしております。
パブリックコメントで存続のご意見を出された方々や、先般お会いした学生の皆様が思いを寄せられる高知短期大学の機能については、こうした取り組みによって両大学で十分担うことができると考えますし、4年制大学であることによって、より幅広い分野で、より専門性の高い教育を提供することができることとなるものと考えております。
このため、高知短期大学は、その組織を維持するのではなく、その機能を発展させながら、高知県立大学と高知工科大学に引き継いでいくこととしたいと考えております。
今議会では、この高知短期大学の発展的解消についてご議論をいただきますとともに、基本計画の策定作業を踏まえて提案しております永国寺キャンパス整備のための設計等の予算について、ご審議をお願いすることとしております。
(5)インフラの充実と有効活用
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
ア 総論
社会資本の整備が全国水準から大きく立ち遅れ、南海地震への備えも必要となっている本県では、国の公共事業予算が年々削減される中にあっても、中山間の生活を守る道路の整備や、河川・海岸施設の耐震化などのインフラ整備の推進は、重要な課題であります。
このため、全国防災対策費など国の有利な制度を積極的に活用するとともに、単独事業費をしっかりと確保することにより、南海地震対策や、地域に密着した河川や道路の整備・維持管理を着実に進めてまいります。
イ 道の駅の防災拠点化
東日本大震災では、自家発電装置を備えた道の駅が応援部隊の活動拠点や避難場所として大きな役割を果たしたところであります。
本県においても、南海地震への備えとして、自家発電装置の設置など道の駅の防災拠点化を早急に進めていく必要があると考えております。このため、県管理道路沿いの道の駅について、来年度、大規模地震発生時の役割や防災拠点化に向けた調査を行い早期の整備につなげてまいります。
あわせて、道の駅を住民の皆様の避難場所として利用することや、中山間対策の一環として地域の特産品販売の強化に向けてさらなる活用を図っていくことについても、関係市町村と連携しながら取り組んでまいります。
ウ 四国8の字ネットワークの整備
昨年12月に発表がありました窪川佐賀道路に続き、阿南安芸自動車道の安芸道路が来年度の新規事業として採択される見通しとなりました。
安芸道路は、四国8の字ネットワークを構成する道路であり、南海地震に備えなければならない本県にとりまして、地域の安心・安全を確保するための「命の道」として、また、室戸ジオパークをはじめとする県東部地域の観光振興、産業振興の基盤として整備を待ち望んでいる道路であります。
このたびの新規事業化は、早期の事業化に向けた関係者の皆様の熱心な取り組みが実を結んだものであり、皆様のご尽力に感謝申し上げます。
今後も、未事業化区間の早期事業化や事業実施中の区間の1日も早い供用を目指し、四国8の字ネットワークの整備の加速化に取り組んでまいります。
エ 本四高速の料金
今月17日、国は「本四高速の料金等に関する調整会議」において、本州四国連絡高速道路の料金収入について、平成26年度から旧日本道路公団路線と一体管理するプール制に移行し、全国の高速道路と共通の料金水準に引き下げる方針を表明しました。
また、これまで国から求められてきた10年間の出資延長については、2年間に限定し、出資額も減額する方針が示され、本県をはじめとする関係10府県市としても、一定評価できるものとなったところであります。
こうした方向性は、これまで私自身、関係府県市と連携しながら行ってきた政策提言が一定認められたものであり、本県にとって観光や地域の活性化の面で大きなプラスの効果があるものと評価しております。
今後は、出資額や料金水準について、関係府県市と連携し、国と協議してまいります。
オ 高知新港の利活用(高知新港振興プラン)
次に、高知新港についてご説明申し上げます。
平成10年に一部供用を開始した高知新港は、現在、韓国・釜山港との間に定期コンテナ航路が週2便就航し、昨年初めて年間取扱量が1万TEUを超えるとともに、石灰石の台湾への輸出が始まるなど、県内企業の輸出入に欠かせない港となっております。
他方、フェリー航路の廃止や施設・設備への需要の変化のほか、平成26年度には水深14メートル岸壁の暫定供用が予定されていることなど、高知新港を取り巻く環境も大きく変わってきております。
こうした変化に対応するため、荷主企業や学識経験者、物流関係者などの方々から幅広くご意見をいただきながら、高知新港の利活用や競争力向上について検討し、来年度の秋を目途に高知新港の振興プランを策定することといたしました。プランの策定後は、港湾関係者の皆様などとの連携の下、高知新港の物流機能の強化などを図ってまいります。
カ 談合防止対策
昨年12月、県内の複数の建設業者に対して談合の疑いで公正取引委員会による立ち入り検査が行われました。いまだその結果は出ておりませんが、疑いが持たれたことを受け、県が発注する建設工事などに関して、契約時に誓約書の提出を義務付けるとともに、新たな談合防止対策についての検討を進めてまいりました。
検討にあたっては、有識者の方々による談合防止対策検討委員会でご審議をいただいており、早急に実施すべき対策については、本年度内にご意見をいただくこととなっております。
県としましては、検討委員会のご意見を踏まえて、速やかに対策を講じてまいります。あわせて、公正取引委員会の調査の進展を見守りながら、引き続き検討委員会でご議論をいただき、さらなる談合防止対策の取り組みを進めてまいります。
キ 南海地震に備え地域の防災力を維持・確保していくための取り組み
南海地震等の災害への備えに実効性を持たせるためにも、建設業の皆様には、災害時の対応など地域の安全・安心を支える要となっていただかなければならないと考えております。
東日本大震災の被災地では、人手不足により復旧・復興事業に支障が出ているともお聞きしておりますが、本県におきましても、南海地震に備え、建設業の皆様とも連携しながら、人員の確保や資材の調達など、いざという時に十分な対応が取れるよう準備を進めていく必要があります。
このため、来年度、有識者の方々からご意見をいただきながら、地域の防災力を維持・確保していくための具体的な方策について検討していくこととしております。
(6)中山間対策の抜本強化
次に、課題解決の先進県を目指した取り組みの大きな柱であります、中山間対策の抜本強化についてご説明申し上げます。
ア 機構改革
中山間地域の実態を把握し、住民の皆様の声を今後の中山間対策につなげていくため、本年度、県内全域で集落実態調査を実施いたしました。まだ、分析の途中段階ではありますが、多くの集落で、地域を担う人材の不足や、集落活動の沈滞化が課題として挙げられるなど、中山間地域の厳しさが一層深刻になってきている実態が全県的かつ詳細に明らかになってまいりました。こうした課題に正面から向き合い、10年後を見据えた新たな視点を持って、中山間地域の再生を目指した緊急の対策を講じることが必要となっております。
このため、来年度、中山間総合対策本部の機能を強化するとともに、新たに理事職を置き、全庁を挙げてより強力に中山間対策を推進することとしております。さらに、中山間地域対策課を設置し、中山間地域において誰もが一定の収入を得ながら安心して暮らし続けることができる仕組みづくりを進めてまいります。
イ 集落活動センター
私は、今後の中山間対策の大きな方向として、地域への人材の導入を図るとともに、地域における潜在的な力も引き出しながら、県、市町村、地域団体、住民の方々などが一丸となって地域の課題解決に向けた取り組みを進める「中山間を支える絆のネットワーク」を構築していきたいと考えております。
来年度からは、この「絆のネットワーク」の中心的な役割を担う取り組みとして「集落活動センター」を拠点とした仕組みづくりを進めてまいります。
この「集落活動センター」の取り組みは、旧小学校区程度をエリアとする複数集落と市町村が連携して、活用されていない廃校や集会所などを拠点として整備し、地域のリーダーと外部人材を中心に、共同作業の実施、食料品の調達、高齢者等の見守り、移動手段の確保、交流事業の実施、あるいは小さなビジネスづくりなど、地域の支え合いや集落機能を維持するための取り組みを、「あったかふれあいセンター」などとも連携しながら進めていくものであります。
来年度は11カ所の立ち上げを予定しており、今後10年間で130カ所程度の展開を目指してまいります。県としましては、将来にわたってこの取り組みが持続、拡大するよう、センターごとの「支援チーム」を設置し、それぞれの地域の実情に応じたきめ細かいサポートを行うなど、全庁を挙げて市町村や地域の皆様方と共に取り組んでまいります。
また、初期投資に係る経費への支援を行うとともに、集落活動センターをはじめとする様々な産業づくりや地域おこしの活動を実効あるものとしていくため、地域活動の推進役となる「高知ふるさと応援隊」の導入を支援し、来年度は50人、今後10年間で千人の隊員が県内各地で活躍することを目指した取り組みを進めてまいります。
ウ 中山間地域の孤立化対策
中山間地域においては、地震や台風に伴う土砂災害などによる孤立化も懸念されます。このため、共助の要として自主防災組織の設立を推進するとともに、傷病者の救出、食糧や医薬品などの輸送と併せ、日常におけるドクターヘリによる救急搬送も可能となるよう、緊急用ヘリコプターの離着陸場の整備を積極的に進めてまいります。
エ 移動手段確保対策
また、中山間地域では、過疎化によるバス路線の縮小や廃止、あるいは高齢化の進展に伴い、日常の生活を支えるための移動手段の確保が困難な状況となってきております。
このため、来年度は「最低でも週1回は移動サービスを受けることができる地域づくり」を目指し、地域の実情に応じたきめ細かな移動サービスを提供する仕組みづくりを市町村と共に行い、その成果を県内に広げていくことで、地域の移動手段の確保に積極的に取り組んでまいります。
オ 鳥獣被害対策
中山間地域を中心に、野生鳥獣による農林業被害が深刻な状況にあり、単に経済的な損失にとどまらず、地域住民の方々の生産意欲の減退などの精神的な被害にもつながることが懸念されております。
このため、鳥獣被害への対策を中山間対策の重点課題と位置付け、来年度、鳥獣対策課を、中山間対策を総括する理事所管に移管し、より一層の取り組みを推進してまいります。
これまで、有害鳥獣の捕獲に取り組む市町村に対する支援を拡充するとともに、シカ被害対策として狩猟期における県独自の捕獲報償金制度を創設するなど、捕獲に重点を置いた取り組みを進めてまいりましたが、被害額は依然として高止まりしたままで推移しております。このため、捕獲に加えて、被害防除や集落環境の整備などの対策を地域ぐるみで推進する、いわば「野生鳥獣に強い集落づくり」を積極的に支援していきたいと考えております。野生鳥獣の生息状況や被害実態など集落を取り巻く環境の的確な把握、地域が共同して行う防護柵の設置など防除対策、鳥獣を集落に近づけない環境整備、集落ぐるみでの有害鳥獣の捕獲の推進、さらには被害対策の相談窓口となる鳥獣被害対策専門員の配置など、対策を点から面へと広げた総合的な取り組みを推進してまいります。
3 森林整備公社の経営改革
最後に、高知県森林整備公社の経営改革についてご説明申し上げます。
本県の森林整備公社は、昭和36年の設立以来、国の拡大造林政策に沿って、森林所有者が自ら造林することが困難な山林奥地を中心に分収造林事業による森林整備を積極的に行ってまいりました。しかしながら、本県のみならず、全国で相次いで設立された公社は、木材価格の長期低迷などによる採算性の悪化により、極めて厳しい経営状況となっております。
こうした状況を踏まえ、本県では、平成21年11月に有識者や林業関係者等で構成する「高知県森林整備公社経営検討委員会」を設置し、国や他県の状況を踏まえながら、今後の存廃を含めた経営改善策について検討を進めていただき、昨日、「経営改革プラン」としてご報告をいただいたところであります。
この「経営改革プラン」では、公社改革を実行し存続させることが、県民負担の観点から望ましいという方向性が示されますとともに、収益が見込めない非経済林の契約解除や民間事業体への分収林管理委託の推進、分収割合の見直しなど9項目にわたる改革が求められております。
県としましても、森林整備公社と連携して「経営改革プラン」に沿った公社改革に全力で取り組むことにより、公社経営の改善につなげてまいりたいと考えております。あわせて、同様の課題を持つ他府県とより一層連携を強化しながら、国に対し、公社への支援策に関する積極的な政策提言を行ってまいります。
4 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成24年度高知県一般会計予算など39件です。
このうち一般会計予算は、先ほど申し上げました5つの基本政策を推進するための経費などを中心に、4,340億円余りを計上しております。
条例議案は、高知県税条例の一部を改正する条例議案など36件であります。
その他の議案は、包括外部監査契約の締結に関する議案など11件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。