知事の定例記者会見(平成24年3月31日)

公開日 2012年04月04日

更新日 2014年03月31日

知事の定例記者会見

平成24年3月31日(土曜日) 16時30分から17時10分  第一応接室

公表結果の概要説明
本県の対応
記者との質疑

配布資料
 1 南海地震トラフの巨大地震モデル検討会の公表内容 [PDFファイル/604KB]
 2 9県知事会議の「政策提言書」 [PDFファイル/11.28MB]
 3 新たな想定を見据えた高知県の対応 [PDFファイル/687KB]
 4 「こうち防災備えちょき隊」による地域防災向上に向けた取組 [PDFファイル/297KB]


公表結果の概要説明

(知事)
 皆様、土曜日にもかかわらず、ご参集いただき、ありがとうございます。
 先ほど内閣府におきまして、「南海トラフの巨大地震モデル検討会」が新しい想定を発表いたしました。その内容とそれを受けまして、県としてどう対応していくのかにつきまして、私から、冒頭、話をさせていただこうと思います。

(資料 南海地震トラフの巨大地震モデル検討会の公表内容により説明)

発表する尾﨑知事
 お手元の資料にもありますが、こちら(ホワイトボードの拡大した資料を指して)は、「(南海トラフの)巨大地震モデル検討会」が今日発表した想定でございます。津波の高さは、ほぼ全域で従前の想定の2倍以上となっております。例えば、黒潮町は34.4mとか、土佐清水市は31.8mとか、非常に高いレベルでの津波高となっています。さらに、震度をご覧いただきたいと思いますが、震度7と、最大クラスの揺れが想定されるという発表がありました。

 ただ一つだけ留意しておかなければならないことが、掲載されている推計結果は、たとえば津波なら全部で11パターンの試算をして、それぞれの地点ごとに最悪の数字をすべてピックアップして並べるとこうなるということですから、その点を一つ留意しなければならないということであります。

 さらに、その一つひとつのケースにつきましても、検討会自身の記者発表文書にもありますが、「今回の推定は現時点での科学的知見に基づいて最大クラスの地震・津波を想定したものであって、南海トラフ沿いにおいて次に起こる次の地震・津波を予測したものではなく、また、何年に何%という発生確率を念頭に地震・津波を想定したものでない。」という発表であります。

 ということでありますから、発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらすというケースを推計したものであります。

 そして、もう一点でありますが、この推計結果は50mメッシュで計算しています。10mメッシュで計算しますと、数字が大きく変わってくる可能性もあるという前提のものであります。

 そのようないろいろな前提条件のあるものでありまして、極めて厳しい結果ではありますが、冷静に受け止めていくということが非常に重要であると考えています。
 ただ、他方で、発生頻度が低くてもこういうことが起こる可能性があるということを率直に受け止めて、今後の南海地震対策に生かしていかなければならないと考えておるところでございます。


本県の対応


 今後の対応についてでありますけれども、一つは、国に対してこれから強く働きかけていかなければないないことがいくつかあると思っています。そして、もう一つは、県としての対応を引き続き徹底して進めていくということを、是非やっていかなければならないと考えているところでございます。

 まず、国に対してでありますが、第一に、今回「南海トラフの巨大地震モデル検討会」が公表したこの推定結果について、非常に詳細な説明を求めていくとともに、あくまで50mメッシュの計算でありますことから、「より詳細な、例えばよりメッシュの細かい、より精度の高い推計を是非してくれ」とお願いしていかなければならないと考えておりますし、もう一つ、「発生頻度が極めて低いけれども甚大な被害をもたらすもの」と書いてありますが、例えば「より発生確率が高いものとしてはどんなものが考えられるのか」とか、「地震の発生頻度によってそれぞれ被害想定がどういうレベルになるのか」とかいうようなところを明確に示してもらって、今度の対策に生かしていかなくてはいけないと考えています。すなわち、いずれにしても、詳細な説明を求めていくというのが第1点です。

 そして、第2点ということになりますけれど、小さく分けると3つあります。
 一つ目に、予知体制というのを、しっかり行っていただきたいということを、強く申し入れたいと思っております。
 そして、二つ目といたしましては、高台移転でありますとか現地高層化とか、さまざまなかたちで、超巨大津波に対応できるようなスキーム[体系だった計画]をぜひ確立していただかないとならんと考えております。
 そして三つ目でありますけれども、国においても、現在、さまざまなかたちで、南海地震対策に関係した対策大綱とか応急活動要領とかございますが、残念ながら、これは、現在のところ、三連動型とはなっておりません。東南海・南海地震対策大綱と東海地震対策大綱と二つに分かれております。新たな南海トラフ巨大地震に対応した地震対策大綱づくり、応急活動要領づくりというものについて、国に是非やってもらわなければならんと申し上げていきたいと考えております。

 一連のことを実現していくためにも、ソフト対策として、そういった大綱をつくっていくこと、さらには、さまざまな高台移転などについても強力な財政支援措置というものが必要となってきます。いずれのことを成し遂げていくためにも、必要な法制度をしっかり確立するということが大事であると考えているところでありまして、南海トラフ巨大地震に対応していくための特別立法措置が必要であるということを国に強く訴えていきたいと考えております。

(資料 9県知事会議の「政策提言書」により説明)


 いま、お手元に、「政策提言書」という資料をお配りさせていただいております。
 われわれも、「南海トラフの巨大地震モデル検討会」で、こういう発表がなされるのではないかという推定もありまして、こういう政策提言を、3月末から行ってきているところでございますが、これは、高知県が事務局を務めさせていただいている9県知事会議(東海・東南海・南海地震による超広域災害への備えを強力に進める9県知事会議)の政策提言書として、3月29日に中川防災大臣、さらには自民党・公明党・民主党の各党の皆さんのところに、われわれとして訴えをさせていただいてきたものでございます。

 提言書の4枚目に書いてあります絵がすべてを物語っているわけでありますが、ここにありますように、ぜひとも「南海トラフ巨大地震対策特別措置法(仮称)」の制定をしていって、国策として、国全体として、このような極めて厳しい状況に対応していくための体制を確立していくことが重要だと考えております。自民党さん、公明党さん、民主党さんの各党に対して、「この提案をぜひ実現してもらいたい」とお願いをしてまいりました。

 それから、政府に対しましても、防災担当大臣に対して、その点をお願いしてきたところでございますが、この特別立法の制定を是非実現をしていきたいと考えております。そして、この特別立法を制定することによって、先ほどと重複しますけれど、一つは予知体制の確立、それから、新たな対策大綱・応急活動要領の制定、そして、さまざまな避難体制を確立していくための施設整備に対する財政措置、こういうものを実現していきたいと考えておるところでございます。

 提言書を1枚めくっていただき、現在の大綱とか活動要領というものが現在はどういうことになっているかを実際に、ここに描いてある絵で見ていただきたいのですが、先ほど申したように、東海地震と東南海・南海地震が別々に起こるという前提をもとに法制度がつくられているところです。仮に東海地震が起こったとしたら、高知県の消防が静岡県に応援に行くという体制になっています。また、今度、東南海・南海地震が起こったとすると神奈川県の消防が和歌山県に応援に行くという体制になっているところです。二つがバラバラに起こるという前提になっていますから、こういう欠陥を招いているということです。根本的に作り変えていかなくてはならないというように考えております。

 そして、次に、そのページの右を見てもらいたいのですが、予知体制の確立という点からいくと、東海地震エリアは相当高度な予知体制が敷かれようとしているところです。今回の新しい推計でも、本県は全国の中でも津波高にしても震度にしても極めて高いわけであります。予知体制を東海エリア以上に確立していくことが、是非とも必要であると考えているところです。
 さまざまなかたちでの制度の制定について、今後、国に対して強く訴えかけていきたいと考えているところです。

 ちなみに、できれば来週と思っていますが、私は、国にお伺いいたしまして、この点を改めて申し入れをしてきたいと思っているところであります。それと、もう一つ、中央防災会議で南海トラフ巨大地震に備えるためのワーキンググループを設立することになっています。こちらを設立して、今後のさまざまな対策をどうするのかを検討することとなっておりますが、私はそのワーキンググループの委員に就任する予定でございますので、その中におきましても、こういう厳しい状況にどう対応するべきなのかについて、強く政策提言をしていきたいと考えておるところです。国全体としてどう備えるべきなのかという検討に参画していきたいと思います。

 以上が、第1章のような、国に対する対応です。

(資料 新たな想定を見据えた高知県の対応により説明)


 つづきまして第2章です。今度は、県としての対応ということでありますが、こちら「新たな想定を見据えた高知県の対応」の紙をごらんください。

 23年度は、当初予算が約100億円だったところに60億円くらい補正予算を組んで1.6倍くらいにして、全速力で南海地震対策を進めてまいりました。例えば、津波避難路・避難場所づくりを23年度中に87カ所、避難誘導灯等を80カ所設置するとか、また津波避難ビルについても120カ所から170カ所まで拡大をするとか、そういう対応を図ってきております。さらには、災害時医療救護計画を制定するとか、ソフト面の対策も進めてまいったところでございます。

 こういうふうに進めてきて、それぞれの対策の目標として、津波避難施設については25年には概成していきたいと、さらには諸計画の見直しは24年度中には終わらせたいということで準備を進めてきたところございます。基本的には、この計画を変えずに、これからの取り組みを今後どんどんどんどん進めていきたいと考えておりますが、今日以降の取り組みについてどういう動きをするかについて、若干、追加的にお話をさせていただきたいと考えております。

 今日3月31日に、震度分布は250mメッシュ、津波高は50mメッシュの暫定値が公表されました。これを、国では、今後さらに10mメッシュぐらいで新たな推計すると予測されています。これに合わせて、県では4月末くらいをめどに、第一弾の地震動と津波の浸水エリアの予測結果をお示ししていきたいと考えております。これが4月末の第一弾となります。これによって、相当程度、より具体的な姿が見えてくるんじゃないかと考えているところです。

 ただこれも、よくよく気をつけておかないといけないのは、発生頻度が高い場合・低い場合をよく区別しての示し方ということを、国の方にもお願いをしていきたいですし、私たちもよく留意していきたいと思っています。
 そして、これは今までも申し上げてきたことですが、今年の秋ごろ、第二弾の地震動と津波浸水予測結果の公表をしていきたいと考えております。

 今、すでに過去の文献・古文書を洗ったり、地質の調査を行ったりしているところですが、その津波の痕跡をいろんなかたちで探していって、その結果を踏まて、より詳細なかたちで、津波浸水予測の結果を公表していきたいと考えております。

 第一弾で4月末に浸水予測結果を暫定値で公表します。そして、今年の秋に第二弾の公表を行っていくということでございます。今回、こういうかたちで新しい想定がでました。今後の新想定を受けてさらに加速化して、津波避難タワーのかさ上げを図っていくこと、さらには津波避難ビルの指定を促進するとともに、より高いビルを指定するというような取り組みを進めていくこと、さらには地域地域で津波避難計画の見直しを行って、避難路・避難場所の再整備を行っていくこと、そして訓練の充実を図るということ、これを行っていきたいと考えています。

 資料に平成24年度の当初予算として書いてありますように、現在のところ、津波避難タワーについては8基、避難路・避難場所の整備については152カ所、避難誘導灯等の整備については115基の実施を予定しているところでございますが、今回の想定などを受けて、さらに4月末、今年の秋のそれぞれの公表結果を受けて、さらに追加的に必要な場合、さらには変更が必要な場合もでてくると考えられますので、随時その対応をしていきたいと考えているところです。

 ちなみに、このような結果を受けて、どのように津波避難計画をつくっていくべきなのか、よりきめの細かいかたちで津波避難計画づくりが求められようになると考えています。そのための技術的支援ということにも大いに重きをおいて行っていきたいと考えています。

(資料 「こうち防災備えちょき隊」による地域防災向上に向けた取組により説明)


 いまお手持ちの資料の最後のページをご覧いただきたいと思いますが、「こうち防災備えちょき隊」という組織を、4月17日に設立させていただく予定となっています。県庁の土木部の職員OBや有識者の皆さんで構成する隊でありまして、隊の皆さんに現地現地に入っていただき、地域の皆様が津波避難計画をつくるときに、いろいろアドバイスをしていただいたりとか、後押しをしていただくような取り組みをしていきたいと考えております。
 地形によって水の動きなどもいろいろ変化していくものでありまして、そういったかたちでの技術支援というのも、この「こうち防災備えちょき隊」で行っていきたいと考えております。

 もう一つ、南海地震対策行動計画の見直し、地域防災計画の見直し、さらに応急活動計画の見直し、災害時医療救護計画に連動したさまざまな保健・医療・福祉の計画の見直し、これらは24年度中に終える予定としていました。引き続き、24年度中に終えることができるよう組みを加速してまいります。ただ、この1年間、いろんなかたちで見直しを行ってきているところですが、今回のこういった結果を踏まえ、再度見直しが必要ではないかということについて、県庁各部局に指示をして、もう一度洗い出しを行っていきたいと考えているところです。

 そして、国への政策提言。これは、先ほど私が「第1章」と言って、国に働きかけていきたいと申し上げたことについて、簡単に書かせていただいております。

 冒頭、私から以上でございます。


記者との質疑

(古川:NHK記者)
 震度・津波高とも非常に高い推計が今回でましたが、率直な受け止めをお聞かせください。

(知事)
 はい、もともと、震源域と波源域が新しいモデルが昨年12月に出された段階から、相当厳しい結果がでるだろうということは、一定予想していたところがありました。
 今回、この結果を受けまして、確かに厳しい結果だなとは思いますけれど、これを、今後の防災対策に率直に生かしていくということが非常に重要だろうなと思っています。

 ただ、一点だけ、先ほども申しましたとおり、まだまだ、より詳細な検討が必要な部分がたくさん残っておるわけでして、この点につきまして、例えば、あくまで最悪なものをピックアップしてつくるとこういうことになるとかいうところもあったりします。

 「より発生頻度の高いものとしてはどういうものがあるのか」とか、さらには、「よりメッシュを細かくしていくとどうなるか」とか、そういうことについて、よくよくご検討いただかないといけないと思っておりまして、国も「そうする」とおっしゃっていますし、われわれも、国にその点を訴えていきたいと考えているところです。

(古川:NHK記者)
 高知県として、震災後、本当に急ピッチで、これまでできることに取り組まれてきたところですが、改めて、この結果が公表されて見直し部分も出てくると思うのですが、計画も含めて、どうやって見直していこうとお考えでしょうか。

(知事)
 やはり、津波避難計画なども、もう一段、変更すべき点を洗い出していく必要があるのだろうと思います。より高い所に、より早く、どう逃げるかということを、いろんな所で、もう一段検討してみることが重要ではないかと思っているところです。

 ただ、もう一つありますのは、先ほど「第1章」として申し上げた、国におけるさまざまな対応の見直しについて、こういう結果がでると一層必要性を痛感しているところです。
 資料には高知県の絵だけ描いていますが、他の各県においても、ものすごい強度の揺れが予想され、津波高が20m以上の所もたくさんあるわけです。西日本全域がこういう状況になったときに、国がはたしてどう対応するかということについての地震対策大綱というのはまだできていないわけです。それは、ぜひ、急いで作っていかないといけません。

 それと、もう一つ。先ほども申し上げましたが、これだけの津波高という想定になってきますと、例えば現地の高層化をしようとか、高台に移転しようとか、そういうご意見はたくさん出てくるのだと思います。ところが、それをどういうかたちで行っていくかということについて、一つは、今の制度は使い勝手がよくありません。また、もう一つ、巨大なお金がかかります。これに対して、どう後押しをするかとか、そういう制度も必ずしもできていない。そのように思っているところです。

 そういったことへの対応も、国に対して強く訴えていかないといけないと思っています。
 ただ、とは言いながら、何度も繰り返しになりますが、われわれ県として、避難路・避難場所の整備とか、できることはたくさんありますので、これらには、引き続いて急ピッチで、どんどんどんどん進めていきたいと考えています。

(大野:高知新聞記者)
 各対策の目標そのもの、基本設定は変えないということですね。学校の耐震化であるとか、自主防災組織の組織率については、今日の結果を受けて変えないということですね。

(知事)
 変えないでやっていきたいと思います。

(大野:高知新聞記者)
 4月末をめどに県が公表する浸水予測については、今日の結果を踏まえて行っていくのでしょうか。

(知事)
 国がこれから10mメッシュの推計をします。ところが、国のその推計結果だけで計算してしまうと、ちょっと細かいことですが、国の使う地形のデータが、昔は水門がなかったけど今はあるとか、推計に使うデータが少し古いそうなんです。

 県が最新の地形等のデータで手直しをして、より使えるかたちにして、4月末をめどに浸水域の結果を出していきたいと思います。もし国の推計が遅れたら県の結果も遅れますが、相当の精度の結果が出せるものと思っています。

(西森:高知さんさんテレビ記者)
 県民も、最悪のケースの推計とはいえ、全国の中でも厳しい結果が出て、心配していると思うのですが、知事から県民に向けて何かメッセージなどがありますか。

(知事)
 国の発表によりますと、今回の推計はあくまで最悪の中の最悪のケースを想定したものであって、次の南海地震が必ずそうなるというものでは決してないのだと言っています。

 ですから、そこのところは、ぜひ冷静に受け止めていただきたいと思うわけです。他方で、こういう厳しい結果が出たということを踏まえて、県としても従前よりずっと「こういうこともあるだろう」という予測のもとに対策を重ねてまいりました。これからも、この対策を大いに加速していって、少なくとも人々の命を守れるように、そういう取り組みを確立していきたいと考えているところです。

 市町村とも連携して、ぜひ取り組みを進めていきたいと考えておりますし、そして、私自身も、中央防災会議のワーキンググループの中に入って、この超巨大地震に対応できる施策にするように、また、国全体を動かしていくよう、努力を重ねてまいりたいと考えております。敢然と、こういう状況に立ち向かっていきたいと思います。

(大山:高知新聞記者)
 今回、発生頻度が低いケースの推計結果が出ています。先ほどから知事は「高いものがどうなるのか」も国に聞いていくとのことですが、これまでも避難対策として南海地震に備えるかたちで取り組んでこられたと思いますが、発生頻度が高いものの危険の伝え方をどのように考えられていますか。

(知事)
 例えば、「こういう地震のときでしたら、過去の痕跡が残っているのはここまででした。」「なお、最悪の状況を組み合わせるとここまでです。」といった感じでお見せしていくといったことができるかもしれません。
 ちょっと心配なのは、25mとか30mとかの予測がある所で、「大津波警報で3m」と出たときに、「3mくらいの津浪なら、大したことないや」とか思われるのが非常に心配なんです。

 それは、そうじゃなくて、3mでも、みんな本当に逃げないといけない。すぐ逃げないといけないと思うんです。「それほどの巨大地震じゃないとしても、こういう事象が起こったとしても、こんなことにはなりうるんだから、逃げてください。」といったことを、しっかりお示ししていくことは非常に重要なのかなと思っています。

(大山:高知新聞記者)
 例えば20m、30mの津波が来たら、市町村によっては、避難することが厳しい地域も出てくると思いますが、住民の方にどのような避難対策を示していこうとしているのですか。これから考えていくこともあると思いますが。

(知事)
 近くに高台があって逃げられる所では、できるだけ避難路・避難場所の数を増やしていって逃げられるようにするという対応もあると思っているのですが、所によっては、高台移転を進めていかないといけない所もあるでしょう。

 さらに、もっと言うと、高台移転をしてしまったときの最大の問題点は何であるかというと、日々の生活が守れるかという問題です。海沿いに家があるからこそ暮らしていけることがあったりもすると思います。ご存知のとおり、東日本大事震災で被害を受けてもなかなか高台移転は進んでいません。やっぱり、日々の生活の問題があるのでなかなか進まないところがあるのだと思います。

 そういうことから考えても、例えば、現地でできるだけ高層化をしていくとかいう対応策も考えられるのではないかとか、いくつかのパターンについて、いま、土木部、危機管理部などの関連部局で合わせて、技術的な検討を進めているところでして、中央防災会議(のワーキンググループ)での提言などにも、是非生かしていきたいと考えているところです。

 その場所で生活をする場合でも、住んでる場所は高くなるとか、もしくは、ビルの上に逃げていくことで、いざというときには津波避難タワーにもなっているとか、そういうふうな対応策も考えておくことが必要なのかとか思っています。いろんなパターンが考えられると思いますから、そういったことを、われわれから、どんどん提案していきたいと考えています。

 答えが途中になっていましたが、想定する地震のタイプには発生頻度が低いものから高いものまであって、たぶん高いものから低いものにかけて、対応策がいろいろ違ってくると思うんです。

 発生頻度の高いものについては、できるだけハードで防ぐということを考えていくことが非常に重要になってくると思うんですが、発生頻度が低く、より甚大な被害が出るものになればなるほど、避難という発想に重点を置いてくることになると思っていまして、対策のレベルを分けていくためにも、発生頻度の高・中・低という感じで、それぞれの地震のタイプ分けというのをしっかり示していくことが大事なんだと思っています。

(大山:高知新聞記者)
 これから、県として想定を出されますが、そのような地震のタイプを分けるようなこともされるのでしょうか。

(知事)
 あり得ると思っています。特に、過去の痕跡が分かっていますから。どの地震のときも。
 例えば100年から150年に一回、昔から起こってきたわけじゃないですか。100年に1回おこる地震がどういう結果になるのかは過去の記録でだいたいわかっていますから。100年ならこれくらいというのが、この段階ではものすごく詳細に示せるのじゃないかなと思っているんですけど。

 これを調べれば、例えば2000年前であるとか、もっとタイプが分かってきたりもします。
 100年前なら文献が残っている。それでわかる。それから、地質調査をすれば、1000年前・2000年前の地震のことも把握できるということになってくるわけです。

(前田:朝日新聞記者)
 平成25年まで市町村への重点補助を行うとのことですが、今回の結果等をみると、結構、時間が長期化することも予想されますが、県としては、今の段階では、支援制度の変更などは検討されていませんか。

(知事)
 今の段階で支援制度を変更するかどうかを言う必要は全くなくて、今の制度を使ってもらって、今年度中にどんどんやってもらえたらなと考えているんです。
 ただ、目的は、あくまでも県民の命を守るということありますから、その目的を達するために必要なことは柔軟に対応していきたいと思います。

(古川:NHK記者)
 今回、揺れも相当な数値が出ているんですが、以前は4つの市町が震度7だったものが、30の市町村が震度7になったんですが、これに対する対策は考えるのでしょうか。

(知事)
 耐震化ですね。
 とにかく、耐震化をどんどんどんどん進めていくということで、60万円から90万円へ耐震化の補助率を拡充した予算を23年度に作ったんですけど、前の年の1.5倍くらいで、ものすごく件数が伸びているんです。また、ブロック塀の対策も24年度から単独で耐震化補助をやっていこうとかしているんですが、そういったことをどんどんやって、続けていくことかなと思っています。

 あと、もう一つ。さっき言った技術支援でも重要なことと思っているんですけど、家具の転倒とかが非常に怖かったりする。
 だから、家具の固定というのを、まず、しっかりやってもらいたいということを、いろんなところで申し上げているんですが、そういうふうな技術支援もどんどんどんどん行っていくということもあると思います。

 あと、住宅の耐震化というのは、震度7を基準にやっています。
 だから、震度想定が6弱だったのが7になったからといって、急に耐震化の取り組みが変わるものありません。耐震化をやるときは、もともと7を想定した対策です。
 それを引き続き、どんどん進めていくということです。

(大山:高知新聞記者)
 今回、想定震度7の範囲が広がりましたが、土砂崩れであったり、孤立化であったりの心配が今度出てくると思いますが、自主防災組織の結成率の目標を沿岸部は24年度までに100%を掲げていますけれど、今後、内陸といいますか中山間地域で目標を掲げるとかいうことはあるのでしょうか。

(知事)
 それは、あるかもしれません。おっしゃる通りだと思います。
 いま、災害時の土砂崩れとか起こったりするんじゃないかといった危険個所の洗い直しというのをずっとやってきているところなんですけど、そういう所なんかで、一定、そのような対応策をさらに強化するということは考えていかないといけないかもしれません。

(大野:高知新聞記者)
 市町村行政との連携について、あらためてお聞きします。

(知事)
 具体的なことについてお話します。
 昨日からずっと危機管理部の方で情報収集の対応を図り、さらに今日は、私も昼から出てきて、対応策をどうするかについて、緊急の会議をしていました。
 また、月曜日の庁議のあとに、南海地震対策推進本部会議をやって、庁全体で改めて対応策を確認したいと考えています。

 市町村との説明会、打ち合わせ会もできるだけ早急に開催したいと考えておりまして、この情報の共有と共に、県の今後の対策、さらに国に対してどう対応していくかについて、お互い、情報の共有もさせていただいて、意見交換をさせていただきたいと思います。また、市町村からも、いろいろご提言をいただくと思いますので、これを踏まえて、われわれの対策に生かしていきたいと考えているところです。

 国・県・市町村が一体となって対応しないといけないと思いますので、われわれとしましても、市町村との連携をしっかりしたいと思います。

(大山:高知新聞記者)
 今回、被害の範囲が全国的に広がりました。津波の場合は、11パターンで被害が大きいものを並べて今回出されていますが、今後、人的被害などの想定も国にも示して対策もとっていくときに、人的被害でみた場合は、高知は人口が少ないこともあり、後回しにならないかといった危惧もなくはないのですが、その辺は、要望していく活動を続けていくことで心配はないのでしょうか。

(知事)
 9県知事会議を、本県の提唱でつくって、こういうかたちで国に対しても先頭をきって訴えていっているところでありまして、やっぱり、一番厳しい状況にあるから、本県が強く声を挙げているということかと思います。

 引き続き、中央防災会議のワーキンググループにも、高知県から入っていくということです。
 そういうかたちでもって、本県が国の検討から抜けないようにしないといけませんね。
 ちなみに、人口は少ないけれど、想定者数は多いでしょう。やはり、厳しい状況にあるんですよね。

(古川:NHK記者)
 今回、想定の2倍の津波高となって、市町村では、津波タワーの設置や黒潮町では役場移転等、それぞれ対応をとってきたのですが、今回、それを上回る高さになっているということは、県としても交付金制度などを設けてやってきたんですけど、やはり、急ピッチで加速させることが必要となるんですか。
 新しい数値が出たことで、知事の危機感がどう変わったかを、厳しさをどう受け止めているかを伺います。
 説明からは、今までに想定されていた範囲と受け取られている印象も受けたのですが、いかがですか。

(知事)
 市町村によって、特に、従前講じようとしてきた対策に、非常に厳しくなっているところがあります。
 例えば、黒潮町についても、役場の移転の問題などにどう対応していくのかについて、おそらく、いろんな議論が行われていくでしょう。今日も、緊急の対策会議を開いておられると承知をしております。
 また、土佐清水市でも、津波高の想定が30mを超えていますから、いろんな対応策がとられていくことになるんだろうと思います。

 市町村において、大いに危機感を持って対応していかれるでしょう。われわれも、大いに危機感を持って対応していかなければならないと思っているところです。
 従前より相当危機感を持って対応してきていますから、その対応策というのをさらに強化していくということを行っていくとともに、やっぱり、国を動かさないといけないというところが、すごくあると思っています。
 ですから、特別立法の制定から始まって、国全体を動かせるように取り組みを大いに強化していきたいと思っております。

(大山:高知新聞記者)
 今回の数字なんですが、想定していた範囲内の数字なのか、想像を上回る数字なのか、いかがですか。

(知事)
 だいたい、これが2倍くらいになるんじゃないかとは言われていましたので、全体として。そういう意味では、だいたいそのくらいの数値になっているとは思いますが、しかし、30mを超えるというのは非常に大きいですね。それは、相当厳しい数字だとは思います。
 しかし、何度も言いますが、これは、あくまでこういうものとして作られた数字でありまして、そこのところは、ちょっと留意して、行動するにしても、そこのところはお気を付けをいただきたいなというふうに思っています。

(西森:高知さんさんテレビ記者)
 確認ですが、先ほど、発生頻度などによって、これから広報などやっていくということだったんですが、津波避難タワーの高さとか避難路の状況ですとか、そういったものは最大のものを想定したうえでやっていかれるということですか。

(知事)
 どういうふうにかといいますと、継ぎ足しができるようなかたちに作ってきたんです。
 想定の津波の高さがもっと高くなったとすると、いまのタワーが2段だとすると、その隣に3段・4段と建てられるようにしてきたんです。

 今後は、やっぱり、これを目安にしていきながら、避難場所の選定などをしていくことが重要なんだというふうに思うんですが、「10mメッシュになると数値ががらっと変わる可能性がある」と、「南海トラフの巨大地震モデル検討会」自身も言っていますし、4月末とか今年秋の結果も踏まえて、最終的に想定する津波の高さを判断していったほうがいい場所もたくさんあるんじゃないかと思っています。
 津波避難計画をすでに作っていただいたところを、市町村と連携して、さらに洗い直しをしていくことになると思いますので、そのような過程なんかで、さらに検討を加えていきたいと思います。

 ハード施設というものは、発生頻度の高いものに基本的には合わせて対応していくという方針になると思います。しかし、避難路・避難場所というは、やっぱり、発生頻度の低いものを想定して作っていくというのが重要だと思うんです。

(西森:高知さんさんテレビ記者)
 最大の想定で、ということですね。

(知事)
 そうです。ただ、最大の想定が、先ほどの話のとおり、変わるかも知れないので、そこは今後の想定の動向を見ておかないといけません。
 まずは、今ある一番高い山に逃げていただく。そして、上へ上へにげていただく。
 ただ、遠くに行こうとすると時間がかかります。高齢者の方だと、非常に大変だったりすると思うので、場所によっては高台移転、もっと言うと、より生活と併存しうるところの現地高層化とか、そういったことも考えていく必要がでてくるのかなと思っています。

 ただ、これを成し遂げていくためには、非常に重要なこととして、国がそういったものを後押ししていくような制度を作らないと、莫大な財政措置が必要となりますから、そういうものが必要となってくると思います。
 そういうふうになるように、国を動かしたい。そのように考えているところです。

 

(司会)
 それでは、以上で記者会見を終わります。

 

 

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