公開日 2012年09月06日
更新日 2014年03月31日
知事の定例記者会見
平成24年8月29日(水曜日) 16時20分から17時06分 第一応接室
南海トラフ巨大地震の新想定
領土問題と国際交流(1)
国の政局(1)
国の当初予算と補正予算
領土問題と国際交流(2)
国の政局(2)
配布資料
1 【内閣府の公表の概要】南海トラフ巨大地震による津波高・浸水域等及び被害想定の公表を受けた高知県の対応 [PDFファイル/648KB]
2 津波浸水予測図(H24.8.29内閣府公表分とH24.5.10高知県公表分の浸水予測図比較) [PDFファイル/12.94MB]
3 飛躍への挑戦! 産業振興計画[PDFファイル/1.63MB]
(知事)
皆さんご存知のように、本日、南海トラフ巨大地震についての新しい想定が発表されました。基本的に3月31日に発表されました想定を10メートルメッシュで、より精緻にしたということかと思います。その結果についてですが、こちら(資料1【内閣府の公表の概要】南海トラフ巨大地震による津波高・浸水域等及び被害想定の公表を受けた高知県の対応)にありますように、まず、津波高について見てみますと、黒潮町と土佐清水市で最高波34メートルということです。10メートルメッシュによって地形を詳細に反映したことで津波高が変化していまして、6市町村で津波高が2メートル以上高くなり、1市で2メートル以上低くなった状況です。
今回あわせて、津波の到達時間についても発表されています。こちらにあるように、一番最初に1メートルの津波が約3分で到達する地域があります。そのほか、津波高が3メートル、5メートル、10メートル、20メートルという形でそれぞれの到達時間についても発表されています。県内においても、南海トラフ軸に近い岬部ほど到達時間が早いという傾向が出ています。
津波の浸水域と浸水深ですが、津波の浸水面積については、高知県は全国で最大になります。このグラフでは、青が津波の深さ1センチメートル以上ですが、この面積が全国最大となっています。さらにもっと言いますと、浸水深10メートル以上の面積では、全国の中でも突出して本県が広い状況になっています。地震動や津波の浸水予測が、極めて深刻な状況であることは、3.31発表分と比べても変わりはありません。
さらに今回は、人的・物的被害想定も発表されています。被害想定については、いろいろな前提条件を置いて発表されています。地震動については、基本ケースや陸側ケース、さらに津波についても東海で一番近くで割れ始める場合、四国で一番近くで割れ始める場合、九州で割れ始める場合といったようにいくつかのケースに分けて被害想定の発表がされているところです。
被害想定の結果を簡単にまとめたものがこちらですが、四国地方が大きく被災するケースから東海地方が大きく被災するケースなど、それぞれについて想定シーンや地震動のパターンが変わりますので、実際には何パターンか発表されています。そのうちで四国地方が大きく被災するケースの中で、それぞれ一番最悪の条件の想定結果をここに抜き出しております。それぞれのケースにおいて、最悪の結果となる数値をこちらに発表させていただいています。
ご覧いただきますと、四国地方が大きく被災するケースでは、全国で約226,000人、高知県では約49,000人の方が亡くなるであろうという想定がされています。
平成18年3月に発表されました高知県の被害想定では、死者数が約9,600人という予測をしていたところですが、今回の想定死者数は49,000人ということでして、死者数の想定が約5倍に拡大をしています。非常に暗澹たる結果であるわけですが、またあわせて防災対策によってどれだけ被害が軽減するかという試算も、国全体ベースで発表されています。
一部推計値が入っていますが、こちらにその結果が示されており、この結果を基に、高知県ベース(地震動が基本ケースの場合)でそのデータを発表させていただくと、42,000人が亡くなる可能性があります。ちょっと細かい話ですけど、先ほど説明した国の最悪の推計では49,000人になっています。これは国が地震動陸側ケースで推計しているものです。しかしながら、県別の軽減のケースは、地震動基本ケース(沖の方に強い揺れを発生させる領域があるケース)でしか軽減パターンを試算していないこともあって、こちらで発表させていただいてます。この地震動基本ケースの場合、最悪42,000人亡くなるという想定になりますが、避難の開始が迅速化することによって、想定される死者数が一挙に13,800人まで減少していきます。さらに「津波避難ビル有効活用」と書いてありますが、垂直避難を現在指定されている津波避難ビルで行った場合、12,200人まで減るであろうと。さらに住宅耐震化率100%も達成できれば、6,600人の死者まで減るであろうと推計されています。42,000人から6,600人まで大幅に軽減されるわけです。特に避難を迅速化することによる軽減率が最大であり、いかに避難を迅速化することが大事かを物語っています。
しかしながら、さまざまな試算によって一番よい条件になったとしても、6,600人の方が亡くなるという推計であり、これは非常に大きな数値です。県では、避難場所の確保など、さらなる対策を講じていくこととしており、特に垂直避難の確保を徹底することで、この6,600人の想定死者数を限りなくゼロに近づけるべく努力をしていかなければならないと考えています。
時系列的に今までの対策と今後の対策について整理しましたので、ご説明させていただきたいと思います。
去年の3月11日に東日本大震災が発生しまして、その東日本大震災を踏まえて、今すぐできる対策を直ちに実行するということで、いろんな取り組みを進めてきました。例えば、津波避難施設の整備であれば、新しい想定が出なくても作ったほうがいいに決まっている場所はいくつもあります。平成23年度末までに279箇所の整備を終えたところです。さらに啓発を行っていくということで、「南海地震に備えちょき」を改訂して全戸配布するとか、市町村レベルで津波避難計画の策定を行っていくとか、緊急用ヘリの離着陸場を作っていくとか、災害時医療救護計画の見直しとか、住宅耐震化について補助率を上げて加速化していくなど取り組みを進めてきました。
3月31日にも記者会見を行いましたが、この時、内閣府において最大クラスの地震動と津波高の公表があり、黒潮町34.4メートルという発表がなされたところでした。このような最大クラスの津波からも県民の命は確実に守ることを目標として、毎月、南海地震対策推進本部会議も開催していく中で、さまざまな取り組みを進めてきました。
津波避難の選択肢を増やしていくため、特に垂直避難を可能としていく津波避難シェルターの技術を検討するとか、津波避難タワーの設計方法の標準化を図るとか、さらには、国を巻き込んでの話ですが、高台への集団移転の制度変更に向けた取り組みを進めてきました。
また、「こうち防災備えちょき隊」を組織して、地域の取り組みを人的にサポートしていくため、これまで、40回ほど地域に派遣をさせていただいて、いろんな方と一緒に津波避難計画づくりに取り組んでいるところです。
そして、5月10日には、より具体的な津波対策を加速化していくために、国が発表しました50メートルメッシュの津波浸水予測をベースにしまして、高知県版の津波浸水予測を発表しました。これをもとに今、避難場所の再選定を行っているところで、従来の702箇所の避難場所から、8月末時点で963箇所にまで避難場所の指定が拡大しています。
平成24年度の新規の整備予定として、津波避難タワー33基、避難路・避難場所326箇所を作ることを現在予定しています。ちなみに平成24年1月時点では、例えば避難路・避難場所を152箇所作る予定でしたので比較すると約2倍のペースで、今、避難路・避難場所づくりを進めているところです。
そして、本日、津波高・浸水域等及び被害想定が内閣府から公表されたわけです。これを受けて、今後、津波の避難場所の高さなどの再点検を一斉に行っていくこととなりますが、さらに、より精緻な対策を進めていくことができるようにするためにも、国の10メートルメッシュの推計をベースにした新しい高知県版の第2弾の津波浸水予測を何とか年内には発表したいと考えています。
本県における津波被害を詳細に把握していくために、河川の遡上とか県管理河川の地形データ等をできるだけ精緻に反映していくことによってシミュレーションを実施していきたいと思います。まずは国が3月31日に発表したものをベースとして50メートルメッシュで第一弾の津波浸水予測を出しました。今後、今回の10メートルメッシュの国の試算をベースとして、本県の津波避難対策の根幹となる最終的な津波浸水予測図を年内には発表し、対策に生かしていきたいと考えているところです。
これをベースとして、さらに津波避難場所の高さなどを再点検していきます。あわせて、さまざまな対策の見直しの総仕上げにかかり、年度内には見直しそのものを終えられるように、今後ペースアップをしていきたいと考えています。
東日本大震災が発災して以降、南海地震対策の抜本強化を図っていくため、取り組みを進めてきました。その対策の見直しの総仕上げを何とか年度内に行っていきたいと考えています。
避難空間づくりに全力を挙げる取り組みを引き続き24年度末に向けて進めていきます。今の予想ですと、避難場所の計画数963箇所のうち、24年度末に529箇所、約55%が完成するのではないかと思います。
さらにはシェルター、高台等の避難先の選択肢の提示を行っていき、避難計画づくりの具体化を後押ししていきたいと思います。減災のためのハード整備を継続的に推進していくとともに、今、特に力を入れている発災時の取り組みに加え、応急時、さらには復旧・復興時における計画の見直しにも今後、より本格化していかなければならないと考えています。既にこの応急時に役立つであろう総合防災拠点の基本構想をいろんな形でワーキンググループを作って検討を進めているところですが、この基本構想の策定について、できれば年内ぐらいには終えていけないか検討を進めていきたいと思っています。
さらには、現行の応急対策活動計画の見直しを各部局で全力で進めていところであり、この見直し作業をなんとか年度内には終えたいと考えています。
さらに加えて、応急時からその後の復旧・復興のステージのための事前準備も進めていかなければなりません。復旧・復興時に行わなければならないことは、非常に膨大なものがあろうかと予想されています。そのため、全て年度内に完成できるかどうか分かりませんが、いわゆる諸計画の見直しの概成〔ほぼ出来上がること〕を何とか達成していきたいと考えています。あわせて、「こうち防災備えちょき隊」の皆さまとも連携しながら、防災意識のさらなる向上のための取り組みを進めていきます。
そして、国への働きかけでは、南海トラフ巨大地震対策特別措置法の制定をはじめ、地震対策大綱や応急活動要領の策定、予知観測網の充実といったことについて、国に対する働きかけを引き続き行っていきたいと考えています。
南海地震対策のトータルプランとして、年度内になんとか新しい行動計画の策定を行いたいと思っています。新行動計画の策定後は、PDCAサイクルに基づき、毎年度見直しもかけていきながら、全速力で実行していきたいと考えています。人的被害を限りなくゼロに近づけていき、さらには防災・減災対策を講じて、被害を最小化し早期復興を可能とする取り組みを今後も全力でもって行っていきたいと考えているところです。
3月31日に新しい想定が発表されてから、市町村の皆さまと一緒になってさまざまな対策を進めてきました。5月10日には県独自の津波浸水予測も発表して対策を進めてきました。今回、新しい想定が発表されたことを踏まえて、さらに今までやってきたことについて再点検も行いながら、今後さらなる対策を全力でもって進めていきたいと考えています。
ただ、今回の被害想定で影響の及ぶ地域に住んでいる日本人の人口は、内閣府によれば全体の約46%に相当するそうです。さらには製造業出荷額の6割超がこの地域で生産されており、農業出荷額の35%近くがこの地域で算出されているそうです。また、一般病床の約50%がこの地域にあるそうです。このような巨大な災害は、歴史的、国家的な危機とも言えるような大災害だろうと思います。
このように、我々地方自治体としましても、全力でもってさまざまな対策を進めていきますが、あわせてこの問題に対して、国全体として国策の中心に据えて南海トラフ超巨大地震対策に全力であたっていただくことが非常に重要であろうかと考えているところです。
中央防災会議のワーキンググループとか、全国知事会とか、そういうさまざまな場所を通じて、この点を訴えてきましたが、今後もこの点について強く訴え、全国民のご理解を得て、南海トラフ超巨大地震対策を国家的に進めていけるように、我々としても取り組んでいきたいと考えています。
南海トラフ巨大地震の新想定
(竹内:テレビ高知記者)
(犠牲者を)ゼロにするための取り組みということで知事はおっしゃっておりましたけども、ゼロにしていくために、これから具体的に何をしていくのか。また、県民に何を呼びかけていきたいのかという点を教えてください。
(知事)
まず第一に、県民の皆さまにお伝えさせていただきたいのは、先ほどの被害軽減比率のシミュレーションの推計にも出ていましたが、とにかく避難を早期に開始することでもって、大幅に被害を軽減できるわけです。とにかく大きな地震が起こったら逃げるという点を徹底していただきたいと思います。また、そうなるように、いろんなところで啓発活動などを徹底していきたいと思っています。
そして、逃げた後に安全な避難空間が確保されていないと、いくら逃げても無益ではないかというご指摘も受けるだろうと思います。今、申し上げましたように、避難路・避難場所づくりに、今、全力を挙げています。10箇所、20箇所作っているのではなく、326箇所を作るとか、今年度末までに避難場所の計画を529箇所作るぐらいのペースで、今、いろんな準備を進めているところです。とにかくできるだけ安全に逃げられる場所を身近なところに作っていく対策をとにかくまずは全力でやっていかなければならないと思っているところです。
さらに言えば、垂直避難を可能とするような新しい技術開発を、今、いろんな専門家の方にも入っていただいて、やらせていただいているんですが、この取り組みをもう一段、二段加速したいと思います。
(清水:高知放送記者)
この想定を受けて、知事の最初の率直な感想というのは、どんなものだったんでしょうか。
(知事)
正直、津波高とか浸水域については、3月31日の想定もありましたし、それから我々独自の予想もしていましたから、一定は予想の範囲内であったと思っています。ただ、二つの点については、率直に言って非常に厳しいという印象を受けました。
第一点は、この人的被害の数字です。こちらにあるように、全国規模で226,000人の被災となっています。東海地方が大きく被災するケースだと323,000人が亡くなるという結果です。高知県でも最大49,000人という数字が出ているところでして、この結果は、かなり厳しい数字だと思いました。
第二点は、今、ここでお示しできるようになっていませんが、6時間分の経過による推移の動画が発表されています。それによると、高知県沿岸部は、6時間経ってもまだそれなりの高い津波がずっと続くわけです。何回も津波が襲来をしてくるということです。非常に長時間にわたって津波が来て、何度も押し寄せてくるという状況になることが、今回、想定されたということでした。こういう長時間にわたっての津波により、避難場所に逃げ込んだ後、しばらく長時間滞在していなければならないということを想定した対策の強化が必要かと考えさせられました。
とにかく死者数の大きさと、継続時間の長さの点は非常に厳しいと受け止めました。
(森山:NHK高知記者)
津波の高さについても前回の想定より、6つの市と町で2メートル以上も高くなると伺いましたけども、この点についてはどうでしょうか。
(知事)
津波の高さそのものについては、31メートルに対して講じなければならない対策と34メートルに対して講じなければならない対策は一緒だと思います。2、3メートル高くなったという問題というより、沿岸部に30メートル超の津波が来ることに対してどう対応するかという話だと思っていますので、基本的には対策に変化はないと思っています。
いずれにしても、30メートル超ということになってきましたら、従来型の対応では済まないところも出てくると思います。特に、身近な場所での垂直避難を可能としていくような、しかも単純に上方向だけではなくて、水平方向、下方向とかいろんなあらゆる選択肢をたくさん増やしていく取り組みを技術開発も含めてやっていく必要があるということを改めて実感したところです。
(大山:高知新聞記者)
死者数全体を見た時に、軽減策をとって42,000人から6,600人に減るというふうになってますけど、6,600人に減るといっても、前回の県の想定でも3,000人ぐらいは犠牲者が残るわけですけども、これを減らしていく対策というのをどういうふうにとられていくのですか。
(知事)
先ほど申し上げたところですが、一番この想定で条件が良くなっても6,600人相当の数の死者が出る想定になっていることは間違いありません。ただ、これは内閣府が把握している津波避難ビルを有効活用できた場合については、これだけ減るということになっています。逆に言うと、これから作っていく津波避難タワーとか、津波避難ビルとか、避難路・避難場所といったものはこの中にまだカウントされていないんです。
だから、安全に短時間で逃げられる避難空間をたくさん作っていくことで、この6,600人という数を限りなくゼロにしていくことをやっていきたいと思っています。
それともう一つ、避難開始を迅速化すれば42,000人から13,800人にまで大きく減ることになっています。避難開始を迅速化できるようにすることも、大変な政策努力が求められるところではないかと思っています。住民の皆さまへの訴えかけということも必要ですが、その避難開始の迅速化を可能とするいろいろな施設整備とかもまた必要になってくるだろうと考えているところです。
今、避難計画づくりを沿岸部の全市町村で終えて、さらには各集落別のそれぞれの避難計画づくりを行っています。それに基づいて、それぞれの施設に合った避難開始を迅速化する仕組み、さらには、実際に避難を可能とする空間づくりを進めていくことによって限りなく死者数をゼロにしていくことに取り組んでいきたいと思っています。
(大山:高知新聞記者)
6,600人をこれからの努力によって減らせることはできるのかもしれないんですが、限りなくゼロに近づけるとなると、ある程度高台移転とか、逃げるだけの方策じゃなくて新しい方策というのを当然とっていかないといけないでしょうし、高台移転に関して県はいろいろ、国へ制度提案とかされていると思うんですが、現実的に事前の高台移転というか、これまで行われてないという状況もありますし、県としての役割というのをこれからどんなふうにお考えなのか教えてください。
(知事)
ここに、津波避難の選択肢を増やすため、津波避難シェルターとか、津波避難タワーを強い設計方法でもって具現化するような措置をとるとか、高台への集団移転の制度変更といったことを書いています。
たくさんの財源が必要になってくることですから、国の力の後押しも得て、高台移転については行っていかなければならないということで、国にも制度変更とかいろいろ訴えてきたところですが、今までのいろんな話し合いの中で、個別具体の対策について、具体的な話を進めていこうという話もいただいたりしているところです。
高台への集団移転は、特に津波避難が厳しい地域で、要援護者の方々が集中しているような施設については、一定、移していくことも考えざるを得ないところだと思います。具体的にそれぞれの地域で高台への集団移転を行っていくための話し合いをしていくことは重要だと思います。ただ、国も巻き込んだ形で、より一般化できるような制度が作れないかということを検討していかないといけないと思います。
ただ、仮に社会福祉施設が高台に移転したとしても、仕事場が海辺にあることは、どっちにしろ、あり得るわけです。だから、やっぱり海辺にたくさんシェルターとか避難タワーとか避難路・避難場所をたくさん作っていくことを徹底してやっていくのは、引き続き重要なことだと思います。
例えば海辺で仕事をしている場合とか、車で通りかかったとか、そういう方々が引き続きたくさん残るわけですので、両立てでいくべきだと思います。避難路・避難場所づくりをどんどん進めていくとともに、選択肢として高台への集団移転により適応すべき地域は出てくるだろうと思います。
(大山:高知新聞記者)
高台移転の場合、どうしても、ある程度の全員合意を得るという要件がある以上、望まない人もある程度、高台の方へ移ってもらうというような、ある意味、県としての覚悟といったものも今後必要になってくるんじゃないかと思うんですが、基本的に高台移転については、市町村も一緒に協議することになりますが、これから県として6,600人をゼロに近づけていく時に、県の新しい役割として考えられたり、やっていこうと思われることはありますか。
(知事)
全員合意を必ずしも必要とせず、具体的にそれぞれの方の意思でもって進めていけるように、今、国と話をしており、国もそういうことでいきましょうという話になっていますから、必ずしも全員合意でやるかどうかということは必要ないと思います。
しかし、市町村とも話し合いをしていきながら、この施設は明らかに事前に移しておいたほうがいいと思われるものがいくつかあります。そういうところについては県からもお話をさせていただきながら、施設の人とも話し合って、移転する方向にもっていきたいと思います。
(倉沢:毎日新聞記者)
津波到達時間についてなんですけども、例えば、室戸市ですと、5メートルが4分で来るようですが、詳細なデータが出ると、さらに早くなる可能性もあるんではないかと思うんですが、その点については。
(知事)
この到達時間によって多分逃げ方が全然変わってくるだろうと思います。4分という話になってくれば、多分水平に逃げていてはだめで、もう垂直に上とか下とかに逃げていくという仕組みなどを考えていかないといけないでしょうし、そういうことも可能ではないような要援護者の方がいらっしゃるような施設があったりする場合、やっぱり高台へ移していくことを考えていかないといけないと思います。
おっしゃるとおりで、この5メートルで4分というのは非常に厳しい数字と思います。それぞれの地域ごとの到達時間予想に、あまりとらわれすぎてもいけないんですが、やはり岬部は相当早いということが明らかになってきましたので、このデータなんかも生かしていきながら、その地域で一番ベストな避難方法は何だろうかということを津波避難計画づくりの中で考え、それを一個一個実現していくよう取り組みを進めていくことになると思います。(注:到達時間は海岸線における数値)
(森山:NHK高知記者)
昨年12月に制定された津波防災地域づくりに関する法律について、県庁の権限として、警戒区域あるいは特別警戒区域の設定も含まれると思うんですけど、その辺の今後のご予定については。
(知事)
津波防災地域づくり法に基づいて指定をしていけば、一定、規制がかけられるということは有効な手段だと思います。でき得れば、移転するのに対する財政支援をもう一段手厚くしていくことを徹底してもらいたいと思っていますが、やはり、この法律に基づいて、レッドゾーン、オレンジゾーンというものの指定を進めていかなければならないと思います。
それを指定したほうがいいかもしれないと思う地域が、いくつかありますので、市町村とよくご相談をさせていただきながら、その適用について考えていきたいと思います。
もう既に市町村の皆さんと勉強会をやったり、国交省の方も招いて勉強会もやったりし始めているところですから、具体の適用についてこれから考えていきたいと思います。
(森山:NHK高知記者)
(指定に向けた具体的な)スケジュールは。
(知事)
まだわかりません。避難路・避難場所づくりと違って、規制をかけてまでという話になると、年内にもう1回私どもが発表する津波浸水予測図を待たないといけないと思います。これが出てから具体的な作業に入って、適用していくことになるのであろうと思っています。
領土問題と国際交流(1)
(井上:高知新聞記者)
今、竹島や尖閣諸島の問題で、韓国と中国、そして日本の関係が冷え込んでいるような状態にあるんですが、一方で安徽省との友好協定のさらなる進め方であったり、国際観光の振興、さらには、田内千鶴子さんの生誕100周年の記念事業も近づく中で、高知県としてこの国際問題をどう捉えているかというのを知事の口からお伺いしたいんですが。
(知事)
領土問題については、やはり毅然とした対応をしていくことが非常に重要だと思います。自分達の国のスタンスを明確にすることが非常に大事ではないかと思っているところです。
他方で、領土問題があるからといって二国間の関係全体が破綻をしないようにすることもまたあわせて非常に大事なことなのではないかと思います。それぞれの領土問題については、お互い毅然とした対応をしていきながらも、他方で全体としての関係はしっかり守っていくことができれば、それが理想だろうと思います。
そういうことを可能とするためにも、外交関係というのは、非常に複層的なんだろうと思うんです。政治の面での外交関係や経済面での交流。その経済面でも主権に関わるものもあれば、民間の経済活動の交流もあります。さらには、文化面での交流や人道的な交流もあります。また、レベルでいっても中央政府レベルのものもあれば、地方政府レベルのものもあるんだろうと思います。
このような複層的な関係を築いていくことで、毅然とした対応をとっていきながらも、他方で全体として破綻をしないシステムが、できあがっているんだろうと思います。
特に、この竹島の問題などについて言えば、まさに毅然とした対応をしつつ、他方で絶対破綻しないための複層的なシステムをうまく使っていくことが重要ではないかと思っています。
我々は地方政府であり、その地方政府レベルでの文化交流とか経済交流とかを進めてきています。全体を破綻しないようにするという観点からしても、しっかり取り組みを進めていくことも重要ではないかと思っています。
今後の推移を見守っていかなければならんと思っていますが、とりあえず予定しているスケジュールを変更することは、今の段階ではありません。
国の政局(1)
(井上:高知新聞記者)
今、衆議院の解散や総選挙も囁かれる時期にきまして、既存政党との連携などで大阪維新の会が、近々国政進出を狙う動きというのが注目されていますが、地域政党初とはいえ、地方交付税の廃止であったりTPP参加など、ちょっと高知県とはだいぶスタンスが違うかなとは思うんですが、そういった政策をどう評価して、また、それを取り巻く大きな政局の動きをどう考えていらっしゃるかというのをお伺いしたいんですが。
(知事)
維新八策について言わせていただければ、従前からも言ってきましたが、非常に賛同できる部分とちょっと賛同しかねるところが、それぞれあると思っています。
何といっても、中央集権から地方分権へ、これを徹底していくという姿勢については我々も多いに賛同するところですし、日本はこれから、そうでなければもたないだろうと、私は思っているところです。
ただ、消費税を例えば地方税化し、地方交付税をなくすといった時に、豊かな地域はより豊かになって、貧しいところはより貧しくなるということになりはしないだろうかとか、さらには、貿易自由化を進めるにしても、例えば、TPPという手法でもってやるということになれば、中山間をたくさん抱えるような地域はどうなってしまうんだろうかということをやはり懸念します。
維新八策により地方分権を進めていく姿勢には多いに賛同します。他方で、是非、地方切り捨てみたいにならないようにしていただければということをお願いしたいと思います。これから、さらにいろいろ議論を重ねていかれるでしょうから、そういう方向になることも期待させていただいています。
政局については、やはり重要法案の中で、我々の立場から言わせていただければ、早く通してもらいたいと思う法案はいくつかあります。一つは特例公債法案です。地方財政上の執行は大丈夫だろうかとか、そんなことも心配になってきたりしますので、早く通してもらいたいと思います。また、南海トラフ巨大地震対策特別措置法案も今、国会に提出されていますので、早く審議をしてもらいたいと思っているところです。
そのような、特に特例公債法案をはじめとした喫緊の課題となる法案を通すことは、非常に重要だと思います。一方で、一旦、総理が近いうちに解散するというような言葉を口にされると、ご存知のように、政界的に言えば、解散風がどんどん吹いてくるということも出てくるのではないかと思います。何をやっても浮き足立つというようなことになりかねない状況であり、そうなるのか、ならないのかで解散を封じられるかどうかといった微妙なところにきているんだろうと思います。
菅政権が一旦、退陣を口にした後の時にも一度申し上げたんですけど、時々の政府というのは、やっぱり物事をピシッと決められる体制、そして決めたことに対して人がずっと信頼感をもってくれるような状態であることが非常に重要ではないのかと思っているところです。
一旦、退陣を口にした政権が、その後何をやっても信頼されないということと一緒で、やっぱり解散についていつまでもやるのかやらないのか煮え切らない状況というのは、重要課題をたくさん抱えている国政の状況として、決して好ましいことではないと思っています。来年までしないならしない、すぐするならすると言って、早くはっきりされたらいいと思っています。そうやっていろんなものを決めていってもらいたいと思っています。
国の当初予算と補正予算
(井上:高知新聞記者)
先ほど、知事がおっしゃられた解散風で浮き足立っている政権とも話はつながるかもしれないんですが、来年度の国の予算というところで、予算要求も9月7日という締め切りを前にとりまとめが本格化されています。また、2012年度補正予算というのも、この秋に経済対策を盛り込んだうえで打ち出される方針も示されていますが、それぞれどのようなところに注目しているのでしょうか。
(知事)
両方に関わる話だと思うんですが、防災・減災対策についてどれだけ予算がしっかり講じられることとなるかということをある意味注目しているというか、やや心配をしています。
ご存知のように、全国防災対策費が1兆円計上されて、さらに緊急防災・減災事業債が8,000億円枠として設けられましたけど、全国防災の1兆円の枠も、もうほとんどなくなろうとしています。さらには、緊急防災・減災事業債の8,000億円の枠も、もう7,000億円ぐらい積みあがってきている状況だそうです。
しかし、今日、こういう形で新しい想定が発表されたように、これからいろんなことをやらないといけません。今、ここでガス欠をおこしている状況ではないんです。新たにしっかりとした全国的な防災・減災対策のための予算が講じられることとなるかどうか、概算要求にしても補正予算対策にしても、この点について一番注目をしているところです。
来年度予算についての概算要求基準の中で、防災・減災対策について、特別会計でも要求できますし、さらに一般会計でも枠の中ということでありますが、重点化していくという表現もありますので、これが現実化していくことを非常に期待しています。
もう一つの分野として期待している点で言えば、新エネルギーの分野だと思っています。原発の依存度はどこまでで決着がつくかわからないにせよ、一定、減らしていく方向が見えてきている中で、新エネルギー関係の研究開発も含め、それを具体化していくための予算措置をしっかり講じていくことが、今、日本全体で極めて重要ではないかと思いますし、それは我が高知県にとりましても、追い風になるであろうと思っているところです。
特に、当初予算ということになれば、いろんなことに着目しないといけませんが、あえて、二つぐらいあげろと言われれば、防災・減災対策と新エネルギーの二つの分野について注目しています。
領土問題と国際交流(2)
(池:高知新聞記者)
先ほどの竹島、尖閣のからみですが、知事はスケジュールを変更する予定はないとおっしゃいましたが、そのスケジュールというのは、田内千鶴子さんの件ですか。どういうご趣旨で。
(知事)
田内千鶴子さんの件も含めて、予定されているスケジュールを今の段階では変更するつもりはないということです。
(池:高知新聞記者)
例えば、去年、知事がおっしゃった国際観光元年ということで、海外からの観光客の誘致の戦略の中で、確か台湾、韓国、中国の順だったと思いますが、まさしく今回もめている対象の国ではあるんですが、こういった観光戦略の見直しということにも影響はないでしょうか。
(知事)
実際、結果として影響は出るかもしれませんが、我々として今とっている対策を今の段階で大きく変えるということは考えていません。
例えば、今、非常に台湾に力を入れてやっていますので、引き続き、状況を見ながら適宜やっていくということになろうかと思います。
(池:高知新聞記者)
例えば、予算の執行を一定見合わせるとか、そういった何らかのストップをかけるということは考えてないでしょうか。
(知事)
今の段階ではありません。
国の政局(2)
(半田:高知新聞記者)
今日、参議院が首相への問責決議を可決するような運びになってきているんですが、自民党的には消費税反対の文言も入って、自民党としてはちょっと矛盾するような内容もありながら、その問責決議の可決という運びになってきそうな感じなんですが、それに関する率直な感想と、このあと国会が空転して、さっきおっしゃった特例公債法案が、棚上げになり、9月から地方交付税の交付を絞らないといけないんじゃないかというような話まで、民主党から出てきているというような状況を、地方政治をあずかる知事として、どういうふうな感覚をもって見ていらっしゃるかということをお伺いしたいんですが。
(知事)
こういうことも起こり得るということで、我々いろんなバッファー〔衝撃を吸収して和らげる〕をもって対応してきていますから、今すぐ大混乱ということはありませんが、やはり、決められる政治であり、一定、先々まで安定して行政執行していけるような環境を作ってくれる政治であってもらいたいと思います。
これから国会が空転していくことが確実だから、重要法案はどうなるかわからないということではなくて、これで一旦国会は閉会するかもしれないが、臨時国会で改めて審議して、その先はこうするといったスケジュールをできるだけ早く明確に示してもらいたいと思います。
政争の中で、なかなかそんな簡単にいかないというのは、よくわかりますが、例えば、今、東京に行っていろいろ話をしていても、本当にそのとおりになるのかと。先々のことについて話をしていても、そのとおりになるのかどうか。これは私だけではなくて、多くの人が思っていることだと思うんですが、正直、見通せないわけです。なのに、やらなきゃならないことはたくさんあって、我々はどちらかというと段取りつけて仕事をしていきたいんですが、そういう中において非常に不安感を感じたりすることが多々あります。
やるならやる、やらないならやらないということを早く見せてもらいたいと思います。
(半田:高知新聞記者)
交付税に関しては、さほど心配をしていないですか。
(知事)
そういうこともあるかもしれないということで、いろいろ備えをしています。
(司会)
それでは以上で記者会見を終了します。
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