公開日 2013年04月12日
更新日 2014年03月19日
平成25年4月高知県議会臨時会での知事提案説明 (4月12日)
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成25年4月県議会臨時会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案などについてご説明を申し上げます。
まず、第1号議案と第2号議案につきましては、国の補正予算の成立時期の遅れにより、高知県安心こども基金及び高知県緊急雇用創出臨時特例基金の設置期間の延長の前提となる国の要綱改正が遅延したため、3月定例会での提案が間に合わなかったものであります。
この二つの基金は、子育て支援や地域における雇用の創出といった、本県にとって非常に重要なものでありますことから、事業の円滑な実施を図るため、速やかに条例を改正しようとするものであります。
第3号議案につきましては、旅行業法施行規則の改正により、今月から新たに「地域限定旅行業」という旅行業務が追加されており、そのニーズの把握に努めておりましたところ、一定の需要が確認できましたことから、事業者の速やかな登録を可能とするため、その登録手数料を新たに定めようとするものであります。
次に、報第1号議案は、地方交付税の額の確定などに伴う平成24年度高知県一般会計補正予算の専決処分報告でございます。
報第2号議案は、地方税法の一部を改正する法律の公布などに伴う、高知県税条例の一部を改正する条例の専決処分報告でございます。
議案提出にあたっての私からの説明は、以上のとおりです。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。
続きまして、昨年12月の定例会において採択されました「独占禁止法に違反した建設業者37社に対する指名停止処分の短縮等を求める請願について」への対応についてご説明申し上げます。
請願への対応につきましては、先の3月定例会で申し上げましたように、建設業界におけるコンプライアンスの状況や県内の経済動向などを踏まえつつ、多面的に検討を重ねてまいりました。
県といたしましては、談合を二度と起こさせないようにするためにはどうあるべきかについて検討を行う一方で、独占禁止法違反を認定された事業者が多数に上ることから、請願の趣旨を受け止め、できるならば県経済への大きな打撃は防ぎたいと考え、この両者を並び立たせる道を模索してまいりました。
コンプライアンスが確立されないままでは、再び違反行為によって工事が止まるのではないかとの懸念から、国の事業採択において他県が優先され、本県への事業量が減少することとなったり、県内事業者と県外事業者間でのJVの組成や民間工事などの受注に支障が生じることも心配されます。仮にも、そうしたことが現実となれば、県経済に与える影響は計り知れません。
このため、これまでも申し上げてきたように、県経済・雇用のことを考えましても、まずは、コンプライアンスの確立を図ることが重要であります。
コンプライアンスを確立するためには、法令遵守の意識、違反行為のできない仕組み、厳しいペナルティの三つをトータルで機能させることが必要であります。
このような観点から、県では、自ら新たな談合防止対策の策定に取り組むとともに、高知県建設業協会や独占禁止法違反を認定された事業者の自主的な取り組みを支援してまいりました。
建設業協会、事業者の主な取り組みについて申し上げますと、まず、建設業協会においては、協会の活動について外部の視点からチェックを受けるため、公正取引委員会や警察本部のOBなど外部の方々のみからなる倫理委員会を設置しております。
また、コンプライアンスの意識を従業員の方々にまで浸透させるため、多様な形態での研修会や勉強会を開催することとしております。
さらに、今月からは、日常の事業活動の中で生じた疑問を受け付け、談合などの不正行為を未然に防止するため、常設の相談窓口が設置されております。この取り組みには、相談内容に応じた適切な対応ができるように、公正取引委員会四国支所や高知労働局、高知県警察本部などの関係機関の協力も得られることとなっており、県といたしましてもできる限りの協力をしていくこととしております。
さらに、法令違反行為が行われようとした際に、早期に対処することによって違反行為の芽が育たないようにするための公益通報制度も創設されております。この制度に基づく通報は、外部の方である倫理委員会の委員長によって処理されることとなっております。また、通報者の保護を担保するとともに、通報内容を原則として公正取引委員会や警察本部などの関係機関に報告することとしており、談合の芽に対し厳正な対応を図る制度となっております。
研修により意識の向上を図り、疑問が生じれば相談窓口に相談し、仮に違反行為が行われようとしていれば公益通報によりそれを断つという、それぞれの段階に対応した、コンプライアンスの確立に有効な一連の手段が整ったものと考えております。
次に、独占禁止法違反を認定されたすべての事業者においては、経営者から従業員までコンプライアンスを徹底するための基本方針を策定しております。基本方針では、経営者としてコンプライアンスの徹底を宣言しており、さらに、コンプライアンスの担当部署や相談窓口の設置などとともに、違反行為を行った場合には就業規則に基づき処分することも明記されております。
そのほか、これまでにすべての事業者で基本方針に基づき社内研修が実施されております。
このように、コンプライアンスの確立に向けてすべての事業者が着実に歩み始めたと受け止めているところであります。
他方、県におきましては、昨年2月に高知県談合防止対策検討委員会を設置し、談合防止対策についてご議論、ご提言をいただき、さらに議会でのご審議や関係機関との意見交換も踏まえて、次のような対策を講じてまいりました。
まずは、談合情報対応マニュアルを改訂し、外部からの情報がない場合においても県が調査を行うことができるようにいたしますとともに、談合情報はすべて公正取引委員会と警察本部に通報することといたしました。
また、県の主催により事業者に対するコンプライアンス研修会を県下4会場で開催いたしました。
さらに、入札において談合の疑義のチェックを可能とするため工事費内訳書の添付を義務付け、また、情報漏えいによる談合を困難とするために、総合評価方式における施工計画の審査を入札書の提出期限後に行うよう手順を見直すとともに、談合の兆候がとらえやすくなるよう施工計画の配点を見直すなど、入札制度全般にわたって談合が行われにくい環境を整えるための対策を講じております。
ペナルティの強化につきましては、今後県発注工事において談合が行われた場合の指名停止期間を10カ月から12カ月に、主導的立場の事業者にあっては、12カ月から18カ月へと6カ月拡大することとしております。さらに、再度の違反については、遡及期間を3年から5年に見直し、加算期間を2カ月から6カ月にするなど、より厳しい対応をとることとしております。
あわせて、今般の違反事案の原因や背景を踏まえた対策としまして、低入札価格調査の基準となる調査基準価格に関する調査などにも取り組んでまいります。
以上の談合防止対策に加えて、本県の建設業が技術に優れ、若者にとっても魅力ある産業となるよう努めていくことも重要だと考えております。建設業者には、良質な社会資本の整備や地域防災の担い手としての役割を担い続けていただかなくてはなりません。このため、今後新たに、技術力や施工力の維持・向上に向けた技術研修会などを開催することを考えております。
指名停止による県経済や雇用への影響を見極めるため、独占禁止法に違反した37者を除く建設業者及び建設業に関連する事業を営む事業所に対するアンケート調査をこの2月と4月の2回実施するとともに、37者の経営状況の分析や雇用調整の状況についての調査も実施いたしました。
まず、37者を除く建設業者及び建設業関連事業所へ4月に行ったアンケートの結果について申し上げますと、これまでに指名停止の影響を受け受注が減少したとの回答は、建設業者では12.1パーセント、建設業関連事業所では39.6パーセントで、今後影響を受け受注が減少する見通しとの回答は、建設業者では19.9パーセント、建設業関連事業所では52.7パーセントとなっており、2月の調査とほぼ同様の結果となりました。
県をはじめ、国や市町村においても大規模な補正予算が組まれていることから、一定の経営環境の好転を期待しておりましたが、依然として指名停止による影響が見受けられ、将来の経営にも不安を抱えているという状況に変わりはございませんでした。
次に、指名停止を行った37者のうち、協力が得られた34者から決算書や借入金明細などの経理関係資料の提供を受けて行った経営分析の結果についてご説明申し上げます。これは、客観性を担保するため、中立性・専門性の高い高知県中小企業診断協会に委託して行ったものであります。
その結果によりますと、県又は国の指名停止期間中に、金融機関からの借り入れなど資金の手当てができなければ、手持ち資金が枯渇する、いわゆる資金ショートを起こすおそれのある事業者が18者あり、そのうち、安全性・収益性が低く、借入金などによる資金調達に不安のある事業者が8者と判定され、経営状況が非常に厳しいことが確認されました。
また、37者の雇用調整の状況につきましては、3月末までに341人の雇用の調整が行われており、4月以降も116人が予定されているとのことであります。その中でも、解雇は3月末までに70人に上り、さらに4月に入ってからは、9日の調査時点で既に30人もの解雇が行われているということであり、急激な雇用情勢の悪化がうかがえます。
こうした状況の下、仮に資金調達に不安があると分析された事業者が倒産してしまいますと、数百人規模で従業員の雇用が失われることとなります。そうなりますと、その影響が関連企業に連鎖的に拡大し、さらに多くの方々の雇用が失われる懸念も増してまいります。
このように、一連の調査を通じて多くの事業者が将来の経営に不安を抱き、特にいくつかの事業者の経営状況が非常に厳しいことが確認されました。今回の指名停止により、特に資金調達に不安のある事業者などにおいて、廃業や倒産といった事態を招いた場合、連鎖的な倒産も想定され、県経済に大きな打撃を与えることとなりかねません。建設業は関連する分野が多く裾野の広い産業だけに、37者のみならず、今回の談合に関与していない事業者、さらには、建設業以外の事業者の従業員とご家族の生活への広範な影響が懸念されるところであります。
さらに、このような事態が長引けば、必要なインフラ整備に混乱が生じ、また、アベノミクスによる経済対策という千載一遇の好機を失うこととなります。何より、喫緊の課題である南海トラフ巨大地震対策にも遅れが出るのではないかとの懸念も生じてまいります。
こうしたことから、私といたしましては、今回のような事態が二度と起こらないようにすること、そして、県経済への大きな打撃を防ぐこと、この二つを両立させるために、議会終了後速やかに次の措置を取ることとしたいと考えております。
まず、県経済への影響に鑑みまして、指名停止期間が本年5月に終了する事業者については1カ月程度、7月に終了する事業者については原則2カ月程度、指名停止期間を短縮することといたします。
この措置により県経済への打撃を防ぐ一方、コンプライアンス確立への歩みもまた確実に進めていくために、さらに次の二つの措置を講じることといたします。
まず、短縮措置を受ける事業者が、今後10年以内に再度違反をした場合には、今回短縮する期間の2倍の期間を、その際受ける指名停止期間に上乗せする措置を取ることといたします。
そして、今回の事案において談合の主導的立場であったとされる3者については、この短縮措置の対象とはしないことといたします。
国は、談合に関与した7名の職員に対して、懲戒免職という厳正な処分を行いました。県としても、この措置との整合を図る必要があります。
また何より、主導的な立場の事業者には厳正な措置を貫くことを明確にすることにより、今後新たに談合を主導しようとする者の発生を防ぎ、新たな談合を阻止したいと考えたものであります。
今後、新たに県内での公共工事で談合を主導すれば、15カ月から18カ月もの長期の指名停止となりますが、そうであっても、今回と同様に、必ず措置を完遂することといたします。
なお、短縮される期間の違いについては、指名停止期間に応じて差を一定設けておりますし、その短縮期間の差が再度の違反の場合に上乗せされる指名停止期間に反映されることから、一定のバランスは取れているものと考えております。
このように、主導的立場の事業者に対しては短縮を行わず、今後も厳正に対処することとし、短縮をする事業者に対しても、再度の違反を行った場合には、短縮した期間の2倍をその際の指名停止期間に上乗せするという措置を取ることといたしました。これにより、県経済を守るため一定の軽減措置を図ってもなお、コンプライアンスの確立に向けた一連の取り組みと相まって、二度と今回のような事案が起こることのない態勢が整うこととなるのではないかと考えております。
建設業界の皆様方には、コンプライアンスの確立に向けた取り組みがさらに強固なものとなるよう引き続き努力していただきたいと思います。
県としましても、その取り組みを支援するとともに、談合防止対策の徹底を図ってまいります。
以上をもちまして、昨年12月の定例会において採択されました請願への対応について、私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞ今回の対応について、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。