知事の定例記者会見(平成25年5月15日)

公開日 2013年05月29日

更新日 2014年03月19日

知事の定例記者会見

平成25年5月15日(水曜日) 16時30分から17時20分 第一応接室

南海トラフ巨大地震の被害想定
地方公務員給与
土佐電気鉄道

配布資料
1 【高知県版】南海トラフ巨大地震による被害想定の概要 [PDFファイル/395KB]
2 高知県における地震・津波対策の推進について [PDFファイル/467KB]
※ 知事による被害想定の冒頭説明は、地震動が陸側ケース、津波がケース(4)、冬深夜の人的被害が最大となるケースで説明

(知事)
 南海トラフ巨大地震による建物・人的被害の想定や経済被害の想定、そして市町村別にブレークダウン〔分類〕したものを本日、公開させていただきますので、その概要をご説明します。会見する尾崎知事
(資料「【高知県版】南海トラフ巨大地震による被害想定の概要」を示しながら) まず、被害想定の目的ですけれども、今回の被害想定は県が進める南海トラフ巨大地震対策の前提とするものです。また、市町村の防災対策や県内における市町村の相互支援の検討に活用するための基礎資料としていただきたいと考えています。さらに、具体的な被害軽減効果を今回の想定の中でも示していくことにより、自助・共助の取り組みを促進していきたいと考えています。

 今まで、それぞれの地域で津波の高さがどれだけかとか、揺れがどれぐらいになるかという形での想定は発表させていただきましたが、それぞれの地域で人的被害がどれだけかとか、さらに、その中でも死者数や負傷者数、建物被害がどれだけといった物量的な規模を示すことにより、「いざという時にどのような対応を、どこの地域をまず優先して行っていくべきか」、「この地域にはどれだけの支援をどれだけの物量で行っていくべきか」、さらには「各市町村においての連携のあり方はどうあるべきか」などについて極めて具体的な形で考えることができるようになるという思いで、今回、具体的な被害想定の発表をさせていただくこととなりました。

 正直、一言で言いまして、かなり厳しい結果が示されていますけれども、しっかり対応していくことで、その被害が大幅に軽減できることも併せて示されていることから、対策を事前にしっかりと進めていく重要性が、今回の被害想定に基づいて色んなことが分かってきたと思います。
 あわせて、それぞれの地域においてどのような対応をすべきか。例えば、医療救護計画に基づいて、この地域にはどのような救急医療や救護医療を展開すべきなのかというようなことについても、今回の想定に基づいて、負傷者数が何千人といった時、この何千人に対応するための医療のあり方はどうかという、極めて具体的な形で考えられるようになると思います。

 今回の被害想定は、そういう意味で、県、さらには市町村、そして相互の連携において今後の南海トラフ巨大地震対策を進めていくための前提となる非常に重要な資料だと考えています。
 被害想定に用いた地震・津波ですが、2パターンを検討しています。一つは、発生し得る最大クラスの地震・津波を想定したものです。ただ、発生頻度は極めて低いもので、俗にL2〔現在の科学的知見により考え得る最大クラスの地震・津波〕と言われるものです。
 もう一つが、L1と呼ばれる発生頻度の高い一定程度の地震・津波です。安政の南海地震を基に、発生頻度の高いと想定される地震・津波の被害の推計も行っています。
 ただ、これらを基にそれぞれ被害想定を出していますが、単に地震・津波の規模だけではなくて、色々な諸前提があります。例えば、津波避難意識の高さも前提として設定しています。なお、各地域の津波避難の条件は、必ずしも全部詳細に反映しきれていない部分もあるという点は、留意をしていただかなければなりません。

 その上で、今回想定される被害ですが、まず人的被害の死者数は最大最悪の場合4万2千人が予想されています。このうち津波による死者数が3万6千人です。あわせて負傷者数も3万6千人が予想されています。
 建物の全壊棟数は、15万3千棟が予想されています。極めて厳しい数字ですけれども、例えば、耐震化率を100%にすることによって、建物の倒壊と火災による死者数は5700人から530人に減らせるとか、さらには、津波による人的被害についても、早期避難率を100%にすることによって3万6千人から6千4百人と、6分の1まで減らせるとか、色々な対策を講じていくことで被害を大幅に軽減できることも今回の試算で分かってきたところです。こちらは建物の倒壊棟数についても同じです。

 ちなみに今回、その他の被害についても、いわゆる経済被害額等を推計しました。国全体で220兆円と発表されていますけれども、本県単独の想定ではトータル9兆円です。ただ、これは直接的な経済被害ですから、色々間接的に波及していく部分もあり、計算しきれない部分が残ります。いずれにしても直接的に見て9兆円ということです。避難者数は43万8千人、ライフラインの被害はこのような状況です。災害廃棄物3100万トンといったことなども推計されています。

 先ほど、この物量的な規模を知ることで対策を具体的に進めることができるという話を申し上げました。例えば、負傷者数が最大で3万6千人の市や町であれば、これだけの負傷者が発生することが予測されます。その方々をケアするだけの医療の体制はどうなんだろうか。やはり、従前のやり方や発想なども改めて見直す必要があるのではないかと、具体的に考えられるようになるわけです。

 (地震発生から)1日後の避難者が43万8千人です。この人達を収容できる避難所をどう確保していくのか。生き抜いていくために必要な水や食糧をどうやって供給していくのか。この43万8千人という数字を見て、改めて我々は現実的な視点でもって物事を考えられるようになります。
 我々が元々考えていたのは、せいぜい避難者が数万人レベルの対応策ではなかったのだろうかと。そうではなくて43万8千人ということになれば、別次元で物事を考えないといけないのではないだろうかといったことを率直に受け止めながら、今後検討を重ねていきたいと考えています。

 防災対策による被害の軽減効果について、少しご説明させていただきたいと思います。先ほど、最悪の場合、死者数4万2千人ということを申し上げました。この前提はどうなっているかと言うと、津波の早期避難率が20%、住宅耐震化率が74%、そして、津波避難空間の整備率が26%と、ほぼこれが現状だと考えていただければと思います。
 ただ、津波避難空間の平成25年2月時点での計画総数は、津波避難タワーを117基、避難路・避難場所を1354箇所、それぞれ作れば100%になるということです。これに対して現時点では、まだ26%しか完成していないところです。

 これまで津波避難空間を2年間かけて全力で作ってきましたが、もし仮に、これが無ければどうであったかというと、死者数はコンピュータで計算すれば約5万3千人という推計です。避難空間を作っていくことで約1万1千人ぐらいの被害が軽減されました。それでもまだ死者数は4万2千人います。

 これに加えて、津波の早期避難率を100%に引き上げる。さらには津波避難空間の整備率を100%にまで引き上げていく。早期の避難率100%の達成を可能にするためにも津波避難空間100%も必要です。要するに早く逃げても避難空間が整備されていなければ逃げようがないということになってしまいますから、これは両者表裏一体ですが、早期避難率100%と津波避難空間100%を達成することで死者数は約1万1500人まで減らすことができると推計されています。

 現在計画している津波避難タワーや避難路・避難場所の整備を全力で急ぎ、今年度末をもって概ね完成させたいと考えています。あわせて、教育の徹底・訓練の充実を図っていくことが非常に大事だと思います。
 さらに、住宅の耐震化を100%まで引き上げていくことにより、死者数を約1800人まで減らせると予測されます。そして、これをさらに限りなくゼロにしていくためにさらなる津波避難空間の確保の密度をもっと濃くするとか、さらには、地域での避難訓練の実施を徹底していくといった取り組みが必要だと考えています。

 いずれにしても、4万2千人という非常に膨大な数ですけれども、こういうふうに取り組みを進めていくことで、着実に死者数は減らしていくことができます。とにかく急いで、この津波避難対策を進めていく必要があります。我々として、避難路・避難場所づくりを徹底的に進めていくとともに、是非とも、この避難訓練の徹底を図っていただき、早期の避難率を高めていくように地域の皆さんと共に進めていきたいと考えています。

(資料「高知県における地震・津波対策の推進について」を示しながら) 平成23年3月11日の東日本大震災以降、県と国がそれぞれどのような対策をとってきたのかといったことを時系列的にまとめたものであり、そして、今日の高知県版被害想定の公表を基に今後どういう取り組みを進めていくかを簡単にまとめたものです。

 平成23年3月11日に東日本大震災が発生して以降、今すぐできる取り組みを直ちに実行していこうとこれまで取り組みを進めてきました。平成24年度の当初予算ベースでは、南海トラフ巨大地震対策関連予算を前年度比61億円増で取り組みを加速しました。
 平成24年3月31日には、最大クラスの地震動・津波高が国から示されました。極めて厳しい結果でしたが、これに基づいて取り組みを鋭意進めてきました。その後、県としての想定を発表し、また、国が想定を追加的に発表し、そして、県としてよりきめ細かいベースで震度分布・津波浸水予測の公表を去年12月10日に行いました。

 今年3月、国が経済的な被害想定を公表したことを踏まえて、今回、高知県版の被害想定を公表させていただきました。昨年12月の震度分布・津波浸水予測と今回の県版の被害想定の2つで、概ね県としての一連の想定の発表は終了です。今後はこの2つをベースにして、先ほど来申し上げている南海トラフ巨大地震対策を進めていくことになります。
 ちなみに今回、被害想定を公表させていただいていますが、あわせて液状化の危険度とか、さらには長期浸水の予測についてもあわせて発表させていただいています。

 次に、本日から、第2期南海地震対策行動計画に基づく対策を一斉にスタートしていくことになります。正確に言いますと、第2期行動計画は策定に向けて最終段階に入っており、6月上旬に開催する南海地震対策推進本部会議で最終決定をさせていただき、取り組みを進めていくことになります。
 第2期行動計画は、第1期に比べて津波や火災への対策を抜本強化しています。そして、発災直後から応急期にかけての対策については、平成25年度から27年度までの3年間で概ね完了させるレベルまでもっていきたいと考えています。その際、対策による減災効果を明確化するように努めていきたいと考えています。被害シナリオに対応するように対策を組み立てており、現実に取り上げている項目数もそうですが、政策数も111項目の現計画に比べて180項目以上という形で大幅にパワーアップしています。

 建築物耐震化の取り組みの強化については、先ほどの被害想定にもありましたように、津波の早期避難率100%、そして避難空間の整備が100%であったとしても、残念ながら亡くなる方が相当数いらっしゃるという想定が出されました。
 住宅の耐震化率が74%に止まることに伴って、1万1500人の死者が出るということであり、これを100%にすると1800人まで減っていきます。ただ、膨大な建物の耐震化を100%までもっていくのは、なかなか大変なことだろうと思います。そのため、建築物の耐震化について、少し取り組みを強化していかないといけないのではないかということを、今回の被害想定を計算していく上で改めて痛感したところです。

 既存住宅や学校・医療施設等の耐震化の促進を図っていく取り組みに加えて、部分耐震等の簡易な安全対策の検討について、どういうやり方がいいだろうかという研究を進めていかなければならないのではと考えています。
 津波避難空間の概成については、概ね、今年度末をもって概成をさせたいと思っています。避難路・避難場所は、平成25年2月時点で必要と思われる個所は1354箇所、そのうち今年度中に1033箇所を完成させたいと思っています。津波避難タワーは、117基を予定しているうち90基の完成を予定しています。津波避難シェルターの整備にも着手をすることになります。あわせて海岸堤防等の液状化対策も着実に進めます。

 先ほど、発災直後から応急期にかけての対策は3年間で概ね完了と言いましたように、発災直後の対策は概ねこういうことになります。あわせて応急期の対策については、助かった命をつなぐための応急対策の推進としまして、現在、応急対策活動要領の策定に向けて作業中です。(この要領は)県庁内や関係機関の動き方を定めたものですが、今後策定した計画や要領に基づき、何度も図上訓練から始まって実動訓練を行っていくことで、問題点や改善点を抽出し、要領の見直しを行っていきます。あわせて物理的に必要な総合防災拠点を27年度までに県内8箇所で整備していきたいと考えています。

 最後に、津波から避難する場所として一時的な避難空間の確保に非常に力を入れています。さらにその次の応急期になると、例えば、津波避難タワーの上におられる方々が8時間、16時間とその上で耐えた後、生き抜いていくために避難所に逃げないといけません。例えば、学校の体育館であったり公民館であったり、色んなところに避難所を開設し、そこで命をつないでいくことが必要になってきます。
 去年12月(の震度分布・津波浸水予測)、そして今回の被害想定を踏まえて、避難所の再選定の促進を図っていかなければなりません。避難所で生活をせざるを得なくなる人が28万人と想定されています。この規模感に合わせた形でもう1回避難所の再選定を行っていく必要があると考えています。

 そして、今回、高知県の想定として発表させていただいたものですけれども、おそらく、徳島や愛媛、和歌山や三重、名古屋も場合によっては大阪や静岡も非常に厳しい被害を受けることになるでしょう。果たして本当の意味で外部から支援の手が届くことになるのかどうか。本当に現実的な視点でもって国にも検討してもらわなければなりません。我々も色んな最悪の事態に備えての対応を考えていく必要があるだろうと考えています。

 避難所の再選定の促進ともう一つ、自活体制の整備と書かせていただいています。(地震が起きた場合)一定期間、孤立することになるかもしれません。28万人の一人一人に、ペットボトルを配ることが果たして本当に現実的なんだろうか。そういうことが本当に物理的にできるだろうか。製造品出荷額の6割が被災すると言われている南海トラフ巨大地震の中において、本当に工場で新しく水を作ることができるだろうか。外からそれを給水したり配っていくなりするだけの輸送力を確保できるだろうか。
 そういうことを現実的に考えた時に、やはり非常に大事なことは、先ほど、避難所で28万人の方がおられる、トータルで40万を超える方が避難していると。その方々ができるだけ、いざという時、自活できる体制を整えておくように色んな準備をしておくことが大事なのではないだろうかと考えています。そのため、避難所の再選定と避難所における自活のあり方について、非常に現実的な視点からの検討をこれから進めていきたいと考えています。
 水が足りなくなるかもしれません。であれば、例えば避難所として選定した所にあえて井戸を掘っておくといったやり方があるかもしれません。食糧の備蓄の仕方はどうあるべきだろうか。そのことを現実的な視点でもって考えていかなければならないと思います。

 まだ全ての答えを持ちきっているわけではありません。これだけの規模の災害に備えるということは、恐らく、かつて人類として、今までこういうものに立ち向かい、それに対する対策を完全に考え出したことは無いのではないだろうかと思います。非常に厳しいチャレンジですが、今回の想定を基にしまして、冷静沈着に取り組みをしっかり進めていき、検討を重ねていくことが大事だと思います。
 こういった一連の対策を進めていくにあたり、やはり本当に膨大なエネルギーが必要です。国全体として、この南海トラフ巨大地震対策に取り組んでいくことが極めて重要だと思います。今もまさに行っていますけれども、政府に対して防災・減災対策の推進や、南海トラフ巨大地震対策特別措置法の制定をはじめとする国全体を挙げて取り組むための体制整備を、今後ともしっかり求めていきたいと思っています。


南海トラフ巨大地震の被害想定

(福井:テレビ高知記者)
 被害軽減イメージの住宅の耐震化について、今も知事から「100%に実際するにはなかなか大変だ」というお話がありましたが、100%にするためには行政と県民は何をこれからしなければならないとお考えでしょうか。また、あわせて死者ゼロに向けた取り組みに関する意気込みをお願いします。

(知事)
 やはり、プレート型の巨大地震は必ずやって来ることを県民の皆様に改めて意識していただくことが大事だと思います。本当にテレビが飛んで来るような地震が起こる可能性があるわけですから、まずは家具の固定化を行っていただく。あわせて、家の耐震化をとにかく皆さんに真剣に取り組んでいただきたいと思っています。
 ただ、家の耐震化を行っていくことになると、なかなか経済的な負担も大きいこともあります。今までも耐震化のための補助を拡充するなど、色々進めてきました。ですが、我々としても、もう一段より低いハードルでもって耐震化をできるような対応策はないのだろうかと。他方で安全性の面からは大丈夫かという指摘もありますので、トレードオフ〔一方を追求すると他方が犠牲になるような両立できない関係〕の中で一番良い対策はないか研究を重ねていきたいと思います。

 ただ、まず第一は、必ずプレート型の巨大地震は、やって来ることを自覚していただいて、一人一人がいざという時のための備えを進めていただくことが一番大事だと思います。
 死者ゼロについて、東日本大震災が発災した時、我々として一番遅れていたのは、やはり津波対策だったと思います。想定していたよりもはるかに大きな規模の津波がやって来る可能性があると思います。我々は東日本大震災で学び、津波対策の取り組みを全力でもって進めてきましたが、津波早期避難率100%にもっていくために、二つの大きなハードルがあります。

 一つは、早期避難できるような津波避難空間の整備をどんどん進めていかなければなりません。もう一つは、そのような早期避難を実際に可能にするよう、県民の皆様一人一人の意識の問題、そして、いざという時の助け合いの仕組みの問題も構築していかないといけません。ソフト・ハード両面においてやらなければならないことはたくさんあると思います。
 ですから、まず1万1500人にするのも大変。そして、1800人にするのも大変なことですけれども、それぞれの対策を県民の皆さんと共に全力で進めていくことが大事だと思います。
 それでもなお、先ほどお話させていただきましたように1800人の死者が残ります。やはり避難速度をもっと上げていくとか、津波避難空間の密度をもっと濃くしていくとか、建築物等の耐震化や室内での安全対策を確保していくといった、基礎を徹底していくことが非常に重要になってくると思います。

 毎年度、対策の進捗状況にあわせて、先ほど減災効果についても見ていくという話もしましたし、こういった目標の進捗度合いがどうかということについても色々PDCAサイクルを回しながら検証していきますが、さらなる対策としてどういうことが必要かということについては、本当に聖域を設けることなく不断の検証を重ねていきたいと思います。

(畑矢:読売新聞記者)
 最後に自活体制の整備という話もあったと思うんですけれども、まず、一番問題となるのが、まず孤立集落が多いということだと思うんです。各自治体がやるのも精一杯だと思うんですけれども、県として孤立集落への対応ですとか、自活していくための備蓄も各自治体でまだまだ全然足りないと思うんですけれども、その辺りで具体的に(新たな)補助金や予算を考えていますか。

(知事)会見する尾崎知事
 自活の有り様は多分、もっとリアルに、これから考えていかないといけないんだろうと思います。今まで思っていたよりもいざという時に避難所に来られる方の数は、多分、桁が一桁、二桁違うと。負傷者の数も一桁、二桁ぐらい違うことになると、圧倒的な物量に対応していかないといけないという話だと思います。
 これを踏まえて、今回の想定を基に、一から色々考え直すことが、やはり重要だと考えており、検討していく中で特に必要だと思われる応急時の対策については、急いで新しい補助制度の創設なども含めて考えていきたいと思っています。

 その上で集落の孤立対策についてお話させていただければ、今、集落の孤立対策を何とかするために一生懸命やっているのが、へリポートを作ることです。色んなヘリポートをたくさん作ってきました。これからも孤立すると予想される所については、へリポートを作っていく取り組みを引き続き進めていきたいと思っています。
 改めて、食糧や水の問題について、本当に備蓄の有り様は、今のやり方でいいんだろうかと。食糧や水の確保について、どういうふうに行っていくべきなのかをもう1回ゼロベースで考え直す必要があると思います。

 往々にして、非常に小規模な災害においてどう対応してきたかをベースにして考えてしまいがちだと思います。例えば、台風で被災し、水道が使えなくなった。しばらくすると自衛隊が来てくれて給水車で水を配ってくれる。最近で言うと、ペットボトルで水を配ってくれる。そういう形で水は確保できると思えるかもしれませんが、ただ、地震による経済被害があった時に、これだけの人に本当に確保できるのだろうか。しかも、上下水道の断水が、一体何カ月続くだろうか。長期浸水とかがある中で、そういうふうに外部から調達するやり方でずっと持ち続けるのだろうか。やはりリアルに考える必要があると思います。
 地域で水を一定程度自活的に確保できるようにする体制として、例えば、避難所に井戸を掘るといった形で、水は自分達で自前で確保できるよう、それぞれの地域での体制が必要になってくるのではないかと思います。

 災害時に負傷者が出ます。重傷者の方については、高次の医療機関に搬送する訓練をよくやります。でも、3万6000人もの負傷者が出た時に、例えば、この人達をどうやって医療センターのような高次の医療機関に運ぶのか。果たしてそういう発想でいいのだろうか。通常時の災害において考えていたような発想でいいのだろうか。そうではなくて、むしろいかに医療機能を現地に展開させるかとか、患者を運ぶのではなくて医療機能の方を運ぶといったように、従来の発想も変えていかないといけないのではないだろうか。ただ、実際に単に運ぶといっても、どうやったら医療機能を確保できるようになるだろうかといったことを考えないといけません。

 いずれにしても身近に色んな意味でのバックアップをする基地が要るだろうと。そういう意味で、去年から申し上げていますが、総合防災拠点の整備をまず進めているところです。これにとどまらず、応急対策活動要領もそうですけど、一連の取り組みを進めていく中で今回の想定を基にして、よりリアルに物事を考えて、起こり得る事態を率直に受け止めて、対応策を色々考えていく必要があるのかと思います。

 津波から生き残るための対策は、まず、津波避難空間を作ることですが、その空間づくりについて、今、とにかく全力で進めています。これが第一番目の対策です。発災直後に生き残る対策である住宅の耐震化はまだ足りません。それから、地震や火災に対する対策はまだやらなければなりません。とにかくそこに力を入れて進めていくことが第一であることは間違いありません、発災してから生き残った後、避難所等で孤立しているかもしれない状況の中で生き残っていけるような体制作りを進めていくことが、第二ステージとして27年度までに取り組んでいきたいことです。
 今回の被害想定を基に、先ほど来申し上げているように、非常にリアルに物事を考えて対策を構築していきたいと思います。

(尾崎:高知放送記者)
 これまでの想定に比べると、市町村の死者数を出すなど、大きく踏み込んだものになっているんですけど、もう一度、今回の想定を受けて県民に一番に伝えたいことや、考え直して欲しいことがあれば、知事の方から一言お願いします。

(知事)
 今回、市町村別の想定も示させていただきました。できるだけリアルに、最悪の時にはどういうことが起こるかを多くの皆さんに改めて感じていただきたいと思います。
 あくまでも、今回は、最悪の事態を計算して出させていただいたものですので、怖がり過ぎないようにしていただきたいと思います。ただ、最悪の場合は、こういうことも起こり得るということであり、しっかり備えを進めていただかなくてはなりません。県としても、市町村の皆さんと共に一生懸命取り組みを全力で進めていきます。
 対策を講じれば、死者数にしても大幅に軽減することが、今回の想定でも分かっています。住民の皆様方もまず、自らできることをしっかり進めていただきたいと思います。家具の固定をする、住宅の耐震化を進める、津波の時にはどこに逃げるかを日頃から確認しておく、といったことを是非進めていただきたいと思います。そうすることで必ず被害は大幅に軽減できます。

(倉沢:毎日新聞記者)
 避難所生活のことなんですけれども、先ほど知事が「非常に膨大な避難者の数がある」と言ってますが、各市町村の方でもキャパについて、かなり懸念があるかと思います。
 これからもちろん、市町村とも連携をしっかり図って対策を練っていかなければいけないと思うんですけれども、ゼロベースから考える上で、今年度中にここまでは達成したいとか、県として具体的な青写真があれば、知事の方から教えていただけますか。

(知事)
 今回の想定で、各市町村ごとの規模感が分かっていただけると思います。それに基づいて避難所の再選定をできるだけ早くやっていただきたいと考えています。避難所の位置が分かれば、例えば、どういうふうに物資の供給をしていくべきなのかというやり方が分かってきます。避難所の再選定は、やはり急がれることではないのかと思います。
 そういう対策にも資するようにということで、少し専門的な話になりますが、先ほど来申し上げているように、L1の想定も今回、出しています。昨年12月の時にもL1側の津波浸水予測を出しましたけど、こちらの場合どうかということをあわせて発表しています。L1であれば避難所はここ、L2の時には、浸水するから別の場所という形で、リアルにいくつかのパターンに基づいた避難所の設定をできるだけ早くしていただきたいと思います。

(大山:高知新聞記者)
 軽減策ということで、避難率や耐震化率を100%にするというふうに先ほどから繰り返されていますけど、やはり知事もおっしゃられていたように、100%にするということのハードルって、かなり高いと思うんです。今も、補助制度を設けて、上乗せして耐震を進めている部分もあるでしょうし、東日本大震災以降、避難について力を入れて呼びかけている部分もあると思うんです。それでも現実には、まだ進んでいないという現状がある中で、もちろん自己責任というのは前提であるとして、行政、県、市町村としてやっていけること、やろうと思われることをもう一度改めて教えていただけますか。

(知事)
 逃げることの重要性を本当に多くの皆さんに感じていただくために、今回、市町村別の被害想定をあえて出させていただきました。津波からの早期避難率が20%の場合と100%の場合でこんなに違ってきますので、早く逃げる意識を徹底していただきたいと思います。
 ただ、「早く逃げろと言われても逃げる場所がないじゃないか」というお話もあります。ですから、津波避難空間づくりを進め、避難路・避難場所も10カ所、20カ所ではなくて、1354カ所といった規模感で県内各地に作ろうとしているところですけれども、我々も具体的にハード整備を進めていきます。これにあわせて色んな訓練も是非徹底をしていただきたいと思います。
 今回の想定を契機に、改めて色んな取り組みを進めていくことの重要性をお互いに確認させていただきたいと思います。

(大山:高知新聞記者)
 これまでの高知県は、他の県以上のレベルで対策を進めてきた部分があると思うんですが、全員というところのハードルはかなり高いと思うんです。それをあえて挙げられたというところに、覚悟があるのかとは思うんですが、これまでの対策ではなかなか100%というのは実際難しい部分も現状あるのかなとも思うんですが、それから一歩進めるために、例えば、住民に呼びかける以上の何かもやっていかないといけないのかなという気もするんですが、その辺りで何か思われるところはありますか。

(知事)
 とにかく早期避難が大事だということを徹底して訴え、そして、避難路・避難場所を作っていくことで早期避難が物理的に可能であることをお見せしていく。そういう中で100%を目指して取り組んでいきたいと思います。
 県も一生懸命呼びかけていきますけど、市町村の皆さんも大変熱心にやっておられますが、今回、想定を発表させていただくことで、それぞれの市町村で、例えば、最大死者数1000人とか2000人といったところも出てくるわけです。そういうところを役場の皆さんにも改めて取り組みを加速する一つの契機にしていただきたいですし、前回の想定とも合わせて見ていただくと、どういうところが危ないか分かってくるようになっています。そういう意味で地区の自主防災組織の方々にも改めて再認識する機会にもしていただきたいと思いますし、そういうことを繰り返していくことで、津波早期避難率と津波避難空間づくりを100%にすることを目指していきたいと思います。

 津波避難空間づくりは100%やることにしているわけですから、できます。ただ、津波早期避難率の100%は早く逃げ始めただけではだめで、1分間で35メートル逃げることを前提に入れています。この避難速度を例えば、1分間に40メートル、45メートル逃げるようにするための訓練の積み重ねがとても重要です。ハードルは高いですが、しっかり受け止めていくしかないと思います。

 あともう一つは、改めて今回の想定で住宅の耐震化がやはり大きなポイントだと自覚をしました。ですので、住宅の耐震化のあり方についての政策を少し時間をいただいて見直す必要があるのかと思います。もう少しハードルの低い耐震のあり方はないだろうかということを検討したいと思います。
 ただ、あまりハードルを下げると、逆に安全度を阻害してしまうかもしれません。その二律背反〔互いに矛盾する二つの命題が、どちらも成立すること〕の中でどうするかという問題になるので、少し時間をいただいて研究を重ねていきたいと思います。

(池:高知新聞記者)
 この被害想定を前提にした財政措置のイメージについてお聞きしたいんですが、例えば、先ほどからおっしゃっている3種類の100%といいましょうか、早期避難率や耐震化率、津波避難空間を100%達成するために、いかほどの財政措置が必要なのか。これは官民合わせてというものになるのか。どういったイメージになるか分かりませんが、その辺りのイメージをお持ちでしたら教えていただけますか。

(知事)
 244億円の予算の範囲内で、(避難路・避難場所を)1033カ所、(津波避難タワーを)90基までは整備できます。この25年度当初予算と3月補正予算で、ここまで実現する分の予算を組み込んでいます。
 避難避難空間づくり自体については、もともとやるつもりでいるので、それ自体の財政上の措置は一定目処をつけて、予算を組んでいます。

 ただ、(避難場所の)再選定をしないといけないかもしれません。これからまだもう少し数を増やさないといけないかもしれません。それは取り組まないといけないと思いますし、耐震化のあり方についてもう1回考え直してみないといけないのではないかと思っています。この辺りの財政負担は考えてみてからになろうかと思いますので、まだ分かりません。
 避難訓練を重ねて早期の避難を可能にすることは、お金の問題ではなく、現地の皆さんで日頃から訓練をしていただく仕組みを作っていただくことが大事だと思います。

 もっと言わせていただければ、「津波てんでんこ」です。「津波てんでんこ」とは、家族皆がそれぞれ必ず逃げていると確信がもてるような状況をそれぞれの地域で作り出していけるかどうかだと思います。
 例えば、逃げることのできない人達がいるような施設の有り様などを考える場合、やはり高台に移しておくべきではないだろうか。幼稚園や保育園、入所型の福祉施設は早期の避難を可能にするための前提の整備なども必要になってくるだろうと思います。
 そういった諸々も含めてという話になると、国も巻き込んでいく必要があるだろうということで、今、南海トラフ巨大地震特別措置法の制定に向けても、(高台移転)を一つの争点にしながら議論を積み重ねています。

(池:高知新聞記者)
 今日は集団移転の絡みについての報道がありましたが、それだけではなくて、こういった全体のハードの部分の財政措置について、今回の被害想定を踏まえて、南海トラフ巨大地震特別措置法にどのような期待をもっていらっしゃるのかを改めてお願いします。

(知事)
 9県知事会議で共同してずっと声を上げて取り組んできました。9県それぞれ実情は違いますが、9県を押し並べて言わせていただければ次の3つです。

 1点目は、避難路・避難場所や津波避難タワーの津波避難空間づくりのための財政的な後押しをしていただくことが非常に重要になってこようかと思います。ただ、本県の場合、法律の制定を待たずに、とにかく急いでこの取り組みを進めていますから、県によっては法律の制定を待って、整備を始めようというところも出てくるのかもしれません。
 2点目は、非常に厳しい地域において、集団移転を行いたいというニーズが出てくると思います。集団移転になると、やはり大規模な取り組みになりますから、国の法律による後押しは必要かと思っています。法律によってそれを後押ししていただくような仕組みづくりを非常に期待しています。
 そして3点目は、特に避難することが厳しい状況にある災害時要援護者の方々がたくさんいらっしゃるような施設について、個別に高台への移転が可能になるような後押しをしてもらいたいということです。

 一連のことを取り組むために必要な規制緩和があり、そういう規制緩和の内容についても法律の中に盛り込んでもらうとありがたいと思っているところであり、今、南海トラフ巨大地震特別措置法の制定に向けて色んな調整を、与党の皆さんや関係省庁の皆さんと共に行っています。

(池:高知新聞記者)
 お金の話が一面的であるのは理解しているつもりなんですが、ざっくりと4万2000人を1800人まで減らすのにいくら必要なのかというおおまかなイメージをお持ちでしょうか。

(知事)
 ざっくりですが、例えば100億円ぐらいあれば、避難空間そのものは、一定できてくると思いますが、問題は住宅の耐震化です。この耐震化100%を進めていくために必要な予算量は、相当膨大なものになってくると思います。
 ただ、避難空間の整備を74%から100%にしていくのは、そのまま26%分を作ることですけど、住宅の耐震化を74%から100%にしていく場合、世代交代に伴って順次建て替えていくものや新耐震基準に基づき自然的に建て替える形もあります。

 それを100%にしていくために、全体としてお金がいくら必要なのかということについては、試算すればできますが、多分皆が皆200万から300万かけて耐震改修できるかというと、現実はなかなか難しいところもあるのではないかといった時に、中間的な対応を考えないといけない中、どれくらいのニーズがあって、どれくらい移行する方がいるのかという試算を別途してみないといけないだろうと思います。
 ただ、どういうやり方がいいかは、もう少し検討させてもらいたいと思います。


地方公務員給与

(清水:時事通信記者)
 政府が要請している地方公務員の給与削減について、政府は7月までに削減するように言っていると思うんですが、まず、そのことについての知事のお考えと、高知県として組合への提案もされたと聞いていますが、7月に間に合わせる為に6月議会へ提案されるのか、今後のスケジュールもお伺いできればと思います。

(知事)
 正直申し上げて、地方公務員の給与は地方が自主的に決めることであって、国が要請する問題ではないと思います。そのうえで地方財政計画上、一方的に地方公務員の給与費である地方交付税の削減措置を国がとられたことについては、全国知事会を通じてもずっと抗議をしてきましたし、非常に遺憾なことです。
 ただ、残念ながら現実問題として、この地方交付税を削減された状況の中で、私達として今後の財政状況を鑑みた時に、どう対応すべきかということを考えざるを得ないということがあります。さらにもう一つは、そもそも国家公務員の給与を削減したことについても、今回、地方公務員の給与削減の要請についても、その背後には防災・減災対策を、全国的に進めていかなければならず、そのために財源が必要なので皆で出し合おうという形でお願いしたいというお考えがあるんだろうと思います。

 正直、地方交付税を削減したり、一方的に要請してきたりということは、遺憾であることに変わりはありませんが、それを契機として物事を考えざるを得なくなったということです。他方、防災・減災対策事業のためにお金が必要だということについては理解できますので、その防災・減災対策事業のために使うお金として、大変恐縮ですが、職員の皆さんに給与削減についてお願いをさせていただいたところです。
 組合に今日、提示をさせていただきまして、また私からのメッセージも職員の皆さんに、そして、家族の皆さんにも手紙としてお配りさせていただいています。正直、一生懸命色々仕事をしていただいている時に、給与削減をさせていただくことは本当に心苦しい限りですが、遺憾ながら今回のような経緯がある中で、考えざるを得ないこととなりました。ただ、防災・減災のために取り組みを進めていくんだと。そのために使うお金として職員の皆さん方の志を活かさせていただき、ご理解をいただきたいと思っています。

 削減させていただいたお金の分については、保育所と幼稚園の高台移転等に使うために一定イヤマーク〔特定の用途と目的を指定して、他に流用しない準備金〕をして、使わせていただきたいと考えています。
 この部分は特に急がれる分野ですので、私も地域を回っていまして、現実問題として多くの住民の皆さんから、「私達はいざとなったら逃げられるけど、子ども達は逃げられないので、子ども達の分だけでも早く高台に移してもらいたい」というお話をたくさん伺っています。逆に言うと、「子ども達だけでも移しておいてもらえれば、私達も安心して逃げられる」というお話もたくさん伺います。この分野は本当に県民の切実な声だと思いますし、大変大きな財政負担が必要な分野ですので、この分野について職員の皆さんの志を活かさせていただきたいと考えています。


土佐電気鉄道

(池:高知新聞記者)
 土佐電鉄の外部委員会の調査に関して、6月定例会までに一定の報告をということでしたけども、現在の進捗状況についてご説明いただけますか。

(知事)
 おそらく近々、外部委員による調査委員会が立ち上がることになろうかと思います。現在、最終調整中だと伺っています。
 その調査委員会による報告が、いつの段階でどのようなものが出てくるといったことは、最終的に外部委員の皆様方にお任せせざるを得ないと思いますが、我々としても調査委員会での結果を踏まえて、節目節目で説明させていただくことになろうかと思います。

(司会)
 それでは、記者会見を終わらせていただきます。

 

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