平成26年2月県議会での知事提案説明

公開日 2014年02月21日

更新日 2014年03月19日

平成26年2月高知県議会定例会での知事提案説明 (2月21日)

1 平成26年度の県政運営について
(1)県政運営と国の動向
(2)平成26年度当初予算及び平成25年度補正予算

2 5つの基本政策に基づく県づくり
(1)経済の活性化
 ア 計画のバージョンアップ
 イ 「高知家」プロモーションとの連動による外商の加速化
 ウ 「リョーマの休日~高知家の食卓~」を中心とした観光振興
 エ 移住促進策のさらなる強化
 オ 第一次産業の競争力強化
 (ア)農業分野
 (イ)林業分野
 (ウ)水産業分野
 カ 「ものづくり」のパワーアップ

(2)南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化
 ア 第2期行動計画に基づく対策
 イ 津波避難対策
 ウ 火災対策
 エ 総合防災拠点の整備
 オ 避難所確保対策
 カ 医療救護計画の見直し
 キ 道路啓開計画の策定
 ク 組織体制の強化

(3)日本一の健康長寿県づくり
 ア 長寿県構想の改訂
 イ 保健分野の取り組み
 (ア)がん検診の受診促進
 (イ)薬局や薬剤師を核とした健康づくり
 (ウ)子どもの頃からの健康的な生活習慣定着の推進
 ウ 医療分野の取り組み
 (ア)救急医療連携体制の強化
 (イ)医師の育成支援・人材確保施策の推進
 (ウ)在宅医療の推進
 (エ)あき総合病院のオープンについて
 エ 福祉分野の取り組み
 (ア)高齢者などを支える地域福祉の仕組みづくり
 (イ)福祉人材の育成
 (ウ)自殺対策行動計画の改定
 (エ)非行防止対策

(4)教育の充実
 ア 学力向上に向けた取り組み
 イ 子どもたちの心の問題への対応(いじめ問題への対応)
 ウ 体力・運動能力向上に向けた取り組み
 エ 高校生の社会性の育成等
 オ 県立高等学校再編振興計画

(5)インフラの充実と有効活用
 ア 四国8の字ネットワークの整備
 イ 建設業の活性化への取り組み
 ウ 高知新港の高台整備

(6)中山間対策について

(7)少子化対策・女性の活躍促進

3 その他
(1)まんがを切り口とした新しいイベントの開催
(2)新図書館等複合施設などの整備について
(3)高知龍馬マラソン2014
(4)土佐電気鉄道株式会社の新経営体制と中央地域の公共交通再構築

4 議案


 本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成26年2月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。

 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。

 

1 平成26年度の県政運営について

 

(1)県政運営と国の動向

 私は、課題解決の先進県となることを本県の目指すべき方向と見定め、全国に先行して進む人口減少や高齢化、さらには、南海トラフ地震への備えなど、本県が抱える困難な課題に真正面から取り組んでまいりました。

 正面から取り組むことにより、解決策が見えてきたものや成果が表れ始めたものもありますものの、より多くの県民の皆様に県勢浮揚の実感を持っていただくためには、さらなる取り組みの強化、深化が必要であります。

 そのため、来年度は、これまでの取り組みの実績や成果、また、それらから見えてきた様々な課題を踏まえ、より力強い、そして、より実効性のある取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 その際には、引き続き、県庁組織が常に成果を意識し、新しい物事にチャレンジしていく積極的な姿勢を持ち、創造力を発揮していかなければなりません。また、施策の実効性を高めていくために、政策同士の連携を一層進め、高いレベルでの相乗効果をもたらしていく必要があります。さらには、これまで以上に職員が地域に出て、県民の皆様の中に入り、その声を聞き、関係者の皆様と同じ方向感を共有するなど、市町村との連携や官民協働の取り組みをより一層深化させていくことが重要になってまいります。

 こうした基本的な姿勢の下、来年度も引き続き、本県が直面している困難な課題の解決に向けまして、私自身、県庁職員と共に知恵を出し、汗をかいて、県民の皆様と共に飛躍に向けた挑戦を続けてまいりたいと考えております。

 先月24日通常国会が開会し、今月6日には、消費増税に伴う反動減対策を中心とした平成25年度補正予算が成立いたしました。

 安倍総理は、この国会を「好循環実現国会」と位置付け、デフレ脱却のために、企業の収益が雇用の拡大や所得の上昇につながり、それが消費の増加を通じてさらなる景気回復につながるという経済の好循環の実現を目指しております。

 県としましても、引き続き、本県の実情に合った有益な国の施策につきましては、県の産業振興計画などに積極的に活用してまいります。あわせて、国の施策が5つの基本政策を中心とする本県の県勢浮揚に向けた施策の大きな後押しとなりますよう、国の動向を注視しますとともに、時機を捉えた政策提言を行うなど、積極的に情報発信を行ってまいります。

 こうした中、環太平洋経済連携協定、いわゆるTPPにつきましては、間もなく閣僚会合が開催される予定となっており、4月のオバマ大統領のアジア歴訪や11月のアメリカの中間選挙を控え、交渉は山場を迎えます。

 私は、まさに今地方の声を届けなければならないとの強い思いから、今月上旬、四国知事会としての緊急提言を取りまとめ、内閣府の副大臣や政府関係者に対して、米などの重要5項目の関税をはじめとした国益を必ず守っていただくよう、要請活動を行ってきたところであります。

 県としましては、引き続き、国の動向を注視しますとともに、今後とも、必要に応じてさらに提言を行うなど、県民生活を守るための取り組みを積極的に進めてまいります。

 先月24日、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向け、準備、運営を行う組織委員会が設立されました。大会の成功に向けて、今後、競技会場の整備や輸送、宿泊など具体的な検討が行われるものと思われます。

 県としましては、この大会を契機としまして、本県のスポーツの振興や青少年の育成にさらに力を入れてまいりたいと考えております。加えて、合宿の誘致やCLTを活用したオリンピック・パラリンピック関連施設の整備、さらには、高知の自然・文化の世界へのアピールなどを通じて、本県の経済活性化につなげてまいりたいと考えております。

 このため、今月17日、庁内の副部長級の職員で構成するプロジェクトチームを発足いたしました。また、18日には、私自身が組織委員会の事務総長にお会いもし、本県独自の提案もご説明させていただいたところであります。

 今後とも、組織委員会や国などの情報収集に加えて、さらに提案を行うなど、積極的に対応してまいります。

(2)平成26年度当初予算及び平成25年度補正予算

 次に、本県の来年度の当初予算案及び2月補正予算案についてご説明申し上げます。

 今回の予算編成にあたっては、大幅にバージョンアップした第2期産業振興計画の推進や、南海トラフ地震対策の抜本強化をはじめとする課題解決先進県を目指した取り組みのさらなる推進に向け、国の経済対策に伴う交付金なども活用しつつ、限られた財源で最大限の事業を実施できるよう、知恵を絞り、工夫を徹底いたしました。

 その結果、来年度の一般会計当初予算案は、6年連続で前年度を上回る4,527億円余りと、さらなる飛躍への挑戦を続けていくための積極型の予算となっております。

 他方、このように経済の活性化対策や南海トラフ地震対策などを大幅に加速しながらも、財政規律を維持し、引き続き将来に向けて安定的な財政運営を行っていくよう努めたところであります。

 具体的には、歳入面では、景気回復などに伴う県税収入の増加を見込むことにより、前年度を上回る一般財源総額を確保するとともに、地域経済活性化・雇用創出臨時交付金など国の有利な財源を積極的に活用いたしました。

 また、歳出面では、行政のスリム化による人件費の抑制や積極的な事務事業の見直しを行うなど、歳出削減に徹底して取り組んだところであります。特に、本年度は、3年振りに裁量的経常経費にマイナス5パーセントのシーリングを設定した上で、昨年度に創設いたしました課題解決先進枠を大幅に拡充することにより、事業のスクラップアンドビルドをより積極的に促した結果、前年度を大きく上回る約15億円、計145件の事業の見直しと、約27億円の新たな課題に対応する施策のバージョンアップを実現したところであります。

 このような一連の取り組みの結果、財源不足額は104億円となり、前年度の141億円から大幅に圧縮いたしました。

 さらに、なお生じたこの財源不足への対応にあたっても、中長期的な財政運営を見据え、退職手当が増額する見込みにも関わらず、退職手当債の発行を前年度同額に抑制して将来負担を軽減したところであります。

 あわせまして、2月補正予算においては、国の経済対策に積極的に対応しつつも、中長期的な財政の健全化の観点から、予算の効率的な執行などにより生じた財源を活用し、財政調整的な基金の取り崩しを69億円余り取り止め、将来への備えを確保したところであります。

 この結果、実質的な地方交付税である臨時財政対策債を除きます来年度末の県債残高につきましては、本年度末の推計残高である5,054億円から43億円減の5,011億円と見込まれ、引き続き減少傾向を維持するとともに、来年度末の財政調整的な基金残高につきましても、昨年9月時点での推計を30億円程度上回る208億円程度を確保できる見通しとなったところであります。

 このように、当初予算及び2月補正予算の編成を通じて、課題解決先進県を目指した取り組みを積極的に行いながら、財政の健全化に向けた後年度負担の軽減と将来への一定の備えの確保を図ることができたものと考えております。

 

2 5つの基本政策に基づく県づくり

 

(1)経済の活性化

 ア 計画のバージョンアップ

 次に、経済の活性化についてご説明申し上げます。

 産業振興計画につきましては、第2期計画に掲げた4年後、10年後の数値目標の達成に向け、PDCAサイクルに基づく不断の点検や、施策間の有機的な連携の確認を行いながら、官民協働により全力で取り組んでまいりました。

 その結果、昨年の県外観光客の入込客数は、地域主体の博覧会の第1弾「楽しまんと!はた博」などの取り組みに、映画「県庁おもてなし課」の全国公開などの誘客効果も加わり、NHK大河ドラマ「龍馬伝」の放送以来3年振りに400万人台を達成いたしました。「龍馬伝」放送前の入込客数は310万人前後の規模であったことから、本県の観光は一段上のステージに移行したものと考えております。また、県外からの移住者数や外商の成約件数も前年度を上回って推移するなどしており、さらに、昨年12月の有効求人倍率は、過去最高の0.78倍となるなど、経済全体としても明るい兆しが見え始めております。

 県勢浮揚に向けて、この手応えをより確かなものとするため、第2期計画をバージョン3へと改定し、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 今回の改定につきましては、2つの大きな特徴があります。

 一つ目の特徴は、本県の経済全体にインパクトをもたらす、より大きな、より実効性のある施策を実施していくことであります。

 この5年間、官民協働により産業振興計画の取り組みを積み重ねてまいりました結果、例えば、林業分野における大型製材工場の稼働のように、その分野を大きく動かすような、本格的な取り組みに挑戦できるようになってまいりました。今回の改定にあたっては、こうしたこれまでの蓄積を生かし、より大きな、より実効性のある施策へとバージョンアップし、産業振興計画の取り組みをさらに加速してまいります。

 二つ目の特徴は、こうした挑戦を続けるにあたって、各施策群同士の連携をより徹底することによりまして、相乗効果を発揮し、プラスのスパイラルを生み出していくことを強く意図したことであります。

 「高知家」プロモーションの切れ目ない実施と、「高知家」のコンセプトの下、地産地消・地産外商、観光振興、移住促進といった政策の統一的な展開を通じて、より高いレベルの相乗効果をもたらしてまいります。

 例えば、観光振興では、「リョーマの休日~高知家の食卓~」キャンペーンを通じて「食」と「産地」をPRすることにより県産品の外商につなげることを、地産外商では、「高知家」フェアの開催などを通じて観光地を紹介し観光振興につなげることを、それぞれ意識して取り組んでまいりますとともに、こうした取り組みの相乗効果により、「高知家」の認知度や好感度をさらに高め、移住促進にもつなげてまいりたいと考えております。

 また、この産業振興計画の取り組みをさらに進めるにあたっては、県内における官民協働や市町村との連携協調はもちろんのこと、県外の関係団体などとの連携の強化が必要となってまいります。移住促進や外商などの取り組みにおける県外の大手企業との新たな連携構築、四国地方産業競争力協議会の取り組みにおける四国の他の3県や国の機関、経済団体などとの連携など、様々な対外的な連携強化を図ってまいります。

 例えば、来月には、県と高知労働局、産業支援団体など7者で求人情報の拡大に関する協定を締結し、求人情報の掘り起こしやハローワークに提供する連携体制を構築することにより、求人数の総量や正社員求人数の拡大を目指すこととしております。

 イ 「高知家」プロモーションとの連動による外商の加速化

 次に、改定の具体的な内容について、5つの改定のポイントに沿ってご説明申し上げます。

 一つ目の改定のポイントは、「高知家」プロモーションとの連動による外商のさらなる加速化であります。

 来年度は、昨年6月からスタートしております「高知家」プロモーションをさらに強力に推進し、「高知家」の認知度のさらなる向上を図りますとともに、県産品の販売拡大といった具体的な成果につなげてまいります。

 また、より一層売れる商品づくりを目指して、これまで首都圏の高品質系スーパーと連携してマーケットインの視点で進めてまいりました商品の開発や改良の取り組みを、関西地区や中部地区にも拡充し、地区ごとの特徴に合わせた商品づくりを進めてまいります。あわせまして、県外の専門家のアドバイスをいただきながら、「高知家」を代表するようなヒット商品づくりを支援してまいります。

 さらに、「高知家」統一セールスキャンペーンを展開する中で、ユズやショウガ、カツオといった全国的に優位にある品目に次ぐ新たな品目にもスポットを当て、本県産品のラインアップの充実・強化に努めてまいります。

 また、海外への外商につきましては、平成23年におよそ1億円であった食料品の輸出額を平成27年に2億円にすることを目標に掲げ、全国一の生産量を誇るユズを中心に、欧州縦断プロモーションを展開するなどヨーロッパやアジアへの売り込みを進めてまいりました。その結果、既に平成24年に目標の2億円を超えたことから、平成27年の目標を3億円に上方修正し、輸出のさらなる拡大を目指してまいりたいと考えております。

 具体的には、ユズにつきましては、本年度のオーストラリアに続き、市場規模の大きいアメリカやドイツへの売り込みに新たに挑戦していくとともに、ユズに続く品目として日本酒など日本ならではの品目の輸出強化にも取り組んでまいります。

 ウ 「リョーマの休日~高知家の食卓~」を中心とした観光振興

 二つ目の改定のポイントは、観光キャンペーン「リョーマの休日~高知家の食卓~」を中心とした一層の観光振興であります。

 先ほど申し上げましたとおり、昨年の県外観光客の入込客数は、平成27年度末の目標として掲げておりました400万人を突破し407万人となり、目標を2年早く達成することができました。来年度からは、400万人台の定着を目指し、本県の大きな強みである「食」を前面に出した観光キャンペーン「リョーマの休日~高知家の食卓~」を中心とした施策を展開することにより、本県観光のさらなる飛躍を図りたいと考えております。そのために、次の3点を着実に実行してまいります。

 第一は、魅力ある観光資源である「食」を前面に出した観光プロモーションの実施であります。

 昨年末から先月にかけて『「高知家の食卓」県民総選挙』を実施したところ、県内から1万4千を超える投票をしていただきました。今後、来月開催いたします「土佐のおきゃく2014」での選挙結果の公表を皮切りに、この結果を最大限に活用したPR戦略を展開することにより、「旅先では地元の人が薦める店で食事をしたい」という観光客のより高いニーズにしっかりと応えてまいりたいと考えております。

 また、「食」を前面に出したプロモーションには、県内あらゆる地域のさまざまな業種の皆様が主役になれるという強みがあります。このため、このプロモーションを通じて、地域地域の「食」にかかわる観光資源の磨き上げを進めるとともに、観光誘客の機運の盛り上がりを図ってまいりたいと考えております。その際には、専門家のアドバイスもいただきながら、マーケットインの視点を取り入れた観光商品づくりを進めるなど、地域の取り組みを強力に支援してまいります。

 第二は、地域観光のさらなる推進であります。

 昨年、幡多地域におきましては、地域博覧会「楽しまんと!はた博」の開催により、観光施設などへの入込客数が対前年比16パーセント増の146万人となり、幡多広域観光協議会を中心に、地域が主体となって誘客を進める仕組みができてまいりました。また、幡多地域に続き、東部地域においても、平成27年度の地域博覧会の開催を目指して準備が進められております。

 県では、こうした各地域の主体的な取り組みを積極的に支援してまいりますとともに、地域観光をさらに推進していくため、先ほど申し上げました専門家のアドバイスもいただきながら、魅力的な観光商品づくりを進め、各地域で観光を担う人材を育成し、広域観光組織の機能強化を図ってまいります。

 第三は、新たな国際観光の取り組みであります。

 日本を訪れる外国人旅行者数が増える中、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催という追い風もあり、国際観光市場は今後ますます成長・拡大が期待されますことから、本県としても、従来より一歩踏み込んだ新たな挑戦をしてまいります。

 具体的には、観光ツアー企画の作り込み・提案などの事前調整を行うランドオペレーター的機能や、ツアー催行時のフルアテンドサービスまでを一貫して担う本県ならではのきめ細かな仕組みを構築してまいります。こうした仕組みを通じて、日本の文化や心に触れたいという外国人観光客をターゲットとしまして、本県の強みであります豊かな自然や本県特有の「温かい人柄」によるおもてなしをベースにした精神的満足度の高い観光商品を提供することにより、誘客の拡大を図ってまいります。

 エ 移住促進策のさらなる強化

 三つ目の改定のポイントは、移住促進策のさらなる強化であります。

 「高知家」プロモーションと連動した積極的な情報発信や、きめ細かな相談対応など、市町村との連携協調、官民協働の下、移住促進に全力で取り組んでまいりました結果、県の移住ホームページ「高知家で暮らす。」へのアクセス数は先月末現在で32万8千件余り、県への新規移住相談者数は906人、移住実績は昨年12月末で210組346人と、全ての指標で昨年度1年間を上回る成果に結び付いております。

 また、大手の運送事業者の皆様には、高知県へ移住を希望する方が入会する「高知で暮らし隊」の会員を対象とした本県への引越料金の割引や「高知家」ロゴの活用にご協力をいただいておりますし、今月からは、県内の旅館・ホテル業の皆様にも、「高知で暮らし隊」の会員の方を対象とする宿泊料金の割引などのサービスをご提供いただいており、官民を挙げた取り組みが県内外に着実に広がっております。

 こうした中、東京のNPO法人による「ふるさと暮らし希望地域ランキング」では、平成23年以前は第20位より下位であった本県の順位が、平成24年には全国で第12位に、昨年は第6位となり、平成20年の調査開始以来、初めてベスト10に入るなど、取り組みに対する手応えを感じているところであります。

 こうした手応えや成果をさらに大きなものとし、平成27年度に掲げる年間の移住者数500組という高い目標を達成するため、来年度は、次の3点の強化を図ってまいります。

 第一は、アクティブな情報発信により、地域や企業などで活躍していただける「人財」を誘致することであります。

 私自身、対話と実行行脚などで地域をお伺いした際に、移住された方々が地域の産業の中核となって活躍されている姿や、新たな事業を興すことによって地元の方と共に地域に元気をもたらしている状況を拝見する一方で、地域が必要とする新たなスキルやノウハウを身に付けた方の確保が難しいといったお声もお聞きしております。こうしたことを見聞きすればするほど、「人こそ財(たから)」であるという思いを強くしているところであります。

 そのため、企業誘致ならぬ「人財」誘致に取り組むことといたしました。具体的には、特産品開発や伝統産業の担い手といった顕在化している地域のニーズに加えて、まだ顕在化していない地域の活性化に必要なニーズを、県の産業振興推進地域本部はもとより、市町村や民間の皆様のご協力もいただきながら全庁挙げて掘り起こしてまいります。

 そして、これらのニーズを民間の人材ビジネス会社などを通じて都市部の企業などにアクティブに発信し、本県への「人財」誘致に結び付けることにより、地域の活性化につなげていくことを目指してまいります。

 第二は、移住者向けの住宅確保をさらに促進することであります。

 空き家はあっても、「見知らぬ方に貸すことに不安がある」、「修繕をしてまでは貸せない」といった所有者のお気持ちから、住宅の確保が進みにくいという課題があります。このため、市町村やNPOなどによる空き家の中間保有や改修費用などに対する支援策を拡充することにより、移住者向け住宅の確保に努めてまいります。

 第三は、民間の移住支援団体などのネットワーク形成により、その活動の活発化を図ることであります。

 県内には、移住の相談やインターンシップ、情報発信などに取り組まれているNPOや個人の方など、多くの民間の皆様がおられ、その活動がきっかけで本県に移住された方が多数おられます。

 来年度は、こうした民間団体などで構成する全県的なネットワークの形成を支援して、官民協働による取り組みを一層推進してまいります。

 この3点の強化に加え、先ほど申し上げました「高知家」プロモーションとの連携、さらには、起業や就業への支援策、中山間地域や第一次産業、医療・福祉などの担い手の確保策など、本県独自の施策群の積極的な活用を通じて、移住促進の取り組みをさらに加速してまいります。

 オ 第一次産業の競争力強化

 四つ目の改定のポイントは、新たな挑戦による第一次産業の競争力強化であります。新たな事業所の稼動や担い手の増加など、これまでの取り組みにより見え始めてまいりました明るい兆しを確かなものとするため、中長期的な発展・成長を可能とする大規模かつ戦略的な施策を展開してまいります。

 (ア)農業分野

 農業分野につきましては、農家所得の向上と農業産出額の増加を図るため、高品質・高収量の生産を目指した先進技術の普及を進めていくこととしております。

 具体的には、四万十町の県有地において、環境制御などの先進技術を取り入れた次世代施設園芸団地を整備し、生産に取り組む事業者への支援を行うとともに、この事業により実証された先進技術の県内への普及を図ってまいります。これらは、本県がこれまでオランダから学び研究してきたことを生かすことができる絶好の機会であり、今回の事業の実現により、本県農業は新たな一歩を踏み出すこととなります。

 また、昨年、JAなど関係機関の皆様にご協力をいただいた調査では、10年後には16パーセントもの生産者の減少が予想される結果となったことを受け、これまで以上に、担い手確保の取り組みを強化することといたしました。このため、4月から新規就農者の育成と先進技術の普及拠点として農業担い手育成センターを開設することとしております。このセンターでは、研修生の受け入れ枠の拡大や研修カリキュラムの充実を図るとともに、研修終了後の就農先とのマッチング機能を強化してまいります。その際には、新たに設置する農地の集積・集約化を進める農地中間管理機構と連携し、スムーズな就農につなげてまいります。

 加えて、このセンターを、先ほど申し上げました園芸団地と同じ県有地内に一体的に整備することにより、センターの研修生や県内の意欲的な農業者が、本県の目指す先進技術を導入した園芸団地の大規模経営を見て、その効果を学んで感じ取ることができるようになります。このほか、相互の技術交流を通じて園芸団地の生産性も高まるなど、大きな相乗効果が期待されるところであります。

 (イ)林業分野

 昨年、操業を開始しました高知おおとよ製材につきましては、年間5万立方メートルという原木消費量の目標を達成できるペースとなってまいりました。また、平成27年には、高知市と宿毛市の2カ所でバイオマス発電施設も稼働する予定であり、本県の豊富な森林資源を余すことなくダイナミックに活用する仕組みがいよいよ本格的に動き出してまいります。

 来年度は、木材需要の飛躍的な拡大につながる可能性を持つCLTの活用に向けた取り組みの加速化を図るとともに、県産材の販売力強化の新たな取り組みにも着手していくこととしております。

 CLTの活用につきましては、工法の普及に向けた早期の法整備を目指すとともに、先進県としての地位を確立するため、技術の蓄積や担い手の育成に取り組んでいるところであります。来年度は、2020年の東京オリンピック・パラリンピック選手村などへのCLTの活用を強く訴えるとともに、将来のCLT工法による建築物の本格需要に対応するため、CLTパネル工場立地に向けた需要や適地調査などの取り組みも進めてまいります。

 また、関東地方や震災復興の進む東北地方など、大きな木材需要が見込まれる大消費地をターゲットとした県産材の販売拡大を図るため、低コストな流通体制の確立に向け、船舶を活用した大規模輸送の取り組みに着手いたします。あわせて、大型製材工場を含めた県内事業者の連携による販売窓口の一元化により、これまで個々の事業者の生産規模が小さいため対処できなかった大口の取引にも対応してまいります。さらに、大消費地での販売のノウハウや人脈を有する専門家の協力も得た販売活動を通じて、県産材の地産外商をより一層進めてまいります。

 (ウ)水産業分野

 水産業分野につきましては、まず、本県水産物の販売力を強化し、魚価の向上を図るため、2つの新たな外商活動に取り組んでまいります。

 一つ目は、大都市圏の飲食店などと連携した外商活動の強化であります。これは、本県の水産物に関心のある大都市圏の飲食店に「高知家の魚応援の店」として登録していただき、応援の店のニーズと県内事業者が持つ水産商品のマッチングを図ることにより、県産水産物の販路拡大を目指していくものであり、2年間で500店舗の登録を目標に取り組みを進めてまいります。

 二つ目は、首都圏での本県水産物の情報発信・販売活動拠点の設置であります。具体的には、本年10月、東京築地場外市場に開設が予定されております全国漁港マーケットに、県内事業者と連携して、本県水産物のPRや販売、また、「高知家の魚応援の店」へのフォローアップなどを行う拠点を設置し、外商活動を強力に推進してまいります。

 他方、外商の需要に応える漁業生産量の確保という課題に対しましては、黒潮牧場設置などの従来からの取り組みに加え、計画的な生産が期待できます養殖業の振興に一段と力を注いでいくこととしております。

 具体的には、担い手の育成・確保対策として、養殖ビジネススクールを開設し、養殖技術や経営に関する専門知識を学ぶ機会を提供いたしますとともに、新規就業者の研修期間の生活支援も行ってまいります。また、協業化により高品質な魚の生産と効率的な経営に取り組む生産者に対して、小割いけすのリース制度を創設するなど、支援の拡充を図ることにより、足腰の強い養殖業の経営体の育成を図ってまいります。

 こうした外商活動の充実や養殖業の生産基盤の強化をはじめ、生産から加工、流通、販売に至る施策を一体的に進めることにより、産業振興計画の目標であります「若者が住んで稼げる元気な漁村」の実現を目指してまいります。

 カ 「ものづくり」のパワーアップ

 五つ目の改定のポイントは、ものづくりに対するビジネスプランづくりから商品開発・販売促進までの一貫したサポート体制の確立であります。

 これまで、産業振興計画の毎年のバージョンアップを通じて、ビジネスプランの策定から試作機開発、全国の見本市への出展、生産拡大に伴う設備投資といった、ものづくりのステージに応じた施策を充実させてまいりました。こうした取り組みにより、例えば、成長が期待される4分野のものづくりを支援する成長分野育成支援事業では、全国市場を視野に入れた新工場を整備し新規雇用35人を予定する成長企業が出てくるなど、一定の成果が見え始めております。

 来年度は、産業振興計画により積み上げてまいりました一連の施策に、全国的な景気回復、そして国の経済対策による充実した施策が重なり合う、ものづくりに挑戦するには絶好の年度となります。この好機を生かして、本県製造業の基盤を強化し、本格的な景気回復につなげてまいりたいと考えており、ものづくりに関する一連の体制と施策について抜本的に強化を図ることといたしました。

 まず、体制の強化につきましては、産業振興センターのものづくり地産地消センターと外商支援部を統合し、現在の26人から35人に増員した上で、「ものづくり地産地消・外商センター」を新たに設置いたします。

 新たなセンターでは、ものづくりに挑戦する企業の相談にワンストップで対応するほか、企業ごとの担当者がビジネスプランの策定段階から外商までを一貫してサポートしていくこととしております。

 加えて、より効率的な製品開発を行い早期に外商へとつなげていくため、全国レベルで活躍されている外部の専門家なども活用しながら、これまで以上に質の高いサポートを行ってまいります。

 助成制度や融資制度につきましても、取り組みの質や量、事業間の連携をチェックし、さらなる充実を図ってまいります。

 信用保証料の負担の軽減を図る県の融資制度では、包括協定を結ぶ金融機関と連携し、新たなメニューを創設することとしております。この制度を活用し、産業振興計画の成長戦略や地域アクションプランに盛り込まれております事業をはじめ、そこに掲げた目標に沿った事業の拡大などに取り組む皆様を支援してまいります。

 また、ものづくりの基盤の強化に向けて取り組んでまいりました香南工業団地については、先般一般公募を行ったところ、県内外の多くの企業から問い合わせをいただくとともに、複数の企業から団地分譲の申し込みをいただいております。このほかにも、高台への移転を望む企業の方々の声などがありますことから、現在開発を進めている高知市一宮地区や、南国市日章地区の新たな工業団地を含め、引き続き工業団地の開発を強力に進めてまいります。

 こうした体制や支援策の強化をはじめ、必要となる基盤整備などの取り組みを通じて、より多くの企業に高知発のものづくりに取り組んでいただくことにより、県経済の活性化、所得の向上、雇用の創出につなげてまいりたいと考えております。

 

(2)南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化

 

 次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。

 ア 第2期行動計画に基づく対策

 現在、第2期南海トラフ地震対策行動計画に基づき、命を守る対策を最優先に取り組みを進めております。中でも、特に、地震発生直後の津波避難対策に全力を挙げて取り組んでおり、避難路・避難場所の確保や津波避難タワーの整備も一定進んできているところであります。

 来年度は、引き続き地震発生直後の命を守る対策に最優先で取り組むとともに、総合防災拠点の整備や避難所の確保対策など、助かった命をつなぐための応急期の対策も本格化させてまいりたいと考えております。

 今後は、地震発生直後から応急期の初期段階までの対策を平成27年度末までに概ね完成させることを目指し、取り組みのさらなる加速化を図ってまいります。

 イ 津波避難対策

 まず、地震発生直後の対策のうち、津波避難対策につきましては、昨年末に施行されました「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」により、対策のさらなる加速化が期待されます。

 来月末には、この法律で新たに設けられました津波避難対策特別強化地域に、県内の沿岸19市町村全てが国から指定される見通しであり、南海トラフ地震対策を推進する上での基本的な方針などを定めた国の計画も示される予定となっております。この国の計画を受けて、県と市町村は、対策の実施に必要となる地震防災対策推進計画を策定することとしており、さらに、特別強化地域に指定される沿岸市町村にあっては、補助率のかさ上げの特例措置などを受けるために必要となる津波避難対策緊急事業計画の策定にも取り組むこととしております。

 また、本県では、この法律の施行に先駆け、津波避難空間の整備を一刻も早く進めていくための県独自の取り組みとして、市町村の実質的な財政負担をゼロにする津波避難対策等加速化臨時交付金制度を設け、津波避難空間の整備を支援してまいりました。

 その結果、本年度末までに、避難路・避難場所は計画総数1,445カ所に対して791カ所、津波避難タワーは計画総数115カ所に対して45カ所が完成する見込みとなっております。

 このように津波避難空間の整備が進む一方、地元協議に時間を要したことや入札不調などの原因により、整備計画が遅れるケースも生じております。このため、本年度までの事業を対象としていた臨時交付金制度を1年間延長するとともに、特別措置法によってかさ上げされた国の補助金も活用しながら、津波避難空間整備の一日も早い完了を目指してまいります。

 このほか、津波避難空間の選択肢の一つとして、昨年度から検討を重ねてきた津波避難シェルターの整備も室戸市佐喜浜町でモデル事業として進めてまいります。加えて、観光やレジャーなどで多くの方々に利用されております黒潮町の土佐西南大規模公園や香南市のヤ・シィパーク、東洋町の白浜海岸といった海岸に隣接した県立公園についても、新たに津波避難空間の設置に向けた検討を行ってまいります。あわせて、土佐清水市に引き続き、高台移転に向けて条件が整った宿毛市や中土佐町の保育所などに対する支援も行うこととしております。

 これらの津波避難空間整備のベースとなる新たな想定に対応した地域の津波避難計画の見直しは、本年度末に完了する予定であります。今後は、市町村や地域の皆様と共に、例えば、子どもや高齢者などの皆様も本当に無事に逃げることができるのかなどといった点について、訓練などを通じて改めて検証を重ねることにより、計画の実効性や避難の安全性を高めてまいります。

 ウ 火災対策

 南海トラフ地震の強い揺れや、揺れの後に襲ってくる津波により発生する火災被害を軽減するため、現在、さまざまなケースを想定した対策の検討を行っているところであります。こうした中、来年度は、まず、対策方法にめどのついた農業用や漁業用燃油タンクの火災対策を実施してまいります。

 最大クラスの津波の浸水区域にある約4,400基の農業用燃油タンクにつきましては、市町村やタンクの所有者であるJAなどと協議を行いながら、来年度から、既存のタンクを重油流出防止付きタンクや重油を使用しない木質バイオマスボイラーなどに順次計画的に転換することとし、県として必要な経費への支援を行うこととしております。

 漁業用燃油タンクにつきましても、昨年度の実態調査で把握いたしました屋外燃油タンク34施設の対策について、漁協や地元市町村と協議を行い、まずは5つの施設について撤去や地下タンク化などに対する支援を行うこととしております。残る施設につきましても、引き続き関係団体と調整を行いながら、早期に対策を図ってまいります。

 さらに、浦戸湾内のタナスカ地区などにある石油タンクやガスタンクの対策については、昨年10月に学識経験者や国の担当者などを委員として立ち上げた検討会において、まずは発生頻度の高い地震・津波に対しては被害がほとんど発生しない状態を目指し、地質調査から得られるデータなどに基づき対策の検討を進めていただいております。また、過去の地震における被害事例も参考として、最悪の被災シナリオを想定した対策の検討も行っていただくこととしております。今後、県としてこの検討会の議論を踏まえ、順次必要な対策を推進してまいります。

 また、新たに、市街地での大規模火災対策の指針の検討にも着手いたします。木造建築物が密集している地域をモデル地域に設定し、出火や延焼を防止する対策や住民の避難対策を具体的に検討することにより、同様の市街地を持つ市町村にとって実効性のある指針となるよう取り組んでまいります。

 エ 総合防災拠点の整備

 次に、こうした対策により助かった命をつなぐため、来年度から本格的に取り組む応急期の対策についてご説明申し上げます。

 より被災地に近い場所で前方展開型の応急対策活動を実施するための要となります総合防災拠点については、災害時に応急救助機関の活動が行えますよう、平成27年度までに非常用電源設備や衛星携帯電話の配備、備蓄倉庫の設置など、順次必要な機能の整備を進めてまいります。

 オ 避難所確保対策

 次に、被災者の救助救出がなされた後の対策として、こうした方々を収容する避難所を確保しなければなりません。現状では、最大クラスの地震・津波が発生した場合には、県全体で約12万人分の避難所が不足しております。また、発生頻度の高い地震・津波が発生した場合については、県全体では避難所は足りているものの、市町村単位では6市町で不足が見込まれております。

 このため、現在、耐震性のない施設の耐震化や学校の教室利用の検討など、避難所の収容力を増やす取り組みを支援しているところであります。加えて、来年度、避難所として活用できる地域の集会所などの耐震化を支援する制度を創設することといたしました。安全性が確保されていれば、なるべく居住地の近くで避難生活を送れることが望ましいことから、市町村にはこうした制度も活用していただきながら、避難所の一層の確保を図っていただきたいと思っております。さらに、このような取り組みをしてもなお避難所が不足する市町村については、市町村域を超えた広域的な避難についても検討を進めてまいります。

 あわせて、避難所での水の確保のための井戸や発電機などの資機材の整備についても支援し、避難所の機能強化も図ってまいります。

 他方で、災害時要配慮者の方々が必要とする避難所につきましては、昨年12月末で、93の施設が福祉避難所として市町村に指定されておりますものの、依然としてその絶対数が不足しております。このため、福祉避難所の指定促進に向けた取り組みへの支援を継続いたしますとともに、その運営に必要となる人材の育成と確保に向けた取り組みなども強化することとしております。

 また、防災・減災と地域福祉の取り組みを連携させることにより、災害時の避難支援態勢と日頃の見守り態勢を一体的に構築するよう地域の取り組みを支援してまいります。

 カ 医療救護計画の見直し

 命をつなぐという視点から、災害時の医療救護のあり方が非常に重要となってまいります。想定される負傷者数の多さを考えますと、被災した県民の命を守り抜くためには、総力戦で対応していかなければなりません。特に地震発生直後は、道路などの寸断により、多くの地域が孤立することも予測されますことから、地域の限られた資源を最大限に活用し、より負傷者に近い場所において医療救護活動を展開する、いわゆる前方展開型の医療救護を実現していく必要があると考えております。

 そのためには、できるだけ多くの医療機関や医療救護所において、災害時における医療救護活動に必要な機能を維持・強化していくことや、医療従事者はもちろんのこと、多くの県民の皆様にも医療救護活動に参画していただくことが必要であります。加えて、必要な医療資機材や医薬品などを確保するとともに、県外からの人的・物的支援の運送手段や患者の搬送手段を確保していくことも欠かせません。

 こうした課題に対し、抜本的な対策の強化を図るため、県内の医療関係者による「災害時医療救護計画見直し検討部会」や、防災の専門家など県外の有識者にも参加いただいております「南海トラフ地震における応急期対策のあり方に関する懇談会」において検討を加速し、来年度末には、災害時医療救護計画の改定を行うこととしております。あわせまして、災害時に機能を発揮する病院の耐震化への支援制度の創設や、医療救護所の設備の強化、輸血用血液の供給体制の整備など、今すぐできる具体的な対策を全速力で進めてまいります。

 キ 道路啓開計画の策定

 また、こうした応急活動を地震発生直後から行うためには、救助・救急や消火活動などの実施に必要な道路の啓開活動が不可欠であります。

 このため、本年度は、緊急輸送道路を中心に、被害想定に基づく啓開の難易度を考慮しながら、災害拠点病院などの優先度の高い防災拠点に通じる啓開ルートの選定を進めてまいりました。

 来年度中には、これまでの取り組みを踏まえ、建設業界などの協力の下、地域ブロック単位の道路啓開計画を策定するとともに、策定後は、不断の見直しを行いながらより実効性のある計画にバージョンアップを図ってまいります。

 ク 組織体制の強化

 こうした地震発生直後や応急期の対策を進めていくためには、地域地域でしっかりと対策に取り組むことが非常に重要であります。

 このため、来年度から、5つの地域に合計17人の専任職員を配置し、南海トラフ地震対策推進地域本部として、総合防災拠点の整備や訓練の実施、各地域の関係機関と連携した体制づくりなどに取り組んでまいります。このほか、これまで申し上げた津波避難計画や医療救護計画、道路啓開計画の策定や見直しなど、地域の状況を踏まえなければならない課題について、これらの専任職員が、地域に入り、その実情を計画に反映させてまいります。

 また、地震発生時には、この地域本部が災害対策支部として活動することとし、総合防災拠点を速やかに開設するほか、情報の収集と市町村の支援の調整などを行ってまいります。

 このように、南海トラフ地震対策を進めるための組織を地域へ前方展開することにより、市町村や地域の皆様と一緒に防災力の向上に取り組んでまいります。

 

(3)日本一の健康長寿県づくり

 

 次に、日本一の健康長寿県づくりについてご説明申し上げます。

 ア 長寿県構想の改訂

 日本一の健康長寿県構想につきましては、本県の目指す姿の実現に向け、個々の取り組みの実効性をより高めるため、PDCAサイクルによる検証を行い、今月、第2期のバージョン3として、さらなる改訂を行ったところであります。

 イ 保健分野の取り組み

 この改訂のポイントについて、まず、保健の分野からご説明申し上げます。

 (ア)がん検診の受診促進

 働き盛りの壮年期の死亡率の改善策の一環として、がん検診の受診促進に取り組んでまいりました結果、受診率が向上するなど一定の成果が表れてまいりました。

 特に、40歳代、50歳代の肺がんや乳がんの検診受診率は、平成24年度はそれぞれ48.9パーセント、48.7パーセントとなり、目標としております50パーセントにあと少しの状況となっております。

 来年度は、住所地に関係なく市町村がん検診を一度に受診できるセット検診日を本年度の2倍に増やすことや、事業所の従業員の皆様が定期健康診断時にがん検診を受診できるよう、個別通知などによって事業主の皆様への働きかけを強化することにより、受診率の向上を図り、がんの早期発見・早期治療につなげてまいります。

 (イ)薬局や薬剤師を核とした健康づくり

 また、来年度は、地域における健康づくりを支援するため、薬局の皆様にご協力いただきながら新たな仕組みづくりを進めてまいります。

 具体的には、県内に約400ある薬局に呼びかけ、ご協力いただける薬局を「高知家健康づくり支援薬局」として認定し、県民の皆様の日頃の健康相談や、がん検診・特定健診の受診勧奨、医薬品の適正使用に関する相談、タバコをやめたい方への禁煙支援などを行っていただきます。

 (ウ)子どもの頃からの健康的な生活習慣定着の推進

 さらに、県民の皆様が生涯にわたり、健康的な生活を送るためには、子どもの頃から健康に関する知識を習得し、実践する力を身に付けることが重要であります。このため、教育委員会と連携し、小中高校生の一部の学年を対象に本年度から実施しております学校での健康教育を、来年度は、小学校から高校までの全ての学年を対象にするとともに、それぞれに応じた教材を作成・活用することにより健康教育の充実を図ってまいります。

 あわせて、学校関係者や保健師などを対象とした研修会の開催などを通じて、家庭・学校・地域が連携し、地域全体で子どもの頃からの健康的な生活習慣の定着を図る取り組みを推進してまいります。

 ウ 医療分野の取り組み

 次に、医療の分野についてご説明申し上げます。

 (ア)救急医療連携体制の強化

 救急医療につきましては、傷病者の方が救急車で搬送される際に、受け入れ先の医療機関の決定や到着までの時間が長くなる傾向にあるといった課題に対応していくため、本年度は、情報通信技術を活用した救急医療の連携体制について検討を行ってまいりました。

 その検討結果を踏まえ、来年度は、救急隊と医療機関との情報共有機能を強化することにより、救急医療体制の充実を図ってまいります。

 具体的には、県内の全ての救急車にタブレット端末を搭載し、搬送実績の情報を他の救急隊や医療機関と共有することにより、スムーズな搬送先の選定を可能といたします。また、デジタルペンや救急車内に搭載する天井カメラなどを活用し、救急車内の傷病者の情報をタイムリーに医療機関と共有することにより、スムーズな治療の開始にもつなげてまいります。この新たな情報共有の仕組みについては、現行の情報システムの改修を行った後、試験運用期間を経て、平成27年4月からの運用を目指してまいります。

 (イ)医師の育成支援・人材確保施策の推進

 これまで、高知医療再生機構との連携による事業実施や地域医療支援センターの運営などを通じて、医師を確保・育成する仕組みづくりに鋭意取り組んでまいりました。こうした取り組みにより、本年4月に県内医療機関で採用が予定されております初期臨床研修医の数は、これまで最高であった50人を上回る58人になりました。また、中央部以外の保健医療圏における医師の増加や、小児科、麻酔科など特に確保が必要な診療科の医師の増加など、これまでの取り組みの成果が見え始めております。

 来年度は、引き続き、県外からの医師の招へいや奨学金制度などの医師確保対策に取り組むとともに、今後増加が見込まれる奨学金を受給した若手医師の方々に高知の医療を支えていただけるよう、キャリア形成のための研修プログラムを順次作成することや専任職員の設置による相談体制の整備など、若手医師の育成に重点を置いたきめ細かな施策を強化してまいります。

 (ウ)在宅医療の推進

 在宅医療の推進につきましては、各地域において、医師や看護師、ケアマネジャーなどの方々を地域リーダーとして養成するとともに、地域リーダーを中心とする医療と介護の連携の強化に重点を置いた取り組みを進めているところであります。

 さらに、来年度は、在宅医療に不可欠な訪問看護サービスの提供が不足する中山間地域などを対象に、医師会や訪問看護ステーション連絡協議会などのご協力をいただきながら、訪問看護師の派遣調整や不採算経費への支援などに取り組むことにより、サービス提供体制の充実を図ってまいります。このような取り組みを通じて、県内のどの地域においても在宅医療が選択できる環境を目指してまいります。

 (エ)あき総合病院のオープンについて

 整備を進めておりましたあき総合病院につきましては、本年4月1日から、新病院での診療を開始する運びとなりました。

 医師の確保につきましては、計画しておりました医師数にはまだ達していないものの、新病院の機能を発揮するために必要な診療体制は、高知大学医学部をはじめとする関係者の皆様からのご支援とご協力により、概ね整えることができました。この場をお借りしまして、厚くお礼申し上げます。引き続き、関係者の皆様のご協力をいただきながら、医師の確保に取り組んでまいります。

 新病院は、県東部地域の中核病院として、入院や手術などの急性期医療の中心的な役割を担うこととなり、さらに、新たに屋上に設置したヘリポートを活用するなど救急医療体制の充実にも努めていくこととなります。加えて、大規模な災害が発生した場合には災害拠点病院として、また、地域医療に欠かせない総合診療専門医の養成拠点としての役割も果たすこととなるものであります。

 エ 福祉分野の取り組み

 次に、福祉の分野についてご説明申し上げます。

 (ア)高齢者などを支える地域福祉の仕組みづくり

 先週、介護保険法の改正などを含む社会保障制度改革に関連する一括法案が、国会に提出されました。

 この中の、要支援の高齢者が利用する訪問介護と通所介護サービスの市町村事業への移行に関しましては、県としても、しっかりとサポートしていく必要があるものと考えており、各地域で必要とされるサービスが確実に提供・確保できるよう、サービス確保に向けたセミナーの開催や、指導・助言を行うアドバイザーの派遣などを通じて、市町村への積極的な支援に努めてまいります。

 あわせて、今後、高齢化の進行に伴い認知症の増加が見込まれますことへの対応といたしまして、来年度から、認知症疾患医療センターや地域包括支援センターなどと行政が協力して、早期の診断から医療・介護サービスへとつなぐモデル事業を実施することにより、地域の実情を踏まえた高知型の初期集中支援体制の構築を目指してまいります。

 (イ)福祉人材の育成

 また、今後ともニーズが増大します福祉・介護分野の人材の確保対策につきましては、来年度から、福祉研修センターと福祉人材センターの連携により、未経験者や出産、子育てを経て復職を希望される方々を就労につなげるための研修メニューや職場体験などの取り組みの充実を図ってまいります。加えて、人材センター職員のハローワークへの配置やハローワーク求人情報端末の人材センターへの設置など、ハローワークとの連携強化を図ることにより、新たな人材の掘り起こしとマッチング機能の強化にも取り組んでまいります。

 さらには、県内の福祉教育推進校などと連携したキャリア教育の取り組みを推進いたしますとともに、福祉・介護職場における就労環境の改善に向けて、施設が従事者の身体的な負担を軽減するために実施する福祉機器のリフトや電動ベッドの整備などの取り組みを支援してまいります。

 (ウ)自殺対策行動計画の改定

 自殺対策につきましては、連年の取り組みを進めてまいりました結果、全国と同様に自殺者数の減少傾向が見られてはおりますものの、自殺死亡率を見ますと、依然として全国に比べて高い水準にあります。

 こうした中、高知県自殺対策行動計画の見直し作業を通じてこれまでの取り組みの検証と分析を行った結果、中山間地域において自殺死亡率が高止まりしている状況が明らかになりました。このため、地域ごとの関係者によるネットワーク会議を活用した相談支援体制の強化などに、市町村との連携も図りながら取り組むこととしております。

 また、男性の高齢者と20歳代の自殺者が増加していることなどの課題に対しましては、悩んでいる人に気付き、声かけや見守りなどを行うゲートキーパーのスキルアップを図るとともに、若者向けのゲートキーパーの養成などにも取り組んでまいります。

 こうした、地域ぐるみの自殺防止対策につながる取り組みを重点的に推進することにより、地域全体で見守り支え合うネットワークの構築を目指してまいります。

 (エ)非行防止対策

 昨年6月策定の「高知家の子ども見守りプラン」に基づく少年非行防止対策につきましては、来年度から、3つの重点課題を掲げて取り組みを強化することとしております。

 一つ目は、民生・児童委員などと学校・家庭が連携した地域での見守り活動の仕組みづくりとその定着及び普及の促進に向けた取り組みであります。

 二つ目は、深夜に徘徊する少年の減少と万引き防止に向けた官民協働の取り組みの強化であります。昨年末に県内のコンビニエンスストア5社のご協力を得てスタートいたしました一声運動の取り組みなどにより、子どもたちを地域で見守り育て、非行に向かわせない環境づくりを進めてまいります。

 三つ目は、少年サポートセンターと中央児童相談所などとの連携強化による、少年非行の相談援助と立ち直り支援の機能強化に向けた取り組みであります。来年度から児童心理司などの福祉専門職員を少年サポートセンターに新たに配置し、心理的アプローチを実施することなどにより、少年非行の初期の段階からの対策を充実してまいります。

 今後とも、こうした取り組みを通じて、関係する部局などが連携を図りながら、効果的な少年非行の防止対策に取り組んでまいります。

 

(4)教育の充実

 

 次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。

 ア 学力向上に向けた取り組み

 学力につきましては、昨年4月に実施されました全国学力・学習状況調査の結果からも、本県の児童生徒の学力は着実に向上しており、これまで各学校において、学校改善プランを基に講じてまいりました単元テストや学習シートといった教材の活用や、放課後や家庭での学習の充実などの取り組みの成果が表れているものと感じております。

 こうした中、先月、本県独自の学力定着状況調査を、これまでの小学校5年生と中学校2年生に、小学校4年生と中学校1年生も加えて実施いたしました。国の調査と併せて、小学校4年生から中学校3年生までの全6学年で児童生徒の学力の定着状況を正確に把握するとともに、これらの調査結果を詳細に分析し、その分析結果を各学校にフィードバックすることにより個々の授業のさらなる改善につなげてまいります。

 さらに、来年度からは、各学校において中期的な視点に立った学校経営計画が策定され、この計画に基づいた組織的な取り組みが強力に推し進められることとなります。加えて、算数・数学や外国語を担当する教員を対象として、教科の専門力や授業の実践力の向上を目指し、教育センターにおいて集中的な研修を行うなど、より質の高い授業づくりを目指してまいります。

 イ 子どもたちの心の問題への対応(いじめ問題への対応)

 いじめ防止対策につきましては、県のいじめ防止基本方針の策定に向け、昨年12月に検討委員会を立ち上げ、各分野の専門家や教育関係者などからご意見をいただきながら、検討を進めてまいりました。

 委員の皆様からは、いじめを防止するためには、子どもたちの自尊感情や社会性を育むためのキャリア教育、道徳教育の充実が必要であること、また、いじめを早期に発見し適切に対処するためには、子どもや保護者が気軽に相談できる体制の充実も重要であることなど、幅広い視点からのご意見をいただいております。

 こうしたご意見を踏まえ、先月には、本県の実情に即した具体的な対策などを盛り込んだ基本方針の案を取りまとめたところであります。今後、県民の皆様のご意見もいただいた上で、実効性のある基本方針を策定し、市町村、学校、家庭、地域が密接に連携した県民総ぐるみの取り組みにつながるよう、努めてまいります。

 ウ 体力・運動能力向上に向けた取り組み

 昨年12月に公表されました平成25年度の全国体力・運動能力、運動習慣等調査では、小学校5年生の体力合計点は、ほぼ全国水準まで伸びており、特に、女子は全国順位が初の20番台となるなど、体力・運動能力の向上に向けたこれまでの取り組みの成果が確実に表れております。

 他方、中学校2年生は、調査が始まった平成20年度からは大きく伸びているものの、依然として全国との差は大きい状況にあり、小中学校共に、運動時間が全国平均を下回っているという課題も明らかになりました。

 そのため、今後は、体育授業の充実に向けた研修会の実施をはじめ、地域の人材を活用した体育授業やクラブ活動の推進などにより、中学校における体力の向上や児童生徒の運動時間の増加を図ります。また、よさこい健康プラン21に基づき、体力向上の基礎となる健康的な生活習慣の定着を目指した取り組みを進めるとともに、先ほど申し上げました健康教育の充実も図ってまいります。

 エ 高校生の社会性の育成等

 本県の高校生に関しましては、中途退学や就職後早期に離職する割合が全国に比べて高く、その要因として、基礎学力が身に付かないまま高校に入学したため学習についていけない、友人との人間関係を円滑に作り上げられない、卒業までに十分な勤労意欲やコミュニケーション能力が育成できていないといったことなどが挙げられます。

 こうしたことから、入学後の早い段階から生徒一人一人の課題に応じた、学習面や生活面でのきめ細かな支援を行っていくため、まずは、中途退学率の高い10校を重点校に指定し、各学校において、本年度中に中途退学者を半減させるプランを作成することとしております。来年度からは、このプランに基づいて、スクールカウンセラーの派遣や学習支援員による補習授業、生徒一人一人に応じたキャリアカウンセリングの実施など、課題解決に向けて、総合的な支援を行ってまいりたいと考えております。

 あわせて、生徒たちがしっかりとした勤労観やコミュニケーション能力を身に付けることができるよう、社会性を育むためのプログラムの開発や、職業観・勤労観を養うための研修の強化などに取り組んでまいります。

 オ 県立高等学校再編振興計画

 教育委員会では、昨年2月に県立高等学校再編振興検討委員会からいただいた報告書を踏まえ、今後10年間の県立高等学校のあり方と方向性を示す県立高等学校再編振興計画の策定に向けた協議を重ねております。

 これまでの協議により、生徒数の大幅な減少といった環境の大きな変化を見据えた再編振興の基本的な考え方について、一定の取りまとめを行っております。

 現在は、高知南高校と高知西高校を統合し、グローバル人材の育成や震災に強い教育環境を整えることや、須崎高校と須崎工業高校を統合し、適正規模の維持と震災への対策を図ることなど、具体的な内容を盛り込んだ実施計画のたたき台を作成し、それを基に議論を進めているところであります。

 こうした、たたき台の内容につきましては「グローバル人材の育成や震災対策は重要な課題である」といったご意見がある一方で、当該学校関係者の方々からは「なぜ学校の統合が必要なのか、なぜこの学校なのか」といったご意見もいただいているところであります。

 このため、今後、教育委員会におきましては、より具体的で分かりやすい情報の提供に努めるとともに、学校関係者をはじめ、県民の皆様のご意見もお聞きしながら、丁寧な議論を重ねた上で、県立高等学校の再編振興計画を取りまとめていくこととしております。

 

(5)インフラの充実と有効活用

 

 次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。

 ア 四国8の字ネットワークの整備

 来月9日、高知東部自動車道の香南のいち・香南かがみ間が開通することとなりました。この区間の開通によりまして、香南のいち・芸西西間が国道55号に直結することから、昨年度に四国横断自動車道の中土佐・四万十町中央間の開通が県西部地域への誘客を後押ししたように、県東部地域の活性化に貢献するものと期待しております。加えて、災害時の国道55号のバックアップ機能の確保や地域の要望による津波避難場所の設置など、防災面についても高規格道路の効果が、より一層発揮されるものと考えております。

 また、四国横断自動車道の黒潮町佐賀・四万十市間、阿南安芸自動車道の北川村安倉から徳島県牟岐町に至る区間において、昨年12月から事業化に向けた最初のステップとなる計画段階評価がスタートいたしました。このことは、平成24年度から国に行ってきた政策提言が実を結んだものであり、今後、県といたしましても国に協力しながら速やかに所定の手続きを行い、早期の事業化が図られますよう全力で取り組んでまいります。

 イ 建設業の活性化への取り組み

 建設業界のコンプライアンスの徹底につきましては、業界団体や各事業者共に、それぞれの計画や基本方針に基づき、着実に取り組まれているところであり、引き続きこれまでの取り組みの継続と効果の検証、改善を行っていただくことが重要だと考えております。

 他方、長年にわたる公共事業の大幅な縮減に伴う、若者の労働力の減少や従事者の高齢化の進行、経営規模の小規模化などにより、建設業全体ではその施工力が低下しております。加えて、材料不足や資材単価の高騰、労務単価の上昇などにより、入札の不調・不落も増加しており、こうした状況が続けば、将来にわたる社会資本整備や南海トラフ地震などの災害対応に支障が生じることも危惧されるところです。

 このような課題認識の下、このたび「高知県建設業活性化プラン」を取りまとめました。その中では、入札の不調・不落への対応、県内建設業の活性化への支援、コンプライアンスの確立を3つの柱として、建設業の新たな展開を目指した取り組みを進めることとしております。

 一つ目の柱である入札の不調・不落への対応としまして、実勢価格を速やかに積算価格に反映する仕組みづくりや工事の平準化に向けた繰越制度の活用、人材不足に対応するための主任技術者の兼任要件の緩和などに取り組んでまいります。

 二つ目の柱である県内建設業の活性化への支援としまして、県内建設業者の新技術の開発と施工力の向上の支援に取り組んでまいります。

 新技術開発の支援については、新たな技術開発を目指す事業者へのサポートを行うための支援窓口を創設いたします。この窓口を通じて、課題や取り組みの段階に応じた適切な指導・助言のできる支援アドバイザーの派遣や防災対応に係る新技術の研修の実施などのきめ細かな支援を行ってまいります。こうしたことにより、県外展開もできる独自の技術を持つオンリーワンを目指す企業の後押しを行ってまいりたいと考えております。

 また、施工力向上の支援については、インフラ点検技術や防災技術、マネジメント技術といった技術力や経営力の研修の実施と拡大を図るとともに、未来の建設業を支える人材の確保に向けた建設業の魅力発信の支援などを行ってまいります。こうしたことにより、高い施工力と強い経営能力を持つ、底力のある建設業者を目指す企業をサポートしてまいります。

 三つ目の柱であるコンプライアンスの確立につきましては、全ての取り組みの前提となるものであることから、建設業界におきましては、引き続き取り組みの検証と改善を行うとともに、研修の充実などに取り組んでいくこととしております。県としましても、職員への研修などを行うとともに、建設業界の取り組みの検証と支援を行ってまいります。

 ウ 高知新港の高台整備

 高知新港につきましては、平成24年12月に策定しました高知新港振興プランに基づき、さらなる利活用を図るための取り組みを進めております。

 来年度は、プランの戦略の一つであります企業誘致方策に沿って、最大クラスの津波においても浸水しない安全な高台企業用地の整備を進めることといたしました。全体計画面積4.5ヘクタールのうち、まずは、第1期分となる3.4ヘクタールの整備に着手し、平成27年度末の分譲を目指してまいります。この高台企業用地は、東日本大震災後、沿岸部における企業誘致の際に何よりも求められております津波対策にしっかりと応えるものであるとともに、高知新港で働く方々などの避難場所の確保や、南海トラフ地震発生後の防災拠点としての活用にも寄与するものであります。

 この春には、高知新港の水深12メートル岸壁や水深11メートル耐震強化岸壁が供用を開始する予定であり、今後は、企業誘致活動の中でこうした大型岸壁に近接していることや高速道路へのアクセスの利便性をアピールすることにより、港湾の活性化、雇用の促進など県内産業の振興につながるような企業誘致を目指してまいります。

 

(6)中山間対策について

 

 次に、中山間対策についてご説明申し上げます。

 中山間対策につきましては、昨年度から取り組みを抜本強化し、全庁を挙げて取り組みを進めてまいりました。

 特に、集落の維持・活性化や地域の支え合いの仕組みづくりの拠点として様々な役割を果たします集落活動センターの取り組みを、中山間対策の核として全力で進めてきたところであります。

 現在、集落活動センターは、3市7町の計11カ所で開設されており、来月には、新たに梼原町の四万川区と三原村の2カ所で開設される予定となっております。また、他の地域でも来年度以降の開設に向けた準備が着実に進められているところであります。

 すでに開設されたセンターでは、高齢者の見守り活動や地域資源を生かした特産品づくり、農産物の生産・販売、あるいは観光・交流の取り組みといった、それぞれの地域の実情に合った多様な取り組みが展開されており、私自身も一定の手応えを感じているところであります。

 しかしながら、集落活動センターの県内各地への周知や普及という点では、まだまだ課題もありますことから、来年度は、集落活動センターの取り組みのさらなる拡大に向けて、より地域に軸足を置いた支援体制の充実・強化を図りたいと考えております。

 具体的には、産業振興推進地域本部に集落支援を担当する課長補佐級の職員を新たに配置し、市町村や地域支援企画員、出先機関と連携しながら、センターの取り組みの着手に向けた地域の掘り起こしや計画づくり、さらには立ち上げの準備や活動の充実に向けた支援など、構想・計画段階から立ち上げ後の自立に至るまで、総合的かつきめ細かく支援する体制を整えてまいります。

 また、集落活動センターの取り組みの可能性を広げていくためには、地域資源を生かした従来の取り組みなどと併せて、外部からの新しい視点やアイデアを地域地域に取り入れるような仕組みづくりを進めていくことも大変重要であります。

 このため、地域独自の視点や自発的なアイデアによる地域主体の取り組みに加えて、地域ごとにふさわしいビジネスプランを提案し、中山間地域に新しい力を導入していくような取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 さらに、中山間地域における産業や地域活動の担い手を確保し、集落に活力をもたらしていくためには、地域外から多くの「人財」を積極的に誘致するなどの移住促進策としっかりと連動させていくことも大変重要であります。

 高知ふるさと応援隊の導入をはじめ、廃校などの遊休施設を活用したシェアオフィス事業や、中山間地域の商店街の空き店舗での起業を支援する事業などと連携して取り組みを進めてまいります。

 なお、先月27日には、これまでの誘致活動が実を結び、四万十市と四万十町の2カ所に、合わせて100名規模のコールセンターの進出が決定いたしました。県内でもとりわけ若い世代の定着が難しい中山間地域で、これだけ大規模な雇用が実現いたしますことは誠に画期的なことで大変うれしく、地元の皆様からも地域に活気が戻ってくると大きな期待が寄せられております。

 今後とも、このような取り組みも合わせて進めていくことにより、中山間地域の活性化につなげてまいります。

 

(7)少子化対策・女性の活躍促進

 

 我が国の将来に国家的な危機をも招きかねない少子化の問題につきましては、私も全国知事会次世代育成支援対策プロジェクトチームのリーダーとして、全国知事会を代表し、抜本的な対策の強化を国に訴えてまいりました。その結果、国の補正予算において、地方独自の取り組みを後押しする地域少子化対策強化交付金が創設されることとなりました。

 本県としましても、この交付金を活用し、県民の皆様の出会い、結婚、妊娠・出産、子育て、就労などといったライフステージの各段階に応じた相談内容に切れ目なく対応し、最適な窓口にワンストップでつなぐ総合相談窓口の設置に取り組みますとともに、結婚を希望する独身の方々へのきめ細かな相談・支援サービスを併せて提供することにより、未婚化・晩婚化対策の一層の強化を図ってまいります。

 また、今月13日には、平成27年度に施行予定の子ども・子育て支援新制度への円滑な移行に向けて、第2回高知県子ども・子育て支援会議を開催し、事業計画の骨子などについて活発な議論を行っていただいたところであります。こうした一連の取り組みを通じて、若い世代の方々が、結婚したいという希望を叶え、安心して出産し、仕事と子育てを両立できる環境づくりを強力に推進してまいります。

 女性の就業促進を図ることもまた、極めて重要な課題であります。

 このため、子育て中の女性など今後潜在的に就労する可能性のある女性や、就職活動をしているものの、なかなか就労に結び付かない女性などを対象とした相談窓口を男女共同参画センター「ソーレ」に新たに設置し、本人の適性や経歴などに応じた面談や、働くために必要な情報の一元的な提供、求人側のニーズに対応した研修の実施など、就労に向け幅広く、かつ、きめ細かく支援してまいります。また、出産を機に退職した女性を正規雇用した企業への補助金制度の創設や、土佐まるごとビジネスアカデミーとの連携による女性の起業支援のための講座の実施などにも取り組んでまいります。

 こうした取り組みを通じて、就労を希望する女性が多様なライフステージを通して働き続けられる環境づくりに取り組んでまいります。

 

3 その他

 

(1)まんがを切り口とした新しいイベントの開催

 本県は、多くの漫画家を輩出するとともに、20年以上の歴史を持つまんが甲子園の開催を通じた人材育成や、鳥取県と共催いたしました東京秋葉原でのまんが王国会議の開催など、まんがを生かした様々な取り組みを全国に先駆けて行ってまいりました。

 こうした中、来年2月には、新たな取り組みとして、「まんが王国・土佐」に多くの漫画家の方にお集まりいただき、まんが文化を語り深めていただくことにより、日本のまんが文化を盛り上げるとともに、「まんが王国・土佐」の魅力を全国に情報発信するイベントを開催することといたしました。

 これまでの、夏のまんが甲子園、秋のまんさいやまんが王国会議に、この冬のイベントを加え、年間を通じた切れ目のない取り組みとすることにより、「まんが王国・土佐」を強力にアピールし、全国の多くのまんがファンに本県を訪れていただけますよう取り組んでまいります。

(2)新図書館等複合施設などの整備について

 新図書館等複合施設及び新資料館の整備につきましては、昨年実施いたしました建築主体工事の入札が不調となりましたことから、その要因を分析し、対策を検討してまいりました。

 入札不調の大きな要因は、全国的に公共事業や建築工事の需要が増加する中、技能労働者の確保が難しくなっていることや、資材や建設機械の調達などに伴う実勢価格と設計単価による積算価格に大きな差が生じていることにあると分析しております。

 このため、工事費の算出にあたりまして、積算価格への実勢価格の反映や、十分な工期の確保などの見直しを行った上で、改めて今議会に所要の予算を提案させていただいております。

 これらの施設は、生涯学習や文化の発展に寄与する知的・文化的な基盤としての役割を担うものであり、今後、運営体制や具体的なサービスなどについてさらに検討を深め、平成28年度中の開館を目指して着実に取り組んでまいります。また、周辺地域の皆様による新しいまちづくりを進めようという機運の盛り上がりもありますことから、永国寺キャンパスと併せて、まちづくりの中核的役割を担う施設ともなるよう、整備を進めてまいります。

(3)高知龍馬マラソン2014

 市民参加型のマラソン大会として2回目となる「高知龍馬マラソン2014」が、今月16日に開催されました。大雪の影響により、多くの方が参加できなかったことは残念でしたが、前回大会の3,475人を大きく上回る4,853人のランナーが土佐路を駆け抜けました。

 当日は、沿道での様々なスタイルによる応援、「高知家」ならではの温かいおもてなしなどにより、多くの県民の皆様に盛り上げていただき、参加されたランナーの皆様からは、感謝の言葉や感動のメッセージが多数寄せられております。

 本大会の開催にあたり、当日のみならず、準備・運営にご協力いただきましたボランティアスタッフや各種団体の皆様方、長時間の交通規制にご理解・ご協力くださいました多くの県民の皆様に心より感謝申し上げます。

 本大会が高知の魅力をさらに高め、全国に誇れる市民マラソン大会となるよう、来年度以降も、関係団体と共にしっかりと取り組んでまいります。

(4)土佐電気鉄道株式会社の新経営体制と中央地域の公共交通再構築

 土佐電気鉄道株式会社の一連の問題につきましては、外部調査委員会からの指摘・提言を受けて以降、規程類やチェック体制の整備などのコンプライアンスの徹底に向けた取り組みが着実に進められていることに加え、このたび新体制の下、新社長より、「全社一丸となって信頼回復に努めていく」との所信表明がされましたことから、関連予算の執行凍結の解除をお願いさせていただきました。

 県といたしましては、今後の同社のコンプライアンスの徹底とコーポレートガバナンスの確立に向けた取り組みに対し期待するとともに、随時、信頼回復に向けた取り組み状況を確認するなど、引き続きその動向に留意してまいります。

 他方、中央地域の公共交通再構築の検討につきましては、現在、事業者をはじめとする関係者が協議を進めているところであり、本年度末をめどに再構築のスキーム案を取りまとめることとしております。

 県としましても、県民の生活を支える交通ネットワークとして、子育て世代や高齢者はもとより、本県を訪れる皆様にとっても利用しやすく、多くの方々に利用されるがゆえに将来にわたって持続可能なものとなりますよう、公共交通の確保とその機能の向上を目指し、しっかりと役割を果たしてまいりたいと考えております。

 

4 議案

 

 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。

 まず予算案は、平成26年度高知県一般会計予算など37件です。

 このうち一般会計予算案は、先ほど申し上げました5つの基本政策を推進するための経費などを中心に、4,527億円余りの歳入歳出予算などを計上しております。

 条例議案は、高知県手数料徴収条例等の一部を改正する条例議案など53件であります。

 その他の議案は、包括外部監査契約の締結に関する議案など8件であります。

 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。

 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

 

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