公開日 2015年06月30日
平成27年6月高知県議会定例会での知事提案説明 (6月26日)
1 これまでの4年間を振り返って
(対話と実行行脚について)
(高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略の推進について)
3 経済の活性化について
(1)産業振興計画
(2)「地産」の取り組み強化
ア 第一次産業のステージアップ
(ア)農業分野
(イ)林業分野
(ウ)水産業分野
イ ものづくりの振興
ウ 産学官民連携によるイノベーションの創出
(3)「外商」の取り組み強化
ア 外商活動の全国展開の強化と輸出振興の本格化
イ 400万人観光の定着と国際観光の抜本強化
(4)地産外商の成果を拡大再生産へ
(林業学校)
(事業承継・人材確保センター)
(5)移住促進
(1)「命を守る」対策
ア 津波避難対策・山津波対策
イ 地震火災対策
(2)「命をつなぐ」対策
ア 避難所確保と避難所運営
イ 道路啓開計画
ウ 災害時医療救護体制の強化
(3)地域における地震対策の推進
(4)四国8の字ネットワークの整備について
(1)日本一の健康長寿県構想の推進
(2)保健分野
(3)医療分野
(4)福祉分野
(厳しい環境にある子どもたちへの支援)
6 教育の充実について
(1)知徳体の取り組み
(2)厳しい環境にある子どもたちへの支援
(3)総合教育会議の設置
8 少子化対策と女性の活躍の場の拡大について
(少子化対策)
(女性の活躍の場の拡大について)
9 その他
(エネルギー政策について)
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成27年6月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
1 これまでの4年間を振り返って
私は、知事就任以来、本県が直面する大きな2つの課題を真正面から受け止め、全力で挑戦を続けてまいりました。
一つ目の課題は、全国に先行した人口減少による経済の縮みが、若者の県外流出と特に中山間地域の衰退を招き、さらに経済が縮むことで県民の皆様の暮らしが一層厳しくなるという、人口減少による負のスパイラルをいかにして克服するかということであります。
二つ目の課題は、東日本大震災を契機に改めてその対策の重要性が明らかとなった南海トラフ地震にいかに立ち向かっていくかということであります。
こうした課題に対しまして、これまで、経済の活性化や南海トラフ地震対策をはじめとする5つの基本政策と、中山間対策の充実・強化や少子化対策の抜本強化と女性の活躍の場の拡大といった横断的な2つの政策に積極的に取り組んできたところです。
その結果、人口減少による負のスパイラルの克服という課題に関しては、例えば、産業振興計画の取り組みによって地産外商が進むとともに、あったかふれあいセンターに代表される高知型福祉のネットワークも県内各地に広がってまいりました。また、南海トラフ地震対策に関しては、避難路、避難場所の整備など津波避難対策が一定進展するとともに、道路啓開計画の策定や災害時の医療救護体制の強化など応急期初期の対策もスタートしています。
しかしながら、取り組みが前に進んだがゆえに、新たな課題にも直面していると感じております。経済の活性化については、地産外商は一定進展したものの、その成果を新たな設備投資や雇用の創出に力強くつなげていくためには、担い手の不足という新たな壁を克服することが必要であります。また、南海トラフ地震対策についても、命を守る対策の一層の徹底を図る必要があるとともに、命をつなぐ対策をより深く掘り下げ、かつ具体化していく必要もあります。
このように、県勢浮揚を力強く果たしていくためには、県政において、より一層の努力が求められる状況だと考えております。
今後、これらの課題を克服するために、私としては、2つの基本方向を堅持していく必要があると考えております。一つ目は、「対話と実行」を基本として、県政に県民の皆様の声を反映させながら、官民協働、市町村政との連携協調をさらに推し進めていく姿勢であります。そして二つ目は、人口減少による負のスパイラルといった構造的な課題を解決するために、県庁全体で課題に真正面から取り組み、施策間連携を徹底して総合力を発揮させることであります。
(対話と実行行脚について)
第一の点に関しては、私はこれまで、この「対話と実行」を県政運営の基本姿勢とし、県民の皆様との対話を通じて地域地域の実情を学ばせていただき、必要と考えられる施策を、官民協働や市町村政との連携協調により、スピード感を持って実行するという姿勢を貫いてまいりました。
産業振興計画や日本一の健康長寿県構想などの取り組みが本格的な実行段階に入ってきた平成24年度からは、実行段階に入ったからこそ「対話と実行」の姿勢がなお一層重要になっているとの考えの下、地域の皆様の取り組みや率直なご意見を市町村ごとに1日かけてじっくりとお伺いする「対話と実行行脚」を行い、今月、全ての市町村、283地域での行脚を終えたところであります。
地域で多くの方々や関係市町村の皆様にお世話になり、県勢浮揚に向けたお知恵とお力を賜りましたことに、改めて厚くお礼申し上げます。
行脚の3年余りを振り返りますと、現場を見させていただきつつ、様々な体験や延べ1,600人を超える方々との意見交換をさせていただいて、百聞と一見を共に得ることができ、非常に有意義であったと考えております。
例えば、海の近くにある保育所の津波避難訓練に参加し、園児たちと一緒に裏山の高台までの山道を駆け上がり、その道が極めて急峻であることを体感して、子どもたちの命を守るためには高台移転が急務であることを実感いたしました。また、中山間地域にあるお茶の産地では、後継者が不在となった地区全体の茶園を維持管理し、産地を守ろうと奮闘している一人の若者の姿に感動を覚えるとともに、改めて中山間地域における担い手確保の必要性を痛感いたしました。
対話と実行行脚を通じて必要性を学んだ事柄については、県の施策にできるだけ反映するべく努めてまいりましたが、地域には、まだまだ多くの課題が残されているのも事実であります。今後とも「対話と実行」の基本姿勢の下、県民の皆様のお知恵を賜りながら、努力を重ねてまいる所存であります。
(高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略の推進について)
第二の点に関しては、去る3月26日、全国の都道府県に先駆け、5つの基本政策と横断的な2つの政策を総合的に組み合わせる形で「高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定いたしました。
この総合戦略では、本県の目指すべき姿として、「地産外商が進み、地域地域で若者が誇りと志を持って働ける高知県」を掲げ、その実現を目指し、「地産外商により安定した雇用を創出する」、「新しい人の流れをつくる」、「若い世代の結婚・妊娠・出産・子育ての希望をかなえる、女性の活躍の場を拡大する」、「コンパクトな中心部と小さな拠点との連携により人々のくらしを守る」という4つの基本目標を設定しております。
市町村とも連携協調しながら、この総合的な施策体系の下、人口減少による負のスパイラルの克服に向け、全力で取り組んでまいります。
また、南海トラフ地震対策についても、命を守る対策、命をつなぐ対策を進めるとともに、県民の皆様の安全・安心の確保と県経済の活性化を同時に実現していくため、防災関連産業の振興を図るなど総合的に取り組んでまいります。
国におきましては、現在、「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」の策定に向けた議論が進められております。引き続き、国の施策が本県の県勢浮揚に向けた施策の大きな後押しとなりますよう、国の動向を注視しながら機を捉えて積極的に政策提言を行い、「新型交付金」や各種の施策などに本県の意見を反映させていきたいと考えております。
2 6月補正予算について
今議会では、5つの基本政策の着実な推進などのため、総額2億9千万円余りの歳入歳出予算の補正及び総額4億円余りの債務負担行為の追加を含む一般会計補正予算案を提出しております。
第一に「経済の活性化」に関しては、本年4月に基礎課程及び短期課程を開講した林業学校につきまして、専攻課程開講に向けた施設整備に着手するほか、紙産業技術センターにセルロースナノファイバー製造用設備を整備し、県内企業と一体となって紙産業の振興を図ってまいります。
第二に「南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化」に関しては、命を守る対策の新たな展開としまして、地震火災対策を進めてまいります。
第三に「日本一の健康長寿県づくり」に関しては、あったかふれあいセンターを活用した認知症カフェの設置などを支援してまいります。
第四に「教育の充実と子育て支援」に関しては、経済的に修学が困難な専修学校の生徒の授業料負担の軽減などについて、支援を充実してまいります。
第五に「中山間対策の推進」に関しては、大川村の集落活動センター及び村営住宅の超高速ブロードバンド環境の整備を支援してまいります。
このほか、再生可能エネルギーの地産地消の仕組みづくりに向けた調査研究を行い、再生可能エネルギーのさらなる導入を進めてまいります。
3 経済の活性化について
続きまして、平成27年度の県政運営の現状に関し、まず、経済の活性化について、これまでの取り組みと今後の方針についてご説明申し上げます。
(1)産業振興計画
これまで、産業振興計画の取り組みを通じ、本県経済の根本的な課題に真正面から向き合い、全力で挑戦を続けてきた結果、第2期計画の各分野で掲げた4年後の数値目標を概ね達成できる見込みであり、また、4月の有効求人倍率は過去最高の0.92倍となるなど、経済全体としても明るい兆しが見え始めてまいりました。
しかしながら、様々な取り組みが前に進んだ一方で、また新たな課題も見え始めてまいりました。特に、これまで全力で進めてまいりました一連の取り組みにより、各産業分野で新しい仕事が生み出されてきた結果、新たな担い手の不足という問題がむしろ深刻化してきているものと考えております。この担い手不足という問題は、今後、各産業分野で拡大再生産を図り、一層の雇用の拡大を図っていくためにも、何としても乗り越えなければならない喫緊の課題だと認識しております。
このため、本年度からは、これまで取り組んできた移住促進や人財誘致の取り組みと連動させながら、事業の後継者や中核人材の確保の取り組みを本格化させるとともに、第一次産業の担い手確保対策も強化したところであります。さらに今後、地域で不足する担い手を地域が育てる取り組みを県が支援するなど、もう一歩踏み込んだ担い手確保対策も検討してまいりたいと考えております。
こうした新たな課題に迅速かつ的確に対応しながら、今後も、「地産」と「外商」の取り組みをさらに強化し、その成果を「拡大再生産」につなげることで経済の好循環の流れを生み出すよう努めるとともに、産学官民連携センターによる様々なイノベーションの創出や第一次産業などを核とした産業集積化など、より大きな雇用を生み出すより骨太な取り組みにも挑戦してまいります。
次に、産業振興計画の各分野の取り組みに関し、まず、「地産」の取り組みについてご説明申し上げます。
(2)「地産」の取り組み強化
ア 第一次産業のステージアップ
(ア)農業分野
第一次産業のステージアップの取り組みにつきまして、まず、農業分野では、これまで、天敵導入などのIPM技術やオランダから学んだ環境制御などの先進技術を本県の実情に即して確立するとともに、昨年4月には四万十町に新規就農者の育成と先進技術の普及拠点となる農業担い手育成センターを開設したほか、隣接地では、4.3ヘクタールの次世代型施設園芸団地を来年8月の栽培開始に向けて整備しているところであります。
引き続き、高品質、高収量の生産によって若者が夢と希望を持てる農業の実現を目指していくためには、生産増、所得向上、担い手増という好循環をより確かなものにしていくことが課題であると考えております。そのため、先進技術を導入した「次世代型こうち新施設園芸システム」の県内全域への普及に努めるとともに、生産条件が不利な中山間地域の農業を守るため、集落営農や複合経営拠点の推進に取り組んでまいります。
(イ)林業分野
林業分野では、本県の豊富な森林資源を余すことなくダイナミックに活用する川上から川下までの一体的な取り組みを進めてきたことにより、大型製材工場が稼働を始めたほか、本年からは、県内2カ所で木質バイオマス発電施設が操業を開始するなど原木需要を拡大する仕組みが整いつつあります。
こうした取り組みの結果、昨年の原木生産量は61万立方メートルとなり、平成22年の40万4千立方メートルから飛躍的に伸びてまいりました。
今後は、さらなる原木増産という課題を克服するため生産性の向上と担い手の育成を図るとともに、CLTの推進による一層の需要拡大や低コストな流通体制の確立などに取り組んでまいります。
(ウ)水産業分野
水産業分野では、これまで、カツオなどの県内への水揚げの促進や養殖業の振興に加えて、都市圏での外商に取り組んできた結果、新たなカツオの活餌供給体制が動き始めるとともに、カンパチやクロマグロの人工種苗の生産技術の開発が進んだほか、高知家の魚応援の店については、5月末時点で379の都市圏の飲食店にご登録いただくなどの成果が見えてきております。
今後は、こうした今までの取り組みを土台として、人工種苗の技術開発による新たな中間育成ビジネスの創出につなげてまいりますほか、少量多品種である本県水産物の特性を生かして、都会の飲食店と本県の水産業に携わる事業者の皆様とのパイプの拡大に努めるなどしてまいります。
イ ものづくりの振興
ものづくりの振興については、設備投資を支援するなど基盤整備を進めるとともに、昨年度、ものづくり地産地消・外商センターを設置し、企業のものづくり力や商品力を高めていく質の高いサポートを行うなどしてまいりました。
これまでの取り組みにより、外商支援による成約額が、平成24年度は2億5千万円であったものが、昨年度は27億1千万円となるとともに、本年3月に公表された製造品出荷額等は5千億円台を回復するなど、一定の成果が表れてきております。
他方、後継者が決まっていない企業の割合が5割を超えるなど、後継者不足は深刻さを増してきております。このような課題に対応して、事業承継・人材確保センターを設立したところであり、今後、同センターの取り組みの充実に向けて努力を重ねてまいる所存であります。
また、産業全体をけん引するより力強い流れをつくり出していくためには、さらなるものづくり企業の体質強化や産業の集積を図っていく必要があります。このため、その取り組みの一つとして、他県に比べて製造品出荷割合の高い紙産業の振興のための施策の充実を図ることといたしました。
高品質の不織布や高機能紙など、独自の技術によりニッチ分野の市場を確保している本県の紙産業について、その技術力を生かした新たな試みとして、本年度は、高付加価値製品の開発が期待されるセルロースナノファイバー分野での取り組みを強化したいと考えております。その一環としまして、製造用設備を紙産業技術センターに整備し、企業の製造技術の確立や製品開発に向けて、愛媛県や兵庫県と連携し研究を行ってまいります。
ウ 産学官民連携によるイノベーションの創出
本年4月、産学官民連携を推進し、県内外の英知を取り込みながら、新たな事業展開に挑戦する皆様を後押しする高知県産学官民連携センター「ココプラ」を永国寺キャンパスに開設いたしました。
新たな技術開発に向けて相談できる大学の研究者を紹介してほしいといった技術分野に関することや、自社のノウハウや技術を応用して新たな分野への事業展開に挑戦していこうとするものなど、これまでに28件の相談が寄せられており、大学などと企業や県民の皆様が、新たに出会い、新たなことを起こそうとする仕組みが動き出しています。
また、これまで5つの大学などの研究内容やシーズの紹介、企業トップによる講演会を合わせて7回開催するとともに、県外のシンクタンクや金融機関とともに行う2つの連続講座もスタートしたところであります。さらに、県外の大学の出張セミナーや、四国から参加者が集まるコーディネーター研修を国の外郭団体と共催で行うなど、全国区の取り組みも「ココプラ」に集まってくるようになり、県内外から知が集まるプラットフォームとして成長する手応えも感じております。
こうした、産学官民の様々な立場の方が交わることで生み出されてくるアイデアを新たな事業展開に結び付け、しっかりとサポートしていく「ココプラビジネスチャレンジサポート」の仕組みも整えたところであります。引き続きセンターの取り組みを充実させ、産学官民が連携した様々なイノベーションの創出に向け取り組んでまいります。
(3)「外商」の取り組み強化
ア 外商活動の全国展開の強化と輸出振興の本格化
次に、「外商」の取り組みについてご説明申し上げます。
国内での外商活動につきましては、地産外商公社の外商部門やプロモーション部門の体制の充実を図りながら、県内事業者の方々の地産外商活動を全力で支援してまいりました結果、昨年度に公社が仲介、あっせんした成約件数は4,393件と、平成21年度の178件と比較して約25倍となり、成約金額も大きく伸びてまいりました。
このように、地産外商の取り組みは、5年前と比較して飛躍的に伸びてまいりましたが、まだまだ克服すべき多くの課題が残されております。
一つ目は、この地産外商の取り組みを全国区に拡大していくという課題であります。このため、本年度、これまで培ってきたノウハウと経験を生かし、地産外商公社の活動範囲を首都圏から関西、中部、中国、四国、九州にまで広げました。こうした取り組みを通じて成果の上積みを図ってまいりますとともに、外商に参画する事業者のすそ野を一層拡大してまいります。
また、地産外商の取り組みの成果を海外に拡大していくことも大きな課題です。輸出振興にかかる食品分野の本年の目標額を3億円に上方修正するとともに、本年度から機械分野の輸出振興にも本格的に取り組んでまいりますため、2名増員して5名体制とした貿易促進コーディネーターを活用して海外の見本市や商談会への出展の支援をさらに強化してまいります。
さらに、物流コストの克服といった課題も残されており、今後、県としての取り組みを検討してまいります。
この他、既に1,000人を超える方々にスターとして登録いただいた高知家プロモーションの取り組みを生かして、県民運動として外商の取り組みを盛り上げていきたいと考えております。
また、アンテナショップまるごと高知につきましては、物販及び飲食の売上額が伸びる一方で来客者数は減少しております。本年8月に開設から5周年を迎えますことから、記念イベントの開催やプレミアム付き商品券の発行などにより、魅力ある店づくりに取り組んでまいります。
イ 400万人観光の定着と国際観光の抜本強化
次に、観光振興につきましては、これまで、観光商品を「つくる」、その観光商品を効果的にPRして県外に向けて「売る」、本県を訪れる観光客の皆様にご満足いただけるよう「もてなす」といった一連のサイクルを意識して取り組みを進めてまいりました。
その結果、本県への入込客数は、昨年まで2年連続で400万人を超え、400万人観光が定着しつつあるところです。また、一昨年の観光総消費額は、これまでの最高額となる1,102億円となりましたほか、龍馬パスポートの利用者数が今月17日に10万人を突破いたしました。加えて、外国人の延べ宿泊者数が、国の統計によりますと、昨年は3万人泊余りであったものが、本年1月からの3カ月間で既に1万1千人泊を超えており、さらに外国クルーズ客船寄港の打診も増加しているところであります。
しかしながら、次の目標である435万人観光の達成のためには、地域ならではの資源を多様なニーズに応えられる商品として磨き上げる力や、磨き上げた商品を組み合わせて周遊プランとして売り出していく力などをさらに強化していく必要があると考えております。また、外国人旅行者のさらなる増加のためには、海外における本県の認知度の飛躍的な向上や受け入れ態勢の充実も必要であると考えております。
このため、本年度は、まず、「地域が一体となった戦略的な観光地づくり」に向けまして、広域観光推進組織の機能強化や地域における魅力ある観光商品を継続して造成できる人材育成などを支援してまいります。
また、今月12日、四国遍路を核とした四国広域観光周遊ルートが、国土交通大臣から外国人旅行者向け「広域観光周遊ルート」として認定を受けました。
国際観光の抜本強化に向けまして、今回の認定を追い風としつつ、観光コンベンション協会に新たに配置した国際観光推進コーディネーターの経験や人脈を生かして、戦略的なセールス活動や海外へのプロモーションを強化するとともに、Wi-Fi環境の整備や消費税免税店の開設を支援するなど、本年度からの2年間で重点的に外国人観光客の受け入れ態勢の整備を図ってまいります。
(4)地産外商の成果を拡大再生産へ
次に、地産外商の成果を拡大再生産へとつなげる担い手確保対策などにつきまして、本年度の新たな取り組みについてご説明申し上げます。
(林業学校)
まずは、林業分野の担い手対策についてであります。
これまでも、緑の雇用をはじめとする林業に携わる人材の就業前後の研修を国の支援制度を活用して実施してまいりました。しかしながら、今後、将来の本県林業を担う優秀な人材を安定して確保していくためには、こうした研修制度を有効に活用することと並んで、林業について専門的な知識と技術を習得できる人材育成の場が必要であります。
このため、本年4月、林業学校を開校し、まず、林業の実践的な技術や知識を学んでいただく基礎課程と、林業関係者のスキルアップを図る短期課程を先行して開講いたしました。現在、高度で専門的な能力を持った人材を養成する専攻課程につきましても、カリキュラムや講師の選定など、開講に向けた準備を行っており、併せて、今後必要な施設の整備に着手したいと考えております。
(事業承継・人材確保センター)
次に、企業の事業承継と人材確保につきましては、本年4月に事業承継・人材確保センターを開設し、事業の継続や拡大再生産のために必要な人材の確保などについて支援をスタートさせており、既に事業者の皆様などから48件の相談を受けているところです。
特に、事業承継につきましては、早い段階からの経営譲渡の検討と準備が必要であることから、事業承継への理解を深めていただくためのセミナーや個別相談会などを県内各地で実施することにより、後継者不在などの課題を抱えている事業者の掘り起こしにも取り組んでまいります。
(5)移住促進
移住促進の取り組みにつきましては、移住を希望される方に対して、高知家プロモーションの取り組みや、移住・交流コンシェルジュによる相談対応、高知の暮らしを体験するお試し滞在の取り組みなど、高知を知っていただく段階から、最終的に安心して住み続けてもらうまで、それぞれの段階に応じた対応を行ってまいりました。
その結果、県外から本県への移住者は、平成23年度の120組241人から、平成25年度は270組468人、昨年度は403組652人と大幅に増加しており、取り組みの成果が表れ始めております。
今後、さらに大きな成果を生み出すためには、2つの課題に対応する必要があると考えております。
一つ目は、今後、厳しくなる地域間競争への対応であります。
この点については、他県にはない高知の強みを訴求していくことや、施策間の連携をしっかりと図ることが重要であると考えており、本県の最大の強みである人の魅力を前面に押し出しながら、具体的行動を誘発する高知家プロモーションの新たな展開を移住促進策にも最大限生かしてまいります。
高知家スターの皆様一人ひとりからの実感がこもったメッセージの発信によって、その価値観や暮らしぶりに共感を覚え、新たに本県への移住に関心を持つ都市部の方が増えるのではないかと期待しております。さらに、こうした関心を持っていただいた方々に、移住・交流コンシェルジュが移住に関する情報提供を行い、市町村の移住専門相談員や地域移住サポーターなどにつなげるといった、他県に先んじて構築してきた手厚い受け入れ態勢によって、移住に結び付けてまいります。
さらに、福祉や農業など各分野が求める担い手を確保するための施策と移住促進策とを組み合わせ、移住者に担っていただく仕事や役割などを明確にして、いわゆる「志移住」を進めることや、移住促進につながるプロジェクトに積極的に取り組むこととしております。
二つ目は、移住後に生じる様々なミスマッチへの対応であります。市町村や民間の移住支援団体に対して昨年度行った調査では、仕事や地域に馴染めなかったという理由により、移住後に転出された事例が11ありました。今後、移住者の数が増えてくればくるほど、こうした事例が発生するリスクも高まることが考えられ、定住に向けたサポートを強化することが重要となってまいります。
この問題については、まずは、ミスマッチを防止することが重要であり、このため、相談体制の充実を図るとともに、大都市圏との生活環境の変化が比較的少ない高知市でのお試し滞在など、あらかじめ本県での生活を体験していただく機会を増やすことなどにより、思いと現実とのギャップの解消に努めてまいります。さらに、移住後のフォローアップとして、移住者同士や移住者と地域住民とのつながりを持っていただく交流会の開催などの対策を講じてまいります。
さらに、これら2つの課題に共通することとして、移住者の方と受け入れる地域の双方が幸せを実感できる高知家を目指してさらなる施策が考えられないか、引き続き検討を重ねてまいりたいと考えております。
4 南海トラフ地震対策について
次に、南海トラフ地震対策についてこれまでの取り組みと今後の方針についてご説明申し上げます。
南海トラフ地震対策については、東日本大震災を教訓としつつ、地震による死者数を限りなくゼロに近づけていくため、地震による揺れや津波から命を守る対策を最優先としつつ、併せて、助かった命をつなぐ対策にも本格的に取り組んでいるところであります。
その結果、命を守る対策に関しては、避難路・避難場所は計画総数1,445カ所に対して1,361カ所が、津波避難タワーは計画総数115カ所に対して103カ所が本年度末までに完成する見込みとなるなど一定の目途が立ってまいりました。また、命をつなぐ対策に関しては、避難所の確保や県内8カ所の総合防災拠点の整備を進めるとともに、災害時医療救護計画の改定や道路啓開計画の策定などを行ったところです。
しかしながら、命を守る対策については、地域の津波避難計画の実効性や避難の安全性の検証のほか、土砂災害や地震火災への対応など、まだまだ多くの対策が必要であります。また、命をつなぐ対策についても、引き続き、避難所の確保を進めるとともに、災害時の医療救護や道路啓開における体制整備など、策定した計画に基づき、より具体的な対策を講じていく必要があると考えております。
このため、市町村や関係機関の皆様としっかりと連携しながら、命を守る対策や命をつなぐ対策をさらに加速させてまいります。
次に、個別対策の方向性についてそれぞれご説明申し上げます。
(1)「命を守る」対策
ア 津波避難対策・山津波対策
命を守る対策につきましては、本年度は、これまで最優先に取り組んできた津波避難対策について、その総仕上げに取り組むこととしております。引き続き津波避難空間を確保してまいりますとともに、沿岸の19市町村で策定されている津波避難計画について、自主防災組織の方々とともに現地点検や避難訓練を行い、より実効性のあるものとなるよう取り組んでまいります。
また、本年度から抜本的に強化している山津波に備えた土砂災害対策に関しては、砂防事業などのハード対策と土砂災害警戒区域の指定、避難訓練や防災学習会などのソフト対策を一体的に進めてまいります。
イ 地震火災対策
地震火災対策につきましては、昨年4月に「地震火災対策検討会」を立ち上げ、県の内部で検討を進めてまいりましたが、今般、いよいよ各地域において具体的な対策を実施する段階に至ったところであります。
地震発生時に、木造住宅が密集する市街地などで同時多発的に火災が発生いたしますと、地震の揺れによる家屋の倒壊などによって道路がふさがり消火活動が大きく遅れることや、断水により消火用水が不足することなどにより、大規模な延焼火災につながることが懸念されます。
このため、今月18日、地震火災対策指針を公表し、その中で地震火災対策を重点的に推進する地区として11市町19地区を位置付けたところであります。
この指針では、次の3つの視点から、県及び市町村はもとより、住民や事業者の方々が事前に取り組むべき具体的な対策と取り組みの進め方をお示ししております。1つ目は、それぞれの家庭から火を出さないための「出火防止」、2つ目は、出火しても、家庭で行う初期消火や地域の方々の消火により火災の拡大を防ぐ「延焼防止」、3つ目は、火災が拡大し、大規模な火災となった場合でも住民の方々の命を守る「安全な避難」であります。
これらの対策を進めるにあたっては、まずは、重点的に推進する地区の方々に地震火災のことを正しく理解していただくことが重要であります。このため、県と市町村が協力して説明会を行うほか、地区の全戸に地震火災の特徴や具体的な取り組みを盛り込んだリーフレットを配布いたします。
また、今後、各市町村において、指針に基づき具体的な対策を盛り込んだ地震火災計画の策定を進めることとなっており、県としましても、円滑な策定に向けた支援を行うとともに、計画が策定されたところには、一定の揺れを感知して自動的に通電を遮断する簡易型感震ブレーカーの配布を支援することとしております。
地震火災対策は重要であり、これらの取り組みを全力で進めつつ、新たな支援策を検討してまいります。
(2)「命をつなぐ」対策
ア 避難所確保と避難所運営
助かった命をつなぐ応急期の対策につきましては、最大クラスの地震が発生した場合、発災直後には県全体で、いまだに約11万4千人分の避難所が不足する恐れがあります。
このため、市町村と連携して避難所の確保に取り組むとともに、要配慮者の受け入れ態勢の考え方などを盛り込んだ避難所運営マニュアル作成の手引きを策定しました。
本年度は、この手引きを活用し、まず5つの地域本部ごとに条件の異なるモデル避難所を2カ所ずつ選定し、市町村とともに、それぞれの避難所における具体的な運営マニュアルの作成を支援してまいります。
イ 道路啓開計画
道路啓開につきましては、本年2月、啓開の優先度が高いルートについて啓開日数を算出し、高知県道路啓開計画の暫定版としてお示ししました。その中で、啓開に長期の日数を要するルートの存在が明らかになりましたため、啓開日数の短縮に向け、橋梁の耐震化や法面の崩壊防止などの道路整備による対策のほか、ヘリコプターや船舶の活用を検討するなど、原因に応じた具体的な対策に取り組んでいるところであります。
本年度は、まだ残っている945のルートの啓開日数を算定するとともに、速やかに啓開活動ができるよう啓開作業の手順書を作成してまいります。
ウ 災害時医療救護体制の強化
災害時の医療救護につきましては、現在、地域の医師会や市町村など関係機関の皆様と被害想定や医療資源の状況を踏まえた地域ごとの行動計画づくりを進めており、これを通じて、関係機関の連携促進や医療救護施設の充実を図ってまいります。
あわせて、災害時には建物の倒壊などにより多数の負傷者の発生が予想されることから、日頃、救急医療などに携わっていない方も含めた県内全ての医師の皆様に医療救護活動に参画していただけるよう、年度内に災害医療に関する知識や技術の向上を目指した研修制度を創設してまいります。
(3)地域における地震対策の推進
こうした一連の対策を実効性のあるものとするため、本年度は、南海トラフ地震対策推進地域本部を、防災専任職員の増員や各土木事務所、福祉保健所の職員を兼務職員とすることで合計51名体制と大幅に強化しております。
これにより各地域の実情をしっかりと捉えつつ、市町村や自主防災組織の取り組みを積極的に支援してまいります。
(4)四国8の字ネットワークの整備について
また、「命の道」として、南海トラフ地震対策を進める上でも非常に重要な課題となっている8の字ネットワークの整備については、4年前と比べて県内の整備率が42パーセントから52パーセントへ上昇し、供用延長は109キロメートルから134キロメートルに延伸するなどの成果が表れております。
しかしながら、整備率はまだまだ立ち遅れている状況であり、引き続き、国に対して、四国8の字ネットワークをはじめとするインフラ整備の重要性を提言するなど取り組みを加速してまいります。
5 日本一の健康長寿県づくりについて
次に、日本一の健康長寿県づくりについてご説明申し上げます。
(1)日本一の健康長寿県構想の推進
県民が健やかで心豊かに、支え合いながら生き生きと暮らせる県づくりを目指し、乳児や40歳代から50歳代の死亡率が高い、若手医師が不足している、中山間地域で地域の支え合いの力が弱まっているといった様々な課題の解決に向けて、日本一の健康長寿県構想に基づき、これまで保健、医療、福祉の各分野で取り組みを進めてまいりました。
その結果、がん検診や特定健診の受診率はそれぞれ高まってきており、若手医師の確保についても、県内で採用された初期研修医が、平成21年度の36人から本年度には58人にまで増加しております。また、高知型福祉の拠点となるあったかふれあいセンターについても、本年度には29市町村43カ所、サテライトも含めますと233カ所で展開されるなど、それぞれの施策で成果が一定見られ始めたところであります。
しかしながら、働き盛り世代の死亡率はいまだに高い状態にあることや、住み慣れた地域で安心して住み続けられる社会の実現に向けては、医療と福祉の連携によるネットワークをさらに整備する必要があること、加えて、県内で一定数の子どもたちが厳しい環境に置かれていることなど、いまだ多くの課題が残されております。
引き続き、課題解決に向けた取り組みをさらに強化していく必要があると考えております。
(2)保健分野
このため、まず、保健分野においては、壮年期の死亡率の改善を目指して、がん検診の利便性の向上を図るとともに、正しい生活習慣を促す特定健診の受診を促進してまいります。
あわせて、県民の健康意識の向上も重要であることから、日々の健康づくりをサポートするため、地域に密着した健康情報拠点として昨年度から認定を開始し現在162薬局となっている高知家健康づくり支援薬局を活用した健康づくりを推進してまいります。
また、子どもたちの生涯にわたる健やかな暮らしの基礎とするべく、昨年度から、全ての小中高等学校において、学校経営計画などに位置付けた上で、副読本などを活用した健康教育の取り組みを進めております。
本年度は、教員を対象とした研修の充実や体育・健康アドバイザーの増員を図るとともに、新たに体育と健康を担当する指導主事を東部及び西部教育事務所に配置し、学校現場の課題に応じたきめ細かな支援を行うことなどを通じて、健康教育の充実に取り組んでまいります。
(3)医療分野
医療分野においては、県民誰もが安心して医療を受けられる環境づくりに取り組んできており、特に、医師の確保を始めとした医療提供体制の整備を重点的に推進してまいりました結果、奨学金を受給した医学生や初期研修医が大幅に増えるなど、医師不足の改善が期待できる状況となっております。
しかしながら、県民の皆様が、住み慣れた地域で療養することのできる環境の整備にはいまだ道半ばと言わざるを得ません。
このため、本年度から在宅での療養を支える訪問看護師の育成を推進しているところであり、この5月には、高知県立大学と寄附講座設置の協定を締結し、医師会や看護協会の協力の下、研修プログラムの策定を進めているところであります。
加えて、不採算となる中山間地域での訪問看護サービスを昨年度から支援してきました結果、訪問回数が平成25年度と比較して24パーセント増加したことから、本年度は、事業所に加えて医療機関がサービスを行う場合も助成対象に追加するとともに、支援制度の対象地域も拡大してまいります。
(4)福祉分野
福祉分野におきましても、誰もが地域で安心して住み続けられる社会の実現を目指して、全国でも真っ先に人口減少、高齢化社会に突入し、また、中山間地域等を多く抱える本県の実情に則した、高知型福祉の実現に向けた取り組みを進めてまいりました。
中でも、あったかふれあいセンターについては、先ほど申し上げましたとおり、本年度内には県内233カ所で展開されるようになり、地域における見守り、支援のネットワークが一定広がってきていると考えております。
しかしながら、県民誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる状態をつくり出していくためには、さらなるネットワークの強化が必要であります。
このため、市町村があったかふれあいセンターなどを活用して取り組む訪問・通所介護サービスの提供や認知症カフェの設置、さらには、リハビリテーションの視点を取り入れた介護予防サービスの提供などを、介護保険制度の改正などを生かしながら、県として積極的に支援することといたしました。
また、今後、大幅な人材不足が見込まれます福祉・介護人材の確保対策については、その取り組みの抜本強化を図っているところであります。
中でも、昨年12月から体制を強化した福祉人材センターにつきましては、求人と求職のマッチング実績が、平成25年度の122件から昨年度は176件へと増加しております。引き続き、併設された福祉研修センターやハローワークなどとの連携を強化しながら、人材確保に向けた取り組みを積極的に推進してまいります。
(厳しい環境にある子どもたちへの支援)
次に、厳しい環境にある子どもたちへの支援について、ご説明申し上げます。
本年度から、生活の困窮や家庭の教育力、地域社会の見守り機能の低下などを背景として、学力の未定着、虐待や非行、いじめといった厳しい環境に直面する子どもたちへの支援を特に重点的に取り組むべき課題と位置づけ、福祉や教育などの関係部局が連携して取り組みを進めているところであります。
昨年の12月に香南市で起こりました虐待による児童の死亡事件は、極めて痛ましく残念な事案であり、あらためてお亡くなりになりました衣斐瑠維さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
県と高知市が合同で設置いたしました検証委員会において、今回の事案について徹底した検証作業を行っていただきまして、現在、具体的な改善策などを盛り込んだ報告書のとりまとめを行っていただいているところです。
県では、増加傾向にある児童虐待の問題などへの迅速かつ適切な対応力の強化に向け、本年度から、中央児童相談所に市町村の要保護児童対策地域協議会の活動をサポートする専門職員を配置するとともに、休日夜間の電話相談への対応力の向上を図るなど、体制を強化しております。
今後、こうした取り組みをはじめとする再発防止策のさらなる徹底、強化を図ることにより、今回のような事件が二度と起きることがないよう、全力を挙げて取り組んでまいります。
また、少年非行の防止対策につきましては、高知家の子ども見守りプランの推進に全力を挙げて取り組んでまいりました結果、平成24年には全国ワースト2位であった非行率が昨年にはワースト13位へと改善するなど、一定効果が現れてきております。
しかしながら、再非行率が全国上位のままであるなど、依然として厳しい状況が残っていることから、本年度より、再非行率の高い無職の非行少年の立ち直りにつながる就労支援の取り組みなどを強化することとしております。
あわせて、ひとり親家庭の実態調査などを通じて子どもたちが置かれている現状の把握に努め、総合的な支援策としての子どもの貧困対策計画の策定に向け、関係部局の連携の下、取り組んでまいります。
6 教育の充実について
次に、教育の充実に関し、これまでの取り組みと今後の方針についてご説明申し上げます。
教育委員会では、全国と比較して厳しい状況にあった子どもたちの学力や体力、生徒指導上の諸問題に関する課題の解決に向けて、高知県教育振興基本計画重点プランを策定し、知、徳、体の分野ごとに目標を掲げて、教育改革を進めてまいりました。
その結果、知の分野では、全国学力・学習状況調査において、小中学生の学力が一定改善するとともに、徳の分野でも非行率などの改善が図られ、高等学校における中途退学者数も減少傾向にあります。また、体の分野では、小中学生の体力が全国水準近くまで改善するなどしております。
他方、課題も多く残されております。知の分野では、小中学生の学力の改善傾向はここ数年足踏み状態にあり、特に、思考力、判断力、表現力にはいまだ弱さがみられます。徳の分野では、小中学校における不登校や暴力行為が増加しており、問題行動の低年齢化など依然として大きな課題があります。体の分野では、幼児期の運動機会が十分に確保されていない、中高生の運動部活動の加入率が低下しているなど、子どもの運動習慣の定着などが課題となっております。
こうした課題を踏まえ、重点プランに掲げた目標の達成に向けて、様々な施策を、PDCAを回しながら全力で推進しているところであります。
(1)知徳体の取り組み
まず、知の分野につきましては、引き続き、全ての小中学校において、中期的な視点に立った学校経営計画に基づき、単元テストや学習シートなどを活用した授業改善や教員の指導力の向上に組織的に取り組んでまいります。 あわせて、子どもたちの主体性や課題解決能力を高める探究的な学習も取り入れ、思考力などの育成に重点的に取り組んでまいります。
徳の分野につきましては、児童生徒の問題行動の背景に、家庭の状況や子どもを取り巻く社会環境の変化などが複雑に絡み合っている現状があることから、教育や福祉、警察など関係機関の連携をさらに強化し、子どもの発達段階に応じた総合的な支援を行ってまいります。
体の分野につきましては、体育授業や健康教育を充実し、ジュニアからの一貫した指導体制の確立や、誰もが気軽にスポーツ活動に参加できる環境の整備などを進めてまいります。
(2)厳しい環境にある子どもたちへの支援
先ほど申し上げましたとおり、本年度から、厳しい環境にある子どもたちへの支援に一層力を入れて取り組んでおり、教育分野では、貧困の世代間連鎖を教育の力で断ち切ることを目指して、就学前から高等学校までの各段階に応じて一貫した対策を行っております。
例えば、生活の困窮などにより、十分な学習の機会が与えられていない子どもたちに対して、本年度より、放課後などの学習支援の取り組みを大幅に強化いたしました。小中学校では、放課後の補充学習において、教員とともに地域住民や大学生が学習支援員として指導にあたる仕組みを導入し、現在87校で160人が、子どもたち一人ひとりのつまずきに応じたきめ細かな学習支援に取り組んでおります。また、高等学校においても、学習支援員を大幅に拡充したところであり、現在延べ74人を配置し、学びの場の充実を図っております。
さらに、厳しい環境にあるがゆえに不登校など生徒指導上の課題を抱え、学校や放課後の学習支援などの学びの場に参加できない子どもたちへの支援を充実させるため、スクールカウンセラーの配置を拡充するとともに、特に厳しい状況にある子どもたちを多く抱える市部に、スクールソーシャルワーカー15人を新たに重点的に配置いたしました。
また、本年4月から、学校と地域をつなぐコーディネート役となる指導主事を各教育事務所と高知市に配置し、学校と地域が連携して子どもたちの育ちを支援する体制づくりを推進しております。
県としましても、子どもの貧困などの実態から目をそむけることなく一貫して取り組みを進め、子どもたちが安心して学び、夢と希望を持ち続けて育つことができるよう取り組んでまいります。
(3)総合教育会議の設置
本年4月、教育等の振興に関する施策の大綱や重点的に講ずべき施策などについて、教育委員会と協議、調整を行う総合教育会議を設置いたしました。
総合教育会議においては、知、徳、体に関する現状と課題を踏まえ、原因を深く掘り下げた上で、子どもたちの視点に立った真に有効な対策を議論することとしております。外部有識者もお招きしながら本質的な議論を深めてまいりたいと考えております。
7 中山間対策について
次に、中山間対策のこれまでの取り組みと今後の方針につきましてご説明申し上げます。
集落活動の沈滞化や産業の衰退が一層深刻になっているといった課題に正面から向き合うため、平成24年度に中山間対策を抜本的に強化し、「生活を守る」、「産業をつくる」の2つを柱として取り組んでまいりました。
この結果、対策の中核となる集落活動センターがこれまでに県内18カ所で立ち上がり、地域地域で住民主体の取り組みが進んでいるところであります。
しかしながら、中山間地域全体では依然として、高齢化による担い手不足や生活サービスの低下など、厳しい状況が続いております。
このため、集落活動センターの取り組みをさらに充実させる必要があり、特に、それぞれの経済活動の基盤を確固たるものにしていく必要性は高いものと考えております。このため、県としましても、産業振興計画の成長戦略や地域アクションプランなどと一体的に取り組みを進めるなど、センターの経済基盤の確立に向けての支援を強化してまいります。
今後、こうした経済基盤を持ったセンターを、まずは本年度中に30カ所立ち上げ、それらを後発のセンターの良きモデルとすることで、将来的には130カ所程度の集落活動センターの立ち上げにつなげていきたいと考えております。
8 少子化対策と女性の活躍の場の拡大について
(少子化対策)
次に、少子化対策につきましては、これまでも、全国知事会の次世代育成支援対策プロジェクトチームのリーダーとして、抜本的な対策の強化を国に対して強く訴えるとともに、本県においても、ライフステージの各段階に応じた切れ目のない施策の展開に取り組んでまいりました。
しかしながら、先般公表された昨年の人口動態調査の結果では、合計特殊出生率が1.45となり、20歳代後半の合計特殊出生率の落ち込みが大きかったことなどが主な要因となって前年比0.02ポイント悪化しております。
こうした中、本年度は、未婚化・晩婚化対策を強化するための総合的な結婚支援策について、実際に結婚につながる割合を引き上げるため、マッチングシステムの開発などに取り組んでいるところであります。
さらに、本年度から、助産師などの専門員が市町村の地域子育て支援センターなどに出向き、地域の皆様の子育てに伴う不安や孤立感の軽減につなげる取り組みをスタートいたしました。
また、今月24日に行われた少子化対策推進県民会議では、県民の皆様に、いわゆる「イクボス」となることの重要性などを呼びかけたところであり、県民挙げての機運の醸成に努めてまいります。
(女性の活躍の場の拡大について)
次に、女性の活躍の場の拡大につきましては、これまで、女性が子育てしながら安心して働き続けられるよう、保育サービスの充実やワーク・ライフ・バランスの推進などに取り組んでまいりました。
その結果、昨年度末の時点で、延長保育が104カ所で実施され、「次世代育成支援企業」の認証を受けた企業は122社に上るなど、仕事と子育ての両立に向けた環境整備が進んできているところであります。
他方、出産や介護などによりいったん退職すると再就職が難しい、女性を積極的に採用する企業が少ないといった声が多くあることや、管理職に占める女性の割合が約2割にとどまっているといった課題もあります。
このため、昨年開設した「高知家の女性しごと応援室」でのきめ細かな就労支援や、県内企業の経営者や中間管理職層の方々を対象とした女性の登用促進に向けた意識啓発の取り組みなどを通じて、女性が多様なライフステージに応じて活躍できるよう支援してまいります。
9 その他
(エネルギー政策について)
次に、エネルギー政策につきましてご説明申し上げます。
先月20日、原子力規制委員会において、伊方発電所3号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案が取りまとめられるなど、再稼働に向けた手続きが進められているところであります。
原子力発電につきましては、私は、これまで申し上げてまいりましたとおり、脱原発に向けてその依存度を徐々に引き下げていくべきだと考えております。他方、その過程の中で、止むを得ず原子力発電所を再稼動せざるを得ない場面が出てくる可能性も否定できないものの、仮にそうした場合であっても、安全対策が万全であることが大前提である、との考えであります。
これまで、15回にわたる四国電力との勉強会を通じて伊方発電所の安全対策の徹底を求めてまいりました。勉強会では、県民の皆様が日頃から心配されている原子力発電の安全性に対する疑問点や、重大事故時の対策などについて質問し、真摯な回答を求めております。
引き続き、四国電力に対しましては、勉強会を通じて原子力発電所の安全対策に万全を期すよう求めていくとともに、「原子力発電所が稼働していなくても電力の不足が生じていない今、なぜ再稼働が必要なのか」といった原子力発電の必要性に関する県民の皆様の率直な疑問について、説得力のある説明を求めてまいります。
こうした勉強会での議論の内容につきましては、原子力規制委員会において審査されていた安全対策などが整理されたことから、中間取りまとめを行い、今議会で報告いたします。
このような、伊方発電所への対応とは別に、原子力発電への依存度の低減に向けて、県としての具体的な努力を重ねていくことも重要であると考えております。
これまでにも、全国でも優位にある森林資源や日照条件といった地域資源を生かして、再生可能エネルギーの導入を進めてまいりましたが、電力需要の少ない中山間地域を多く抱える本県のような地域においては、現状では送電網が脆弱であることから、さらなる事業参入が困難となっている地域が増えている状況にあります。
引き続き、国に対し、全国規模で電力を融通するためのシステムの構築や地域の送電網の強化などについて提言を行う一方、地域で生み出す再生可能エネルギーを効率的に地域で消費する地産地消の仕組みづくりを目指した県独自の調査に着手してまいりたいと考えております。
10 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成27年度高知県一般会計補正予算の1件です。
一般会計補正予算は、先ほど申し上げました経済の活性化などの経費として、2億9千万円余りの歳入歳出予算の補正などを計上しております。
条例議案は、高知県立高知城歴史博物館の設置及び管理に関する条例議案など12件でございます。
その他の議案は、高知県が当事者である和解に関する議案など5件でございます。
報告議案は、損害賠償の額の決定の専決処分報告など3件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。