公開日 2017年01月19日
更新日 2017年01月19日
はじめに
産業振興計画の推進
南海トラフ地震対策
日本一の健康長寿県づくり
教育改革
インフラの充実と有効活用
中山間対策
少子化対策と女性の活躍の促進
飛躍への挑戦を新たなステージへ
<以下、質疑>
イクボスの取組
高知家プロモーション
観光振興
奥四万十博
観光博覧会
今年のキーワード
県内自治体の総合戦略
有効求人倍率
高知県の抱える根本的な問題
中山間対策
【動画】年頭所感
【動画】記者との質疑応答
はじめに
(知事)
高知県民の皆様、明けましておめでとうございます。平成28年の年明けに当たりまして、私から年頭の所感を申し上げたいと思います。
まずは、県民の皆様方、それぞれ良きお年をお迎えになられたことと思います。皆々様方の今年一年のご多幸を心よりお祈りを申し上げます。
今年は私にとりまして、3期目の実質的なスタートの年になります。私自身、これまでの8年間の取組の土台の上に立って、新たな飛躍への挑戦を続けていく。そのような年にさせていただきたいと考えているところであります。これまでも4年間、「飛躍への挑戦」をキャッチフレーズに、産業振興計画をはじめとした5つの基本政策と2つの横断的な政策に全力で取組んできたところであります。
それぞれについて、手応えを感じられるものも出てまいりました。有効求人倍率も昨年11月は1.05倍になりました。あったかふれあいセンターのネットワークも今や県内200カ所を超えるまでに広がるなど、取組が進んできています。南海トラフ地震の対策につきましても、避難路や避難場所、そして津波避難タワーの建設が進み、それぞれの対策が進められてきたところであります。
しかしながら、例えば有効求人倍率にいたしましても正規の有効求人倍率は0.56倍、過去最高とは言えまだまだ低い水準であります。そして、過疎化・高齢化が進む高知県のそれぞれの地域においては、本当に多くの皆様が大変厳しい生活を強いられている状況にあることに変わりはありません。
そしてまた、南海トラフ地震対策につきましてもやらなければならないことはまだまだたくさんある。そういう状況だと考えているところであります。
飛躍への挑戦、これを新しいステージに向けてさらに飛躍をさせていくことが大事だと考えています。「飛躍への挑戦を新たなステージへ」、この平成28年、さらなる取組を全速力で続けていきたいと考えているところです。
5つの基本政策と2つの横断的な政策につきましては、このような考え方のもとにバージョンアップをさせていきたいと考えています。
その第1は、好循環をつくり出していくための取組を強化するということです。先ほど来申し上げておりますように、経済の取組にせよ、福祉の取組にせよ、そして災害対策の取組にせよ、それぞれ取組が前に進んできた部分はございます。しかしながら、それをいかに今後持続させていくのか、そして、その効果をより大きなものにしていくのか、さらに、それぞれが好循環をつくり出していけるようになれるかどうかが大きなポイントだと考えております。その観点から施策のバージョンアップを図っていけるよう努力をしていきたいと思っています。
そしてもう一つ、より根元的な課題に踏み込んでいくということが極めて大事だと考えています。8年間の取組を進めてくる中で、それぞれの取組において、その根本的な原因は何かということをずっと考えてまいりました。その中で見えてきたその根本的な課題について、逃げずに正面から取り組む形で施策をバージョンアップしていきたいと考えているところでございます。
「飛躍への挑戦を新たなステージへ」が平成28年におけるキャッチフレーズだと思っています。是非、全力を挙げて取組を進めたいと考えておりますので、県民の皆々様方のご指導、ご鞭撻のほどを心よりよろしくお願いを申し上げます。
それでは、以上の考えのもとに、各分野の平成28年の所信を申し上げたいと思います。
産業振興計画の推進
まずは、産業振興計画についてです。
先ほども申し上げましたように、有効求人倍率が悲願であった1倍を超え、1.05倍まで到達したところであります。地産外商につきましても、前に進んできたところはあると思っています。非常に象徴的な数字として、東京のアンテナショップで今取り扱っている商品の数はオープン当初は1,300程度であったものが今や2,500を超える状況になっています。観光の入り込み客数も年間300万人程度であったものが、今や400万人台をほぼコンスタントにキープできるまでレベルアップしてまいりました。いろいろな意味でいい方向に向かっていると思っています。
しかしながら、私が冒頭申し上げましたような、本当の意味での好循環のループに乗っているかと考えたとき、それはまだまだだと思っております。ここで、その好循環のループに乗せていくためのしっかりとした施策を講ずることなくしては、この地産外商の取組の進化なども一過性に終わってしまう危険もあるのではないかと考えています。
1期目、2期目と産業振興計画の大きな柱は地産外商を進めることでありました。3期目におきましては、この地産外商を進めることに加えて、拡大再生産を図っていくことを一つの大きなテーマとして施策の展開を図っていきたいと考えております。地産外商の成果を拡大再生産へ、これが3期目の産業振興計画のテーマだと考えておるところです。
地産外商の強化を図るための施策を展開していきたいと考えています。特に地産の部分につきましては、農業にせよ、林業にせよ、水産業にせよ、新しい科学技術を生かして、それぞれの経営体の皆様方の所得向上につながる。ゆえに、後継者の確保にもつながっていく取組を進めていく。さらに、ものづくりについても、経営戦略を練り上げていく取組を進めていくことをバックアップさせていただく取組を進めるとともに、それぞれの商品力を強化する取組を進める形で地産を強化する。それに加え、外商の取組について言えば、全国的に地産外商の取組、その外商展開を図っていくことに加え、この3期目におきましては特に国際展開を図ることが非常に大きなテーマだと考えているところです。
一次産品の輸出、高知県の防災関連産業の輸出を図っていく。さらには国際観光の推進を図っていく。これが大きなこれからの課題であります。3期を通じて、ぜひ当たり前のようにこういう取組が進んでいく高知県をつくり上げ、平成28年度は第一歩として、輸出の本格化を展開できるよう目指していきたいと考えておるところです。
そしてもう一つ、地産の強化という点においては、コンテンツ関連産業の振興に非常に力を入れていきたい。もっと言いますと、情報関連産業の振興にさらに力を入れていきたいと考えております。これまでの取組を通じて、情報関連産業、コンテンツ関連産業が非常に高知県にとって親和性が高いことが見えてまいりました。優れたアイデアを持った皆さん、そしてお客様に対してフレンドリーな人柄を持たれた多くの県民の皆様方がおられるこの高知の土壌は、コンテンツ関連産業の振興に非常に向いていると考えています。これを本格的に、コンテンツ関連産業の産業集積を生み出していける取組を、地産の強化・外商の強化とも合わせて進めていくことができればと考えています。
そのうえで、3期目の産業振興計画の大きなテーマは、拡大再生産を図ることのできる高知県をつくることであります。この拡大再生産施策のために3つの柱で取組を進めていかなくてはならないと考えています。
第1が、担い手確保・人材確保のための取組をさらに進めていくことです。それぞれの分野において、担い手確保のための施策を一層強化していきますとともに、併せて移住促進策、人材確保策を東京、高知の拠点を強化していくことにより、一層進めていくことができるように対策を強化したいと考えています。
これまで、移住促進、担い手確保のために、それぞれの分野で取組が進んできたところでありますが、それぞれの部署間における連携を一層強化していくことで、もう一段飛躍的な仕事ができるのではないか。我々として、高知としての受け入れの体制、高知としての取組を進めるための体制を強化する必要があるのではないかと思っています。
さらに言えば、首都圏をはじめとする県外におけるネットワークももう一段強化する必要があると考えています。人材確保を図るためにも、多くの人材を持たれている外部の皆様方とのネットワークを強化する仕事を続けることができればと考えております。
2点目で、非常に強化したいのは、地域地域に産業クラスターをつくり上げていくための取組だと思っています。それぞれ地域において、第一次産業、第二次産業、第三次産業と多様な形で正規の職が確保されてこそ、その地域に若者を残すことができる高知県につながると考えています。地域地域に幅広い形で関連産業群を育成することができますよう、例えば一次産業の関係であれば、次世代型ハウスを中心に加工食品を作るための工場、さらにはレストラン、そしてこのような産業群を観光に活かす仕組、こういう形で地域地域にそれぞれの産業を基幹とした産業クラスターをつくり上げる仕事を行っていきたいと考えております。
今、それぞれの地域で地産外商の取組を進める中において、基幹となり得る産業、養殖産業、大規模な農業ハウス、一定の規模を持った観光サイトなどが見えてきていると考えています。
それぞれの分野について、それぞれの基幹産業を中心として、関連産業群を地域に根づかせていけるようにプロジェクト化し、管理していきながら、この4年間において根付づかせていくための仕事をしていきたいと考えておるところです。平成28年はそのための第一歩を踏み出す年になると考えています。
この関連で言わせていただきますと、観光分野において、平成29年、平成30年の大政奉還150年、明治維新150年の機会を捉えて博覧会を開催したいと考えています。平成28年は、その準備を全速力でスタートする年になります。平成28年、29年、30年の期間を通じて地域に歴史資源と自然の資源、そしてこの間「リョーマの休日」キャンペーンを通じて磨き上げてきた食の資源を組み合わせた観光クラスターをつくり上げることができるようにしたいと考えておるところです。
第一次産業を基幹として、また高知県のものづくりを基幹として、そして高知県の観光を基幹として、地域地域に一定の産業群をつくり出していく仕事をする。これが拡大再生産施策の第2点になろうかと考えています。
そして第3点目が、起業を促進する。多くの皆さんの起業のための取組を応援する施策を強化することです。この間、地産外商の取組を進めようと新たな製品開発も進んできました。しかしながら、新たな製品が作られれば、必ずそれに似た製品が全国的にも生まれてくることとなります。持続可能であるためにも進化し続けなければなりません。常に新しい商品づくり、新しい産業おこし、新しいサービスづくりに挑戦をしていく風土を高知県につくり上げていくことが極めて大事だと考えておるところです。
昨年4月に産学官民連携センター「ココプラ」をオープンいたしました。産学官民連携で新しいもの、新しいサービスづくりを応援するための仕組が始動したところであります。いろいろな形で起業を応援する仕組をつくり上げていく。人材育成の取組や産学官民連携の取組、新しいプロジェクト化を応援する取組、さらにはその資金調達を応援する取組を組み合わせていくことで、起業を大いに応援する施策群を強化していきたいと考えておるところです。
地産外商の取組が拡大再生産の好循環に乗って、さらに大きくなり、好循環のルートに乗り、地産外商、拡大再生産の好循環が地域地域で展開されるようになってこそ、地域地域に若者を残すことのできる高知県になると考えております。地産外商、拡大再生産の好循環をつくり出す仕事を地域地域に生み出していくことをこの第3期産業振興計画を通じて展開をしていきたいと考えています。この3期目の産業振興計画、この1月、2月に、議論を徹底してさらに積み重ねていき、この4月からロケットスタートを切れるように準備していきたいと考えておるところです。
南海トラフ地震対策
次に南海トラフ地震対策につきましては、避難路・避難場所づくりも一定進んでまいりました。しかしながら、今後さらに難易度の高い課題に取り組んでいくことが必要だと考えています。
「命を守る」ための対策の観点から言いますと、耐震化をさらに進めていくことが極めて大事だと考えています。まだ高知県の耐震化率は77%程度にとどまっています。地域によってはそれよりもはるかに低いところもあります。いかにして、これを100%に近づけていくのかが非常に大事な課題となっています。これが南海トラフ地震対策のさらなる強化の一つの大きな柱だと考えているところです。
その他、火災対策、津波避難対策のさらなる進化、さらには特に要支援者のいらっしゃる施設の高台移転など、総合的にスピード感を持って対策を強化していきたいと考えています。
併せまして、平成28年の応急期の対策につきましては、より実践段階に歩みを進めていくことが大事だと考えています。避難所の確保につきまして、まだ約8万人規模の避難所が不足している状況であります。長期浸水対策にも対処できるようにしていかないといけません。さらに言いますと、道路啓開計画のさらなる進化、応急期医療救護体制の強化も大きな課題となってまいります。
第2期の間を通じまして、それぞれプランを練って、実行に着手した部分もありますが、この第3期目におきまして、特に応急期の初期の対策につきましては、一定めどがつけられるように実践段階に入っていかないといけません。そして応急期後期の対策についても、本格的に着手をする状況になっていかなければならないと思っています。
今このような考え方のもとで第3期の南海トラフ地震対策行動計画の練り上げを行っているところでありますが、この1月、2月を通じて、プランを完成させ、今年の4月以降にできる限り速やかにスタートできるように準備を重ねてまいりたいと考えております。
日本一の健康長寿県づくり
3つ目の基本政策、日本一の健康長寿県構想につきましては、より根本的な課題により骨太な形でアプローチできるように対策を強化していきたいと考えているところでございます。この日本一の健康長寿県構想の改定の柱は5つです。
第1点目として、壮年期の死亡率の改善を図るということであります。この約6年間、健康長寿県構想の取組を進めてきている中でやはりどうしても残念でたまりませんのは、この壮年期の死亡率が全国平均に比べても高いという状況であります。がん検診、特定健診にいたしましても、受診率は一定向上してまいりました。しかしながら、まだまだ死亡率が根本的に改善する状況にまでは至っていないところであります。健康教育の取組やさらにはがん検診、特定健診の受診率向上の取組などを組み合わせていきながら、その壮年期の死亡率の改善につながっていけるように、さらに対策を強化していかないといけません。
そして第2点目といたしまして、住み慣れた地域で暮らしを続けることのできる高知県を目指して、地域地域の医療・福祉の体制を強化していく取組をさらに進めていかなければならないと考えておるところです。地域地域で若者が誇りと志を持って働くことのできる高知県をつくる。そして併せて、住み慣れた地域で暮らし続けることのできる高知県をつくる。これが県政としての大きなテーマだと考えています。前者は産業振興計画の役割でありますが、後者につきましては健康長寿県構想に負うところが大きいと考えております。
もう一段、地域の医師確保の取組を強化できないか。さらには、あったかふれあいセンターなどのこの高知型福祉のネットワークの機能強化をさらに図ることで、例えばリハビリをもう一段受けられるようにするとか、介護予防の取組をさらにもう一段受けられるようにするとかで地域の福祉ネットワークを強化し、これらの取組を組み合わせていくことで、住み慣れた地域で暮らし続けることのできる高知県を目指していく取組を強化していきたいと考えております。
そして3点目でありますが、これは厳しい環境に置かれた子どもたちへの対策を強化することであります。昨年は児童虐待について、本当に残念な悲しい事件が起こりました。こういう問題に対する対策をもう一段強化していかなくてはなりません。いじめ、非行の問題も引き続き深刻であります。学校の教育におきましても、「知」「徳」「体」それぞれまだまだ大きな課題を抱えているという状況にあります。
これらの根本的な原因を探っていきましたとき、やはり経済的な事情、さらにはそれに伴うさまざまな家庭的な問題に起因して、子どもたちが非常に厳しい環境に置かれていることが根本原因としてあると思います。この問題に正面から取り組んでいくことが極めて大事だと、私の3期目にとりまして非常に大きなテーマだと考えているところであります。このための施策を28年度から根本的にスタートをさせていきたい。根本的に強化をして本格的にスタートをさせていきたいと考えています。
厳しい環境にある子どもたちへの対策として、特に幼いころは保護者へのサポートをしっかりと講じていく取組をしていく。そしてだんだん子どもたちが長ずるに従って、子ども自身の例えば学習でありますとか、さまざまな課題について、しっかりとサポートできる体制を講じていく。対策をしっかりと充実・強化していきたいと考えておるところであります。
そして、4点目が少子化対策の取組でございます。この少子化対策、広義の少子化対策というのは非常に総合的な対策だと考えておりまして、産業振興計画などを通じて雇用を生み出す取組を行い、さらに、移住促進の取組を行っていく。そしてそのうえで、これらの施策を中山間地域において特に充実して展開できるようにしていく。出生率の高い中山間地域でそのようなことが行われるがゆえに、人口の自然増要因というものが高まっていくふうに持っていく。そのうえで、いわゆる狭義の少子化対策として、若者の結婚支援とか、子育てしながら働くことのできるための支援とかも講じていく。
大きく言えば、この4点につきまして好循環が実現するように対策を進めていくことが大事だと思います。
こういう全体像を意識したうえで、この少子化対策について、結婚支援とか、子育てをしながら働くことのできるための支援とか、我々として強化をしていかなければならないポイントはまだまだ数多いのではないのかと考えております。
マッチングシステムも平成28年から本格稼働をしていくこととなります。例えばこういう取組について、もう一段多くの皆様の参画を得ていくことができないものかと考えています。職場において、若い人たちの結婚を応援する、さらには、働きながら子育てをすることを応援できるような環境づくりをしていくことが非常に大事ではないか、もっと言うと、少子化対策そのものを県民運動にしていくということが極めて大事ではないかと考えているところです。
先ほど申し上げたような少子化対策について、結婚支援や子育てしながら働くことへの応援の施策を強化していきますとともに、少子化対策を県民運動に持っていく。そしてその中でも、特にこの職場の皆さん、企業の皆様方に、少子化対策の取組により一層ご参画いただけるような取組を強化する。そういう施策をこの平成28年には展開していきたいと考えておるところです。
そして最後、5番目が、医療・福祉、こういうものを支えるそれぞれの各施設、大変大きな課題を抱えておられます。特に人手不足も含めてさまざまな課題がある。こういう保健・医療・福祉の各施設がしっかりとサービスを展開するためのバックアップ、人材と産業の育成を図っていくことを5番目の柱として講じていきたいと考えているところです。
1期目、2期目と通じて、日本一の健康長寿県構想については、それぞれの各課が抱えている行政範囲につきまして、それぞれ前進をさせていくような形で施策を展開してまいりました。この6年間の取組を通じて、本当に高知県が抱えている課題というのは何だろうかということがよりクリアに見えてきたように思います。その問題について、先ほど申し上げた5つの柱に沿ってより根本的に対策を骨太化して、これらの根本的な課題にアプローチをしっかりしていく形で健康長寿県構想をバージョンアップしていきたいと考えているところです。
教育改革
4番目に教育改革の取組について、「知」「徳」「体」それぞれで取組、対策を進めてまいりました。対策の効果が現れてきたところもあります。
小学生の学力は、平成19年、20年当時は全国でも最下位レベルでありました。しかしながら、今やこの小学校の学力は上位レベルに展開してくるようになりました。小学校の体力についてもそうです。全国最下位レベルであったものが今や平均以上の段階に達するようになってまいりました。しかしながら、中学校の学力は引き続き全国最下位レベルであり、そしてその伸びも一時は非常に大きい伸びがありましたが、近年は足踏み状態となっています。
さらには非行の問題、いじめの問題、不登校の問題、これらの多くの課題をまだまだ抱えている状況にあると考えています。
この教育の問題について、一体何が原因で厳しい状況にあるのかを掘り下げて考えてまいりました。新しいこの3期目において、この教育については、本当の意味での根本的な原因である3つの点について対策をしっかり講じていくことが大事だと考えているところです。
1点目は、「チーム学校」の取組をしっかり進めていくことです。高知県は特に近年、退職教員の方の数が非常に増えています。若い先生方が増えています。そういう中において、それぞれの学校において教育を施していくに当たって、個々の先生方の力に頼る傾向がどうしてもあるのではないか、若い先生をベテランの先生がもう一段バックアップすることも大事ではないか、さらには、学校の先生だけにとてつもない負担が偏っていないか、いろいろと問題が複雑化、多様化している中において、一人の先生だけで対応していくのはとても無理があるのではないか、もう一段、専門人材、外部の人材の助けを借りることも大事ではないか、生徒指導上の問題しかり、クラブ活動の課題もしかり、その分、先生方には、学力の向上や生徒のそれぞれの悩みにしっかり寄り添っていける時間をもう一段取ることも大事ではないのか。
いろいろな意味において、先生たちの教育の指導力、教育力を向上させていくためにも、さらには外部の人材との協働によって、もう一段学校全体の教育力を向上させていくためにも、この「チーム学校」という取組を進めていくことが大事ではないかと考えています。そしてまた、組織として対応していく中で、若い先生はベテランの先生方から学ぶことも増えてくるであろう。そういうことなども通じて、いわゆる先生方の教育力、指導力の強化と、若い先生方の育成にもつながっていくのではないかと考えています。
この「チーム学校」の取組を通じて、「知」「徳」「体」のそれぞれの問題について根本的に対応力を強化できるのではないかと考えているところです。
2点目の問題として言えば、高知県には厳しい環境にある子どもたちが多いことこそが本当の意味で根本的な課題ではないかと考えています。残念ながら家庭環境が厳しい。ゆえに、勉強に集中できる環境にはない。さらに言えば、そのような問題が原因となって、いじめ、非行、不登校につながっていくことも多々あるのではないかと考えられます。
厳しい環境にある子どもたちへの対策について、福祉の面においては、日本一の健康長寿県構想において高知家の子どもを守っていくための対策をしっかり講じていく取組を進めていきますとともに、学校におきましても学習支援などの取組をもう一段強化をしていく。さらにはスクールソーシャルワーカー、そういう専門家のお助けも借りて、子どもたちに寄り添っていく対策を強化していくことが大事ではないかと思っています。
そして3点目、やはり子どもたちは社会全体で育てていくことが大事だと思います。地域を挙げて子育てをしていくこと、昔は地縁・血縁が強く、これが自然とできておりました。高知県においては、高知市部では都市化が進んでいく中において地縁・血縁が薄れ、中山間地域では若者がいなくなることによって、地縁・血縁が薄れる。いずれにおきましても、地域を通じての地縁・血縁が高知においてだんだん弱体化していることは否めない事実であると思います。教育の面におきましても、あえてこの地域を挙げて子どもを育てる地域の縁、えにしというものを意図的、政策的につくり上げていくということが大事だと考えています。
学校においても、地域の皆さんに子どもたちを見守っていただきたいと思いますし、また、朝の通学、放課後の通学を通じて子どもたちを見守っていただきたいと思います。そういう中において、特に厳しい環境にある子どもたちへの見守りを地域の皆様方にまたお願いをしていかなければならないと思っています。地域の皆様とともに地域を挙げて高知家の子どもたちを育てていくことにつながる施策を意図的、政策的に講じていく努力をしていきたいと考えているところであります。
「チーム学校」の取組、さらには厳しい環境にある子どもたちへの対策の強化、そして地域と協働した子育て、この3本を大きな柱として、現在教育大綱を練り上げる取組、検討を教育委員会の皆様方とともに進めさせていただいているところであります。今年度中にこの教育大綱を何とか練り上げていき、この大綱に基づいて、新年度よりスピード感を持って施策を展開していきたいと考えております。
インフラの充実と有効活用
5つ目の基本政策、インフラの充実と有効活用の取組につきましては、引き続き全力で進めてまいります。防災対策の観点からも産業振興の観点からもこれは非常に重要であり、全国の多くの皆様と協働していきながら、このインフラ整備充実のための取組を引き続き強化していきたいと考えておるところです。
中山間対策
5つの基本政策の横断的な政策といたしましての中山間対策の取組があります。中山間対策は、従前より申し上げておりますように三層構造だと思っております。
第一層は、産業振興計画の成長戦略を通じて、特に第一次産業を基幹とする取組を進めていく中において中山間地域の振興を促す。さらには、地域地域の資源を発展させていくための地域アクションプランの取組を通じて、地域に基幹産業を生み出すように取り組んでいく、これが第二層。そして、これらの第一層、第二層の取組さえも届きにくい、特に小規模な集落も含めた対策として集落活動センターの取組を進める、この三層構造で対策を講じてまいりました。
集落活動センターについては、現在18カ所できておりますが、今年度中にオープンが確定しているものが5カ所あります。そして、さらに平成27年度中、もしくは平成28年度のできるだけ早い段階で30カ所の箇所数まで到達することができないか、今、全力を挙げて対策を進めているところであります。30カ所において、地域地域の資源を活かしたロールモデルを確立していくことができればと考えているところであります。
この中山間対策は非常に難しい課題でありますが、本当の意味で中山間地域が栄えてこそ、高知にとっての強みの源泉が生かされ、高知の持続的な発展にもつながっていくと考えております。大変難しいチャレンジではありますが、引き続き5つの基本政策を総動員する形でこの中山間対策に当たりたいと考えています。
先ほど私は日本一の健康長寿県構想の中で、住み慣れた地域で暮らし続けることのできる高知県をつくりたいというお話を申し上げました。日本一の健康長寿県構想の強化の2番目の柱ということになります。この2番目の柱と中山間対策は、密接に絡み合った対策だと考えておりまして、機能強化した「あったかふれあいセンター」の取組と「集落活動センター」の取組などで良きネットワークを地域でつくり上げていくことができるように対策を強化できればと考えておるところです。
少子化対策と女性の活躍の促進
最後、少子化対策と女性の活躍の促進についてであります。少子化対策については先ほど申し上げたとおりであります。そしてまた、女性の活躍の促進についても先ほど一部申し上げました。キーワードは、働きながら子育てできる環境づくりをするために、女性の活躍促進策をどう強化していくかだと考えております。この男女共同参画プランを改定する年に当たっています。現在、その改定のための作業を進めているところであります。高知家の女性しごと応援室を開設し、多くの皆様方のご相談に応じてくる中で、我々としても何をしなければならないか一つ一つ見えてきているところがあると考えています。
復職支援とそしてできるだけフレキシブルにお子さんたちを預かることのできる機能などを強化していくことが一つのポイントとなっていくのではないかと考えているところでありますが、こういう対策の強化を図るなどをしていきながら、女性の活躍促進がもう一段進んでいきますように、我々としても施策を強化していきたいと考えているところです。
飛躍への挑戦を新たなステージへ
以上でありますが、こういう形で5つの基本政策それぞれについて、私どもとして本当の意味で高知県の持続的な発展につながっていくような好循環を生み出していく施策をつくり上げていくこと、さらに言えば、高知県の抱えるより根本的な課題に踏み込んだ施策を展開していくこと、大きく言えば二つの方向で、5つの基本政策をはじめとする政策をバージョンアップしていきたいと考えているところです。
飛躍への挑戦を新たなステージに進めていく。平成28年はそのための大きな第一歩を踏み出していく年だと考えているところです。私どもといたしまして、全力を挙げて県勢浮揚に向けて頑張ってまいりたいと考えているところでございます。県民の皆々様方のご指導、ご鞭撻を心からお願いを申し上げまして、私の年頭のごあいさつとさせていただきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いを申し上げます。
以上でございます。
イクボスの取組
(木田・時事通信記者)
働きながら子育ての部分につきまして質問させていただきたいのですけど、首長会で「イクボス宣言」があったりですとか、鳥取県の方で人事評価制度にイクボスを加えたりですとか、その庁内の中での動きというのもあるかと思いますが、その点で具体的にご検討されている点などは。
(知事)
高知県も「イクボス宣言」をしているのはご存じですか。
(木田・時事通信記者)
はい。
(知事)
少子化対策もそうですが、企業の雇い主の皆様方にこの少子化対策の取組にご参画をいただくということが極めて大事だと思います。典型的なのはそのイクボスの取組、もっと言うと、若い方々の結婚を応援するような取組です。この企業・団体の皆様方に具体的にどういう取組をしていただきたいのか、今、考察を重ねているところであり、その中には当然イクボス的な取組、もっと言うと、部署部署にイクボスを設けていただいて、これを具体的に組織全体に浸透させていく取組も入ってくると思うのです。これをまとめていきますと、各企業様方にお願いしていくこともありますし、併せて、高知県の場合はこの高知県庁も一番大きいぐらいの雇用主でありますから、企業の皆様方にお願いしていくことを高知県庁としても率先して行っていきたいと思っております。
高知家プロモーション
(木田・時事通信記者)
高知家プロモーションに関してなんですけど、ご検討されている方向性などがありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
(知事)
大きく言うと、二つの方向だと思います。今全部言うと後で面白くないですけれども、昨年大体1,500人のスターの皆さんにご登録いただいています。このスターの皆さんにより一層具体的に活躍していただける機会を設けていきたい。それが第1点であります。
そして第2点目ですが、露出をもう一段増やす方向を考えていきたいと考えているところです。
後者のことは、具体的にいろいろ考えています。
観光振興
(古宇田・日本経済新聞記者)
観光について2件伺いたいんですけど、まず1点目として、国際観光は全国各地でインバウンドについていろいろとやられていると思うんですけど、考えられているのは例えば爆買いの中国人を持ってくるということか、それともまた別の方向で考えられているのか。今、お持ちのインバウンドの活性化のためのお考えはどの辺にあるんでしょうか。
(知事)
大きく言うと、二つだと思っています。当たり前のことですけど、高知の場合は基礎的なことをあまねくしっかりやることが、まず第1点目として大事だと思っています。正直、私も就任して8年になります。観光振興の取組を一生懸命やってきましたが、最初はやっぱり国際観光うんぬんかんぬんという段階ではなかったと思います。国内の観光をいかに振興していくかに注力をする。それが大きな課題であった。そういう時期が長かったのも間違いないことだと思います。
ここに来て、300万人観光から400万人観光にもなってきて、いよいよ本格的に国際観光にも踏み出していくことができるステージにも来たのだと思っています。ですから、例えば海外の旅行博への出展だとか、県内におけるいろいろな形での受入態勢の整備だとか、ある意味、他の県だったら当たり前のように既に行われているであろうというような基礎的なことをしっかりと行えるようにしていくということがまず第1点目だと思います。
他の知事さんがある意味うらやましいです。みんな華やかで、観光振興のいろいろなプロモーションに行くといっても、シンガポールとかサンフランシスコとか、華々しいですよね。けど、私はそのときに大阪、東京に行っていましたし、名古屋に行っていました。それが高知においてはまだ国内の観光振興をというステージだと思っていたからです。でも本当に、これまでの取組を通じて国際観光にもチャレンジできるステージにいよいよ来たと思っていますので、それをこれからやるために基本的な点をしっかり整備をしていくことが大事です。
そして2点目として、多分高知の場合はどちらかというと薄利多売というよりもクオリティの高さを求める観光客の皆様方をターゲットとしていく形になっていくと考えておりまして、どちらかというと高付加価値の旅行商品をつくり出していく方向に向いていると思っています。
というのは、ご案内のように、あまり大量にといっても、我々の受け入れるキャパがあるのかという問題もありますし、高知の場合は、私たち自身が持てるものをいかにどううまく生かしていくのかを考えたとき、やっぱり「自然」や「食」になっていくと思うのです。
ですから、私たちは、テーマパークとか、ゴールデンルートとか、いわゆる大規模ツアーとかという方向感よりは、どちらかというと高付加価値型の旅行商品づくりで高付加価値型のターゲット層をねらった取組が大事かと考えておるところであります。
明治維新150年にかけて取組を進めていく中において、本物の歴史資源の磨き上げを行っていきたい。それに地域の食と自然体験とを組み合わせたクラスターをつくっていきたいというお話を申し上げましたが、これをつくり上げていくときに、外国人観光客の皆さんを意識した形でつくり上げることができればと考えております。
例えばその歴史、もっと言えば文化について、外国の皆さんにもしっかり分かっていただける解説を付した看板を立てることもありますでしょうし、ネット上でしっかり解説できるようにしていくことも大事でしょう。場合によっては、ガイドをしっかりつくっていくことも大事でしょうし、食の資源を磨き上げていくうえで、メニューを外国語化していくこともそうでしょう。併せて、外国人の皆様方の嗜好に合わせた形で作っていくこともできるようにしていくことも大事でしょう。明治維新150年にかけての取組は、国内観光対策でもありますけれど、併せて、インバウンド対策にもなっていくように取組を進められればと思います。
今年、ご案内のように、大型客船がかなりの数で来ます。中には、16.8万グロストンという大きい船も6回か7回、寄港することが確定していまして、いろいろな国のお客様がおいでになる。そういう方々はいろいろな外国旅行をされ、いろいろな外国をご存じの方もおいでになる。そういう方々との触れ合いを通じていく中において、我々自身も鍛えられるところが出てくるのではないでしょうか。そういう機会を大いに活かしていきながら、外国人観光客の皆様を受け入れることのできる観光地としての地力をつけていきたいと思います。
奥四万十博
(古宇田・日本経済新聞記者)
観光のお話の中で、大政奉還、歴史、次の段階での新しい観光キャンペーンとおっしゃっていましたけど、ただ、今年の4月から奥四万十博があると思いますが、逆にその辺の取組が若干埋もれているというか、次の話が多くて、最近、奥四万十博のお話がほとんど出てこないので、その辺はどうなっているのか、どういう位置づけなのかということを伺えれば。
(知事)
地域の博覧会というのは、地域において広域の観光資源を磨き上げ、かつ広域でそれを売り出していくことができる体制をつくるために非常に重要だと思うのです。東部博は、そういう役目を果たしてきたと思います。奥四万十博も次のステージにおいて、大いにその役目を果たされることになると思います。平成28年は、そういう意味において、高幡地域において、広域の観光資源を磨き上げて広域で売り出していける体制づくりをする年でありますし、併せて、平成29年以降の大政奉還150年以降の歴史博覧会についての準備を進めていく年、その両方を行っていく年になるでしょう。
地域地域のクラスターの担い手というのは、その地域の広域観光組織です。高幡地域であれば、奥四万十博で培われる新しい観光組織がやることになる。東部地域であれば、まるごと東部博を担った推進協議会の後継となる組織がそれを担われていくことになる。そういうことではないかと思うのです。
ですから、これは並行していくことですし、この年限を通じてつくり上げていくクラスターの担い手も、地域博覧会を通じて形づくることではないかと思います。
観光博覧会
(池・高知新聞記者)
大政奉還の観光博覧会は、仮称幕末博とかですか。
(知事)
いや、まだまだ名前は考え中です。
(池・高知新聞記者)
幕末博みたいな、呼び方はまだ県庁内では位置づけてないですか。
(知事)
まだ位置づけてはいないです。
今年のキーワード
(池・高知新聞記者)
キーワードとして、知事の今おっしゃった中でいくと、拡大再生産であるとか好循環であるとか、より根本的な課題に向き合うなど、いろいろとおっしゃいましたが、一言二言で今年のキーワードとして挙げるとしたら、知事の力点を置きたいところは、今言ったキーワードの中ではどれですか。
(知事)
「飛躍への挑戦」ということは変わっていません。ただ、「新たなステージへ」ということが非常に大きいと思っています。だから、「飛躍への挑戦の取組を新たなステージに進めていくこと」だと思っています。選挙のときにも申し上げましたが、そのままだと思っています。それが私にとっての本年における包括的なキーワードだと思っています。
(池・高知新聞記者)
知事のずっと仰っている飛躍への挑戦というのは、2期目の途中あたりからのキーワードとして。
(知事)
そうですね。
(池・高知新聞記者)
おっしゃっていた尾﨑県政の向かう大きな筋だと。平成28年に限定したときに、その筋に向かってどういう手法を取るのかというキーワードでいくと、いかがでしょうか。
(知事)
「新たなステージへ」というのがまさにそうです。それぞれをバージョンアップしていくことになりますので。ステップアップさせる重要な年なのです。ですから、この第2期から第3期の産業振興計画もがらっと変わりますし、健康長寿県構想もがらっと変わります。第3期の南海トラフ地震対策行動計画は、基本的にケースが発展という形になるかと思いますが、教育改革についても今までとは少しその軸の切り取り方が違う形で対策を進めていくことになるでしょうし、本当に新しい幕開けです。新しいステージになると考えて対策を進めているのです。
基本的に発言には、必ず背景に具体的中身がある。そういうつもりで言っていますし、そういう言葉として使っているつもりです。
県内自治体の総合戦略
(夏井・読売新聞記者)
各地の自治体の総合戦略が大分できあがってきていると思うのですが、地域地域で特徴があると思うのですけど、できあがってきたものについてどういう印象を持っておられるのかということと、あと、県としてどういうかかわりをしていけるかということを教えてください。
(知事)
2点あって、一つは、我々として非常にありがたいことに、基本的な柱、方向観、戦略の方向性というのを共有させていただいているのが非常にありがたいと思いますし、最終的に県と一体となって行っていく中で実効ある取組となっていくのではないかということをありがたく思っているところです。
基本の柱は4つ、基本的に1番目の柱が地産外商・拡大再生産、2番目の柱が移住促進、3番目が中山間対策、4番目が少子化対策を講ずること。これはしっかり一群として好循環をなすべく仕組まれているものと思いますが、県はそういう方向でつくっている。各市町村においても基本的にそういう方向でつくっている。こういう形で方向感を共有して取組を進めさせていただくことは、良き相乗効果を生み出せるということで期待感があるということです。
2点目として、それぞれについて具体性があるとすごく感じます。例えば産業振興の取組についても、これまで一緒に地域アクションプランの取組などを進めさせていただいてまいりました。今回総合戦略の中でもこの地域アクションプランの取組などを大いに取り組んでいただいており、我々もご指導いただきながら、一緒に地域アクションプランの取組などを進めてきました。市町村の皆さんにご指導いただきながら進めてきましたが、そのようなものの土台の上にしっかり立って対策を進めておられることが、我々としても今後一層相乗効果を生み出せる、具体的な成果を生み出していけることになるのではないかという意味においてありがたいことだと思います。
今後一つ、我々として、もう一段ご相談をしたいと思っておりますのは、先ほど申し上げたように、地域の中でそれぞれ産業クラスターをいかにつくり上げていくことができるかです。地域に一定大きい工場ができても、それだけでは、若い人が残ることができるかという問題の解決にはつながらない。工場で働きたい人ばかりではないので、第一次産業をやりたい人もいらっしゃるでしょうし、さらに第三次産業で働きたいと思われる方もいらっしゃるでしょう。第一次、第二次、第三次と多様な職があってこそ、若い人が残ってもらえる地域になることができると思うのです。
だから、その地域の産業群づくりを進められるかどうかは、地域地域に若者が残ることができる高知県につながるかどうかの大きな肝だと思っています。具体的にプロジェクト化していきたいと思っていまして、地域地域にこのプロジェクト、この地域だとこういう形だという戦略を市町村の皆さんとさらに次の改定のときに共有させていただくことができればと思っておるのです。平成28年度改定に当たってはそこが大きな仕事だと思っています。
有効求人倍率
(石川・テレビ高知記者)
有効求人倍率のことです。1.05倍、正社員に限っては0.56倍と、みるみる上がっていますが、この辺を知事はどういうふうに、見方っていろいろあるかと思うんですけど、どういうふうにこうご自身は分析されているのでしょうか。
(知事)
過去いろいろ数字の分析は、産業振興計画をつくるときに一生懸命各方面で見てきて、従前より申し上げていましたが、平成13年ぐらいから大体9年、10年ぐらいの間、0.4倍、0.5倍前後、正確に言えば0.45倍前後でほとんど変わらない時期があり、これは全国がどんなに良くなっても変わらない、良くならない。そういう時期がありました。これが約10年続いた。それが、約4~5年かけて上がり続けてきました。これは大きく高知県経済の潮目が変わったということだと思うのです。これは全体として、私どもも努力いたしましたし、多くの皆さんが努力されたことだと思いますが、高知県経済全体として、人口減少が続いて縮んでいく県内経済頼りではなく、外とつながり外から外貨を稼いでこられる体制になってきたということだと思うのです。
同じことをいろいろな側面から言うことができると思うのですが、昔0.45倍ぐらいで全く変わらなかったときは、単純に一つ言えば、外の景気がどんなに良くなったって、外とつながってなければ関係ないのです。もっと言えば、外から一定効果が及ぼされたとしても、県内のウエイトが高ければ、県内経済が縮めば相殺されてしまい、上向いていくことができないことにもなるのかもしれません。
今、外とつながり、外の景気回復の効果を取り込めるようになってきた。そういう中において、県内経済全体としての規模が従前に比べたらだんだん拡大してこようとしているのかと、県経済としての規模、県経済としての活力がだんだん増してきつつあるのかと思われるところであります。正直、今回どこまで上がり続けるかとは思っていましたが、一応ここまで来たというのは感慨深いことだと思っています。
昔は生産年齢人口の減少に伴い県経済は縮んでいったのです。平成9年から平成19年まで、県内での商品販売額は2割縮んだ。いろいろなデータを見ていただければ、生産量もどんどん生産年齢人口の縮小に合わせて縮んでいます。ですけれども今は、林業、農業、水産業、工業にしても、縮むどころか、どちらかというと拡大基調にあるはずです。あるいは変わらないと見られる場合もあるかもしれないが、とんでもない。今までの基調でいけば、縮んでいるのがベースラインです。でもそうではなくて、それぞれ一定維持するか、もしくは拡大の方向にあるということはどういうことか。働く人の数は減っているが、仕事は減っていないということです。だから有効求人倍率は上がっているということなのだろうと思うのです。
何とかそういう構図で上がってきているのは分かります。
仕事は減ってなくて、生産年齢人口は減っているわけですから、仕事を求めている人の数が減ってくる。だから逆に言うと、仕事が減ってなくて、その仕事をしていた人が退職して、そのときにしっかり求人されているということです。仕事の方は減ってない、むしろ増えているのですから、そういう基調が続いてきた結果として、今回有効求人倍率が上がり始めたのだと思うのです。
でもですね、逆に言うと、1倍を達するところまで来てある意味我々としての目標は達成されたところはあるというか、我々として夢のようでありますけれども、一つの段階に達することができたことは確かにあるのだと思います。しかし、この一つの段階に達したからこそ見えてくる深刻な課題もたくさんあると思います。
これも二つで、一つは正社員有効求人倍率。高知県としたら過去最高の0.56倍です。でも、全国では45番。何といっても絶対水準として0.56倍は低いです。まだまだこの正規の有効求人倍率が上がるようにならなければ、若い人を残すことはできない。だからそういう意味において、もう一段正規の職を生み出していけるかどうか。だけど、これはハードルが高いと思います。一定いろいろな形でものが売れ出したといっても、これが長期に持続するという確信が持てなければ正規の求人にはつながりません。だからもう一段、先ほどより申し上げている、地産外商の成果を拡大再生産につなげるということ、これは今の仕事の基調を持続できるという確信が持てるようになることです。そうなってこそ、正規の有効求人倍率も上がる形になってくると思います。
もう一つは、地域の格差というのは大きいと思います。高知市周辺は比較的求人倍率が高いですが、郡部になってくると低いところが出てきます。この地域に若者が残ることができてこそ、高知県本来の強みを活かすことができることになるでしょうから、そういう意味ではこの地域間格差は大きな課題だと思うのです。だから地域に若い人を残すことができるようになるためにも地域地域に産業群をつくり出し、地域で若い人を残すことのできる経済的土壌を涵養していくことが極めて大事だと思っているのです。
正直、この有効求人倍率が1倍を超えるようになるということは、本当に多くの皆さんの努力の結果だと思います。一つの産業が何々になったからではここまでは来ません、0.6倍とか0.7倍ぐらいまでだったら来るかもしれないけど。今回の1.05倍は主要産業の求人が増えている。農林水産業だって増えているのです。こうなってくるということは、生産年齢人口減少の中で同じように生産量も落ちている。即ち仕事も減ってきたという基調の中から、生産年齢人口は減るけど仕事は減らない。むしろ増えていくという状況になってきたからこそ、こういう形で潮目が変わったのだと思うのです。これはこれで大きいことだと思います。
しかし、それで課題が解決というより、むしろより根本的なところが見えてきているということだと思うのです。このように仕事は拡大してきているかもしれないが、まだ多くの人がいつまで続くものやらよく分からないという感じになっている。だからパートの求人にとどまっている、正規の求人には続いていってない。地産外商の成果を拡大再生産にと言っているが、多くの皆さんが、仕事が今の基調で持続できると確信が持てるようになるかどうかによるところが非常に大きいと思うのです。そういう考えで今対策を進めようとしているのです。
高知県の抱える根本的な問題
(古宇田・日本経済新聞記者)
お話の中で本当の根本的な原因とか根元的な課題ということをおっしゃっていますけど、例えば今8年間やられて考えられている、高知県の現状にある根本的な問題はどういうものだとお考えになっていますか。
(知事)
一言で言うと悪循環に陥ってきたことだと思います。人口減少、特に社会減から起因して、県内市場が小さくなっていく中において活力が失われて経済規模が縮小するということが、特に中山間地域から進んでいった。高知県の本来の強みの源泉は中山間地域にあり、中山間地域こそ出生率が高い。そういうところが真っ先に衰えていった結果として、経済的な強みは失われ、人口の自然減がさらに加わってくるようになり、さらに経済規模を縮小させて社会減を加速するという悪循環のループに、少なくとも平成になってから完全に陥ったと思います。
だから、いかにこの悪循環を好循環のループに逆回転させていくことができるかが、高知県が本当の意味で解決しなければならない課題だと思います。恐らくこれは高知県だけの問題ではなくて、日本全体でなっていると思うのです。日本全体で陥っていく悪循環のループを、いかに好循環に転換していくことができるかどうか。地方創生の課題は結局はそういうものを目指していくべきものだと考えています。
逆に言うと、景気は良くなったり悪くなったりします。有効求人倍率も良くなったり悪くなったり、日本全体としてもしますでしょう。悪くなったとしても、全国と同じように動いていけるようになれば、また良くなったときには良くなる形になる。そういう力強さを取り戻していくようにするためにも、その悪循環のループにどんどん陥るのではなく、その好循環のループに持っていけるかどうかが大きな課題だと思うのです。そうなれば、あとは行政がうんぬんかんぬんという世界にしなくても、安定的な発展につながっていけると思うのです。
地産外商の成果を拡大再生産というのは、悪循環に陥ってきたことを好循環に乗せていきたいとの思いも込めて言っているつもりです。
また、人口減少は、もう閑話休題ですけど、平等に高知県全体で起こるわけではないのです。中山間地域のようなところから先行して起こっていくのですが、この中山間地域みたいなところこそ、高知の本来の富の源泉であり、出生率も高い、いわゆる人を育むところです。そういうところが真っ先に衰えていくからこそ、衰退が加速していくことになる。
けれども、日本全体もこれからそうかもしれません。首都圏とその他と考えたときに、これがまさに高知で言う高知市とその他の中山間地域にまさに相似形を為すと思うのです。そういう意味において、地方創生、地域の活性化、地方の活性化の取組に真剣に取り組むことが極めて大事だと思います。
ただ、日本全体が高知が陥ったような悪循環に陥っていくことにならないように、既になりかけているのかもしれませんが、どう防いでいくのかということかと思います。
中山間対策
(古宇田・日本経済新聞記者)
知事のお考えで、「中山間地域こそ本来の力の源泉」というのは高知県だけではなくて、日本全体もある意味言えることだと思うのですけど、それについて、大分霞ヶ関の方のその辺の認識は少し変わってきてはいるのですか。
(知事)
大分変わってきたかと。私は、せめて中核都市に人が残ることができればという発想が出てきたときに、正直非常に危機感を抱きました。ただ、それを言い出された皆さんは田舎のことをよく知っているので、実際はよくご理解されたうえでおっしゃっているとも思いました。ところが政策になった段階で、都市部にさえ残すことができればいい策にどんどん曲解して施策が展開していたことに非常に危機感を持ったのです。私どもが提言などを重ねてきた中において、大分ご理解も得てきたのではないかと思いますが、引き続き油断はなりません。我々としての声を挙げ続けていかなければならないと思います。
でも、一ついい傾向だと思ったのは、新国立競技場です。A案にしろB案にしろ、木を大いに潤沢に使う方向になりました。林業の再生は大事という感覚は、霞ヶ関の中でも増えてきているのだと思うのです。林業の再生は中山間対策の根治対策ですから、そういうものを大事にしようという感じが出てきていると伺わせる一幕かと思います。
しかし、財政再建論と絡めて効率化の要請はありますから、我々としても声を挙げ続けないといけません。都市部だけ栄えればいいではないか論は、一見効率的で効果的なように見えますが、短期的な視点の施策であって、本来の強みを失ってしまい、持続的な発展にはつながらないと。より長期的な視点で、少々一見その予算効率としては無駄に見えたとしても対策はしっかり講じなければならないと田舎の県が言わないといけません。だから引き続きしっかり訴えを進めていきたいと思います。
(古宇田・日本経済新聞記者)
国立競技場の話だと、A案・B案ともに四国に非常にかかわり合いの深い方が。
伊東さんは愛媛県と非常にかかわりが深いようですし、隈さんは梼原の方で、何か非常に都市部のど真ん中の建築物を考えるに四国にかかわりの深い建築家の方が、A案・B案両方ともというのは、なかなか面白いなと。
(知事)
私もそう思います。昔であれば、ああいう建物こそ建築として近代的な素材を使い造ったと思います。だけど、あえてそれが木になっていることの意義は大きいと思います。また再び木を使うということが日本全体で一つの流れになってくれればと思います。
(知事)
本年も皆さん、よろしくお願いを申し上げます。