公開日 2016年12月08日
平成28年9月県議会での知事提案説明 (9月28日)
1 国の動向等
(東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて)
2 補正予算などについて
(1)9月補正予算
(2)今後の財政収支見通し
3 経済の活性化について
(1)第3期産業振興計画について
(2)地産外商の強化
(輸出振興)
(農業分野)
(CLT等の普及促進)
(水産業分野)
(3)拡大再生産の好循環に向けた強化策
(ア)移住促進
(イ)地域産業クラスターの形成
(ウ)起業・新事業展開の促進
(IoTの推進)
(4)観光振興の取り組み
(志国高知 幕末維新博に向けて)
(よさこいの世界的ネットワーク構築)
(外国クルーズ客船の受入強化)
4 日本一の健康長寿県づくりについて
(1)高知家健康パスポート
(2)地域医療構想
(3)少子化対策の推進
5 教育の充実
(1)全国学力・学習状況調査結果
(2)「教育等の振興に関する施策の大綱」の推進
(チーム学校の構築)
(厳しい環境にある子どもたちへの支援)
(地域との連携・協働)
(3)高知江の口養護学校の移転整備
6 南海トラフ地震対策について
(1)第3期行動計画の取り組み
(命を守る対策)
(命をつなぐ対策)
(2)熊本地震の教訓を踏まえた第3期行動計画の強化
(3)「世界津波の日」高校生サミット
7 その他
(伊方発電所の再稼働と原子力災害避難等実施計画について)
(動物愛護の取り組み)
(エコサイクルセンター)
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成28年9月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
はじめに、先の台風第16号による被害などについてご説明申し上げます。
今月20日、本県に最接近した台風第16号により、県西部を中心に河川の氾濫や内水による浸水が相次ぎ、200棟を超える住宅の浸水被害や、農作物を中心とした1億円近くの経済被害などが発生しました。被害に遭われた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。
県としましては、市町村とも連携し、迅速な復旧に向け必要な対策を行ってまいりますとともに、台風や豪雨が多い時期が続くことから、引き続き十分な警戒を行ってまいります。
1 国の動向等
我が国の経済は、一時期と比べ雇用情勢等をはじめとして全般的に改善してきている一方で、少子高齢化などといった構造要因も背景に、個人消費等は力強さを欠いた状況が続いております。
こうした中、臨時国会が一昨日召集され、第2次安倍内閣発足以降では最大となる事業規模28兆1千億円の「未来への投資を実現する経済対策」を実行するための第一弾となる補正予算案が上程されました。安倍総理からは、日本経済の再生に向けて「アベノミクスを一層加速し、デフレからの脱出速度を最大限まで引き上げていく」、「成長と分配の好循環をつくり上げていく」、「一億総活躍の未来を切り開いていく」との力強い表明があったところであります。この補正予算案には、これまで本県が政策提言で訴えてまいりました地方創生の推進や、子ども・子育て支援、防災・減災対策の強化、TPPへの対応などの施策が数多く盛り込まれており、大いに評価をし、期待もいたしております。
今後、補正予算に基づく経済対策が本県の県勢浮揚に向けた取り組みの大きな後押しとなるよう、その早期の成立を願うものであります。
(東京オリンピック・パラリンピック大会に向けて)
先日閉幕しました2016リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピック大会では、選手たちの活躍する姿が多くの感動をもたらしました。中でも、本県から出場されましたウィルチェアーラグビーの池透暢選手が、主将としてチームを引っ張り、この種目で日本初となる銅メダルを獲得されましたことに心からお喜びを申し上げます。池選手の最後まであきらめずにプレーする姿が、私たち県民だけでなく、日本中に勇気と希望を与えてくれました。池選手のご活躍と栄誉を心から称えますとともに、深く感謝を申し上げたいと思います。
いよいよ4年後には、東京オリンピック・パラリンピック大会が開催されます。本県としましては、東京オリンピック・パラリンピック大会の開催をまたとない好機と捉え、スポーツの振興や青少年の競技力向上に力を注ぐとともに、県経済の活性化や文化の振興にもつなげてまいりたいと考えております。
また、これまで、国や大会組織委員会などへの政策提言をはじめ、各国選手団の事前合宿などの招致に向けた取り組みを行ってきました結果、本年6月にはオランダ及びシンガポールとの相互交流を図るホストタウンとしての登録が決まりました。この他にも、より多くの国の方々と交流ができるよう招致活動を続けております。
さらに、先月には海外のよさこいチームの代表者などを「よさこいアンバサダー」として認定するなど、よさこいの世界的ネットワークの構築を目指した取り組みも開始したところです。
こうした活動に加え、県と市町村がさらに連携して取り組みを進めるため、本年7月に「高知県・市町村2020年東京オリンピック・パラリンピック活用協議会」を設立いたしました。今後も引き続き、市町村や関係者の皆様と連携しながら、東京オリンピック・パラリンピック大会の効果が県内にも波及するよう、様々な取り組みを進めてまいります。
2 補正予算などについて
(1)9月補正予算
今議会では、経済の活性化をはじめとする基本政策の着実な推進などのため、総額65億7千万円余りの歳入歳出予算の補正及び総額20億8千万円余りの債務負担行為の追加及び補正を含む一般会計補正予算案を提出しております。
第一に「経済の活性化」に関しては、「志国高知 幕末維新博」につきまして、そのプロモーションを本格化するとともに、JR高知駅前の「こうち旅広場」の改修を行うなど、開幕に向けた準備を進めてまいります。また、大幅に増加している外国クルーズ客船の寄港に対応するため、高知新港に入国管理などの機能を備えたターミナル施設を整備してまいります。加えて、さらなる移住促進に向け、移住者の受け皿を広げるため、市町村におけるCCRC構想の策定や空き家の実態調査などへの支援を行うほか、インターネットを活用して生産性の向上や地域の課題解決などを図るIoTの取り組みを推進してまいります。
第二に「南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化」に関しては、熊本地震の被災状況などを踏まえ県立学校体育館における天井の一部や照明などの非構造部材等の点検調査を進めるとともに、旅館やホテルにおける業務継続計画策定への支援などを実施してまいります。
このほか、高知江の口養護学校の教育センター分館敷地内への移転に着手しますとともに、国の経済対策への対応の第一弾として、本県から政策提言を行ってきた四国8の字ネットワークや浦戸湾の三重防護などのインフラ整備を加速してまいります。
(2)今後の財政収支見通し
あわせまして、今議会では、平成34年度までの中期的な財政収支の見通しについてご説明させていただくこととしております。
県の財政運営においては、常に中期的な展望の下に財政規律を維持しながら、県民サービスの確保と県財政の健全化を共に実現することが重要であります。このため、本年度も、昨年度の決算状況や今後の歳入の見込み、想定される大規模事業などを踏まえ、中期的な財政収支を試算いたしました。
その結果、南海トラフ地震対策の強化・加速化や、今後の社会保障関係経費の増加による影響を加味してもなお、一定の財政調整的基金を確保できる見通しとなっております。また、実質的な地方交付税である臨時財政対策債を除く県債残高は、必要な投資事業の実施を見込んでも中期的には逓減傾向を維持できる見通しであります。
しかしながら、本県の財政運営は国の歳入・歳出改革などの動きに左右されますことから、引き続きこれらの動向を注視し、必要に応じて国に政策提言を行うなど、気を緩めることなく安定的な財政運営に努めてまいります。
3 経済の活性化について
続きまして、県政運営の現状に関し、まず、経済の活性化についてご説明申し上げます。
(1)第3期産業振興計画について
第3期産業振興計画においては、地産外商の取り組みをさらに強化するとともに、その流れをより力強い拡大再生産の好循環へとつなげるための施策を質的、量的に抜本強化しております。これら新しい施策群の中には、県勢浮揚に向け、非常に難易度の高い課題に挑戦するものも多く、本年度はこれらを着実に実行段階へと進めていくことがまずは重要であると考えております。このため、これまで以上に官民協働、市町村政との連携協調の姿勢を徹底しながら、全力で取り組んでいるところです。
(2)地産外商の強化
(輸出振興)
このうち、まず、地産外商の強化に関しては、食品の生産管理高度化の促進や、地産外商公社の活動範囲の拡大など、国内におけるこれまでの取り組みの拡大と深化を図るとともに、本年度からは特に、国外への外商活動、すなわち輸出を促進する取り組みを本格化しております。
食品の輸出については、これまでの取り組みによりユズを中心に欧米やアジアへの輸出が拡大し、昨年の食料品の輸出額は前年比約1億円増の4億3千9百万円余りと、第1期産業振興計画がスタートした平成21年の8倍を超える見込みであります。本年度は、タイやインドネシアなどの新たな市場への外商に挑戦するとともに、品目についてもユズに次ぐ柱となる土佐酒や水産物などの販路開拓に取り組んでいるところです。
また、機械製品等の輸出に関しては、今月初旬、高知港の友好提携ネットワークであるINAPの経済ミッションで訪問したフィリピンにおいて、私も参加企業の皆様と共に現地官庁の幹部への売り込みを行うとともに、広く現地企業や行政関係者に本県の防災関連製品をアピールしてまいりました。フィリピンは本県と同じく、台風や地震などの自然災害が多いことから防災関連製品への関心が高く、販路拡大の手応えを感じたところです。
今後、さらに、その他の国々においても私自身が先頭に立って本県の優れた製品や技術のトップセールスを行うなど、企業の皆様の海外展開を力強く後押しし、さらなる輸出振興を図ってまいります。
(農業分野)
次に、農業分野では、持続的な生産拡大を目指して、次世代型こうち新施設園芸システムの普及に取り組んでおり、国への提言により次世代施設園芸団地の整備に関する補助制度の創設を実現するとともに、その財源も活用して、次世代型ハウスの整備や環境制御技術の導入を進めてまいりました。その結果、四万十町の次世代施設園芸団地においては、今月から本格的にトマトの収穫が始まり、1日3トン以上が出荷されております。また、これに次ぐ規模として、県内5カ所に次世代型ハウスが完成し、ピーマンやメロン、ニラなどの生産も始まりました。さらに、既存ハウスへの環境制御技術の普及も進んできており、次世代型システム全体の導入面積は、昨年末の約95ヘクタールから1年間で7割以上拡大し、本年末には約167ヘクタールとなる見込みであります。
また、中山間農業複合経営拠点については、現在、嶺北地域などの8市町村で取り組みを進めております。さらに本年度は、県内各地でセミナーを開催し、複合経営拠点の整備に向けた構想づくりを支援してきた結果、28市町村の構想案がまとまり、このうち4市町が具体的なプランづくりに着手するなど、着実に広がりつつあります。
畜産振興に関しては、肉用牛や養豚、地鶏などの生産基盤の強化と販路拡大に向けた取り組みを進めるとともに、中山間地域に多様な雇用の場を創出するため、畜舎などの生産施設を中心に、食品加工、流通販売、レストランなどの関連産業が集積する「畜産クラスター」の形成に取り組んでおります。
こうした中、高知市など県内28市町村で構成する一部事務組合が設置し、県中央食肉公社が運営する「高知県広域食肉センター」の今後のあり方について、関係者間で存廃を含めた議論が行われております。同センターは、施設の老朽化が進むとともに、と畜頭数の減少などにより経営的に厳しい状態が続いておりますが、畜産物の衛生検査、と畜、セリ、加工、流通販売等といった畜産の川上から川中、川下にかかわる重要な機能を有しており、本県の畜産振興のためには必要不可欠な施設であると考えております。
県としましては、このセンターの機能を県内に存続させることができるよう、主体的に関係者との協議を行ってまいります。
(CLT等の普及促進)
次に、林業分野では、CLTを活用したモデル建築物の整備に取り組むとともに、国や関係機関に対して東京オリンピック・パラリンピック関連施設へのCLT活用を提案するなどの取り組みを進めております。
こうした中、本年5月に、100名を超える国会議員の参加による「CLTで地方創生を実現する議員連盟」が発足するとともに、6月には「CLT活用促進に関する関係省庁連絡会議」が設置されました。この中で、政府としてCLTの活用を積極的に促進する方針が取りまとめられるとともに、国の庁舎では初めてCLTを本格的に活用して嶺北森林管理署の整備を行うことが公表されたところです。
今後はさらに、「CLTで地方創生を実現する首長連合」や日本CLT協会の皆様とも連携し、全国の公共建築物などへのCLTの活用を促進するとともに、その過程で得られた技術やノウハウを普及させることによって建築コストの低減を図り、これまで木材があまり使われてこなかった民間の低層非住宅や中・大規模建築物へとCLTの活用を広げていきたいと考えております。あわせて、本県で開発されたシングルウッドパネルの普及や、新たな木質部材の商品化などを進めることにより、建築物の木造化を促進し、全国で木材の需要が飛躍的に拡大するよう取り組んでまいります。
(水産業分野)
次に、水産業分野では、クロマグロの人工種苗の技術開発について、本年度は1万尾の稚魚を海上のいけすに沖出しすることを目標に取り組んでまいりました。その結果、沖出し数は目標を上回る約1万7千尾となり、昨年度の約1千尾から大幅に増やすことに成功したところです。来月からは、大月町古満目に水産試験場の分場を開設し、さらなる増産と事業化に向けた試験研究を加速してまいります。
また、水産業を核とした地域産業クラスターの形成を目指し、その一翼を担う漁村における有望なサービス産業として、本県の豊かな海洋資源を生かした遊漁や体験漁業などの取り組みを推進することといたしました。
具体的には、遊漁船業者の方々がサービス業としてのノウハウを学ぶための研修会の開催、アドバイザーによる事業計画策定等への助言、観光事業者と連携した情報発信やイベント開催、利用客の安全性を高めるための設備整備への支援など、地域ぐるみで遊漁等の振興に取り組む活動を総合的にサポートしてまいります。
このことにより、漁村地域に多様な仕事を創り出し、若者の定住や移住者の受け入れの増加につなげていきたいと考えております。
(3)拡大再生産の好循環に向けた強化策
次に、拡大再生産の好循環を実現するための3つの柱、すなわち「担い手の育成・確保」、「地域産業クラスターの形成」に向けたプロジェクト群、「起業・新事業展開の促進」の取り組みについてご説明申し上げます。
(ア)移住促進
まず、担い手の確保に関連した移住促進の取り組みについては、平成31年度の年間移住者数1,000組という高い目標の達成に向けて、本年度から様々な施策を強化しているところです。本年4月から先月末までの移住実績は、前年同期より4割以上多い328組と順調に推移しており、一定の手応えを感じております。今後は、さらに移住希望者の受け皿を広げるため、新たに2つの取り組みを進めてまいりたいと考えております。
一つ目は、移住希望者向けの住宅の確保であります。近年の移住実績の伸びに伴い、移住者向け住宅のストックは不足してきている状況でありますが、他方で、県内各地においては、過疎化と人口減少に伴って年々空き家が増え続けており、これらを移住者用住宅として有効に活用できるかどうかが大きなポイントとなります。
このため、市町村が行う空き家の実態調査を支援し、利活用が可能な家屋の掘り起こしを行うとともに、その調査結果を活用して、移住希望者へ効果的に情報提供を行う取り組みを進めることとしました。
二つ目は、高知版CCRCの推進であります。県として、移住者と地域住民が共に健康でアクティブに暮らせるコミュニティづくりを基本コンセプトとする「高知版CCRC構想」を策定し、先月、公表いたしました。この高知版CCRCは、他県で見られるような大型施設の中で生活する形ではなく、地域における様々な施設を活用しながら地域に溶け込んで暮らす、いわばオープン型を標準的な姿としております。
今後、市町村におけるCCRC構想の策定を支援し、モデル事業づくりを進めるとともに、その過程を他の市町村にも情報提供することによって、県内各地に高知版CCRCの取り組みを広げていきたいと考えております。
(イ)地域産業クラスターの形成
次に、地域産業クラスターの形成については、現在、16のクラスタープロジェクトに取り組んでいるところであり、このうち13のプロジェクトについては、市町村や関係機関で構成するプロジェクトチームが設置され、クラスタープランの策定作業や生産・加工施設の整備などが進んでおります。
具体例として、四万十町の農業プロジェクトでは、先ほど申し上げましたように、次世代施設園芸団地においてトマトの出荷が始まりました。団地に併設する育苗施設から供給された高品質な苗をもとに、良質のトマトが大量に生産され、地域内で多くの雇用を生み出すという好循環が確実に構築されてきております。
また、南国市の還元野菜プロジェクトにおいても、次世代型ハウスの整備が始まり、電解水素水で育てた野菜の販路拡大に向けた検討が進められているところです。
このほか、四万十町のポークブランド推進プロジェクトでは、加工直販所や飲食店の営業が開始されるとともに、新たな畜舎の整備が始まるなど、四万十ポークの生産と消費の拡大に向け着実に歩みを進めております。
これらのプロジェクトについて、さらなる生産の拡大を図り、加工や観光、物販などの関連産業がそれぞれの地域に集積するよう着実に推進するとともに、これら以外のプロジェクトについても、クラスタープランの策定と実行に向けた取り組みを進めてまいります。
(ウ)起業・新事業展開の促進
次に、起業や新事業展開の促進については、大きく3つの取り組みを進めております。
一つ目は、起業に関する学びをサポートする取り組みであります。土佐まるごとビジネスアカデミーにおいて、本年度から起業のノウハウを学ぶ「起業家養成講座」などを開講し、これまでに78人の方に受講いただきました。また、様々なアイデアの磨き上げや事業化を後押しする連続講座も順次開講しているところです。さらに、磨き上げてきたアイデアを試す場として、ビジネスプランコンテストを開催することとしております。
二つ目は、県内事業者の皆様の新たな事業展開や商品開発をサポートする取り組みであります。産業振興センターや地産外商公社などを中心に、ものづくりや食品、コンテンツなどの各分野において、アイデア段階から計画段階、商品開発、販路開拓までの一貫したサポートを行っております。さらに本年度からは、経営ビジョンを実現するための事業戦略について、その策定、磨き上げから実行までを支援する取り組みを進めているところです。
三つ目は、新たに起業を目指す方々のプランづくりから実践までをサポートする取り組みであります。今月25日に、起業などに関心がある方々と、先輩起業家や経営の専門家などが集い、個々の事業者ごとに起業やビジネス化に向けたサポートを行う「こうち起業サロン」を立ち上げました。同日開催したキックオフセミナーには、約110人の方々が参加され、起業を目指す熱い思いを持った若者たちと、その志をサポートしようとする先輩起業家との熱気あふれる交流が行われるなど、今後の展開に期待が持てたところです。
このサロンでは、今後、起業を考え始めたばかりの方については先輩起業家やコーディネーターとの意見交換を通じてアイデアの磨き上げなどを支援し、また、構想が固まってきた方については各分野の専門家や金融機関が個別にビジネスプランの具体化を支援するなど、個々の段階に応じた、きめ細かなサポートを行うこととしております。これらのことを通じて、参加される方々のネットワークづくりを促し、ビジネスパートナーとのマッチングにもつなげていきたいと考えております。
こうした一連の取り組みにより、起業や新事業展開、新商品開発などを志す県内の方々を力強くサポートしてまいりますとともに、移住促進などの施策とも連動させて、県外から新たなアイデアや知恵などを数多く呼び込むことができるよう努めてまいります。
(IoTの推進)
次に、様々な機械などをインターネットに接続し、情報の収集、分析等を通じて生産性の向上や地域の課題の解決を目指す、いわゆるIoTの推進についてご説明申し上げます。
全国に先駆けて高齢化と人口減少が進行している本県においては、担い手不足が大きな課題となっており、各産業分野の成長を成し遂げていくためには、一人当たりの生産性を高めていくことが必要不可欠であります。
また、本県は、南海トラフ地震対策、中山間地域における医療や福祉、教育など様々な課題を抱えており、これらの課題の解決のためにも先端技術を活用することが効果的であると考えられます。
こうしたことから、本年7月、企業や産業団体、大学、試験研究機関、金融機関などで構成する「高知県IoT推進ラボ」を設立し、四国で唯一、国の「地方版IoT推進ラボ」として選定されたところです。
本年度は、モデル事業として、工場の生産性を高めるシステムの開発に取り組むとともに、森林や集落における鳥獣被害対策にIoTを活用するための実証実験を行うこととしております。また、第一次産業にIoTを取り入れ、農林水産物のさらなる生産拡大を図るといった取り組みにも挑戦したいと考えております。さらに今後、外部の専門家と共にIoTが解決策となり得る課題の掘り起こしを行い、抽出された課題に対する個別のプロジェクトを立ち上げ、その解決と事業化に向けた取り組みを進めてまいります。
また、先日、首都圏から本県へ進出されているIT・コンテンツ関連企業3社が資本業務提携を結び、人工知能システムの共同開発を行うという嬉しいニュースが発表されました。本県が人工知能産業の集積地となる、その第一歩として、大いに期待をしております。
県としましては、高齢化や人口減少など地方が共通して抱える課題について、官民協働でIoTなどを積極的に活用してその解決につなげていくとともに、そのノウハウを蓄積することなどを通じて、地産外商につながる新たな産業化を目指してまいりたいと考えております。このことにより、IoTや人工知能などがもたらす第4次産業革命の、地方におけるトップランナーとなることを目指してまいります。
(4)観光振興の取り組み
次に、観光振興の取り組みについてご説明申し上げます。
(志国高知 幕末維新博に向けて)
来年3月4日に開幕いたします「志国高知 幕末維新博」につきましては、7月の推進協議会において、プロモーションや各種イベントなどの実施計画が承認されたところです。この実施計画に沿って、今月16日には関西圏の旅行会社を対象とした観光説明会を開催し、私も博覧会を中心としたセールスプロモーションを行うなど、全国に向けた情報発信やセールス活動を本格的にスタートいたしました。
また、鹿児島、山口、佐賀の各県と結成した「平成の薩長土肥連合」による4県共同の観光誘客などの取り組みも進めているところです。
こうした中、平成30年のNHK大河ドラマが西郷隆盛を主人公とする「西郷どん」に決定したとの発表がありました。「志国高知 幕末維新博」の開催期間中に幕末から明治維新を舞台とした大河ドラマが放送されることは、本県観光にとって追い風になるものと大いに期待しております。この
チャンスを存分に生かして、本県の取り組みに全国から注目が集まるよう、しっかりとプロモーションを行ってまいります。
あわせて、JR高知駅前の「こうち旅広場」をリニューアルし、県全体の総合観光案内機能を強化するとともに、地域の着地型旅行商品などを販売する機能を付加するなど、地域への周遊を一層促す利便性の高い拠点施設にしたいと考えております。また、博覧会の会場となる高知城や県立文化施設におきましても、展示内容などの磨き上げを行うとともに、その魅力についての情報発信を強化するなど、開幕に向けた準備を進めてまいります。
さらに、博覧会の終了後も持続的な観光振興につながるよう、市町村における歴史資源の磨き上げや観光クラスターの形成などを積極的に支援し、第3期産業振興計画の目標に掲げた435万人観光の定常化に向けて力強く取り組みを進めてまいります。
(よさこいの世界的ネットワーク構築)
本県発祥のよさこいにつきましては、今や国内だけにとどまらず、17以上の国や地域で踊られております。東京オリンピック・パラリンピック大会を機に、よさこいをさらに世界的に有名なものとすることにより、その発祥の地である本県の名を、よさこいの聖地として世界に広めていきたいと考えております。
このため、まずは先月のよさこい祭りにカナダやヨーロッパ5カ国から7チームの代表の方々をお招きし、「よさこいアンバサダー」として認定させていただきました。また、国内各地のよさこいチームや関係者とのネットワークを構築し、よさこいの世界的な広がりに向けた機運を高めていくためのキックオフイベントを本年度内に開催することとしております。
こうした取り組みとあわせて、今後、国外においても、よさこいアンバサダーの方々と連携して各国でよさこいの普及と情報発信に取り組むなど、よさこいの世界的なネットワークづくりを進めてまいります。
さらに、将来的には、世界各国から多くのチームが本県に集結する「よさこい世界大会」の開催を目指してまいりたいと考えております。
(外国クルーズ客船の受入強化)
高知新港においては、平成26年5月にメインバースの供用を開始して以降、外国クルーズ客船の寄港が大幅に増加しております。平成26年度の寄港回数は1回、昨年度は3回という実績に対し、本年度は28回の寄港が予定されており、さらに来年度は40回以上、平成30年度も20回を超える予約を既にいただくなど、今後も継続した寄港が見込まれるところです。
クルーズ客船の寄港は、国内外での本県の認知度を高め、リピーターの獲得につなげる絶好の機会であります。このため、現在整備を進めているバスヤードなどに加え、出入国管理や税関などのいわゆるCIQスペースと、待合や観光案内の機能を備えたターミナル施設を整備したいと考えております。これにより、快適な空間でおもてなしを提供するとともに、滞在時間の延長などによる経済効果の拡大を図ってまいります。
4 日本一の健康長寿県づくりについて
次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
(1)高知家健康パスポート
本年度から、壮年期の死亡率の改善を図る取り組みの一つとして、「高知家健康パスポート事業」を実施しております。事業のスタートにあたっては270を超える企業や店舗にご協力をいただいたところであり、今月1日には同パスポートのキックオフイベントも開催したところです。
このパスポートは、特定健診の受診や健康関連イベントへの参加、運動施設の利用などを通じてポイントをためることにより取得することができます。楽しみながら健康づくりに取り組めるような工夫がこらされており、パスポートを協力店舗で提示すると様々な特典が受けられるとともに、さらにポイントを集めることで健康的な商品が当たるキャンペーンに応募できるなどといった仕組みになっております。
昨日までに、県で把握しているだけでも1,800人を超える幅広い年代の方々がパスポートを取得され、さらに連日多くのお問い合わせをいただくなど、県民の皆様の関心の高さを感じているところです。
引き続き、市町村や関係機関の皆様とも連携し、健康づくりの県民運動として取り組んでまいります。
(2)地域医療構想
次に、地域医療構想の策定についてご説明申し上げます。
この構想は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年までに効果的かつバランスの取れた医療提供体制を構築することを目的として、都道府県が法律に基づいて策定するものであります。本県においては、昨年8月から県医療審議会にワーキンググループを設置して検討を重ね、今月21日から構想案のパブリックコメントを実施しているところです。
構想案では、現在入院している方々の療養環境を確保し、行き場のない方を出さないことを大前提とするとともに、中長期的にはお一人お一人によりふさわしいサービスが提供できる受け皿を確保することを目指して、「病床機能の分化及び連携の推進」、「地域包括ケアシステムの構築に向けた在宅医療の充実」、「医療従事者の確保・養成」の3つの柱ごとに施策の方向性を示しております。
このうち、病床機能の分化に関しては、将来を見据えたあるべき医療提供体制について、医療関係者や介護関係者、市町村や住民の方々による議論と調整を行っていただくための目安として、2025年における高度急性期、急性期、回復期、慢性期といった医療機能ごとに必要な病床数を、国が示す算式に基づいて機械的に推計いたしました。その結果、必要病床数は、合計で現在の1万5千床よりも約26パーセント少ない1万1千床と推計されたところです。
しかしながら、本県においては、病院の病床が介護の機能を代替しているという実情があり、人口当たりの病床数は全国で最も多いものの、療養病床に介護施設などを含めた高齢者の療養の場全体としてのベッド数は全国平均を若干上回る程度であります。加えて、国からも、算式に基づく必要病床数は、現状からの削減目標とするものではないとの考え方が示されております。
今後は、県医療審議会での審議を経て、年内に地域医療構想を策定する予定であります。策定後は、県内4つの区域ごとに設置される地域医療構想調整会議において、2025年の医療需要や来年度末での介護療養病床の廃止予定などを見据え、機能別の必要病床数などの地域での医療機関の役割や、新たなサービス類型も含めた必要な病床機能への転換などについて議論を行っていただくこととなります。
県としましても、各医療機関から個別に今後の方向性やご意見などを丁寧にお聞きしながら、地域地域で安心して住み続けられる県づくりの取り組みを進めてまいります。
(3)少子化対策の推進
次に、少子化対策については、本年度から「高知家の出会い・結婚・子育て応援団」の取り組みを開始し、社会全体で結婚や子育てを応援する機運を醸成しようと取り組んでおります。先月末までに201の企業や団体の皆様に応援団としてご登録いただき、既に平成31年度の目標である180団体を上回ったところであります。
今後は、応援団の取り組みを進める中でいただいたご意見なども参考に、企業や団体間での独身の従業員の交流を促進するため、新たにコーディネーターを配置するなど、応援団の活動をさらに支援してまいりたいと考えております。
また、本年4月から本格稼働しました、こうち出会いサポートセンターのマッチングシステムについては、7月に県西部と東部に支所を開設するなど取り組みを拡充した結果、先月末時点で会員登録数は583人、お引き合わせの成立が169件、うち71組の交際が成立し、1組が結婚されるなど、具体的な成果も現れ始めてきました。引き続き、マッチングシステムの利用促進や結婚を支援するボランティアの育成、出会いにつながるイベント開催などの様々な事業を通じて、より多くの方々の結婚に関する希望をかなえられるよう取り組んでまいります。
5 教育の充実
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
(1)全国学力・学習状況調査結果
本年4月に実施されました全国学力・学習状況調査につきましては、明日、国の結果公表が予定されております。事前に各学校で行われた自校採点によると、基礎的な知識や技能の定着を問うA問題において、小学生については、昨年度を上回る正答率となっており、また、中学生についても、特に国語の正答率に著しい伸びが見られ、ここ数年の学力の伸び悩み状態から脱却する兆しが見えてきております。
しかしながら、変化の激しい社会を生き抜くために重要とされる思考力、判断力、表現力という点では、小中学生ともにまだ弱さが見られますし、中学生の数学の学力問題に関しては、引き続き危機感を持って取り組んでいかなければならないと受け止めております。
(2)「教育等の振興に関する施策の大綱」の推進
このような状況を踏まえた上で、本年3月に策定した「教育等の振興に関する施策の大綱」に基づく施策を着実に実行し、PDCAサイクルによる検証や改善を行いながら、成果につなげていくことが重要であると考えております。
このため、今月23日に本年度第1回目の総合教育会議を開催し、各施策の進捗状況の点検を行うとともに、実行にあたって生じている課題に対する具体的な方策について協議いたしました。
(チーム学校の構築)
まず、「チーム学校の構築」に向けた施策のうち、同一の教員が学年をまたがって同一教科を担当する、いわゆるタテ持ちの取り組みについては、実践研究を進めている9つの中学校で、教員同士が日常的に授業の改善などについて話し合ったり、教科会等でベテラン教員が若手教員を育成したりする場面が増加してきたといった効果が認められる一方、教科会の内容については、課題の掘り下げが十分とは言えない学校があるなどの課題が見えてまいりました。このため、教科会のさらなる活性化とレベル向上を目指して、指導主事による訪問指導などを一層強化していくこととしております。
(厳しい環境にある子どもたちへの支援)
次に、「厳しい環境にある子どもたちへの支援」に向けた施策のうち、小中学校における放課後学習支援の取り組みについては、支援員の配置を昨年度の89校215人から先月末時点で154校390人へと拡充するとともに、授業から放課後まで一貫して子どもたちに関わる支援員を新たに配置するなどいたしました。その結果、多くの学校においては、以前よりもきめ細かな学習支援ができているといった効果が認められる一方で、子どもの学力に沿った指導が十分でない学校もあることや、地域によっては支援員の人材が不足しているといった課題も明らかとなっております。
このため、より効果的な学習支援のあり方について、市町村教育委員会への周知や、実施校への定期的な訪問指導を行うとともに、人材の登録と紹介を行う「放課後学び場人材バンク」の拡充などにより、学習支援に協力していただける人材の確保に取り組んでいくこととしております。
また、いじめや不登校、虐待や非行などの悩みや不安を抱える子どもたちをサポートするため、本年度は各学校へのスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を拡充しております。あわせて心の教育センターでは、子どもや保護者からの相談にワンストップかつトータルで対応するため、専門性の高いスーパーバイザーを配置するなど相談支援体制を強化したところです。こうした結果、各学校における4月から7月までのスクールカウンセラーなどへの相談件数は前年同期より8千件以上増えて3万2千件近くに、心の教育センターにおける来所相談件数は73件増えて194件になるなど、それぞれ成果が上がってきております。
しかしながら、スクールカウンセラーなどを十分に活用できていない学校もあり、引き続き関係者を対象とした研修会の充実などに取り組むこととしております。
こうした中、心の教育センターは、築40年を超える建物の老朽化に加え、相談室の不足など施設面の課題があります。このため、CLTを活用した新たな建物を整備し、より安心して相談や支援が受けられる環境を整えるとともに、教職員やスクールカウンセラーなどの人材育成のための研修機能の充実を図ってまいります。
(地域との連携・協働)
次に、「地域との連携・協働」の取り組みについては、県内公立小中学校の42パーセントにあたる126校において学校支援地域本部が設置され、その約7割で、地域の方々が学習支援に関わっていただいているなど、地域ぐるみで子どもたちの成長を支援する取り組みが広がってきております。一方、設置校の約3割では、本年度の活動予定回数が50回未満にとどまっており、また、地域の見守り活動に携わる民生委員、児童委員が市町村の学校支援地域本部運営委員会に参画している割合も半分程度となっております。
こうしたことから、学校支援地域本部の設置促進と活動内容のさらなる充実を図るため、県内で実践されている取り組みを紹介したモデル事例集を作成したところです。今後、この事例集を活用し、地域の特色を生かした多彩な学校支援活動がさらに県内全域に広がるよう周知を行うとともに、より多くの民生委員、児童委員の方々に学校支援地域本部の運営に参画していただけるよう取り組みを進めてまいります。
(3)高知江の口養護学校の移転整備
次に、高知江の口養護学校においては、近年、慢性疾患の児童生徒が減少する一方、心身症などの児童生徒が増加しているといった実態の変化に伴い、教育上のニーズが多様化し、教育内容や施設環境などに課題が生じております。また、同校は、南海トラフ地震の発災時に最大で津波浸水2メートル未満、長期浸水1カ月以上と予測される地域に位置しており、配慮を必要とする児童生徒の安全を確保する上で大きな課題となっております。
こうしたことから、高知江の口養護学校を高知市大原町の教育センター分館の敷地内へ移転し、児童生徒の安全と多様な特性に対応した学校施設の整備を進めることといたしました。
移転後の学校は、心の教育センターと隣接することから、そのメリットを生かし、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携した多面的な支援にあたるなど、専門性の高い教育に取り組んでまいります。
6 南海トラフ地震対策について
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
(1)第3期行動計画の取り組み
第3期南海トラフ地震対策行動計画については、第2期計画の実行を通じて見えてきた課題に早急に対応するため、市町村や地域の皆様と共に全力で取り組みを進めているところであります。
(命を守る対策)
まず、発災直後の命を守る対策については、引き続きスピード感をもって津波避難対策を進めるとともに、進捗が十分でない住宅の耐震化に最優先で取り組んでいるところです。熊本地震以降、住宅の耐震化について県民の皆様の関心が高まってきており、耐震診断に対する助成制度の受付件数は先月末時点で2,098件と、既に昨年度1年間の実績を大きく超えている状況であります。これを期に、より多くの方々に耐震診断にとどまらず、耐震設計や耐震改修工事へと進んでいただけるよう、引き続き市町村と連携しながら、支援制度の積極的な周知に取り組んでまいります。
(命をつなぐ対策)
次に、助かった命をつなぐ対策として、道路啓開計画のバージョンアップに取り組んでおります。本年7月から先月にかけて、市町村や建設業協会支部の皆様との意見交換を行い、道路上のがれきの処理方法や連絡体制などに関する様々なご意見をいただいたところです。また、今後、道路啓開に関する情報伝達や啓開作業の訓練を実施することとしており、これらの取り組みを通じて見えてきた課題を踏まえて同計画の見直しを行い、さらなる実効性の向上を図ってまいります。
医療面では、より負傷者に近い場所で医療を行う前方展開型の医療救護体制を確立するため、日ごろ救急医療に携わっていない医療従事者を対象とした災害医療に関する研修を今月末から県内5つの地域でスタートいたします。本年度は、延べ150人程度の方々に受講していただくことを目指しており、日ごろの診療科を問わず、災害時にはより多くの医療従事者に医療救護活動に参画いただけるよう備えてまいります。
最も人口が集中している高知市の長期浸水対策についても、高知市と連携して取り組みを進めているところですが、本年6月に高知市が実施した防災意識調査によれば、4割を超える方々が長期浸水被害が想定されていることを知らないなどの実態が明らかとなりました。今後、この調査結果を反映させた避難行動のシミュレーションを行い、住民一人ひとりが確実に避難できるかどうかを検証することとしており、検証結果を踏まえて、地域津波避難計画の見直しを支援するほか、津波避難ビルに避難された方々の迅速な救助救出態勢の検討を進めてまいります。
(2)熊本地震の教訓を踏まえた第3期行動計画の強化
本年4月に発生した熊本地震では、極めて大きな揺れが繰り返すなど東日本大震災では見られなかった事象が見受けられました。
このため、南海トラフ地震対策に熊本地震の教訓を生かすこととしており、繰り返す大きな揺れに対する建物の耐震対策や、避難所運営マニュアル及び物資配送計画への教訓の反映などを進めているところです。
さらに、最大規模のL2クラスの地震が起きてから3日後に発生頻度の高いL1クラスの地震が発生し、繰り返し津波が襲来するという、より厳しいシナリオをも想定して、第3期行動計画に位置付けた対策を見直すことといたしました。本年度中に第3期行動計画の平成29年度版を取りまとめてまいります。
(3)「世界津波の日」高校生サミット
国連の「世界津波の日」の啓発活動の一環として、将来の防災リーダーの育成を目的とした世界初となる高校生サミットを、本年11月25日と26日の2日間にわたり、本県及び黒潮町の主催で開催いたします。
サミット当日は、世界30カ国の高校生約360人と、各国大使、政府要人などを含む総勢約600人が参加し、防災に関する各国の取り組みの発表や意見交換、高台への津波避難訓練などを行うこととしております。
このサミットの開催を通じて、防災先進県としての本県の取り組みを広く世界へ発信するとともに、参加される方々に本県の魅力ある自然や文化などを体験していただけるよう、黒潮町と連携して準備を進めてまいります。
7 その他
(伊方発電所の再稼働と原子力災害避難等実施計画について)
次に、四国電力伊方発電所の再稼働に関してご説明申し上げます。
伊方発電所3号炉につきましては、先月12日に再稼働し、今月7日には国の最終検査に合格して、通常運転を再開したところです。
四国電力に対しては、安全に絶対はないとの認識の下、新たな知見や問題には速やかに対応するなど、引き続き万全の安全対策を講じていただくよう強く求めるとともに、原発への依存度の低減に向けた具体的な努力を求めてまいります。あわせて、県としましても、再生可能エネルギーの導入促進などの取り組みを進めてまいります。
他方で、危機管理上の観点からも、万全の対策を取っておくことが重要であります。本県は、国が避難計画の策定を義務付けている原発から半径30キロメートルの範囲内には入っていないものの、万が一事故が起こった場合に備えて、伊方発電所から最も近い四万十市及び梼原町が本年6月に避難計画を策定したところです。
さらに、県においては、「高知県原子力災害避難等実施計画」を先月の再稼働前に策定し、この中で、四国電力など関係機関からの情報収集や市町村への情報伝達の手順をはじめ、放射線量を測定するためのモニタリングの実施内容や、防護措置の基本となる屋内退避や避難などの具体的な手順を定めるとともに、四万十市及び梼原町からの複数の避難ルートを設定したところです。
今月4日には、梼原町の町民の皆様約200人の参加の下、避難計画に基づく情報伝達や屋内退避などの訓練を町と共に実施いたしました。この結果、町民の皆様や関係機関の行動手順などを確認できた一方で、一部には避難指示の放送内容が十分に伝わらなかったといった課題も浮き彫りとなりました。
今後、四万十市とも連携して訓練を実施することとしており、こうした訓練などを通じて県及び両市町の計画を検証しながら、より実効性のあるものとなるよう見直しを続け、原子力防災対策を充実させてまいります。
(動物愛護の取り組み)
次に、動物愛護の取り組みについてご説明申し上げます。
昨今、ペットは人々にとって大切なパートナーとなっている一方で、多くの犬や猫が小動物管理センターに持ち込まれる状況が続いております。これまで、不幸な犬や猫を少しでも減らすため、動物愛護の精神についての普及啓発や、収容された動物を譲渡するなどの取り組みに加え、平成26年度からは都道府県で初となる雌猫の不妊手術の費用助成も行ってきたところです。
その結果、昨年度の殺処分数は10年前と比較して犬は20分の1以下、猫は3分の1以下にまで減少しておりますものの、現在のセンターはスペース自体の制約もあり、動物愛護の観点からは十分と言えない状況にあります。
このため、直ちに実行できることとして、ボランティアの方々にご協力をいただいて譲渡対象の動物を増やす取り組みや、動物愛護教室の充実、現在の施設の収容能力を上げるための設備の拡充などに取り組んでいるところであります。
さらに、動物愛護の取り組みを抜本的に充実するため、新たに「動物愛護センター」の設置を検討することといたしました。今後、共同設置者となる高知市とも連携し、早期の整備に向けて取り組んでまいります。
(エコサイクルセンター)
次に、産業廃棄物の管理型最終処分場、エコサイクルセンターについてご説明申し上げます。
先月29日と今月2日の二度にわたり、エコサイクルセンターの廃棄物から発煙があり、県民の皆様、とりわけ日高村の皆様には大変ご心配をおかけいたしました。この発煙により、処分場壁面の遮水シートが一部損傷したものの、地下水調査の結果、汚水漏れはないことを確認したところであります。
発煙の原因については、現時点で完全には特定できておりませんが、引き続き専門家から助言をいただきながら究明に努め、必要な再発防止策を講じるなど、処分場の管理に万全を期してまいります。
また、エコサイクルセンターでは、当初の計画を大幅に上回るペースで埋立てが進行しており、このままのペースで進むと予定よりも約10年早く、平成33年度末頃に埋立てが終了する見込みとなっております。
このため、本年6月に有識者などによる委員会を設け、本県における今後の産業廃棄物の最終処分のあり方について検討を行っているところです。
委員会からは、今月21日、「近い将来、新たな管理型最終処分場を公共関与の手法により整備を進めていく必要がある」との中間報告をいただき、さらに本年11月には、新たな管理型最終処分場の施設規模などを示した最終報告をいただく予定となっております。
今後、最終報告書の内容を踏まえ、さらには県議会や県民の皆様のご意見をお聞きした上で、県としての基本構想を策定してまいります。
8 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成28年度高知県一般会計補正予算などの4件です。
このうち一般会計補正予算は、先ほど申し上げました経済の活性化などの経費として、65億7千万円余りの歳入歳出予算の補正などを計上しております。
条例議案は、高知県収入証紙条例の一部を改正する条例議案など5件でございます。
その他の議案は、県有財産の取得に関する議案など6件でございます。
報告議案は、平成27年度高知県一般会計歳入歳出決算など22件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。