平成28年12月県議会での知事提案説明

公開日 2016年12月14日

平成28年12月県議会での知事提案説明 (12月8日)

1 国の動向等

2 12月補正予算について

3 経済の活性化について
(1)第3期産業振興計画について
(2)地産外商の強化
  (食品分野)
  (防災関連製品等の輸出)
  (農業分野)
  (林業分野)
(3)拡大再生産の好循環に向けた取り組み
 (ア)担い手の確保と移住促進
 (イ)地域産業クラスターの形成
 (ウ)起業、新事業展開の促進
  (IoTの推進)
(4)観光振興
  (志国高知 幕末維新博の開幕に向けて)
  (県立牧野植物園の磨き上げ)

4 日本一の健康長寿県づくりについて
(1)高知家健康パスポート
(2)厳しい環境にある子どもたちへの支援
(3)少子化対策の推進
(4)福祉・介護人材の確保

5 教育の充実について
  (チーム学校の構築)
  (厳しい環境にある子どもたちへの支援)
  (県立高校の統合)
  (スポーツの振興)

6 南海トラフ地震対策について
(1)「世界津波の日」高校生サミットを終えて
(2)第3期南海トラフ地震対策行動計画について

7 その他
  (エコサイクルセンター)
  (韓国全羅南道との姉妹交流協定)
  (高知龍馬マラソン2017)

8 議案

 


 

 本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成28年12月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。

 

1 国の動向等
 我が国の経済は、本年7月から9月期の国内総生産の速報値が3四半期連続のプラス成長となるなど、景気回復が進んでいるものの、その先行きについては、海外経済の不確実性や、金融市場の変動の影響等に留意する必要があるとされております。
 こうした中、「未来への投資を実現する経済対策」として編成され、本年10月に成立した国の第二次補正予算においては、これまで本県が政策提言で訴えてまいりました地方創生の推進や、子ども・子育て支援、防災・減災対策の強化などの施策が数多く盛り込まれました。
 中でもインフラ整備に関しては、本県分として約179億円の内示をいただいたところであります。県議会や市町村の皆様と共に、事業の必要性、緊急性を国に訴えてきた結果であり、皆様に心から感謝を申し上げます。
 今回の補正予算により、特に南海トラフ地震対策については、高知市中心部の鏡川、国分川、久万川に囲まれた区域の堤防の耐震化が大きく進捗することとなります。
 あわせて、災害時の緊急輸送に資する橋梁の耐震対策や四国8の字ネットワークの整備、浦戸湾の三重防護などを一層加速してまいります。

 

2 12月補正予算について
 今議会では、経済の活性化をはじめとする基本政策の着実な推進や、国の経済対策への対応などのため、総額109億円余りの歳入歳出予算の補正並びに総額37億4千万円余りの債務負担行為の追加及び補正を含む一般会計補正予算案を提出しております。
 第一に「経済の活性化」に関しては、県立牧野植物園の貴重な資源や立地環境を生かした施設の磨き上げを行いますほか、豊かな自然を生かしたスポーツツーリズムの推進に向け、海洋スポーツ拠点の整備に着手いたします。
 第二に「日本一の健康長寿県づくり」に関しては、本年9月からスタートした「高知家健康パスポート」の取り組みをさらに充実するため、キャンペーンの強化などを行ってまいります。
 第三に国の経済対策への対応に関しては、農産物の加工施設の整備や高性能林業機械の導入など、農林業分野における生産性向上に向けた取り組みを加速するほか、先ほど申し上げました公共事業の追加を行い、南海トラフ地震対策などを推進してまいります。

 

3 経済の活性化について
 続きまして、県政運営の現状に関し、まず、経済の活性化についてご説明申し上げます。

(1)第3期産業振興計画について
 第3期産業振興計画のスタートの年となる本年度は、拡大再生産の好循環につなげるための施策など抜本強化した施策群を着実に実行するため、県を挙げてスピード感をもって取り組んでいるところです。
 また、取り組みを進める中で見えてきた新たな課題に対しては、施策の追加や改善を行いながら、迅速な対応を図っております。
 現在、これまでの実行状況などを踏まえつつ、一連の施策群がより効果的なものとなるよう議論を重ねているところであります。関係者の皆様のお知恵も賜りながら、来年度からの産業振興計画のさらなるバージョンアップへと着実につなげてまいります。

(2)地産外商の強化
 次に、各分野の取り組み状況のうち、地産外商の強化についてご説明申し上げます。

(食品分野)
 まず、食品分野については、本年度は首都圏、関西、中部地区に加え、九州での活動を本格化させるなど、より全国規模での外商活動を強化するとともに、国外への外商活動、輸出振興にも力を入れて取り組んでおります。
 この10月には、世界におけるアルコールビジネスの拠点であり、情報発信力の高いロンドンで開かれた展示商談会に県内6つの酒蔵が出展し、あわせて現地の大使館などで土佐酒の認知度向上と販路開拓を目的とした試飲会を開催いたしました。バイヤーからは淡麗辛口の土佐酒に高い評価をいただいたところであり、今後、このイギリスでの評価を他の国においてもしっかりとPRし、土佐酒の輸出拡大につなげていきたいと考えております。
 また、ユズについては、海外でのブランド化を目指して商標申請を行い、EU、香港、シンガポールで「KOCHI  YUZU」の商標権を取得できました。これを追い風とした取り組みの第1弾として、来月には、フランスのリヨンで開催されるヨーロッパ有数の国際外食産業見本市に「KOCHIYUZU」のブースを出展することとしております。
 このほか、本年度からは水産物の輸出にも本格的に取り組んでおります。中でも国外初の「高知家の魚応援の店」として登録いただいたシンガポールの寿司店グループに向けては、定番商材としてビンチョウマグロやカツオなどの輸出が始まっており、本年4月からの成約額は1千万円を超えたところです。また、漁業協同組合や加工事業者、水産商社などで組織する「高知県養殖魚輸出促進協議会」を立ち上げ、県も会員事業者の皆様と連携し、シンガポールでのフェアや沖縄での国際商談会への出展、香港の現地商社への営業活動などに取り組んでおります。
 このように、食品分野の輸出は着実に拡大してきており、さらなる輸出振興に向け、引き続き官民協働で取り組みを進めてまいります。
 なお、食品の地産外商を進めるにあたっては、大手小売業者などから求められる高度な生産管理基準に、県内事業者が対応できるようにしていくことが重要であります。このため、本年度から生産管理の国際標準であるHACCP手法を盛り込んだ県独自の認証制度をスタートさせるとともに、専門家によるアドバイスや研修などの支援を行っているところです。これまでに8回実施した研修には160社が参加するなど、県内事業者の生産管理の高度化に向けた意欲の高まりを感じております。
 あわせて、県内事業者のより高度な食品加工の取り組みを力強く後押しするため、産学官が連携して、高度な加工技術を用いて新商品の開発などに取り組む、新たな拠点施設の整備についても検討を進めます。

(防災関連製品等の輸出)
 防災関連製品などの輸出については、我が国と同様に自然災害の多い台湾や東南アジアへの展開に挑戦しております。私も9月のフィリピンに続き、10月には台湾を訪問し、本県からの参加企業の皆様と共に防災関連製品などのトップセールスを行ってまいりました。その先々で高い関心が寄せられ、販路拡大の手応えを感じているところです。
 今回、台北市で開催した防災フォーラムには、100人を超す現地の産学官の関係者にご参加いただき、私から本県の防災の取り組みと防災関連産業について紹介いたしました。フォーラム終了後には県内企業7社が参加して商談会が開催され、それを機に現在も商談が継続されております。
 また、先月には、副知事が県内企業3社とタイ政府を訪問し、幹部職員の方々に本県の防災関連製品などを紹介してまいりました。今後のタイにおけるビジネス拡大の端緒につながったものと考えております。
 引き続き、ものづくり地産地消・外商センターや日本貿易振興機構、国際協力機構、現地大使館などとも連携し、防災関連製品などの輸出を促進してまいります。

(農業分野)
 第一次産業は、本県の強みであると同時に地域の基幹産業であることから、TPPの動向に関わらず、自由貿易化の流れを見据え、生産性の向上と担い手の所得増加を図る取り組みを強化していくことが極めて重要であります。
 このため、農業分野では、既存のハウスへの環境制御技術の導入や、より生産性の高い次世代型ハウスの整備といった「次世代型こうち新施設園芸システム」の普及などに力を入れて取り組んでいるところです。
 次世代型ハウスについては、四万十町の次世代施設園芸団地に次ぐ規模のハウスが、既に県中部、東部の5カ所に計2.3ヘクタール整備され、ピーマンやニラ、メロンなどの生産が行われております。さらに、現在、南国市と香南市の3カ所でも中規模の次世代型ハウスの建設が進んでおり、本年度末には計1.7ヘクタールが新たに完成する見込みであります。
 また、環境制御技術については、ナスやピーマンなどの主要野菜に加えて、ミカンなどの果実類や、トルコギキョウやブルースターといった花き類など23品目の生産現場に導入が広がってきております。
 今月末には、次世代型園芸システム全体の普及面積は約167ヘクタールに達し、昨年末の95ヘクタールから1年間で7割以上拡大する見込みであります。
 畜産振興に関しては、現在の高知県広域食肉センターの施設が老朽化している現状とその必要性などを踏まえて、先月、市町村や関係団体、生産者の代表などで構成する「高知県新食肉センター整備検討会」を立ち上げ、今後の施設整備計画などについて検討を開始しました。
 畜産振興の取り組みを拡大再生産につなげるとともに、消費者に安全な本県産の食肉を提供していくためには、と畜、せり売り、加工、流通販売といった川上から川下に至る機能を持ち、県内で食肉事業を行う中核施設が必要不可欠であります。
 今後、この検討会の中で、新施設の規模や機能等について検討を深め、来年8月ごろを目途に整備計画案を取りまとめたいと考えております。

(林業分野)
 林業分野では、これまでに整備を進めてきた大型製材工場や木質バイオマス発電施設の稼働などに伴い原木の需要が高まってきており、県内23森林組合の本年度上半期の原木生産量は前年同期より11パーセント増加しております。
 この流れをさらに加速していくため、県の各林業事務所に「森林組合支援チーム」を設置し、現場の生産性向上を支援しています。
 具体的には、林業事務所ごとに一つの森林組合をモデルとして選定し、生産現場で抱える課題を個別に洗い出し、それぞれの現場に応じた作業方法の改善や低質材の搬出方法などを助言することによって、原木生産の効率化と収益性の向上を図っております。今後、これらのモデルの成果を県内各地の森林組合に拡大し、原木生産のさらなる増加につなげたいと考えているところです。
 また、この度、国の経済対策を活用し、搬出間伐や路網整備などに対する支援を加速することとしております。あわせて、皆伐後の再造林を支援し、持続可能な森林づくりを進めてまいります。

(3)拡大再生産の好循環に向けた取り組み
 次に、拡大再生産の好循環を実現するための3つの柱、すなわち「担い手の育成・確保」、「地域産業クラスターの形成」、「起業・新事業展開の促進」の取り組みについてご説明申し上げます。

(ア)担い手の確保と移住促進
 まず、担い手の確保に関連した移住促進の取り組みについては、平成31年度の年間移住者数1,000組という高い目標の達成に向けて対応を強化してきたところであり、本年4月から10月までの移住実績は、前年同期より約4割多い414組と大幅に伸びてきております。
 本年度からは、移住に向けた新たな取り組みとして、具体的な人材ニーズを持つ県内の産地や事業体などを巡る体験ツアーを開催しており、これまで10回のツアーにご参加いただいた80人のうち、2人が本県へ移住するとともに、4人が就業に向けた研修に申し込みをするなど、具体的な成果が表れ始めたところです。
 また、各産業分野における担い手確保の取り組みについて、農業分野では、産地自らが就農希望者を募集する、いわゆる産地提案型の取り組みを中心としながら、都市部における就農相談会やこうちアグリスクールを開催するなど、県内外で新規就農者の確保に向けて積極的な取り組みを行っております。その結果、昨年6月からの1年間の新規就農者数は270人と、近年の中で最多となりました。
 林業分野では、現在、林業学校において県外出身の5人を含む19人の第二期生が1年間の基礎課程を受講しています。昨年度の第一期生は14人全員が県内で就職したこともあり、本年度上半期の県内における新規就業者数は70人と、前年同期よりも12人増加しました。あわせて、林業労働力確保支援センターにおいても取り組みの充実を図っており、本年4月から
 10月末までの技術者養成研修の受講者数は延べ326人と、前年同期と比べて7割以上増えております。
 水産業分野では、新たに3団体追加して6団体を担い手育成団体として認定するとともに、漁業就業支援アドバイザーを増員し、就業に向けた研修などの支援を行っております。本年1月から9月までの間に、県外出身の8人を含む32人が新規に就業したところです。
 さらに、商工業分野では、東京に配置した人材確保コーディネーターを中心に都市部における企業訪問を充実させるとともに、UIターン関心層への情報発信を強化しているところです。事業承継・人材確保センターにおいては、中核人材の確保について、本年4月から先月末までに21件のマッチングが成立し、既に昨年度1年間の11件を大幅に上回っております。
 引き続き、移住施策と組み合わせながら、各産業分野における担い手確保対策に積極的に取り組んでまいります。

(イ)地域産業クラスターの形成
 次に、地域産業クラスターの形成については、現在、16のプロジェクトに取り組んでおり、先行する四万十町の次世代施設園芸団地のほかにも、生産基盤の強化を核とした取り組みが着々と進んできております。
 具体的な例として、まず、安芸市の「ナス産地拡大プロジェクト」では、約1ヘクタールの大規模次世代型ハウスが来年春に完成し、新たに10人程度の雇用が見込まれているほか、地元の女性グループと連携した加工品の開発など、地産外商と消費拡大を目指す取り組みも検討されています。
 また、香南市と香美市の「日本一のニラ産地拡大プロジェクト」では、ハウスなどの生産施設の整備に加え、ものづくりの地産地消として県内企業と農家が共同で開発した「自動そぐり機」の導入が拡大するなど、産地の生産力が着実に高まりつつあるとともに、さらなる消費拡大に向け、地元飲食店と連携した新たなご当地メニューの開発などが行われています。
 さらに、日高村の「トマトプロジェクト」では、JA出資法人や県外企業による2ヘクタールを超える次世代型ハウスの整備に向けた計画が進んでおります。あわせて、加工施設のさらなる拡充や、オムライス街道などの観光振興の取り組みとのタイアップといった今後の展開についても、具体的な検討が行われています。
 こうした現在取り組んでいるプロジェクトのほかにも、いの町のショウガ、四万十町のクリなど、地域の特産品を生かした新たなプロジェクト化の動きも出始めているところです。
 今後も各プロジェクトの具体化を支援しながら、地域地域に多様な雇用の場を創り出すよう取り組んでまいります。

(ウ)起業、新事業展開の促進
 次に、起業や新事業展開の促進については、起業などを志す方々を後押しする仕組みが本格的に動き出しております。
 具体的には、土佐まるごとビジネスアカデミーにおいて起業家養成講座や連続講座などを順次開催し、学びの面からのサポートを行うとともに、この10月にはビジネスプランコンテストを実施し、入賞した3つの企画について事業化に向けたサポートを開始したところです。
 また、10月から本格的にスタートした「こうち起業サロン」には、起業に関心のある方や先輩起業家、経営の専門家など80人を超える方々に会員登録をいただきました。
 引き続き、会員相互の活発な交流や専門家による個別相談、ビジネスパートナーとの出会いの場づくりなどを行いながら、起業や新事業展開を志す方々の取り組みをサポートしてまいります。

(IoTの推進)
 様々な機械などをインターネットに接続して、情報の収集、分析等を行い、生産性の向上や地域の課題の解決を目指す、いわゆるIoTの活用については、県内におけるモデルケースを作るため、3つの実証プロジェクトをスタートさせたところです。
 一つ目は、鳥獣被害対策に関するものであり、わなにセンサーを取り付け、鳥獣を捕獲した情報を送受信する仕組みによって見回りの負担軽減を図るなど、効率的に鳥獣被害対策を行うための研究を進めています。
 二つ目は、ものづくり工場における生産性を高める研究であり、製造ラインの稼働データを蓄積し、生産効率を分析することによって、工場全体の生産性を向上させるシステムの開発に取り組んでおります。
 三つ目は、農業の生産性向上を目指すプロジェクトであり、IoT技術の専門家に農業の現場に入っていただき、各種データを分析して、より良い生産方法の実現を図るモデルづくりに着手しています。
 これら三つのプロジェクトに加え、IoT技術を活用できる新たなテーマをさらに模索しているところです。具体的には、県内の農業生産法人、森林組合、漁業協同組合などの方々と意見交換を行い、第一次産業の生産現場でIoTが解決策となり得る課題の掘り起こしを行っています。
 本県のように、人が少ない、使える土地が狭いといった制約条件が多い地域だからこそ、この新しい技術を活用して、不利、不便といった負の克服に挑戦する価値があると考えております。
 全国の中でも「田舎版IoT」のトップランナーとなることを目指して、全力で取り組んでまいります。

(4)観光振興
 次に、観光振興の取り組みについてご説明申し上げます。

(志国高知 幕末維新博の開幕に向けて)
 現在、来年3月4日の「志国高知 幕末維新博」の開幕に向けまして、市町村や民間事業者の皆様と連携しながら、着々と準備を進めているところであります。
 大政奉還150年の幕開けとなる来年1月からは、幕末志士ゆかりの本物の歴史資源などを活用して、全国からの関心を本県に引き付けるためのプロモーションを強力に展開していくこととしております。
 また、地域会場を設置する市町村におきましては、歴史資源の磨き上げと観光クラスターの形成に関する整備計画に基づき、開幕に向けた受入態勢の整備が本格化しています。
 中でも、歴史資源の磨き上げについては、特別展の企画や映像の活用などによって展示内容の充実を図るとともに、館内ガイドの配置や、周辺の史跡などを含めた街歩きガイドの養成など、受入態勢の準備が整いつつあります。
 また、Wi-Fi環境の整備やパンフレットの多言語化など、外国人観光客への対応の準備も進んできております。
 さらに、幕末維新博を契機とする観光クラスターの形成に向けては、龍馬パスポートも活用しつつ、歴史資源と地元ならではの食、自然や体験メニューなどを組み合せた周遊コースづくりが行われております。この中で、施設間の相互割引やスタンプラリーといった周遊をさらに促す仕組みのほか、レンタサイクルの整備など、エリア内を周遊する移動手段についても具体化してきているところです。
 他方、国においては、「明治150年」に関連した施策を進めるため、内閣官房に新たな組織が設置されたところであり、平成30年度予算の概算要求までに具体的な施策がまとめられる予定となっております。
 今後、こうした国レベルでの大きな動きも追い風にし、鹿児島、山口、高知、佐賀の4県で構成する「平成の薩長土肥連合」によるPR事業などの取り組みとも連携しながら、大政奉還から150年となる節目の年に、本県の幕末維新博に全国から注目が集まるよう取り組んでまいります。

(県立牧野植物園の磨き上げ)
 「植物分類学の父」と称される牧野富太郎博士の功績を称え、昭和33年に開園した県立牧野植物園は、平成30年に開園60周年を迎えます。
 これを見据えて、植物に関する研究、教育、観光分野の有識者や地元の代表者などで構成する委員会を本年8月に立ち上げ、国内外からより多くの方々が訪れる、さらに魅力にあふれた植物園とするための整備構想を検討してきたところです。
 委員の皆様からは、これまで、牧野博士が作製した標本や植物図などの貴重な所蔵品を公開することや、五台山の立体的な地形を生かして眺望を楽しめるように園地を拡張することなど、幅広いご意見をいただいてまいりました。
 こうしたご意見も参考に、まずは子どもから大人まで植物に親しみながら自由に過ごせる憩いの広場や、植物と触れ合いながら学べる園地の整備を早期に実施したいと考えており、今議会に用地測量等の補正予算案を提出しております。
 さらに、展示機能や研究機能の抜本的な強化を含む施設の整備について、引き続き委員会で検討を重ね、議会や県民の皆様からご意見をいただいた上で、施設全体の整備計画を策定したいと考えております。
 牧野植物園の持つポテンシャルを最大限に生かし、世界に誇れる植物園となるよう磨き上げに取り組んでまいります。

 

4 日本一の健康長寿県づくりについて
 次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。

(1)高知家健康パスポート
 壮年期の死亡率の改善を図る取り組みの一つとして、本年9月からスタートした高知家健康パスポート事業については、先月末までに6,500人を超える幅広い年代の方々にパスポートを取得いただいております。また、市町村や事業所でも、パスポートの活用と合わせた健康づくりのイベントが企画されるなど、健康増進に向けた取り組みへの関心が高まりつつあるところです。
 来年4月からは、パスポートに新たな上位ステージ「高知家健康パスポートⅡ」を設けることとし、ⅠからⅡへのランクアップにあたって、健康診断等の受診と運動習慣の定着につなげるための工夫を盛り込むこととしております。加えて、平成30年4月からは、パスポートⅢへランクアップする仕組みを設け、県民の皆様の積極的な健康活動が持続されていくよう、さらなる工夫を図りたいと考えております。
 引き続き、市町村や関係機関の皆様とも連携し、健康づくりの県民運動として取り組んでまいります。

(2)厳しい環境にある子どもたちへの支援
 厳しい環境にある子どもたちへの支援について、保健と福祉の面では、各市町村における母子保健と児童福祉の連携や、民生児童委員による見守り態勢の構築などに取り組んでいるところです。
 中でも、母子保健と児童福祉の連携については、「子育て世代包括支援センター」が県内5市町に設置され、妊娠期から乳幼児期の母子への切れ目のない支援が行われるとともに、必要に応じて児童相談所などにつなげる仕組みが整ってきています。
 今後は、虐待などの早期発見にとどまらず、その発生自体を無くすことを目指して、妊娠期からの親育ちを支援する取り組みを強化したいと考えております。具体的には、一部の市町村で先駆的に取り組まれている、妊娠期から出産前後、子育て期までを一貫してサポートする相談支援体制などが県内各地に広がっていくよう、市町村と共に施策を検討してまいります。
 あわせて、子どもたちに無料または低額で食事を提供する「子ども食堂」の取り組みについても、県内各地に広げていくための支援策などを検討してまいります。

(3)少子化対策の推進
 少子化対策の取り組みとして、本年度から本格稼働した「こうち出会いサポートセンター」のマッチングシステムにつきましては、先月末までに
 700人の方に会員登録をいただき、270件のお引き合わせが成立するとともに、うち103組の交際が始まり、3組が結婚されるといった喜ばしい成果が上がってきております。
 また、地域の支え合いによる子育て支援の仕組みであるファミリー・サポート・センターにつきましては、国の基準を満たさない小規模のものを県が独自に支援する「高知版」センターの第1号が、先月、香南市に開設されました。オープニング・セレモニーに参加させていただいた際、地域の方々から支え合いの気持ちにあふれた優しい声をお聞きし、改めてこの仕組みが子育てをしながら働いている方へのサポートになるだけでなく、地域の絆をより強固なものとする、非常に重要な取り組みであることを実感いたしました。
 今後、県内各地にファミリー・サポート・センターの設置が広がるよう、引き続き市町村と連携しながら取り組んでまいります。

(4)福祉・介護人材の確保
 介護などのサービス提供を担う人材の確保については、福祉人材センターや福祉研修センターの機能を強化するなどの取り組みを行ってきた結果、本年度は10月末までに182人の方が福祉人材センターを通じて就職され、3年前の同時期の約3倍になるなど、着実に成果が表れてきております。しかしながら、今後の介護ニーズの増大にしっかりと対応していくためには、人材確保対策のさらなる充実強化が必要と考えているところです。
 このため、介護事業所におけるサービスの質や職場環境の改善を評価する仕組みを取り入れ、介護職員の離職防止と新たな人材の確保につなげていく取り組みを検討してまいります。

 

5 教育の充実について
 次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
 本年度の全国学力・学習状況調査の結果によりますと、小学生については、国語と算数を合わせた総合で過去最高の全国10位となり、また、中学生についても、国語は昨年度の46位から32位に上昇するなど、ここ数年の足踏み状態から脱する兆しを見せております。しかしながら、中学生の数学は44位といまだ全国平均との開きがあり、学力の定着状況に課題があります。また、思考力や判断力、表現力といった点では、小中学生ともに弱さが見られ、引き続き危機感を持って取り組んでいかなければならないと受け止めております。
 こうした状況も踏まえ、本年度からスタートした「教育等の振興に関する施策の大綱」に定めた「チーム学校の構築」や「厳しい環境にある子どもたちへの支援」など5つの方向性に基づく施策を確実に成果へとつなげていくため、全力を挙げて取り組みを進めているところであります。
 さらに、総合教育会議において、各施策の進捗状況を確認するとともに、今後の取り組みの強化や見直しに向けた議論を行っております。

(チーム学校の構築)
 まず、「チーム学校の構築」については、本年度から授業のタテ持ちの実践研究を行っている9つの中学校において、教員同士が連携、協働して授業力を向上させていこうとする動きが現れてきており、大きな一歩として手応えを感じているところです。
 今後、このチーム学校の取り組みをさらに強化、拡充し、その質的向上を図る必要があると考えております。
 このため、教育先進県の元校長や指導主事による訪問指導など現在行っている取り組みに加え、特に課題となっている中学校の数学の授業力向上のための新たな支援策について検討しているところです。
 あわせて、教員の負担軽減を図るため、外部人材の活用や、部活動のあり方の見直しなどもさらに進めてまいります。

(厳しい環境にある子どもたちへの支援)
 次に、「厳しい環境にある子どもたちへの支援」については、学力面で放課後の学習支援を充実させるなどの取り組みを進めるとともに、小中学校における生徒指導上の諸問題への対応としては、これまで、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用などを積極的に進めてまいりました。しかしながら、学校内における暴力行為や不登校の発生件数は全国平均を大きく上回っており、依然として厳しい状況が続いております。
 その要因としては、厳しい家庭環境等を背景として感情が不安定になっている子どもや、自分に自信を持てない子どもが多くいること、また、そういった子どもたちの情報が保育所や幼稚園と小学校との間、小学校と中学校との間で十分に共有されていないこと、さらには子どもたちに対する効果的な支援を学校で組織的に行うことができていない状況があることなどが考えられます。
 このため、子どもに関する情報を校種間で確実に引き継ぎ、切れ目のない支援を行うことや、問題行動に対して早期に、かつ適切な対応が行えるように学校内でも確実に情報の共有を図ること、さらには外部専門人材を活用した校内支援会議を定期的に実施していくことなどを徹底したいと考えています。
 また、先ほど健康長寿県づくりに関して申し上げたような、親育ちを支援する取り組みを、教育の分野でも充実させていく必要があると考えております。
 具体的には、就学時健診など保護者が必ず出席する機会を捉えて、啓発のための講話会を開催するほか、家庭支援推進保育士などの専門人材の活用を進め、個別の支援が必要な子どもや家庭に対するサポートを一層強化したいと考えているところです。あわせて、保護者同士で悩みを共有したり、子育てに対する自覚や意欲を高めたりする交流の場づくりを、県内各地の保育所や幼稚園などにも広げていきたいと考えております。
 総合教育会議においては、これらの施策のほかにも、放課後等における学習支援や、高校における多様な進路希望への支援の強化などについて議論をしているところです。今後、大綱の見直しに向け、さらに検討を深めてまいります。

(県立高校の統合)
 次に、「県立高等学校再編振興計画」に基づく新たな学校の設置についてご説明申し上げます。
 高知南中・高校と高知西高校の統合による新しい中高一貫教育校と、須崎工業高校と須崎高校の統合による高吾地域拠点校の校名につきましては、本年2月から外部有識者による検討委員会において、公平かつ中立的な立場から丁寧に検討が重ねられてきました。
 この中で、関係校の卒業生や保護者代表の方々から直接ご意見をお聞きするとともに、校名の一般公募を行い、計8回の公開会議における議論を経て、校名の候補を取りまとめていただいたところです。その上で、教育委員会において新中高一貫教育校の名称を「高知国際」、高吾地域拠点校の名称を「須崎総合」とすることが決定され、今議会に関連議案を提出しております。
 今後、新中高一貫教育校については、来年7月に設置することとし、平成30年4月の中学校開校、平成33年4月の高校開校に向けて、国際バカロレアの認定をも目指したグローバル教育を担うことができるよう、カリキュラムの編成や教員養成などの準備を進めてまいります。
 また、高吾地域拠点校については、平成30年7月に設置し、翌31年4月の開校に向け、大学進学から就職までの多様な進路希望に応える教育を高いレベルで実現できるよう態勢を整えてまいります。

(スポーツの振興)
 スポーツの振興に関しては、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催決定を好機と捉え、競技力の向上や、地域におけるスポーツ活動の活性化などに向けて、幅広い取り組みを進めているところです。
 中でも、競技力の向上については、国民体育大会の総合成績が低迷している状況から早期に脱却するためにも、施策を抜本的に強化する必要があると考えております。
 このため、来年度に向けて、関係団体や民間企業などとの連携による重点的な選手強化や、スポーツ医科学面からのサポート体制の充実などについて検討しているところです。あわせて、庁内の組織体制や、関係団体との連携のあり方などについて早急に検討を行い、官民連携によるスポーツ推進体制の強化を図ってまいります。
 また、地域におけるスポーツの振興と、合宿誘致などのスポーツツーリズムを推進する取り組みにも、一層力を入れていきたいと考えております。
 その一環として、須崎市浦ノ内湾において、県と市が連携してオープンウォータースイミングやカヌーを中心とした新たな海洋スポーツ拠点の整備を行うほか、春野総合運動公園の屋内運動場において、野球やフットサルなどの競技環境を充実するために人工芝を整備したいと考えており、今議会に関連の補正予算案を提出しております。

 

6 南海トラフ地震対策について
 次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。

(1)「世界津波の日」高校生サミットを終えて
 先月25日から2日間にわたり、黒潮町において、「世界津波の日」高校生サミットを本県及び黒潮町の主催で開催し、世界30カ国から約360人の高校生をはじめ、各国大使や政府要人など総勢約740人の方々にご参加いただきました。
 当日、高校生たちは「自然災害を知る」、「自然災害への備え」、「自然災害からの復興」の3つの分野に分かれて、それぞれの地域における取り組みを発表し、国を越えて活発な意見交換を行うとともに、高台への津波避難訓練や津波避難タワーの見学などを行いました。
 また、サミットの最後には、「住む国や地域は多様であり、発生する自然災害や、防災に対する取り組みも様々ですが、すべての人々の命を守りたいという願いは同じ」という万国共通の思いを込め、「先人たちの防災・減災の志を後世に伝える責務を引き継ぎ、津波災害をはじめとする災害から一人でも多くの尊い命を守るため、できうる限りの努力をする」ことを決意する「黒潮宣言」が採択されました。
 サミットに参加した高校生たちにとりまして、様々な国や地域の同世代の方々と触れ合い、防災への想いを共有できたことは、大変貴重な経験になったことと思いますし、これまで以上に防災への意識を高めていただくことができたものと考えております。今後、高校生たちが、それぞれの国や地域で「若き津波防災大使」として、さらには将来の防災リーダーとして活躍されることを大いに期待しているところであります。
 このような世界30カ国の方々が一堂に会する国際的な防災サミットを黒潮町と協力して開催できたことは、防災教育の観点からはもちろんのこと、地域の方々への啓発や本県の魅力ある自然や文化のPRなどの面からも非常に有意義であったと考えております。
 サミットを成功裏に終えることができましたのも、日本一厳しい津波高の想定に真正面から向き合い、一丸となって立ち向かってこられた黒潮町の皆様の主催者としての大変なご努力があったからこそであります。また、事前準備からご協力いただきました国や関係機関の皆様、ボランティアの方々など多くの皆様に心より感謝を申し上げます。
 「世界津波の日」高校生サミットは閉幕しましたが、「黒潮宣言」の精神は、今後も各地で引き継がれていくことと思われます。本県といたしましても、今回のサミットを一過性のものに終わらせることなく、様々な機会を捉えてこの経験を活用し、さらに多くの県民の皆様の防災意識の高揚につなげるなど、将来にわたって取り組みを発展させていきたいと考えております。

(2)第3期南海トラフ地震対策行動計画について
 次に、第3期南海トラフ地震対策行動計画についてご説明申し上げます。
 現在、4月に発生した熊本地震の教訓を踏まえるとともに、最大規模のL2クラスの地震発生から3日目に発生頻度の高いL1クラスの地震が発生するという、より厳しいシナリオをも想定して、第3期行動計画の強化に向けた検討を行っております。
 特に、このようなシナリオが現実のものとなった場合、3日間の災害対応が振り出しに戻るだけではなく、事前に確保していた資機材などの備蓄が尽きた状態から災害対応をスタートさせなければならず、物資の枯渇や人的支援の遅れが、ありとあらゆる対策に大きな影響を及ぼすこととなります。このため、備蓄の増強と輸送手段の再検討が必要であることなどを、先般の南海トラフ地震対策推進本部会議で確認したところであります。
 こうした新たな視点も加えた上で、引き続き見直しが必要な対策について検討を深め、本年度末までに平成29年度版の行動計画として取りまとめてまいります。

 

7 その他
(エコサイクルセンター)
 次に、産業廃棄物の新たな管理型最終処分場の整備についてご説明申し上げます。
 現在のエコサイクルセンターは、平成33年度末頃に埋立てが終了する見込みとなっておりますことから、有識者などによる委員会において、今後の産業廃棄物の最終処分のあり方などについて検討してまいりました。
 このほど、委員会の最終報告書が取りまとめられ、公共関与の手法により新たな管理型最終処分場の整備を進めていく必要があること、埋立容量は現在の1.5から2倍に相当する17万から23万立方メートルとすること、施設の構造は現行と同じく屋根付きの被覆型とすること、処理水を放流しないものとすることなどが提案されたところです。
 今後、県議会や県民の皆様のご意見をお聞きした上で、県としての基本構想を策定するとともに、来年度以降、候補地の選定など施設整備に向けた取り組みを具体化してまいります。

(韓国全羅南道との姉妹交流協定)
 本年10月31日、多くの関係者の皆様と共に韓国を訪問し、全羅南道との姉妹交流協定を締結いたしました。
 「韓国孤児の母」として多くの尊敬を集められた本県出身の田内千鶴子さんの生誕日であり、命日でもあるこの日に、包括的な交流協定を締結できたことは、本県及び全羅南道にとって大変意義深いことであったと考えております。
 また、今回の訪韓には、県内事業者の皆様も参加し、ソウル市で観光、木材、土佐酒の商談会を開催したところです。
 引き続き、全羅南道との絆を生かしながら、文化交流のみならず、県の産業振興につなげるよう取り組んでまいります。

(高知龍馬マラソン2017)
 来年2月19日、第5回目となります「高知龍馬マラソン2017」を開催いたします。
 3,500人規模でスタートした第1回大会から徐々に参加人数が増え、今回、初めて目標の1万人を超えるエントリーがありました。
 本大会は、自然豊かなコースと沿道の温かい応援がランナーの方々に好評であり、高知の魅力を楽しめる代表的なイベントとして浸透してきたと感じております。
 県民の皆様のご協力を賜りながら、これまで以上におもてなしに満ちた、全ての参加者にご満足いただける大会となるよう準備を進めてまいります。

 

8 議案
 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
 まず予算案は、平成28年度高知県一般会計補正予算などの8件です。
 このうち一般会計補正予算は、先ほど申し上げました経済の活性化などの経費として、109億円余りの歳入歳出予算の補正などを計上しております。
 条例議案は、職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例議案など8件でございます。
 その他の議案は、こうち男女共同参画センターの指定管理者の指定に関する議案など7件でございます。
 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

お問い合わせ

総合企画部 秘書課
TEL:088-823-9151
FAX:088-824-7745
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