公開日 2017年12月07日
平成29年9月県議会での知事提案説明 (9月21日)
(台風第18号による被害)
2 補正予算など
(1)9月補正予算
(2)今後の財政収支見通し
3 経済の活性化
(1)第3期産業振興計画の取り組み状況(地産の強化)
(2)地産の強化と人手不足対策
(移住促進・人材確保)
(新規卒業者の県内就職促進)
(潜在的な労働力の掘り起こしなど)
(3)観光振興の取り組み
(「志国高知 幕末維新博」第二幕へ向けた取り組み)
(坂本龍馬直筆の書簡の寄贈)
(ポスト博覧会)
(よさこいを活用したプロモーション)
(4)拡大再生産の好循環へ向けた取り組み
(地域産業クラスターの形成)
(起業・新事業展開の促進)
(第一次産業等における生産性向上プロジェクトの推進)
(5)その他
(民間企業との連携)
(次世代型こうち新施設園芸システムのさらなる進化)
(食肉センターの整備)
4 日本一の健康長寿県づくり
(1)地域医療構想
(2)国民健康保険制度改革
(3)介護人材の確保に向けた取り組みの強化
(4)子ども食堂への支援の取り組み状況
(5)高知県青少年保護育成条例の改正
5 教育の充実
(1)全国学力・学習状況調査の結果分析と対策(チーム学校を含む)
(2)総合教育会議
(国語の学力向上対策)
(高等学校における基礎学力の定着・向上)
(不登校児童生徒への対策)
(3)新図書館等複合施設「オーテピア」の整備状況
6 南海トラフ地震対策
(1)住宅の耐震化
(2)避難所対策
(3)高知県高校生津波サミットの取り組み
(4)大規模地震対策特別措置法の見直し
10 その他
(連携中枢都市圏形成の取り組み)
(大川村議会維持へ向けた取り組み)
(新たな管理型最終処分場の候補地の選定)
(ペギー葉山先生の追悼式典)
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成29年9月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
(台風第18号による被害)
今月17日に本県に上陸した台風第18号は、非常に強い風と局地的な豪雨により、近年にない人的被害と、物的な被害を本県にもたらしました。
この度の台風によりお亡くなりになられた方に謹んで哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。また、いまだ行方が分からない方につきましては、ご無事でありますことを心からお祈り申し上げます。さらに、ハウスの破損などの物的な被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げますとともに、今後、被害状況の調査を踏まえ、少しでも被害の影響が少なくなるよう、必要な対策を講じてまいります。
1 国の動向等(北朝鮮ミサイルへの対応を含む)
我が国の経済については、本年7月の有効求人倍率がバブル期を超える高水準となり、また8月には、景気拡大期間が戦後2番目に長い57カ月に達するなど、経済の好循環の拡大が進みつつあります。
今後も、こうした流れがとどまることなく、さらには、全国の隅々まで力強く波及していくことを期待しております。本県といたしましても、この全国の経済状況を追い風として、産業振興計画など県勢浮揚に向けた取り組みを一層加速してまいりますとともに、国に対し引き続き時機を捉えた政策提言を行ってまいります。
他方、北朝鮮は、度重なる国際社会の外交的解決に向けた努力を踏みにじり、核実験を実施するとともに、弾道ミサイル発射を繰り返し強行しており、先月には、本県の上空を通過させグアム島沖に中距離弾道ミサイルを発射する計画を表明しました。
このことは、我が国の安全保障にとって、また、本県にとっても非常に深刻かつ重大な脅威であり、断じて容認できるものではありません。
こうしたことから、先月14日に、同じ状況下にある島根県、広島県、愛媛県の知事と共に安倍総理と面談し、外交努力に全力を挙げていただくとともに、住民の生命、財産を守り、安全安心を確保するための万全の措置を講じていただくよう緊急要請を行いました。
国においては、現在、アメリカ、韓国、中国及びロシアをはじめとする関係各国との協力の下、国連安保理決議の実効性の確保を図るとともに、
24時間態勢で警戒、防護に当たっております。県としましても、ミサイル発射時に身を守るために取るべき行動を広く啓発するとともに、緊急情報を伝える全国瞬時警報システムJアラートの点検や、夜間休日の情報連絡体制の確保、落下物への初動対応に関する市町村や消防など関係機関との確認など、万が一の事態から県民の皆様の生命、財産を守るための備えを行っているところです。
引き続き、緊張感を緩めることなくしっかりと不測の事態に備えてまいりたいと考えております。
2 補正予算など
(1)9月補正予算
今議会では、経済の活性化をはじめとする基本政策の着実な推進などのため、総額60億1千万円余りの歳入歳出予算の補正及び総額6億4千万円余りの債務負担行為の追加及び補正を含む一般会計補正予算案を提出しております。
第一に「経済の活性化」に関しては、さらなる「地産の強化」とともに現下の人手不足対策にも資する取り組みの一環として、県内大学生や本県出身の県外大学生が県内企業への理解を深める機会を拡充いたします。また、観光振興の切れ目のない展開を図るため、来年4月の「志国高知 幕末維新博」第二幕の開幕に向けた準備を加速するとともに、外国人観光客のさらなる誘致を促進するため、台湾をはじめとする重点市場での戦略的なプロモーションを強化いたします。
第二に「日本一の健康長寿県づくり」に関しては、介護人材の離職防止や確保対策を強化するため、新たに介護事業所の認証評価制度をスタートさせてまいります。
第三に「南海トラフ地震対策の抜本強化・加速化」に関しては、住宅や大規模建築物などの耐震化を推進しますとともに、県立文化施設などにおける天井の脱落対策を進めてまいります。
このほか、国の規制緩和により可能となった「貨客混載」を本県の中山間地域の維持、再生に生かし切るための検討を進めてまいります。
(2)今後の財政収支見通し
あわせまして、今議会では、今後6年間の中期的な財政収支の見通しについてご説明させていただくこととしております。
県の財政運営においては、常に中期的な展望の下に財政規律を維持しながら、県民サービスの確保と県財政の健全化を同時に実現することが重要でありますことから、本年度も、昨年度の決算状況や今後の歳入の見込み、想定される大規模事業などを踏まえ、中期的な財政収支を試算いたしました。
その結果、今後の南海トラフ地震対策に必要な経費や社会保障関係経費の増加を見込んでもなお、一定の財政調整的基金の残高を確保するとともに、中期的には県債残高の逓減傾向を維持できる見込みとなっております。
しかしながら、本県の財政運営は、地方交付税制度などの国の動向に大きく左右されます。さらに、本年度の試算では、財政調整的基金の残高の水準が昨年度の試算よりもやや下がっており、今後の財政運営の弾力性の確保に留意する必要があります。
このため、財政調整的基金の残高を確保しつつ施策の有効性や効率性を高めるため、今後も必要に応じて国に対して政策提言を行うとともに、事務事業のスクラップアンドビルドをより徹底するなど、気を緩めることなく安定的な財政運営に努めてまいります。
3 経済の活性化
続きまして、県政運営の現状に関し、まず、経済の活性化についてご説明申し上げます。
(1)第3期産業振興計画の取り組み状況(地産の強化)
第3期産業振興計画においては、地産外商をさらに拡大し、持続的な拡大再生産の好循環を実現していくための取り組みを全力で進めております。
昨年度の地産外商公社の活動を契機とした成約件数は、第1期産業振興計画がスタートした平成21年度の約46倍の8,112件と大きく伸びてきておりますし、また、ユズや土佐酒を中心とした食品分野の昨年の輸出額は、同様に約14倍の7億2千万円にまで伸びてまいりました。
また、ものづくり地産地消・外商センターのサポートによる昨年度の受注金額も、取り組みを始めた平成24年度の約20倍の50億8千万円と伸びてきております。
さらに観光分野では、昨年度、県外観光客入込数が、過去2番目に多い約424万人を記録するとともに4年連続で400万人を超え、300万人台前半にとどまっていた平成21年度以前の約3割増しの水準が定着してまいりました。
このように、本県経済の商圏が、従来に比べ、県外、さらには海外に向けて格段に拡大してまいりました結果、本県経済は、かつてのように人口減少に伴い縮小するのではなく、今や人口減少下においても拡大する方向へと転じつつあります。県内総生産のデータを見ましても、産業振興計画に取り組む以前の平成14年度と平成20年度を比較すると、名目値でマイナス11.3パーセント、実質値でマイナス6.3パーセントのマイナス成長となっておりましたが、平成20年度と産業振興計画の取り組みが進んでまいりました平成26年度を比較すると、名目値で3.4パーセント、実質値で4.0パーセントとプラス成長に転じております。
しかしながら、産業振興計画の目指すべき姿として掲げております「地産外商が進み、地域地域で若者が誇りと志を持って働ける高知県」を実現するためには、地産外商の取り組みをさらに強化し、本県経済のさらなる体質強化を図る必要があります。
このため、海外への輸出をさらに展開するなど外商面での強化を図るとともに、地産の強化に向けた取り組みもさらに加速していくこととしており、人材の育成や確保などの「人材面」、設備投資や新技術の導入促進といった「技術面」、全ての取り組みの土台となる事業戦略の策定支援を通じた「戦略面」の3つの側面から、施策をさらに強化しているところです。
さらに、これらの地産の強化の取り組みは、完全雇用状態に達したことを背景とした人手不足の深刻化という現下の課題にも対応できる有効な対策でありますことから、この面からも、さらなる強化が求められるものと考えております。
(2)地産の強化と人手不足対策
(移住促進・人材確保)
この地産の強化に関しまして、特に「人材面」における対応についてご説明申し上げます。
去る7月28日、県、全市町村、関係団体の参画の下、移住促進や担い手確保の取り組みの今後の核となる「一般社団法人高知県移住促進・人材確保センター」を設立いたしました。
このセンターにおいては、以下の3点において、これまでの移住促進の取り組みを強化することとしております。
第一に、センターの構成員である県や市町村、民間団体が、官民を挙げて潜在的な人材ニーズを掘り起こし、顕在化してまいります。県内においては、後継者や中核人材などを確保する必要性がありながらも、あきらめておられるケースもあります。この仕組みを通じて、具体的に、ニーズに応じた人材の確保につなげてまいりたいと考えております。
現在、例えば、商工分野においては、商工会議所や商工会が経営計画の策定支援を通じて、また、農業分野においては、市町村やJA、農業振興センターなどで構成する協議会が産地の維持発展に向けた話し合いを通じて、地域における様々な人材ニーズの掘り起こしを進めているところです。既に、企業系で約300件、農林水産業系で約100件の人材ニーズが顕在化しており、引き続き、官民挙げて掘り起こしを強化してまいります。
第二に、こうして掘り起こした人材ニーズを、ハローワークの持つ約5,200件の求人情報や高知県福祉人材センターの持つ約900件の福祉系人材ニーズとともにデータベースに一元的に集約し、これらを組み合わせて、様々な希望に応じた多様な働き方や移住プランを提案、発信してまいります。具体的には、いわゆる「半農半X」といった複数の仕事を組み合わせた働き方や、生活環境や住まいの情報なども含めた、移住後の暮らしがイメージできる提案を積極的に行ってまいります。
第三に、移住相談や人材確保を担うスタッフの継続的なスキルアップを図るため、市町村のスタッフも含めた人材育成の取り組みを強化し、組織的にノウハウを蓄積してまいります。
今後、こうした一連の強化策を通じて、本県により多くの移住者を呼び込むことにより、地域や産業の担い手の一層の確保に努めてまいります。
(新規卒業者の県内就職促進)
あわせて、高校生や大学生などの新規卒業者の県内就職を促進し、若者の県内定着を促す取り組みをさらに強化してまいります。
具体的には、高校1年生、2年生を対象とした企業との交流会を開催するなど、高校生の県内就職対策を強化するとともに、県内就職率が低い県内外の大学生に関しても、県内企業経営者などが参加してその取り組みを紹介するセミナーなどの機会を増やし、大学生の県内企業への理解をより一層深めてまいりたいと考えており、関連する補正予算案を今議会に提出させていただいております。
(潜在的な労働力の掘り起こしなど)
こうした取り組みと併せて、農業労働力確保のための全県的な仕組みの構築など潜在的な労働力の掘り起こしに引き続き取り組みますとともに、従業員の定着対策や能力開発支援のほか、新卒者の離職防止といったことについても、事業者の皆様と共に取り組んでまいります。
さらに、生産性の向上に向けた省力化投資や事業戦略の策定など、「技術面」や「戦略面」においても事業者の皆様をより一層強力にサポートし、さらなる地産の強化を図るとともに、現下の人手不足への対応を強化してまいります。
(3)観光振興の取り組み
次に、観光振興の取り組みについてご説明申し上げます。
(「志国高知 幕末維新博」第二幕へ向けた取り組み)
現在、開催しております「志国高知 幕末維新博」については、夏休み期間中も、県内各会場に多くの観光客の皆様にお越しいただきました。
メイン会場の高知城歴史博物館には、一昨日までに約13万5千人と、既に1年間の目標である12万人を超える方々にご入館いただいております。また、サブ会場と地域会場を合わせた全会場の来場者数は、一昨日までに約98万人に達しており、今月中には100万人を達成する見込みです。
引き続き、この状況を維持するとともに、さらなる誘客促進に向け、観光客の入込実績やニーズを踏まえ、スピード感を持ってPDCAサイクルを回しながら、市町村や事業者の皆様と魅力的な企画造成やPRなどに取り組んでまいります。
幕末維新博の第二幕の開幕日については、先般の志国高知幕末維新博推進協議会において、坂本龍馬記念館のリニューアルオープンに合わせた来年4月21日に決定いたしました。
第二幕におきましては、坂本龍馬の2つの新発見の手紙などの貴重な歴史資料を活用しつつ、引き続き、本県の偉人の活躍など幕末維新の魅力をアピールするとともに、NHK大河ドラマ「西郷どん」の放送を追い風として、「平成の薩長土肥連合」のメンバーとも連携しつつ、明治維新期以降にもスポットを当てながら、自由民権運動や殖産興業をテーマとするプロモーションも組み入れてまいります。
今議会には、この第二幕の開幕イベントなどに必要な補正予算案を提出させていただいております。第一幕と同様に開幕イベントが効果的なスタートダッシュにつながりますよう、しっかりと準備してまいります。
(坂本龍馬直筆の書簡の寄贈)
こうした中、6月県議会において補正予算の議決を賜りました坂本龍馬直筆の書簡については、所有者の方から「公的機関で保管、研究し、多くの方に見てほしいので県に寄贈したい」という有り難い申し出をいただきました。改めて心より感謝申し上げます。
県としましては、このご厚意にしっかりと応え、県内外の多くの皆様にご覧いただけますよう、先月から高知城歴史博物館におきまして書簡を公開しております。今後、同書簡の調査、研究を進め、後世にしっかりと引き継いでまいりますとともに、より多くの皆様にご覧いただけるよう努めてまいります。
(ポスト博覧会)
さらに、幕末維新博後の観光振興策についても、本年度下半期から具体的な検討を始めたいと考えております。
本県の観光振興を進めるにあたっては、本県の強みである歴史、自然、食をおのおのしっかりと磨き上げながら、その時々の世の中の流行などに応じて、この三者のうちから最もふさわしいものを正面に打ち出すことのできる体制を整えることが大事だと考えております。
このような中、幕末維新博終了後の平成31年頃においては、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催が近づき、全国的にスポーツ振興や自然体験の機運が高まることが予想されます。また、平成31年度には、県内各地にキャンプ場やカヌー、スイミングなどのスポーツやアクティビティの拠点施設も整備される予定です。さらに、本県の自然体験型の主要観光施設である牧野植物園についても、磨き上げが進んでおります。こうしたことに鑑みれば、ポスト維新博の取り組みとして、本県の強みである自然と各種のアクティビティを生かした観光振興を進めていくことも一案ではないかと考えられるところです。
また、地域の特性を生かした博覧会を開催するアイデアも聞かれるところであり、県主体の取り組みと相乗効果をもたらすように取り組めないか検討を深める必要があります。
今後、体験型観光やアウトドアスポーツなどの知見を有する有識者を含めた多くの皆様のご意見をお伺いしながら、幕末維新博後の観光振興策の検討を進めてまいります。
(よさこいを活用したプロモーション)
よさこいを活用したプロモーションについては、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催も見据えて、よさこいの世界的なネットワークづくりとよさこいの魅力の情報発信に取り組んでおります。
本年のよさこい祭りには、スウェーデンやオランダのよさこいアンバサダーを中心とするヨーロッパ連合チームに参加いただき、よさこい祭り本番への海外チームの参加が初めて実現いたしました。
また、新たにアジアとオセアニアの7カ国23人を認定したことにより、よさこいアンバサダーは、昨年のヨーロッパとカナダと合わせて、13カ国42人となりました。来年度は、北米や南米を中心に認定を行い、世界的なネットワークをさらに拡大してまいりたいと考えております。
加えて、本年3月に設立しました「2020よさこいで応援プロジェクト実行委員会」については、先月、北海道の「YOSAKOIソーラン祭り」や名古屋の「にっぽんど真ん中祭り」、三重の「安濃津よさこい」の3団体に参画いただき、参画団体数は30都道府県77団体となり、全国的な体制となってまいりました。
今後、実行委員会の皆様と協力して、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開閉会式などでのよさこい演舞の実現を目指しますとともに、世界中から集まる選手やメディア関係者、外国人観光客の皆様をよさこいでおもてなしすることなどを通じて、高知発祥のよさこいを世界に発信してまいりたいと考えております。
(4)拡大再生産の好循環へ向けた取り組み
次に、拡大再生産の好循環を実現するための3つの柱である、担い手の確保、地域産業クラスターの形成、起業や新事業展開の促進のうち、先ほど申し上げました担い手確保を除いた2つの柱についてご説明申し上げます。
(地域産業クラスターの形成)
まず、地域産業クラスターの形成については、現在、19のプロジェクトについて取り組みが進められているところです。
例えば、いの町の生姜プロジェクトにおいては、先月から新たに町内の6カ所の飲食店で生姜スイーツを提供する取り組みがスタートしました。さらに、四万十町における四万十の栗プロジェクトにおいては、今月末から栗の新工場の稼働を予定しているなど、それぞれのプロジェクトにおいて、第二次、第三次産業の分野でも取り組みが着実に進んでおります。
引き続き、核となる第一次産業の生産拡大を図る取り組みに加えて、加工や販売、観光といった第二次、第三次産業の集積を進めてまいりますとともに、新たなクラスタープロジェクトの掘り起こしに努めてまいります。
(起業・新事業展開の促進)
次に、起業や新事業展開の促進については、起業に関心のある方のほか、既に起業をされた方や経営の専門家の方などに登録いただいておりますこうち起業サロンの会員数が、現在220人と大きく伸びてまいりました。
こうした中、本年6月から、これまでのこうち起業サロンの取り組みを進化させて、起業に向けた体系的な支援プログラムである「こうちスタートアップパーク」を開始いたしました。
この取り組みにおいては、起業や新事業の立ち上げ経験のある専任の起業コンシェルジュによる常時の相談態勢を整え、起業を目指す方の準備状況に応じたきめ細かなサポートを行っております。さらに、先月からは、事業アイデアを具体化するプログラムを開始しており、20人の起業サロン会員がチャレンジしております。
引き続き、本年度後半に予定しておりますビジネスプランコンテストや土佐まるごとビジネスアカデミーなどの学びの支援策も活用しながら、県内においてより多くの起業や新事業創出が図られるよう取り組んでまいります。
(第一次産業等における生産性向上プロジェクトの推進)
加えて、産業振興計画においては、新事業創出などを継続的に促す仕組みとして、県内の第一次産業や防災、福祉などの現場における様々な課題を解決する製品、システムの開発を促し、県内の課題解決を図るとともに、これらの製品などを同じ課題を抱える県外の市場に売り込む、ものづくりの地産地消・外商の取り組みを強化してきたところです。
昨年度までの取り組みによって、第一次産業の現場のニーズとものづくり企業とのマッチングにより、野菜のパック詰め機など16件のプロジェクトを、また、IT事業者とのマッチングにより、養殖現場の作業効率化を図るシステムなど9件のプロジェクトを創出しました。
さらに、本年度からは、取り組みをさらに強化することとしており、具体的には、個々の現場ニーズに個別に対応する形で開発を進めるこれまでの取り組みをさらに進め、川上から川下までの生産過程を広く見渡した上で、拡大再生産のボトルネックとなる課題などからニーズを抽出し、そのニーズに基づくIoTシステムや機械の開発、さらには外商までを体系的に推進する仕組みを構築することとしております。現在、第一次産業の分野ごとに庁内に設置したプロジェクトチームにおいて現場ニーズの抽出を進めているところです。
今後、既に立ち上げているプロジェクトをフォローするとともに、今回抽出されるニーズについて、県内のIT事業者やものづくり企業とマッチングを図り、早期の事業化に結び付けてまいります。
(5)その他
このほか、本県の産業振興にかかる本年度以降の重要なポイントとなる事項についてご説明申し上げます。
(民間企業との連携)
県勢浮揚を果たすためには、県内はもとより、県外との絆のネットワークを広げ、県外から多くの人材や知恵、資本を呼び込むことが重要であるとの考えの下、これまで、県外企業や団体などとの間で、地方創生などに関する包括協定の締結を積極的に進めてまいりました。現在までのところ、25の企業や団体などとの間で協定が締結され、販路開拓や人材確保などについて本県への支援をいただいているところです。
本年6月に協定を締結いたしました公益社団法人経済同友会及び土佐経済同友会の皆様との間では、「CLTを核とした木材需要の拡大」など、4つのテーマで取り組みを進めております。7月には、「林業・CLT専門部会」が設置され、本年中に需要者側の視点に立った国産材の活用とCLTの普及についての提案が取りまとめられることになっております。
また、「中山間地域における企業と地域との交流ネットワークの強化」や「IoT活用による産業活性化に向けた研究の推進」、「人財及びビジネスマッチングの促進」といったテーマについても協力していただくこととなっており、今後、より具体的な取り組みを進めてまいります。
今後とも、本県の取り組みを積極的に発信し、県外企業や団体などとの新たなネットワークを築いてまいります。
(次世代型こうち新施設園芸システムのさらなる進化)
本県は、オランダの先進的な施設園芸を基に、本県に適合した農業技術を開発し、平成26年度から次世代型こうち新施設園芸システムとして県内の各産地に普及を図ってまいりました。
これまでの取り組みにより、農業クラスターの形成が進むとともに、園芸農業の生産性が向上し、20パーセント以上増収したハウスが増えるなど農家の所得の向上につながっております。他方、化石燃料による環境負荷軽減の必要性やさらなる生産性向上に向けた省力化の必要性など、新たな課題も見えてまいりました。
また、今後、環境制御技術や次世代型ハウスの全国への普及も見込まれる中、本県の全国的な優位性を将来にわたって維持していくためには、10年先を見通し、より高みを目指してシステムの改善を図ることも大変重要となってまいります。
このため次世代型こうち新施設園芸システムのさらなる進化に向け、県として、中長期的な展望に立って、様々な取り組みを行っていく必要があるものと考えております。
まず、環境の負荷の軽減や燃料代の安定、削減を目指して、加温性や制御性に優れる燃料用おが粉の低コスト製造に必要な実証に早急に取り組みたいと考えております。また、このことは、製材現場において生おが粉の生産が今後増加する見込みであることにも対応するものであります。これまでの半年間、四万十町森林組合が国の事業を活用して実証実験を行ってまいりましたが、一定の知見は得られたものの、十分なコスト削減効果を得るまでには至りませんでした。こうしたことから、県としましては、この結果を礎として、燃料用おが粉のさらなるコスト削減に向け、原材料の確保から製造、供給に至る一連のシステムの検討を行いたいと考えており、今議会に関連する補正予算案を提出させていただいております。
また、生産性の向上などその他の課題については、昨年度、施設園芸技術の向上や人材育成を目的に、東京農業大学との包括協定を締結し、本年度から収穫物の新たな鮮度保持技術や防除の困難な病害への対策などの技術を共同で開発しているところです。今後も、同大学をはじめ県内の各大学とも連携し、次世代型こうち新施設園芸システムの次の世代を見据えた技術開発に取り組んでまいります。
(食肉センターの整備)
食肉センターは、畜産振興、ひいては、中山間の振興を進める上で、また、県民に安全安心な食肉を提供するためにも、公共財として県内に必要不可欠な施設であると考えております。
このため、新たな施設整備の方向性について「高知県新食肉センター整備検討会」において議論を重ねてまいりました。これまでの5回の議論を通じて、新センターは、経営安定化と収益増加を図るため、現在の施設で行っていると畜機能に加えて、セリ、部分肉加工、集荷、販売といった新たな機能を持つ施設とすること、と畜は牛を中心とすること、現在地での建て替えによる整備とすることなどの基本的な方向性についての合意が得られました。
今後は、設置主体や運営主体、施設整備費の負担割合などについて案をお示ししながら、全ての市町村やJA、生産者、加工業者など様々な関係者の方々から幅広く意見をお聞きした上で、新センターが多くの県民にとって最も良い施設となりますよう、成案を取りまとめてまいります。
4 日本一の健康長寿県づくり
次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
(1)地域医療構想
昨年12月に策定しました地域医療構想は、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を念頭に置いて、地域の実情に応じた効率的かつ質の高い医療提供体制のあるべき姿を示すものであります。
本県においては、昭和40年代以降、全国に先駆けて高齢化が進展する中、病院が増加する介護ニーズの受け皿となってきました。そのため、人口当たりの療養病床数は全国で最も多くなっているものの、療養病床に介護施設などを含めた高齢者の療養の場全体としての人口当たりベッド数は、全国第16位と全国平均を若干上回る程度であります。
県が病院の退院支援担当者の皆様に実施した療養病床の実態調査によりますと、現在、療養病床に入院されている方のうち、約36パーセントが療養病床以外の施設やご自宅などでの生活がふさわしいとの結果が出ています。これらの方々の生活の質、いわゆるQOLの向上を図るためには、最後まで自分らしく生きられるよう、患者さんの意向に沿った形で、医療から介護、そして介護でも施設から居宅へとおのおのの選択がスムーズにできる体制を整えていく必要があります。そして、このことは結果として医療費の抑制にもつながるものと考えております。
このため、本県の地域医療構想は、基本的な方向性として、行き場のない入院患者を出さないことを大前提として、一人ひとりのQOLを向上させる観点から、よりふさわしい療養環境を確保するとともに、地域における病院、診療所、薬局などの医療資源の効率的な配置と、医療、介護の連携を通じた効果的な医療体制の構築を目指すものであります。
この構想を推進するために、県内4つの区域ごとに地域医療構想調整会議を設置し、医療や介護の関係者、市町村や住民の方々と、地域医療の現状や療養病床転換制度の情報共有などを行っているところです。
今後、この調整会議における協議を前提として、療養病床の転換意向のある医療機関において、地域医療介護総合確保基金を活用した財政的な支援なども活用して病床の機能分化を進めていただくなど、地域医療体制の再構築を図ってまいります。あわせて、療養病床転換に向けた国の動向について注視し、必要に応じて国への政策提言を行うなど、地域地域で安心して住み続けられる県づくりの実現に向けて取り組んでまいります。
(2)国民健康保険制度改革
国民健康保険制度については、都道府県が財政運営の責任主体となる新たな制度が来年4月から円滑にスタートできますよう、市町村や国保連合会との協議を重ねてまいりました。
その結果、本県は医療費水準の市町村格差が大きいことから、当面は保険料水準を統一せず、市町村が県に納める国民健康保険事業費納付金に医療費水準を全て反映させることや、被保険者の保険料負担を急激に増加させないよう激変緩和措置を講ずることなど、基本的な納付金の算定方法について関係者間で合意がなされました。さらには、県内市町村の統一的な事業運営のために県が定める高知県国民健康保険運営方針の案を取りまとめたところです。
今後、パブリックコメントの実施や国民健康保険運営協議会における審議を経て、本年12月県議会に関連する条例議案を提出させていただきたいと考えております。国民健康保険の将来にわたる安定的な運営に向けて、引き続き、市町村などと一体となって取り組んでまいります。
(3)介護人材の確保に向けた取り組みの強化
介護サービスの提供を担う人材の確保については、本年度から新たに拡充された介護職員処遇改善加算の取得支援など、介護職員の雇用環境の向上に取り組んでおります。その結果、支援いたしました50法人のうち47法人において、新設された最上位の加算を取得するなどの成果が見られました。
しかしながら、県内の介護職員の離職率が依然として高い状況にあることを踏まえますと、介護職員の離職防止と定着に向けて、職員の人材育成や処遇改善、労働環境の向上などについて、もう一段取り組みの強化が必要であると考えております。
このため、新規採用者の育成計画の策定や資格取得のための支援の実施といった県が定める基準を達成した事業所を認証し、情報発信する新たな認証評価制度を導入することとしており、関連する補正予算案を今議会に提出させていただいております。
この制度の普及を通じて、介護事業所全体の勤務環境のレベルアップを図り、介護の仕事の魅力を向上させ、さらには介護サービスの質を高め、利用者の皆様の生活の質が向上するといった好循環の実現を促すことにより、人材が確保、定着できる魅力ある職場づくりを目指してまいります。
今後、課題や規模などの特性に応じたセミナーを開催するとともに、個別の支援が必要な事業所には、訪問によるコンサルティングを実施するなど、多くの事業所がこの認証を取得できますよう、しっかりと支援してまいります。
(4)子ども食堂への支援の取り組み状況
子ども食堂については、夏休み期間限定で開設した8カ所を含め、10市7町において、36団体43カ所の活動を把握しており、着実に取り組みが広がってきていると考えております。
また、子ども食堂の取り組みを支援するために県が設置いたしました子ども食堂支援基金に対しては、昨日までに17件、約54万円のご寄附をいただいております。さらに、今月からは、県内スーパーマーケットチェーンと乳業メーカーのご協力により、牛乳の販売1本につき1円を基金に寄附していただくこととなりました。
子ども食堂への支援が企業活動にまで広がってきたことを大変心強く、また、ありがたく思っております。今後も、こうした取り組みの輪を広げ、子どもたちが安心して過ごせる居場所の拡大を目指してまいります。
(5)高知県青少年保護育成条例の改正
近年のインターネット環境の大幅な進歩やスマートフォンなどの急速な普及を背景として、青少年が関わるネット上のトラブルやいじめなどの問題が深刻化しております。
こうしたトラブルやいじめなどを防ぐためには、青少年がインターネットを適切に活用する力を身に付けられるよう取り組むとともに、この力が不十分なうちは、親子の話し合いやルールづくり、フィルタリングや機能制限などによって危険回避を図ることが必要となります。
このため、県では、教育委員会が中心となって、児童生徒や保護者を対象としたフィルタリングの周知や啓発、情報モラル教育の推進などに取り組んでまいりました。
この取り組みをより実効性あるものとするために、保護者や学校などに求められる役割をより明確にすることが必要と考え、高知県青少年保護育成条例の改正議案を今議会に提出させていただいております。
また、条例改正と併せて、保護者、学校関係者などと連携を密にして、「高知家」児童会・生徒会サミットの開催や情報モラル教育の取り組みなどの関連施策を総合的に推進してまいりたいと考えております。
5 教育の充実
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
(1)全国学力・学習状況調査の結果分析と対策(チーム学校を含む)
先月末に公表された本年度の全国学力・学習状況調査の結果によりますと、小学校の算数やこれまで課題の大きかった中学校の数学において、順位が過去最高になるなど学力の定着状況に着実な改善が見られました。チーム学校の意識が徐々に醸成され、教員が危機感を持って授業改善などに取り組んできた成果であると考えます。
チーム学校の構築に関しては、教員同士の学び合いを通じて授業改善を促すタテ持ちの取り組みが19の中学校で着実に進むなどしており、引き続き、教科会の一層の充実に向けて訪問指導を強化していくとともに、今後、さらに実施校を拡大してまいります。
他方、これまで順調に上昇してきた国語の正答率が下がったことは残念であり、特に小学生においては、文章を読み取って理解する力を十分に伸ばし切れていないなど、新たな課題が明らかになりました。
(2)総合教育会議
このような結果も踏まえて、今月11日に開催した第2回総合教育会議において、教育大綱に基づく施策の進捗状況を検証し、今後の取り組みの方向性などについて協議を行いました。
(国語の学力向上対策)
今回の学力調査の結果を踏まえますと、国語については、これまで進めてまいりました書く力を高める学習教材の活用や授業改善などの取り組みに加えて、短時間で文章を読み取って要旨を捉えるといった読解力の向上を図る取り組みが必要であります。
このため、説明文や科学の読み物など様々な文章を要約する教材を早急に作成し、授業などにおける活用を促すとともに、小学校教員を対象としたさらなる国語の授業改善を進める研修会や、課題のある学校に対する訪問指導を実施するなどの具体的な改善策を年内に講じてまいります。
(高等学校における基礎学力の定着・向上)
次に、高等学校については、進学拠点校を除く30校における英、数、国の3教科の基礎学力調査において、進学や就職に支障を及ぼすレベルの学力とされるD3層の生徒が3年生の段階で3割に達している状況が見られます。この現状の改善に向けて、習熟度別の授業や放課後の加力学習などに取り組んでおりますものの、いまだ十分な効果が表れておりません。
これらの生徒の多くは義務教育段階の学習内容の定着に課題があり、より分かりやすい授業が必要であることや、専門高校においては、2年生以降は専門教科の授業が増え、3教科の授業時間が少なくなることなど教育課程に関わる課題も見えてまいりました。
このため、第一に、それぞれの生徒が高等学校卒業時に最低限身に付けておくべき到達目標を3教科ごとに設定し、その達成に向けた授業の改善を徹底いたします。このことについては、今月開催した校長会において全校に周知を行ったところであり、今後、校内研修などを通じて徹底を図ってまいります。
第二に、学び直しの時間を確保するためのカリキュラムの変更など、管理職を中心とした学校全体の組織的な運営を強化いたします。今後、授業改善の中心となる教科会の充実や、学校全体の組織的な運営体制の強化など、チーム学校としての組織的な取り組みを各校に徹底していくための支援体制について、具体化を図ってまいります。
(不登校児童生徒への対策)
次に、厳しい環境にある子どもたちへの支援については、近年、不登校の児童生徒が特に増加しており、中学校に進む段階で急増する傾向も見られることから、子どもたちの心や行動のささいな変化を見逃すことなく、組織的かつ専門的な対応を迅速に図ることが重要であります。そのためには、本年度全校に設置が完了した校内支援会の取り組みの実効性を高めていく必要があります。
具体的には、子どもの小さな変化に気付いた段階で、担任がその情報を学年部会につなげ、まずは学年部会が支援に入ることや、小学校と中学校の生徒指導担当や養護教諭が互いの支援会に参画し、小中学校間で情報共有を図ることなどに取り組んでまいります。
あわせて、不登校の長期化により学びの場に参加できない生徒や、学齢期に義務教育を受けることができなかった方などへの学習の機会を提供するため、夜間中学の設置に向けた検討を進めてまいります。
(3)新図書館等複合施設「オーテピア」の整備状況
県と高知市が共同で整備を行っております新図書館等複合施設「オーテピア」に関しましては、来年7月24日の開館へ向けた準備を進めているところです。
施設内に整備される「オーテピア高知図書館」は、全国初の県立と市立との合築図書館としてのメリットを最大限に生かし、2つの図書館に共通する業務を一体的に行うとともに、市町村支援など県独自の機能をこれまで以上に発揮することにより、県民の皆様の利便性を高め、充実した図書館サービスを提供していくことを目指しており、このために必要な条例改正などの議案を今議会に提出させていただいております。
現在、本年1月に策定した「オーテピア高知図書館サービス計画」の実現に向け、役割分担や連携について高知市と協議を重ねるとともに、司書のスキルアップをはじめとしたサービス提供体制の充実、強化などに取り組んでいるところです。県の中心的な情報拠点として、新しい世界や価値観との出会いをはじめ、より高度な知識の習得や、暮らしや仕事の中で生じるさまざまな課題の解決などに貢献する場となることにより、県民の皆様の生活を豊かなものとし、本県の教育や文化、経済の発展を支える施設となりますよう、開館に向けた準備をしっかりと進めてまいります。
6 南海トラフ地震対策
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
(1)住宅の耐震化
様々な地震対策の入口となります住宅の耐震化については、「命を守る」対策として、津波避難対策と並んで最優先に取り組んでいるところです。
具体的には、耐震改修などに関する補助金の拡充や市町村による戸別訪問など需要の掘り起こしとともに、耐震改修に対応できる事業者の育成など供給能力の強化にも努めてまいりました。その結果、本年8月末現在の補助申請件数は、耐震設計、耐震改修ともに前年同期の1.7倍と大幅に増加しております。このため、さらなる耐震改修の促進に向けて、関連する補正予算案を今議会に提出させていただいております。
他方、住宅の耐震化に現在活用しております国の交付金制度の見直しにより、今後、交付額が大幅に縮減される見通しとなっており、大いに危惧しているところです。このため、全国知事会や10県知事会議などとも連携し、国に対して、強力に住宅耐震化促進策の抜本強化を求めてまいりました。その結果、国土交通省の来年度予算の概算要求において強化の方向性が示されたところです。今後も、国の動向を注視しつつ、予算化が確実に行われますよう、時機を捉えた政策提言を行ってまいります。
(2)避難所対策
「命をつなぐ」対策については、各市町村において新たな避難所の指定や学校の校舎利用などの取り組みを進めていただいた結果、県内の避難所数が一昨年度末の約900カ所から約1,100カ所に増加してまいりました。
しかしながら、まだまだ避難所が不足していることから、引き続き、各市町村と連携し、これまでの取り組みに加えて、民間施設のご協力もいただきながら避難所の確保に努めてまいります。
さらに、こうした取り組みを進めてもなお、全ての避難者を受け入れるための避難所の確保が困難な市町村については、県内を4つの圏域に分けて広域での避難に向けた調整を行ってまいります。
本年度は、高幡圏域をモデルとして、市町村と共に広域避難計画の策定を進めているところです。残る3圏域についても、来年度以降、高幡圏域の取り組みを参考にして広域での調整を進めてまいります。
(3)高知県高校生津波サミットの取り組み
昨年、日本を含む世界30カ国から約360人の高校生に参加いただいた「世界津波の日」高校生サミットにおいては、高校生同士の熱心な議論が行われ、次代を担う高校生の防災活動の指針となる黒潮宣言も採択されたところです。
この成果を一過性のものとせず、黒潮宣言に基づく高校生の主体的な防災活動を支援し、未来の防災リーダーの育成と防災啓発の普及を図るため、本年度から新たに「高知県高校生津波サミット」を開催することとしております。
サミットに参加する高校生は、参加校同士による学習会や、本年7月、8月の岩手県への被災地訪問などにより、震災への知見や防災意識を高めるとともに、各学校において自然災害に関する学習や防災活動などに積極的に取り組んでおりますし、さらに、これらの高校生の代表者が11月に沖縄県で開催される世界サミットに参加する予定となっております。
こうした取り組みの成果を、12月に県内全ての高等学校の代表の生徒を対象に開催するサミットにおいて発表していただいた上で、今後の防災活動について議論していただきたいと考えております。さらには、この高知県版サミットの成果を、サミット後も各学校における授業などで活用することにより、県内の全ての高校生の防災意識の向上につなげるよう努めてまいります。
将来にわたりサミットOBによる主体的な防災活動が県内各地で展開され、全県的な防災意識や対応力の向上につながっていくよう、今後も継続して取り組みを進めてまいります。
(4)大規模地震対策特別措置法の見直し
大規模地震対策特別措置法に関して、地震観測や防災対応のあり方について検討するワーキンググループが中央防災会議の下に設置され、私も委員として参加してまいりました。このワーキンググループにおいては、現行の法律に基づく各種の規制措置を含む地震防災応急対策が適切なのか、また、異常な現象が南海トラフ沿いで観測された場合の防災対応はどうあるべきかなどについて議論が行われ、先月25日に「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応のあり方について」の報告書案が示されたところです。
この報告書案においては、地震予知情報をもとに警戒宣言が発せられることを前提とした現行の地震防災応急対策は改める必要があるとする一方、南海トラフの東側で大規模な地震が発生し、西側が連動しなかった場合や、想定される大規模地震と比べて一回り小さいマグニチュード7クラスの地震が南海トラフ沿いで発生した場合といった、大規模地震につながる可能性のある異常な前駆現象に即応してその後の防災対応を図ることが重要である、とされております。
今後、国は、自治体などがこの報告書案に基づいた防災対応の計画策定を行うための指針となるガイドラインを示すこととしており、その策定のため、モデル地区を選定し、その具体的な内容を検討することとしております。
国によるガイドライン策定には一定の時間を要しますことから、それまでの間、県としてとりあえず考えられる対策を様々な視点から検討し実行するとともに、国のガイドラインが示され次第、これに沿った、より本格的な対策を順次具体化してまいりたいと考えております。
7 インフラの充実と有効活用
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
今般公表されました国土交通省の来年度予算の概算要求に、早明浦ダム再生事業が新たに盛り込まれました。この事業において新たな放流設備を整備することにより、ダム下流地域において課題となっております浸水被害や濁水被害の軽減が期待されます。嶺北地域と県が長年待ち望んできた事業であり、引き続き、来年度の政府予算案に確実に盛り込まれますよう、関係町村と一体となって国への働きかけを継続してまいります。
また、今議会においては、国庫補助金の内示額の増加に伴い、約47億円の公共事業に関する補正予算案を提出させていただいております。時機を逸することなく、地域の生活を支え、南海トラフ地震対策などにも資する道路整備や橋梁、トンネルなどの老朽化対策などに取り組んでまいります。
8 中山間対策
次に中山間対策についてご説明申し上げます。
中山間対策の柱として推進しております集落活動センターについては、本年4月以降、4カ所が新設され、県内26市町村41カ所に広がってまいりました。今後も、市町村と一体となって候補地の掘り起こしを進めるとともに、中山間地域の持続的発展を目指して、各センターのネットワークを活用した活動内容の拡充や、産業振興計画の成長戦略、地域アクションプランと連動させた経済的活動の充実を積極的に支援してまいります。
また、中山間地域の生活を守る取り組みについては、これまで買い物支援や移動手段の確保対策などの市町村の取り組みを積極的に支援してまいりました。
こうした中、今月から、過疎地域において、タクシー事業者が有償で荷物を運送する、あるいは、貨物事業者が旅客を運送するといった事業の掛持ちができる、いわゆる「貨客混載」が可能となる規制緩和が行われております。
県としましては、特に中山間地域の維持、再生という観点から、この「貨客混載」の規制緩和を生かし切る取り組みの可能性について、様々な角度から検討してまいりたいと考えております。
具体的には、いくつかの地域をモデルとして、地域ごとに関係事業者や行政などが参画した検討会を立ち上げ、その地域の実情に合った多様で効率的、具体的な事業スキームを検討し、提案、実証してまいります。住民の皆様の利便性の確保、地域の乗合バスやタクシー事業者などの生産性の向上、さらには、地域の集配拠点としての集落活動センターの活性化などにつなげていくことができないか、市町村や関係事業者と連携しながら、スピード感を持って検討してまいります。
9 スポーツの振興
次に、スポーツの振興についてご説明申し上げます。
本県のスポーツ振興については、庁内で組織する高知県スポーツ振興推進本部会議などにおいて、PDCAサイクルを回しながら、現行の高知県スポーツ推進計画に基づく各種の施策をしっかりと進めているところです。
あわせて、本県のスポーツ振興策の抜本強化に向けて、県内の産学官民の有識者で構成する高知県スポーツ振興県民会議の下に、「競技力の向上」、「生涯スポーツの推進」、「スポーツツーリズムの振興」の3つの専門部会を設置し、検討を進めております。
具体的には、「競技力の向上」に関しては、まず、誰もが早い段階から自らの強みを生かしたスポーツに出会い、途切れることなく良き指導者の下で練習に打ち込むことのできる環境づくりについて検討しております。さらに、小学校高学年から一般までの優秀な選手によって構成する「全高知チーム」を競技種目別に常設するといった育成、強化体制の構築などについても検討しております。
「生涯スポーツの推進」に関しては、総合型地域スポーツクラブなどが各地域のスポーツ活動の拠点機能を担い、スポーツ情報の一元化をはじめ、新たなイベントの実施、指導者や施設とのマッチングなどを行い、地域の実情やライフステージに応じたスポーツへの参加機会の拡充に取り組むといった、持続可能な地域スポーツを推進するためのネットワークづくりについて検討しております。
「スポーツツーリズムの振興」に関しては、スポーツ大会の開催やスポーツ合宿の誘致活動に引き続き取り組むことに加え、サイクリングや登山、カヌーなど本県の自然環境を生かしたスポーツアクティビティの磨き上げについて、その分野で世界的に活躍されている方などに企画段階から参画していただくとともに、国内外にその情報を発信していただくことにより、さらなる交流人口の拡大につなげることなどの検討を行っております。
引き続き、関係者のご意見もいただきながら、スポーツ振興を強力に推進していくための新たな計画を本年度内に策定してまいります。
10 その他
(連携中枢都市圏形成の取り組み)
今月7日に開会した高知市議会において、岡﨑高知市長は、県内全市町村を圏域とする連携中枢都市圏の形成を宣言されました。高知市が他の市町村を力強くけん引する取り組みは、「地産外商が進み、地域地域で若者が誇りと志を持って働ける高知県」の実現のために大変有効であると考えております。
県としましては、これまで、県内全市町村を圏域とすることを高知市に提案し、高知市とも共有させていただくとともに、具体的な連携事業の検討に際しては、連携中枢都市圏の取り組みが県勢浮揚に向けて効果的なものとなるよう、市町村との調整や連携事業の磨き上げについて高知市と共に取り組んでまいりました。
連携中枢都市圏の形成後においても、引き続き、県市が連携してこの取り組みを進めてまいりたいと考えております。そのため、高知市との連携協約の締結に関連する議案を12月県議会に提出させていただきたいと考えております。
(大川村議会維持へ向けた取り組み)
現在、大川村議会維持対策検討会議において、大川村議会の維持に向け、議会活動に対する村民の関心をどのように高めていくのかなどの課題について、村民の皆様へのアンケートや青年団の皆様から伺った意見などを基に検討を進めているところであります。
また、議員を志す方を増やす根治対策、すなわち若者を増やす対策となる大川村プロジェクトのさらなる加速化についても、畜産振興や観光振興といったテーマを設定して、効果的な取り組みとなるよう議論を重ねているところです。
こうした中、今月11日に開会した大川村議会において、和田大川村長は、村議会存続を優先する意思を示すため、村民総会の検討を一旦中断することを表明されました。県としても、多様な民意を的確に行政に反映し、また、執行機関を監視するため、村議会を維持することが大変重要であると考えており、村長と思いを同じくするところです。今後も大川村と議論を深め、年内を目途に一定の方向性を取りまとめたいと考えております。
(新たな管理型最終処分場の候補地の選定)
産業廃棄物の新たな管理型最終処分場の整備については、候補地の選定に向けて、有識者などにより構成される「新たな管理型最終処分場候補地選定委員会」において議論を重ねていただいております。
今月開催いたしました第3回委員会においては、これまでに設定した区域の中から、幹線道路からの距離や地形、土地利用状況といった条件を満たす104カ所の第一次調査対象地や、次の絞り込みを行うための評価項目などを決定いただきました。
また、候補地の公募に対して4件の応募がありましたことから、今後、委員会において第一次調査対象地の抽出条件を満たすことを確認いただいた上で、第一次調査対象地と同様の評価が行われていくこととなります。
引き続き、委員会において、客観的かつ透明性のあるプロセスによる絞り込みを進めていただきます。その上で、委員会と共に、複数箇所の候補地を選定し、最終的には、県議会のご意見もお伺いしながら、地元の合意を得た上で、県において建設予定地を決定したいと考えております。
(ペギー葉山先生の追悼式典)
去る4月12日にお亡くなりになりました名誉高知県人でありますペギー葉山先生の追悼式典を、11月20日、高知市文化プラザかるぽーとにおいて開催するとともに、追悼式典開催前の11月13日から1週間、パネルと映像でペギー葉山先生をしのんでいただく特別展を開催することといたしました。映像や音楽、トークショーを通じて、先生のご功績を称え、多くの県民の皆様と共に追悼する機会にしたいと考えております。
改めて、ペギー葉山先生のご功績に対しまして深く敬意を表し、心より感謝申し上げます。
11 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成29年度高知県一般会計補正予算などの2件です。
このうち一般会計補正予算は、先ほど申し上げました経済の活性化などの経費として、60億1千万円余りの歳入歳出予算の補正などを計上しております。
条例議案は、高知県青少年保護育成条例の一部を改正する条例議案など4件であります。
その他の議案は、高知県立図書館と高知市立市民図書館の合築により整備する図書館の共通業務に係る連携協約に関する議案など12件であります。
報告議案は、平成28年度高知県一般会計歳入歳出決算など22件であります。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。