公開日 2019年09月19日
令和元年9月県議会での知事提案説明 (9月19日)
2 補正予算などについて
(1)9月補正予算
(2)県財政の健全化と今後の財政収支見通し
3 経済の活性化
(1)産業振興計画について
(2)各産業分野の取り組み
ア 農業分野
イ 林業分野
ウ 水産業分野
エ 食品分野
オ 商工業分野
カ 観光分野
(自然&体験キャンペーン)
(3)各分野に横断的に関わる取り組み
ア 移住促進
イ 産業人材の育成と起業・新事業展開の促進
ウ 高知版Society5.0の実現
4 日本一の健康長寿県づくり
(1)日本一の健康長寿県構想の推進
(健康維持と壮年期男性の死亡率の改善)
(高知版地域包括ケアシステムの構築)
(高知版ネウボラの構築)
(2)全国知事会社会保障常任委員会の取り組み
5 教育の充実
(次期教育大綱の策定に向けて)
7 インフラの充実と有効活用
(四国8の字ネットワーク等の整備)
(浦戸湾の三重防護等の整備)
9 少子化対策の充実強化と女性の活躍の場の拡大
(1)少子化対策の充実強化
(2)女性の活躍の場の拡大
10 文化芸術とスポーツの振興
(1)文化芸術の振興
(2)スポーツの振興
本日、議員の皆様のご出席をいただき、令和元年9月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題などについてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
12年前、私は、「全国的な景気回復の流れから取り残されている高知県の窮状を何とかしたい」、「ふるさと高知に活力を取り戻すため、私の全てを捧げたい」との思いから、政治家としての一歩を踏み出しました。
多くの方々からお力を賜り知事に就任させていただいて以来、私が県政運営の基本としてきましたのは、「対話と実行」の県政の実現であります。県民の皆様の声に真摯に耳を傾け、様々な対話を通じてお知恵を賜る。そしてそれらを踏まえて立案した施策をスピード感を持って実行する。さらに、その結果を踏まえた新たな対話を通して、また新たなお知恵を頂戴する。こうした姿勢を、この12年間持ち続けるべく努力してまいりました。
誠に多くの県民の皆様のご協力を賜り、この間、82回に及ぶ「対話と実行座談会」の機会を持たせていだだき、また、「対話と実行行脚」として全市町村をそれぞれ1日、2期目、3期目を通じて二巡させていただいたところです。こうした機会を通じて、県内の実情と地域の課題を学ばせていただいたことが、県政運営の全ての基盤となってまいりました。
あわせて、時代の大きな流れを捉えた施策展開に心掛けるとともに、時代の流れを県勢浮揚の追い風とすべく、外部から様々な活力を呼び込むことにも努めてまいりました。政府の審議会などの委員として、また、全国知事会の役員として、そして何より高知県の知事として、数々の政策提言を行うとともに、県内外の多くの経済団体や企業の皆様と協定を結んでいただき、県勢浮揚の後押しを賜ってまいりました。
こうした基本姿勢の下、「経済の活性化」や「日本一の健康長寿県づくり」などの5つの基本政策と、「中山間対策の充実・強化」などのそれらに横断的に関わる3つの政策それぞれについて、県庁職員と共に、課題に正面から向き合い、PDCAサイクルを徹底し、官民協働、市町村政との連携協調の下、全身全霊を傾けて取り組んでまいりました。
災害に強い県づくりを目指すとともに、昭和50年代から続く少子高齢化と人口減少のもたらす負のスパイラルの克服に向けて、多くの県民の皆様にご指導いただきながら、こうした様々な施策を10年以上にわたり展開してまいりました結果、各種の経済指標に見られますように、下降、縮小傾向にあった県勢は明確に上昇傾向に転じるようになってまいりました。
しかし、本県には、中山間地域の窮状をはじめ未だに多くの課題が山積しております。そして、防災減災の取り組みもさらに加速していかなくてはなりません。
県勢浮揚に向けた歩みをより力強いものとしていくため、災害から県民の皆様の命を守るため、今後も積極的な政策運営が求められます。
現在、各分野の成果と課題を率直に分析し、新たな施策の展開に向けた検討を重ねているところです。任期の限り、高知県知事として、新たな時代に向けて知恵を出し、汗をかいてまいる所存であります。
(1)9月補正予算
今議会では、経済の活性化をはじめとする基本政策などを着実に推進するため、総額85億2千万円余りの歳入歳出予算の補正並びに総額2億2千万円余りの債務負担行為の追加及び補正を含む一般会計補正予算案を提出しております。
このうち「経済の活性化」に関しては、中国最大のオンライン旅行会社と連携し、中国市場を中心とするプロモーション活動を展開するとともに、IT・コンテンツ関連産業の集積を加速するため、立地企業の初期投資などを支援してまいります。
また、「日本一の健康長寿県づくり」に関し、地域包括ケアシステムの構築に向け、療養病床から介護医療院への転換などをより一層推進するとともに、「南海トラフ地震対策」に関し、喫緊の課題である住宅の耐震化などを一段と加速してまいります。
さらに、台風第10号により発生しました道路や河川などにおける被害について、そのダメージを除去するとともに、事前防災にも資するよう、迅速な復旧に努めてまいります。
(2)県財政の健全化と今後の財政収支見通し
私は、知事就任以来、山積する様々な政策課題に対して迅速かつ積極的な施策の展開に努めると同時に、常に中期的な展望の下に財政規律を維持し、県財政の健全化に努めることも重要であるとの考えの下、毎年度の予算編成に取り組んでまいりました。結果として、例えば、津波避難タワーの整備をはじめとする防災対策や高速道路などのインフラ整備が進展する中においても、県債残高の縮減が図られてきたところであり、近年は臨時財政対策債を除いた残高も、国の経済対策に呼応して県債の発行額が大幅に伸びる前の平成7年ごろの水準で安定的に推移してきております。また、財政調整的基金の残高についても、安定的な財政運営に必要な一定規模が確保されてきたところです。
今般、例年と同様に、今後の中期的な財政収支について試算を行った結果、南海トラフ地震対策や大規模事業などに必要な経費のほか、社会保障関係経費の増加による影響を見込んでも、なお、引き続き安定的な財政運営に一定の見通しをつけることができたものと認識しております。
今後とも、事務事業のスクラップ・アンド・ビルドを一層徹底するとともに、本年6月に立ち上げた行政サービスデジタル化推進会議などの取り組みを通じて、県民サービスの向上と行政事務の効率化を図っていく必要があります。あわせて、地方交付税制度など国の動向に大きく左右される本県の財政構造を踏まえ、国に対して一般財源総額の確保に関し積極的な政策提言を行うなど、安定的な財政運営に向けた不断の取り組みが必要であるものと考えております。
続いて、県政運営の現状に関し、まず、経済の活性化についてご説明申し上げます。
(1)産業振興計画について
平成21年4月に産業振興計画の取り組みをスタートさせて以来、人口減少による県経済の縮みという本県が抱える積年の課題を克服するため、官民協働、市町村政との連携協調により、全力で挑戦を続けてまいりました。
この約10年半の間、PDCAサイクルによる検証を徹底しつつ、地産外商を戦略の柱として、ボトルネックを解消し、牽引役を育て、経済の好循環を創出する一連の取り組みを、多くの県民の皆様にご協力を賜りながら進めてきたところであります。
産業振興計画においては、「自らが持てる強みを生かす」「弱みをも強みに転じる」という基本的な考え方の下、本県の誇る第一次産業を核として、そこから派生する食品産業、ものづくり産業、観光産業といった産業群の振興を図るとともに、自然災害を通じて得たノウハウを生かした防災関連産業の振興や、第一次産業の現場などからのニーズ抽出を通じた課題解決型の産業創出に重点的に取り組んでまいりました。さらに近年は、IT・コンテンツ関連産業の集積などにも取り組み、地場産業の高度化にも努めているところです。
また、こうした施策を特に中山間地域で展開するよう努めるとともに、あわせて、県内全域により力強く経済効果を波及させるため、クラスター化や県内外のネットワークづくりにも取り組んでまいりました。
この間の取り組みを振り返りますと、平成21年度からの第1期計画では、地域アクションプランなどの事業の立ち上げに尽力するとともに、事業者の皆様の外商活動をサポートするため地産外商公社を設立するなど、様々な仕組みを整え、具体的な取り組みをスタートいたしました。
続く平成24年度からの第2期計画では、「外商」の拡大の流れをさらに大きなものとするため、県内外のネットワークづくりに努めるとともに、次世代型こうち新施設園芸システムをはじめとする各産業分野の核となる事業の展開を開始するなど、「地産」の強化により重点的に取り組み、また、それらを支える人材の育成や移住促進の取り組みを抜本強化いたしました。
さらに、拡大してきた地産外商の成果を「拡大再生産」の好循環につなげていくためには、民間の活力を生かして新たな成長の種となる事業を創っていくことが重要となることから、平成28年度からの第3期計画では、継続的に新たな付加価値の創造を促す仕組みを各産業分野において意図的に構築するとともに、起業や新事業展開を促す取り組みを抜本強化したところであります。あわせて、地域により大きな波及効果をもたらすための地域産業クラスターの形成や、各般の取り組みの土台となる事業戦略の策定と実行の支援を重点的に進めてまいりました。
こうしたこれまでの取り組みを通じて、各分野の地産外商は飛躍的に拡大し、生産年齢人口の減少と連動する形で減少傾向にあった各種生産額は明確に増加傾向をたどるようになってまいりました。その結果、本県のGDPは、平成13年度から平成20年度までは名目で13.7パーセント、実質で7.3パーセントのマイナス成長であったのに対し、平成20年度から直近の平成28年度までは名目で6.3パーセント、実質で3.8パーセントのプラス成長に転じております。さらに、一人当たり県民所得についても、平成20年度と平成28年度を比較すると、全国の8.4パーセント増に対し、本県は16.3パーセント増と、全国を大きく上回る伸びを見せているところです。
こうしたことから、本県経済は、人口減少に伴って縮む経済から、人口減少下にあってもむしろ拡大する経済へと構造を転じつつあるものと捉えております。
しかしながら、一人当たり県民所得の絶対水準は全国の83.3パーセントに留まっておりますし、人手不足や後継者不足は一層深刻化しております。また、本県人口の社会減については、以前の全国的な景気回復期と比べ2分の1程度に改善してきているとはいえ、平成20年度以降、年平均で1,950人程度の減となっております。
今後も人口減少が続く中、本県経済の拡大基調を先々にわたり維持し続ける必要があり、そのためにも産業振興計画における地産外商の取り組みをさらに発展させていく必要があります。その際には、時々の経済状況やデジタル化の進展といった大きな時代の流れを的確に捉え、本県が時代の最先端を歩むことができるよう創造性を大いに発揮させながら、一連の施策を絶えず進化させていくことが重要であると考えております。
(2)各産業分野の取り組み
続いて、各産業分野の取り組みについてご説明申し上げます。
ア 農業分野
まず、農業分野では、「地域で暮らし稼げる農業」の実現を目指し、産地の強化と国内外への外商拡大によって農家の所得向上を図り、さらに生産を支える担い手の確保、育成につなげるという好循環の構築に向けて様々な施策を展開してまいりました。
具体的には、オランダから学んだ環境制御などの先進技術を本県の実情に合わせて改良した「次世代型こうち新施設園芸システム」を、県内各地に普及させるよう取り組んできたところであります。
また、集落営農の組織化や中山間農業複合経営拠点の整備など、中山間地域の農業を支える仕組みを構築するとともに、流通販売面では、流通規模に応じた販路開拓や販売体制の強化に努めてまいりました。
さらに、担い手の確保に向けて、産地自らが就農希望者を募集する、いわゆる産地提案型の取り組みを進めるとともに、平成26年度に設置した農業担い手育成センターのカリキュラムの充実などにも努めてまいりました。
こうした取り組みにより、農業者の高齢化などによって販売農家戸数や耕地面積が減少する状況下においても、本県の農業産出額等は平成20年の1,026億円から、直近の平成29年には17.1パーセント増の1,201億円にまで増加しております。また、次世代型ハウスの整備は昨年度末までに209棟、46ヘクタールまで広がり、主要野菜7品目における環境制御技術の導入率は約50パーセントに上っているところです。
しかしながら、今後も厳しい産地間競争に打ち勝っていくためには、さらなる生産力の強化や「外商」の拡大のほか、生産現場や集出荷場における労働力不足への対応なども必要不可欠であります。
こうした課題を踏まえ、まずは産地をさらに強化するため、現在、延べ140人を超える研究者や45社の企業の皆様に参画いただき、13の研究テーマ群とこれらに横断的に関わる3つの研究課題からなる「Next次世代型こうち新施設園芸システム」の開発プロジェクトに取り組んでいるところです。今後、このプロジェクトをさらに加速させ、本県施設園芸農業の飛躍的な発展を図るとともに、一連の取り組みを通じて開発されたシステムや機器を国内外への地産外商につなげることにより、県内に施設園芸農業関連産業群を創出していくことを目指してまいります。
さらに、農産物の輸出拡大の取り組みを本格化させるほか、労働力確保対策の強化、ロボットなどを活用したスマート農業の本格展開なども推進していく必要があるものと考えております。
イ 林業分野
林業分野では、「山で若者が働く、全国有数の国産材産地」の形成を目指して、豊富な森の資源を余すことなく活用すべく、川上から川中、川下にわたる総合的な施策を展開してまいりました。
具体的には、施業地の集約化や高性能林業機械の導入など生産性の向上に努めるとともに、四国では最大級の製材工場をはじめとする木材加工施設の整備や、中小製材工場の経営力強化に向けた事業戦略の策定など、県産材の加工力の強化を推進してまいりました。
あわせて、新たな木材需要の創出を目指して、まず平成25年には全国に先駆けて県内にCLT建築推進協議会を設立し、続いて平成27年には私が共同代表を務める「CLTで地方創生を実現する首長連合」を立ち上げ、全国の自治体や経済団体とも連携して木造建築物の普及促進などに取り組んできたところです。
また、県産材のさらなる販路拡大に向けて、昨年4月にTOSAZAIセンターを設置し、施主となる方々に対して事例紹介や技術面での提案を行うなど、積極的な営業活動にも取り組んでおります。
さらに、担い手の確保に向けて、平成27年度に設立した林業学校を昨年度からは林業大学校とし、初代校長に世界的建築家の隈研吾先生をお迎えして、日本の林業をリードする人材を育成しているところであります。
これら一連の取り組みを進めてきた結果、昨年の原木生産量は、平成20年に比べ54.5パーセント増となる64万6千立方メートルにまで拡大しており、中山間地域における雇用の促進と所得の向上につながっているものと受け止めております。
しかしながら、本年度の目標とする原木生産量78万立方メートルには未だ達しておらず、今後、原木増産対策をさらに強化するとともに、あわせて、将来の森林資源の確保に向けて再造林を一層進めていく必要もあります。
加えて、市場ニーズに応じた付加価値の高い製材品の供給体制を強化するとともに、経済同友会や全国知事会の国産木材活用プロジェクトチームなどとも連携し、国産木材のさらなる活用に向けた機運の醸成に官民挙げて取り組むなど、全国的な木材需要の拡大を一層進めていく必要があるものと考えております。
ウ 水産業分野
水産業分野では、「若者が住んで稼げる元気な漁村」の実現に向けて、これまで、地産外商の拡大を図るとともに、担い手の確保対策や水産業クラスターの形成に取り組んでまいりました。
まず、「地産」の強化に関しては、黒潮牧場の整備を進め、釣り漁業の操業の効率化を図るとともに、養殖業や定置網漁業への企業誘致などに取り組んでまいりました。あわせて、人工種苗の生産拡大にも取り組み、クロマグロやカンパチなどの量産技術の確立に一定の目処を立てることができました。さらに、地域アクションプランなどを通じた産地加工の取り組みは、現在19件にまで拡大してきているところです。
また、「外商」の強化に関しては、少量多品種という本県水産物の特性を生かして販路を拡大するため、平成26年から「高知家の魚応援の店」の取り組みをスタートさせました。現在、登録店舗数は大都市圏を中心に1,000店舗を超え、その取引額は4億円に達する見込みとなっております。
さらに、国内市場が縮小する中、活力ある海外市場へ販路を拡大するため、海外の見本市への出展や、東南アジア市場への販路開拓などにも積極的に取り組んでいるところです。
加えて、担い手の確保に向けて、就業相談から就業後のフォローアップまでを一元的に支援するワンストップ窓口として、高知県漁業就業支援センターを立ち上げ、全国トップクラスの支援態勢を整えました。
こうした一連の取り組みの結果、漁業就業者が減少する中においても、宝石サンゴを除く本県の漁業生産額は、目標とする460億円前後で推移しております。また、水産加工出荷額についても、平成27年以降は目標とする200億円を概ね達成しておりますし、このほど宿毛市において新たな大型水産加工施設が本格稼働したことから、さらに出荷額の増加が見込まれるところです。
他方、今後も漁業就業者の減少が見込まれる中、漁業生産額を維持し、漁業者一人ひとりの暮らしを守っていくためには、引き続き、担い手の確保に努めるとともに、効率的な生産流通体制への転換を図っていくことが不可欠であります。
このため、水産業のIoT化を進める「高知マリンイノベーション」の取り組みを強化するとともに、水産加工施設のさらなる立地やそれを核としたクラスターの形成、定置網漁業や養殖業への企業参入を地元の方々と共に進めるほか、アメリカなど新たな市場への輸出拡大に向けた取り組みも一層拡充していく必要があるものと考えております。
エ 食品分野
食品分野については、平成21年に県外への外商活動のメインエンジンとなる地産外商公社を設立し、翌年には首都圏での外商拠点となるアンテナショップまるごと高知を開設するなど、官民協働の基盤を整えた上で、「地産」と「外商」それぞれの取り組みを総合的に進めてまいりました。
まず、「地産」の強化については、まるごと高知でのテストマーケティングなどを通じて市場ニーズを捉える機会を継続的に提供するとともに、食のプラットホーム事業などにより県内事業者の商品開発を強力に支援してまいりました。その結果、地産外商につながる商品が多数生み出されており、例えば、まるごと高知で年間に扱う商品数は、当初の1,400商品程度から近年は2,500商品程度にまで増加しております。
また、「外商」の強化について、国内においては、地産外商公社の活動範囲を全国に広げ、量販店や飲食店などへの営業活動や展示商談会への出展といった様々な外商活動を展開してまいりました。その結果、公社が主催する展示商談会などに参加する県内事業者数は、平成22年度の34社から、昨年度は190社にまで拡大するとともに、公社の支援による「外商」の成約金額も、平成23年度の3億4千万円から、昨年度は42億4千万円にまで増加してきたところです。
さらに、海外への輸出に関しては、海外支援拠点を設置し、パリやロンドンといった世界的な情報発信地でのプロモーション活動なども展開してきた結果、輸出に取り組む県内事業者数は、平成21年度の8社から、昨年度は100社にまで拡大するとともに、昨年の食料品の輸出額は14億5千万円となり、平成21年の28.5倍にまで伸びてきたところです。
こうした一連の取り組みにより、平成29年の本県の食料品製造業出荷額等は、平成20年より19.8パーセント増の1,089億円となっており、今や、食品分野は本県の地産外商を牽引する産業へと成長してきたものと考えております。
しかしながら、全国的に地産外商の取り組みが活発になる中、他県との競争に打ち勝っていくためには、より一層付加価値の高い商品の開発や、国内外での販路開拓をさらに力強く支援していくことが必要となってまいります。
このため、今後は、食品加工技術の高度化や県版HACCP認証制度のバージョンアップを図り、海外も視野に入れた商品づくりを促進するほか、県内の地域商社による外商活動を一層後押しするなど国内でのさらなる販路拡大を図るとともに、日本貿易振興機構とも連携して輸出拡大に向けた支援態勢を一層強化していく必要があるものと考えております。
オ 商工業分野
商工業分野においては、企業の製品開発や生産性向上などの「地産」の強化と併せ、販路開拓への支援といった「外商」の強化を図るとともに、これらの土台となる事業戦略の策定、実行支援や産業人材の育成確保などの取り組みを推進してまいりました。また、地域の商工業の振興を図るため、商工会や商工会議所などと連携して、商店街の活性化や事業者の経営計画の策定、実行を支援する取り組みを進めてきたところであります。経営計画の策定件数は、これまでに1,800件を超えております。
このうち、ものづくりの振興については、ものづくり地産地消・外商センターを中心に、県内企業における事業戦略づくりから高付加価値な製品開発、設備投資による生産性の向上、県外さらには海外までの販路開拓を一貫して支援してきたところであります。この結果、事業戦略を策定した事業者数は本年度中に200社に達する見込みであり、また、センターが外商活動をサポートした事業者数は昨年度は220社に上り、その成約額は66億8千万円と、取り組みを開始した平成24年度の約27倍にまで増加しております。
また、多くの自然災害に見舞われてきた本県の弱みを強みに転じる取り組みとして振興を図ってきた防災関連産業については、これまでに147件の製品や技術が防災関連産業交流会において認定され、これらの売上額は平成24年度に6千万円であったものが昨年度は68億4千万円となるなど、新たな産業群として着実に成長しております。
こうした取り組みの成果も相まって、本県の製造品出荷額等は、大企業の生産拠点再編に伴う大幅な減少があった電子部品を除くと、平成20年に5,057億円であったものが、平成29年には5,560億円となり、9年間で9.9パーセント増加しているところです。
しかしながら、海外市場が不透明感を増し、また、人手不足が深刻化するなど、企業を取り巻く環境が変化する中、本県のものづくりをさらに飛躍させるためには、企業の付加価値の高い製品づくりや新たな販路開拓の取り組みなどを絶え間なく後押ししていくことが重要であると考えております。
このため、企業ごとの課題に対応した事業戦略の策定と実行を各種施策を通じてより強力に支援するとともに、商社とも連携して外商エリアのさらなる拡大を目指していく必要があるものと考えております。
カ 観光分野
観光分野では、本県の豊かな自然や食、歴史など、魅力ある観光資源の強みを生かして、幅広い産業の振興と地域の活性化につながるよう様々な取り組みを進めてまいりました。
具体的には、NHK大河ドラマ「龍馬伝」の放送効果を最大限生かすことを狙いとした平成22年の「土佐・龍馬であい博」を皮切りに、翌年の「志国高知 龍馬ふるさと博」、「リョーマの休日キャンペーン」、大政奉還や明治維新から150年を迎えることを契機とした「志国高知 幕末維新博」などを相次いで開催するとともに、「楽しまんと!はた博」をはじめとする地域博覧会など、地域の主体的な観光振興の取り組みを支援してまいりました。これらの博覧会やキャンペーンの過程において、市町村や事業者の皆様と緊密に連携しながら、数多くの観光商品を「つくる」、その観光商品を県外に向けて「売る」、本県を訪れる観光客の皆様に満足いただけるよう「もてなす」、さらに、これらの活動を支える観光人材を育成する、といった一連の施策群を展開してきたところであります。
本県における県外観光客入込数は、長らく300万人台で推移しておりましたが、こうした一連の取り組みにより、平成22年には435万人を記録し、その後も平成25年以降6年連続で400万人台で推移しており、昨年は441万人と過去最高を更新しました。また、観光総消費額についても、平成20年には777億円であったものが、平成25年以降6年連続で1,100億円前後で推移しており、観光は本県経済を支える産業へと大きく飛躍してきたものと捉えております。
こうした中、国際観光に関しては、近年、クルーズ客船の寄港の増加に伴い外国人観光客の入込数が増えるとともに、外国人延べ宿泊者数も昨年は過去最高の約7万9千人泊と、平成23年当時の4.8倍にまで伸びてきているところではありますが、ここ数年、その伸びは足踏み状態となっております。
このため、来年のオリンピック・パラリンピック東京大会を追い風とすべく、海外の重点市場に設置したセールス拠点を中心として、団体や個人向けの旅行商品のさらなる造成や積極的なプロモーション活動などに取り組んでいるところです。さらに今後は、本年6月に協定を締結した中国最大のオンライン旅行会社「シートリップ」と連携するなど、オンラインを通じて本県の認知度向上に努めるとともに、よさこいを活用したプロモーションの取り組みも一層進めてまいりたいと考えております。
引き続き、令和7年の目標である県外観光客入込数470万人以上と観光総消費額1,410億円以上の達成を目指し、市町村や事業者の皆様との連携を強化して、魅力ある観光商品の造成を進めるとともに、国内外へのセールスやプロモーション活動を効果的に展開することにより、本県へのさらなる誘客拡大を図っていく必要があるものと考えております。
(自然&体験キャンペーン)
なお、本年2月からスタートしております「リョーマの休日~自然&体験キャンペーン~」については、これまで体験プログラムなどの磨き上げを進めてきた結果、現在580件のプログラムが特設ウェブサイトに登録されており、開設当初の1.7倍にまで増えております。
また、本年2月から8月までの県内66の観光施設の利用者数は、約194万人と、過去最高の県外観光客入込数を記録した昨年の同期とほぼ同水準となっております。このうち、東部地域の観光施設においては6.5パーセント増となるとともに、西部地域の施設についても8.1パーセント増となるなど、本キャンペーンの目的の一つである中山間地域への誘客も着実に進んでいるところです。
さらに、11月からは、冬場の閑散期においてナイトタイムエコノミーによる集客と消費額の拡大の取り組みを定着させることを目指して、昨年度に引き続き「高知 光のフェスタ」を開催し、高知城をはじめ県内各地において光のアートなどを生かした夜間イベントを実施することとしております。
今後もさらなる誘客拡大に向け、国内外の旅行会社やメディアと連携し、切れ目のない取り組みを展開していくことが重要であると考えております。
(3)各分野に横断的に関わる取り組み
ア 移住促進
人口減少が進む中、地域や産業の担い手を確保するとともに、県経済の活性化につなげるため、県外からの移住促進を主要テーマとして掲げ、市町村や民間事業者の方々と連携して、様々な取り組みを進めてまいりました。
具体的には、高知家プロモーションと連動した移住PRをはじめ、移住ポータルサイトなどを活用した積極的な情報発信を行うとともに、移住・交流コンシェルジュの配置や県外での移住相談会の開催、市町村における相談体制の充実などに努めてまいりました。さらに、平成29年度には、こうした一連の取り組みを「オール高知」の体制でより連携を強化して進めていくため、県内全ての市町村と関係団体の参画の下、移住促進・人材確保センターを設立したところです。
こうした取り組みの結果、本県への移住者数は、平成23年度の120組241人から、昨年度は934組1,325人と大幅に増加しており、本年度も、先月末時点で前年同期比8.3パーセント増の485組686人と、年間目標1,000組に向けて堅調に推移しております。
しかしながら、移住者の呼び込みに向けて、地域間の競争は年々激しさを増しており、目標である年間1,000組の定常化、さらには、それを上回る移住の実現を図るためには、一連の移住促進策をさらにバージョンアップする必要があると考えております。
このため、新たな移住潜在層の掘り起こしに向けて、各産業分野で「関係人口」の創出、拡大を図っていくとともに、ターゲット別の戦略的なアプローチを強化して、移住潜在層を段階的に本県への移住へとつなげていく取り組みを加速していく必要があるものと考えております。
イ 産業人材の育成と起業・新事業展開の促進
また、本県産業の持続的な成長を支える重要な取り組みとして、人材育成に積極的に取り組むとともに、起業や新事業展開の促進にも注力してまいりました。
まず、産業人材の育成については、平成22年度に「目指せ!弥太郎 商人塾」を、平成24年度からは「土佐まるごとビジネスアカデミー」を開講し、ビジネスの基礎から実践までを体系的に学べる各種プログラムを展開しており、これまでに延べ2万人を超える方々にご参加いただいております。
また、平成27年度に開設した産学官民連携センター「ココプラ」では、これらの各種プログラムを展開するとともに、県内大学の技術シーズを紹介する講座を開催するなど、産学官民の連携によるイノベーション創出のきっかけづくりに取り組んでまいりました。
さらに、継続的に新たな挑戦が行われる環境をつくることが重要であることから、平成29年度からは起業の総合支援プログラムである「こうちスタートアップパーク」を開始し、事業の準備段階からプラン磨き上げまでの一貫サポートを行っており、先月末現在で延べ747人の方々にご参加いただくとともに、起業サロンの会員数も392人となり着実に増加してきております。
これらの取り組みなどを通じて、起業や事業化に至った件数は123件、新商品の開発件数は804件に上っているところです。
今後は、こうした一連の取り組みのさらなるバージョンアップに努めることはもとより、Next次世代型こうち新施設園芸システムの開発プロジェクトのような、当該分野の課題解決を図るとともに新事業を次々と生み出すプラットフォームを、各分野ごとに構築することを検討してまいります。このプラットフォームに県内外の大学や企業が持つ知見や高度な技術などを呼び込むことにより、地方発のイノベーションを高知から多数生み出していくことを目指してまいりたいと考えております。
ウ 高知版Society5.0の実現
現在、世界的にIoTやAIなどの最先端のデジタル技術の革新が社会や経済のあらゆる分野に変革をもたらしており、本県においても、こうした時代の変化に先駆けて、デジタル技術を通じて様々な分野の課題解決を図るとともに、新たな産業創出や地場産業の高度化を進めていく必要があります。このため、次の3点を柱とした取り組みを全力で実行しているところです。
1点目は、IT・コンテンツ関連産業の集積に向けた取り組みであります。これまで企業誘致や人材育成などの取り組みを一体的に進めてきた結果、累計の立地企業数が20社となり、新規雇用者数も280人を超えております。また、IT・コンテンツアカデミーの受講者が延べ6千人を超えるなど、人材育成についても順調に進んでおります。こうした人材育成の取り組みが本県ならではの強みとなって、企業立地がさらに加速してきており、現在、新たに4社との間で立地に向けた協議を進めているところです。
2点目は、課題解決型の産業創出プロジェクトの取り組みであります。このうち、まず「ニーズ抽出発のプロジェクト創出」については、第一次産業をはじめ、医療や福祉、防災などのあらゆる分野において、最先端の技術を活用して課題解決を図るとともに、開発された製品やシステムなどの地産外商を促進する「高知デジタルフロンティアプロジェクト」に取り組んでおり、現在、150を超えるニーズを抽出、公開して、企業との意見交換などを行っているところです。また、技術シーズなどを有する企業からの提案を受け、本県を実証フィールドとしてプロジェクトを展開する「シーズ提案発のプロジェクト創出」の取り組みを本年度からスタートしており、現在、いわゆる5Gを活用した実証実験の実施など、企業からいただいた提案の具体化に向けて協議を進めているところです。
3点目は、県内企業のデジタル化を推進し、生産性向上や新たなサービスの創出などを進める取り組みであります。本年4月にデジタル化総合相談窓口を設置し、現在、企業からの相談に対して、アドバイザーの派遣やIT企業とのマッチングを行うといった支援に取り組んでおります。
今後も、こうした一連の取り組みを総合的に推進することにより、IT・コンテンツ関連産業の集積が課題解決型の産業創出を促進し、これが呼び水となって関連産業の集積がさらに進むという好循環の創出を図っていくことが重要であると考えております。
次に、日本一の健康長寿県づくりについてご説明申し上げます。
(1)日本一の健康長寿県構想の推進
私が知事に就任した当時、県民の皆様の健康面に関しては、壮年期男性の死亡率が全国より1.3倍も高いなどという深刻な課題がありました。
また、全国に先行して人口減少と高齢化が進む中、特に、県土のほとんどを占める中山間において、地域の支え合いの力が弱体化していることや医師不足などへの対応が求められてまいりました。
さらに、社会の様々な構造変化や経済的な要因などを背景に、県内の一定数の子どもたちが虐待や非行、いじめといった困難で大変厳しい環境に置かれているといった課題への対応も求められてきたところです。
このため、県民の皆様がそれぞれ住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる県づくりを目指して、平成22年2月に日本一の健康長寿県構想を策定し、以後、毎年バージョンアップを図りながら、各課題の解決に向けて全力で取り組んでまいりました。
これまでの取り組みを要約いたしますと、大きく次の3つとなります。
第一は、県民の皆様の健康を維持し、特に壮年期男性の死亡率の改善を図ること、第二は、地域地域において医療や福祉のサービス資源を確保し、あわせてそれらを連携させることにより、日常生活から入退院、在宅までの切れ目のない支援体制を確立する高知版地域包括ケアシステムをつくり上げること、第三は、厳しい環境にある家庭をリスクに応じて適切に支援するとともに、個々のニーズに応じて子育て支援サービスを提供する高知版ネウボラを構築することであり、これらの取り組みを推進することにより、日本一の健康長寿県の実現を目指してきたところであります。
以下、この3点についてこれまでの取り組みをご説明申し上げます。
(健康維持と壮年期男性の死亡率の改善)
まず第一に、県民の皆様の健康維持、特に壮年期男性の死亡率の改善について、これまで疾病のリスク要因を持つ層に対するハイリスクアプローチと、子どもたちを含む若い世代や無関心層など、県民全体を対象とするポピュレーションアプローチの双方から取り組んでまいりました。
ハイリスクアプローチとしては、全市町村を巻き込んだ糖尿病など血管病の重症化予防対策を進め、ポピュレーションアプローチとしては、疾病やリスク要因の早期発見、早期対処を目指して、がん検診や特定健診の受診率向上などに取り組んでまいりました。
平成28年度から取り組んでおります糖尿病の重症化予防対策については、徹底した受診勧奨を行った結果、約700人の方々を適切な治療へとつなぐことができました。また、40歳代、50歳代の肺がん検診や乳がん検診の受診率は目標としていた50パーセントを上回り、その他のがん検診の受診率も大幅に伸びております。さらに、全国と比較して低調だった特定健診の受診率についても、全国を上回る伸びを見せており、今では全国平均と比較して遜色のない水準になってまいりました。加えて、平成28年度からスタートした高知家健康パスポートの取得者が当初の目標を大幅に超える4万人に達する見通しとなるなど、県民の皆様の健康意識は着実に高まりつつあるものと感じております。
こうした意識の高まりと関係者のご努力により、長年の課題であった男性の壮年期死亡率は、平成21年と平成29年を比較すると7割程度となるまでに改善してまいりましたが、依然として全国より高い水準にあります。このため、引き続き県民の皆様の健康維持と壮年期男性の死亡率改善に向けた取り組みを力強く進めていく必要があるものと考えております。
(高知版地域包括ケアシステムの構築)
第二に、高知版地域包括ケアシステムの構築については、県内の地域地域において、医療、介護、福祉などのサービスが適切に提供され、結果として、県民の皆様が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられることとなるよう、様々な取り組みを進めてまいりました。
まず、医療の分野では、地域で求められる医師の確保に向けて、医師養成奨学金の拡充や高知大学医学部への寄附講座の設置などにより、若手医師の増加を図るとともに、地域でかかりつけ医として患者を適切なサービスにつなげることができる総合診療専門医の養成に努めてまいりました。また、地域地域において患者一人ひとりにふさわしい療養環境を確保することを目指して、地域医療構想に基づき、それぞれの地域における医療提供体制の最適化を図る取り組みを進めているところです。さらに、中山間地域においても急性期の医療がしっかりと受けられるようドクターヘリを導入し、290カ所を超える離着陸場を整備したほか、在宅医療の確保に向け、訪問看護サービスの充実なども図ってまいりました。昨年度の実績を見ますと、ドクターヘリの出動は661件、県独自の支援策による訪問看護サービスの利用は約9,300回に上っております。
また、福祉の分野では、制度サービスの隙間を埋め、子どもから高齢者までの生活を支える地域福祉の拠点であるあったかふれあいセンターの整備を進めてきた結果、現在、サテライトを含めて約290カ所に設置され、県内各地で広く定着してまいりました。あわせて、訪問介護など在宅サービスの充実を図るための支援にも取り組んできたところです。
これらの取り組みにより、各地域で医療、介護、福祉のサービス提供体制が一定整ってまいりましたことから、現在、各地域に地域包括ケア推進監を配置するなどして、それぞれのサービス資源をネットワークでつなぐ取り組みを進めております。各地域において、日常生活における健康づくりや介護予防から、入退院、在宅生活までを切れ目なく支援する体制が構築されるよう、市町村や関係機関の皆様と力を合わせて取り組んでいるところです。
(高知版ネウボラの構築)
第三に、厳しい環境にある子どもたちをサポートする高知版ネウボラの構築に向けて、幼少期の子どもたちに対しては、主に保護者の生活や就労面などへの支援を強化し、学齢を重ねるに従って、子どもたち本人を対象として、放課後の学習の場の充実や、学校と地域とが連携した見守り体制づくりなどに取り組んでまいりました。子どもたちの将来の道が閉ざされることがないよう、貧困など様々な要因による負の世代間連鎖を断ち切るという強い思いで、保健、福祉、教育の連携に意を用い、子どもや家庭が抱える課題の解決に向けて全力で取り組んできたところであります。
この中でも特に、乳幼児健診の受診率の向上など、母子保健の取り組みを充実させることに加えて、母子保健と児童福祉との連携強化に注力してまいりました。具体的には、乳幼児検診など母子保健の取り組みの中で把握されたリスクケースを関係機関に迅速かつ的確につなぐことができる態勢の構築を目指して、市町村の母子保健部門と児童福祉部門、児童相談所、さらに保育所や幼稚園などの連携強化に努めてきたところです。
さらに、とりわけ重大な課題である児童虐待対策について、平成20年の大変痛ましい死亡事案を教訓とし、子どもの安全を第一に、必要があれば躊躇せずに保護することを基本姿勢として、これまで児童相談所の体制の抜本強化などに取り組んでまいりました。あわせて、市町村の要保護児童対策地域協議会の運営を通年できめ細かく支援するなど、市町村における児童虐待への対応力の強化も図ってきたところです。
しかしながら、児童虐待の通告や対応は後を絶たず、依然として一定数の子どもたちが厳しい環境に置かれております。引き続き、こうした子どもや家庭を早期に支援できるよう、高知版ネウボラの取り組みを県内全域に広げ、行政と地域が連携した見守り体制をさらに充実、強化する必要があると考えております。
(2)全国知事会社会保障常任委員会の取り組み
社会保障制度の持続可能性そのものが課題となる中、人々のQOLの向上を図りつつ社会保障に係る負担を軽減し、あわせて社会保障制度を「支える力」を強くする必要があるとの考えの下、全国知事会議では昨年7月「健康立国宣言」を決議いたしました。この宣言に基づき、私が委員長を務める社会保障常任委員会を中心に、全都道府県参加の下、22のワーキングチームにおいて先進事例や優良事例の横展開を図るなど、持続可能な社会保障制度の構築に向けた取り組みを精力的に進めてきております。さらに、本年5月には、「国と地方の意見交換会」を立ち上げ、定期的に政務レベルや実務者同士の意見交換を行うなど、国の政策形成に地方の実情を反映させる仕組みの強化に努めたところであります。
今後も、こうした取り組みを継続することにより、国と地方が互いに方向性を共有しながら、適切な役割分担の下、一体となって持続可能な社会保障制度の構築に取り組んでいく必要があるものと考えております。
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
私が知事に就任した12年前、残念ながら本県の子どもたちの学力は全国最低水準にあり、特に中学生の学力は、例えば数学では全国平均正答率を10ポイント近く下回るという大変厳しい状況にありました。さらに、暴力行為の発生率や不登校の出現率、体力や運動能力についても全国ワーストクラスであるなど、教育行政において解決すべき課題が山積しておりました。
子どもたちの将来のため、「自ら学び、主体的に課題を乗り越えられる知、徳、体の力を育む」という教育を実現したいとの強い思いから、この12年間、教育委員会と連携し、教育改革の取り組みを全力で進めてきたところであります。
具体的には、まず、喫緊の課題である学力の向上に向けて、平成20年に緊急プランを県教育委員会において策定し、単元テストの充実や放課後の学びの場の拡大などの取り組みを進めてまいりました。
続いて、平成24年からは教育振興基本計画重点プランに基づき、学校経営におけるPDCAサイクルの確立や、スクールカウンセラーの配置による教育相談体制の充実などを図ってきたところです。
さらに、平成28年には私も参加する総合教育会議において、子どもたちの知、徳、体のさらなる向上を目指して「教育等の振興に関する施策の大綱」を策定いたしました。この大綱では、大きく5つの取り組みの方向性を掲げております。
まず、第一の方向性である「チーム学校の構築」については、中学校における教科のタテ持ちの導入や、高等学校への訪問指導を行う学校支援チームの設置など授業改善を徹底するための仕組みの構築を図るとともに、いじめや不登校に外部の専門家とも連携してチームで対応する校内支援会の確立などを進めてきたところです。
また、第二の「厳しい環境にある子どもたちへの支援」については、放課後における学習支援を充実するとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の拡大を図るなど、就学前も含めた切れ目のない支援体制の構築に取り組んできたところであります。
このほか、「地域との連携・協働」、「就学前教育の充実」、「生涯学び続ける環境づくり」を図るため、地域学校協働本部の設置や保幼小の円滑な接続に取り組むとともに、昨年7月には全国初となる県市の合築による新図書館等複合施設オーテピアを整備したところです。
これらの一連の取り組みをPDCAサイクルを通じて継続的に発展させてまいりました結果、本年度の全国学力・学習状況調査において、小学生の学力については、例えば算数は全国6位となり、平成19年当時の43位から大きく上昇しております。また、中学生については、国語と数学を合わせた総合順位が全国46位であったものが過去最高の39位となり、全国平均にあと一歩という状況にまで改善してまいりました。
また、小中学生の体力や運動能力についても、現在はほぼ全国水準に達しており、特に中学生男子は平成29年度以降、常に全国平均を上回るなど、着実に改善してきているところです。
しかしながら、不登校については、学校内外における支援体制が整備された結果、高等学校においては全国水準にまで改善してまいりましたものの、小中学校における出現率は依然として高く、さらなる対応が求められる状況となっております。
(次期教育大綱の策定に向けて)
以上のようなこれまでの成果と課題を踏まえ、現在、次期教育大綱の策定に向けて、総合教育会議などにおいて議論を重ねているところです。次期大綱においては、特に次の3つの施策を重点的に強化する必要があると考えております。
まず1点目は、不登校の児童生徒への支援についてであります。未然防止の取り組みとして、兆候の段階から教員間で児童生徒の情報を共有する態勢を強化するとともに、県東部、西部における心の教育センターの相談支援機能を強化して、初期対応を充実させるほか、教室外や学校外においても様々な学習の場を選択肢として確保し、子どもたちの社会的な自立を支援する取り組みを強化していく必要があると考えております。
2点目は、中山間地域における教育の振興についてであります。地域間の教育機会の格差解消に向けて、今月から檮原高等学校など5校において、遠隔教育システムを活用した放課後の進学補習が本格的にスタートしたところであり、来年度からは、中山間地域の10校において単位認定が可能な遠隔授業が実施される予定となっております。
さらに今後は、ICTやAIなどの先端技術の活用によって、生徒一人ひとりの習熟度に応じて最適な学習内容を提供する個別指導も実現可能となると見込まれます。中山間地域のみならず、県内全域において積極的にデジタル技術を活用し、教育内容の一層の充実を図る必要があると考えております。
3点目は、デジタル化社会を担う人材の育成についてであります。本県の子どもたちが将来、Society5.0の担い手として活躍できることとなるよう、プログラミングなどデジタル技術に係る教育内容の充実を図るとともに、高等学校と大学が連携した高度なデジタル分野の学習指導体制の整備などにも取り組む必要があると考えているところです。
次期教育大綱におけるこれらの施策の具体化に向け、総合教育会議においてさらに議論を深めてまいります。
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
私は、東日本大震災の約1カ月後に被災地に赴き、甚大な被害を目の当たりにして、「想定外をも想定」した対策の必要性を痛感いたしました。以来、東日本大震災の教訓や地震・津波想定などを踏まえ、従前の南海地震対策行動計画を抜本的に見直して、平成25年6月に第2期南海トラフ地震対策行動計画を策定し、さらに、平成28年度には第3期行動計画としてバージョンアップさせ、県民の皆様の「命を守る」対策、助かった「命をつなぐ」対策、「生活を立ち上げる」対策に全力で取り組んでまいりました。
このうち、まず、「命を守る」対策については、一刻も早く津波避難空間を整備するために、市町村の財政負担を実質ゼロにする県独自の交付金制度を設けるなどして取り組みを進めてきた結果、計画総数1,445カ所の避難路、避難場所の整備は全て完了し、津波避難タワーも計画総数119基に対して111基完成するなどしてまいりました。また、沿岸地域の19市町村全てで津波避難計画を策定するとともに、市町村や地域住民の皆様と連携し、避難訓練や避難経路の現地点検を実施することにより、計画の実効性の向上にも努めてきたところであります。さらに、住宅の耐震化については、これまでに約9千棟の耐震改修が行われるとともに、公共施設の耐震化も概ね完了しております。
次に、「命をつなぐ」対策については、約21万人分の避難スペースを確保し、避難所運営マニュアルの作成や資機材の整備を進めるとともに、県内8カ所に総合防災拠点を設置したほか、道路啓開計画や物資配送計画など応急期に必要な諸計画も策定いたしました。加えて、前方展開型による医療救護体制の確立にも取り組み、地域ごとの行動計画の策定を完了したところです。
さらに、「生活を立ち上げる」対策については、災害公営住宅の整備指針を策定したほか、事業者のBCP策定を支援するための様々な取り組みを進めており、また各産業分野におけるBCP策定にも着手したところです。
こうした本県における取り組みに加えて、国家的な課題として南海トラフ地震対策に取り組む必要性を訴えていくため、「南海トラフ地震による超広域災害への備えを強力に進める10県知事会議」を立ち上げ、全国知事会とも連携しながら、国などへの政策提言も行ってまいりました。こうした活動も推進力となって、南海トラフ地震対策特別措置法の制定をはじめ、緊急防災・減災事業債の二度にわたる期間延長、浦戸湾の三重防護や土佐湾から日向灘における地震津波観測網の事業化などにつなげることができたものと考えております。
以上のような様々な取り組みの結果、最大クラスの地震と津波が発生した場合の想定死者数は、平成25年5月時点の約4万2千人から、本年3月時点で約1万1千人へと約74パーセント減少しております。
本年4月からの第4期行動計画においては、これまでの行動計画を土台として、より難易度の高い課題にも正面から立ち向かうとともに、対策の時間軸をこれまで以上に長く捉え、復旧期までを視野に入れた取り組みを具体化していくこととしております。
特に、過去の大規模災害で多くの方々が犠牲となった要配慮者への支援対策を強化することとし、迅速な避難のための個別計画の策定支援や福祉避難所確保の取り組みなどを進めているところです。
また、南海トラフ地震臨時情報を生かして一人でも多くの県民の皆様の命を守るため、空振りを恐れず具体的な対応をとる、との基本方針の下で対策を進めております。
引き続き、第4期行動計画に基づき、「命を守る」対策のさらなる徹底を図るとともに、これまで掘り下げてきた「命をつなぐ」対策をより幅広く展開し、あわせて「生活を立ち上げる」対策を具体化していくことにより、想定死者数を限りなくゼロに近づけ、また早期の復旧復興が可能となるよう全力を挙げて取り組んでいくことが重要であると考えております。
次に、インフラの充実と有効活用についてご説明申し上げます。
インフラの整備が全国水準から大きく立ち遅れている本県では、整備水準を少しでも引き上げることが県勢浮揚を成し遂げるために不可欠であることから、国などに対して積極的に政策提言を行いながら、地域の実情を踏まえた基盤整備に全力で取り組んでまいりました。
(四国8の字ネットワーク等の整備)
中でも、四国8の字ネットワークは、南海トラフ地震など大規模災害が発生した際に県民の生命を守る「命の道」であるとともに、地域の経済活動を支える最も重要なインフラであることから、他県の知事と連携し、また、平成27年6月からは全国高速道路建設協議会の会長として、早期のミッシングリンク解消を強く訴えてきたところです。
こうした取り組みなども経て、県内における供用延長は、平成19年度末時点の86キロメートルから、本年度末には152キロメートルとなる予定であり、この12年間で大きく延伸してまいりました。さらに、8カ所67キロメートルが事業化されており、これらを合わせた総延長は計画延長の8割を超えております。現在、各区間において順次調査や工事が行われており、四国8の字ネットワークの完成に向け、一歩一歩着実に前進しているところです。
引き続き、県管理道路の整備にも積極的に取り組み、中山間をはじめとする県内各地域の道路ネットワークの整備を着実に進めることが重要であると考えております。
(浦戸湾の三重防護等の整備)
南海トラフ地震発生時において、人口が集中し社会基盤が集積している県中央部の被害を最小化するためには、浦戸湾などの津波対策が急務であります。このため、浦戸湾の三重防護対策の事業化に向けて、国に政策提言を重ねてまいりました結果、平成28年度に国の新規事業として採択されました。第一ラインである高知新港の防波堤や、第二、第三ラインである浦戸湾の海岸堤防などの一日も早い完成に向けて、国、県、高知市が密に連携し、スピード感を持って整備を進めているところです。
あわせて、南国市から土佐市にわたる高知海岸などでは、平成23年度から国と県が連携し、海岸堤防の耐震補強工事が迅速に進められております。
こうした取り組みのほか、高知新港のメインバースの供用開始により、大型客船の寄港回数が大幅に増加したことや、長年の懸案であった早明浦ダム再生事業が新規事業化したことなど、県内各地で着実に整備が進められておりますが、本県のインフラ整備は他県と比べてまだまだ立ち遅れている状況にあります。引き続き、全国知事会や他県ともしっかりと連携し、あらゆる機会を通じて、インフラ整備の必要性を強く訴えていく必要があるものと考えております。
次に、中山間対策についてご説明申し上げます。
県土の約93パーセントを占める中山間地域は、農業や林業といった第一次産業はもとより、豊かな食や文化、観光資源など、本県ならではの強みを有する地域であり、本県の中長期的な発展の源となる地域でもあります。
しかしながら、中山間地域においては、多くの皆様が住み慣れた地域で暮らし続けたいという思いを持たれている一方で、人口減少に伴い地域が衰退し、さらに若者が流出するという負のスパイラルに直面してきました。
このため、「中山間地域の振興なくして県勢浮揚はなし得ない」との強い思いの下、平成24年度から中山間対策を抜本強化し、「生活を守る」取り組みに加え、「産業をつくる」取り組みを政策の柱として位置付け、県政の各分野において施策の展開を図ってまいりました。
まず、「産業をつくる」取り組みでは、第一層として基幹となる産業を育成する産業成長戦略、第二層として各地域で地域資源を生かして地産外商に取り組む地域アクションプラン、さらに第三層として、第一層、第二層の取り組みが届きにくい中山間地域の小規模な集落を対象とした集落活動センターの取り組み、という三層構造の政策群を相互に連携させることにより、地域の隅々にまで経済効果をもたらすネットワークづくりを進めてまいりました。
特に、中山間対策の核となる集落活動センターについては、平成24年度のスタートから7年半の間に県内各地で着実に広がりを見せており、先月末までに30市町村54カ所で立ち上がり、さらに30カ所程度で開設に向けた準備が進んでいるところです。それぞれの集落活動センターにおいて、日用品の販売や配食サービスなど住民の日常生活に欠かせない取り組みが行われており、さらには、産業振興計画の取り組みなどと連動した経済活動を展開するセンターも増加してきております。今や集落活動センターは中山間地域における暮らしや経済活動を支える拠点として、あったかふれあいセンターと共に重要な役割を担うようになっております。
次に、「生活を守る」取り組みでは、人々の暮らしを守る様々な生活支援の取り組みを推進してきた結果、水道未普及地域における生活用水供給施設の整備率が74.1パーセントまで上昇したほか、32市町村において移動手段の確保対策が実施されるなどしてまいりました。
また、鳥獣被害対策については、集落ぐるみで防除対策と捕獲対策を進めてきた結果、昨年度の農林水産業被害額は1億4千万円と、ピーク時の平成24年度より約6割減少するなどの効果が表れてきているところです。
県内の人口動態を見ますと、高知市、南国市及び香南市を除く中山間の31市町村では、平成20年度から平成28年度までの8年間に生産年齢人口が18.1パーセント減少し、依然として厳しい状況が続いておりますものの、これらの市町村の名目GDPはこの間5.8パーセントのプラス成長となり、拡大基調に転じるなど、明るい兆しも見えてきております。
今後も、中山間地域が持つ豊かな資源を生かして、地産外商につながる事業を育て、域外からの移住も含め担い手を育む取り組みを各分野で展開し続けていくことが重要であります。住み慣れた地域で暮らし続けたいとの県民の皆様の思いに応えていくためにも、中山間の潜在力を生かした各般の取り組みを力強く推進していく必要があるものと考えております。
(1)少子化対策の充実強化
少子化は、我が国の社会経済の根幹を揺るがしかねない国家的な課題でありますことから、私は、全国知事会次世代育成支援対策プロジェクトチームのリーダーとして、国などに対し、少子化対策を国策の中心に据え、国と地方が総力を挙げて取り組むよう強く訴えてまいりました。
また、本県においても、官民協働で出会い・結婚、妊娠・出産、子育てといったライフステージの各段階に応じた総合的な対策に取り組んできたところです。
まず、出会い・結婚については、地域で出会いのサポートを行う婚活サポーターや、こうち出会いサポートセンターの取り組みなどを通じて、支援を希望する方々に対する出会いの機会を創出してきたところであり、これまでに236組の成婚報告につながっております。
また、妊娠・出産、子育てについては、先ほど申し上げました高知版ネウボラの取り組みなど、妊娠期から子育て期までの切れ目のない総合的な支援態勢の充実に努めているところです。
さらに、少子化対策をより大きな効果につなげるため、高知県少子化対策推進県民会議を設置し、官民協働による県民運動として取り組みを進めております。例えば、働きながら子育てしやすい環境づくりに向けた「育児休暇・育児休業の取得促進宣言」には466の企業や団体の皆様に賛同いただいたところであり、年々、仕事と子育ての両立を応援する機運が高まりつつあると感じております。
この間、本県の合計特殊出生率は、平成21年の1.29を底に回復基調にあり、そこからの伸び率は全国を大幅に上回っておりますものの、昨年の合計特殊出生率は1.48となり、平成29年の1.56を下回る残念な結果となりました。このため、今回の結果に至った要因をより詳細に分析し、出生率の力強い回復に向けて、県民の皆様の出会い・結婚、妊娠・出産、子育ての希望が叶えられるよう、ライフステージの各段階に応じた対策をさらに強化していく必要があるものと考えております。
(2)女性の活躍の場の拡大
女性の活躍の場の拡大に向けては、結婚や出産、育児など様々なライフステージを迎える女性が希望に応じて働き続けられるよう、子育てや就労を社会全体で支援する仕組みづくりに取り組んでまいりました。
例えば、地域の支え合いによる子育て支援の仕組みであるファミリー・サポート・センターについては、平成28年度から国の補助基準に満たない少人数での立ち上げを県独自に支援してきた結果、現在7市3町に広がってきております。引き続き、市町村と連携しながら、センターの県内全域への普及と事業の拡充に取り組む必要があると考えております。
また、女性の就労を支援する取り組みについては、平成26年度に開設した高知家の女性しごと応援室において、これまでに約2,100人の方々から相談をお受けし、700人を超える方が就職されるなどの成果が表れてまいりました。今後も相談者一人ひとりに寄り添ったきめ細かな就労支援を行うとともに、働きやすい職場づくりへの支援などに取り組んでいく必要があるものと考えております。
(1)文化芸術の振興
文化芸術の振興については、県民の皆様が文化芸術に親しむことのできる環境づくりをはじめ、歴史文化の継承と発展、さらに、文化芸術を観光振興や産業振興につなげるための取り組みを進めてまいりました。
具体的には、平成29年3月に新たに高知県文化芸術振興ビジョンを策定し、高知県文化財団の体制を強化して、文化芸術活動への支援や文化芸術の振興を担う人材の育成などに取り組んでまいりました。これにより、延べ80の団体や個人の皆様の文化芸術活動を発表する機会を創出するとともに、昨年度からは文化芸術を観光振興や産業振興に生かすための講座を開催し、延べ278人の方々にご参加いただいたところです。
また、「志国高知 幕末維新博」の開催を契機として、高知城歴史博物館や坂本龍馬記念館新館などの整備を行い、貴重な資料の収蔵や展示、調査研究に係る環境を大幅に充実させ、本県の歴史文化の底上げも図ってまいりました。
あわせて、令和3年に高知県が設置されてから150年を迎えることを契機として、新たな県史の編さんに着手することとしており、有識者からなる基本方針策定準備検討委員会を立ち上げたところです。この新たな県史の編さん過程を通して、歴史や民俗、自然などの各分野に関する資料の発掘や保存、研究を一層進め、その成果を広く県民に発信するとともに、県民共通の財産として後世に残し、本県の歴史文化などのさらなる振興につなげてまいりたいと考えております。
(2)スポーツの振興
スポーツの振興については、近年、国民体育大会における県の総合成績が下位に低迷していることや、県民の皆様に運動習慣が十分に根付いていないといった課題の抜本的な解決を図るとともに、スポーツの振興を地域や経済の活性化にもつなげていくことを目指して、高知県スポーツ振興県民会議を立ち上げ、産学官民の連携の下、各種施策を進めてまいりました。現在、昨年3月に策定した第2期スポーツ推進計画に基づき、3つの柱とこれらに横断的に関わる施策について、PDCAサイクルを徹底しながら取り組んでいるところです。
まず、一つ目の柱である「スポーツ参加の拡大」に関しては、持続可能な地域スポーツ活動の推進に向けて、これまでに6市町で地域スポーツハブの取り組みが始まり、それぞれの地域で多様なスポーツ機会の創出に向けた活動が広がってきております。
次に、二つ目の柱である「競技力の向上」に関しては、現在レスリングやソフトボールなど12の競技において全高知チームを立ち上げ、強化練習や県外遠征、指導者を対象にした実践研修を計画的に進めているところです。また、高知県スポーツ科学センターを本年4月に開設し、スポーツ医科学面からのサポートなどにも取り組んでおります。
三つ目の柱である「スポーツを通じた活力ある県づくり」に関しては、プロやアマチュアスポーツの合宿誘致などのほか、スポーツツーリズムの推進に取り組んでおり、特に、平成25年に始まった高知龍馬マラソンは、今や国内外から約1万2千人にご参加いただくなど、国内のみならず海外からも認知される大会に育ってまいりました。
さらに、これら3つの柱に横断的に関わる施策である「オリンピック・パラリンピック等を契機としたスポーツの振興」については、シンガポールをはじめとする各国ナショナルチームの県内での事前合宿などが本格化してきており、今月にはラグビーワールドカップ2019に出場するトンガ代表チームの事前キャンプも行われました。
今後も関係団体の皆様と連携して、地域におけるスポーツ活動の活性化やさらなる競技力の向上に努めるとともに、スポーツツーリズムを通じた交流人口の拡大を図るなど、スポーツ推進計画に掲げた目標の達成に向けて着実に取り組んでいく必要があるものと考えております。
11 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和元年度高知県一般会計補正予算などの2件です。
このうち一般会計補正予算は、先ほど申し上げました経済の活性化などの経費として、85億2千万円余りの歳入歳出予算の補正などを計上しております。
条例議案は、高知県民生委員定数条例の一部を改正する条例議案など9件です。
その他の議案は、県有財産の取得に関する議案など5件です。
報告議案は、平成30年度高知県一般会計歳入歳出決算など23件であります。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。
12 挨拶
これまでご説明申し上げましたとおり、私は知事就任以来、県勢浮揚を目指して、全力で取り組みを進めてまいりました。長年にわたる懸案課題にも真正面から取り組み、例えば、県中央地域における公共交通機関の再編、高知競馬の経営再建、県土地開発公社の保有地に係る債務処理、香南工業用水道の本格稼働、さらには新たな管理型産業廃棄物最終処分場の整備などといった様々な懸案の解決に道筋をつけるべく努力を重ねてまいりました。これらに取り組んだ厳しかった日々に想いをいたすとき、本当に多くの方々からお力添えを賜ったことがまざまざと思い出されます。この場をお借りして、改めて深く感謝申し上げます。
今般、私は、より一層地方を重視する国政の実現に向けて、新たな挑戦を行うことを決意いたしました。高知県の知事としての経験を踏まえて、これからの我が国の在り方を思いますとき、今こそ、地方の力を生かす国づくりが求められていると確信いたします。東京などの都市の力に加えて、本県など地方の潜在力を生かし切ってこそ、我が国の持続的な発展は可能となり、そのことによって、地方の暮らしを守ることも可能となります。
地方の実情を国の政策立案過程に反映させることが一層求められておりますし、さらには、本県のような多くの課題を抱える地方自らの努力を強力に後押しする国を挙げた取り組みが、これまで以上に求められているものと考えます。
こうした国づくりに向けて、これまで12年間に私が培ってきた政治や行政経験を生かして、微力ながらお役に立ってまいりたいとの思いを強くしているところです。
今議会が私にとりまして最後の定例会となります。これまでの3期12年間、県政運営に対しご指導、ご鞭撻、ご協力を賜りました県民の皆様、県議会の皆様、県庁職員の皆様をはじめ、多くの方々に改めて心から感謝を申し上げます。
12月6日までの残る期間、県勢浮揚に向けた歩みを止めることなく、知事としての職務に精励する所存であります。引き続きご指導を賜りますよう心からお願い申し上げます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
この12年間、誠にありがとうございました。