第4回「対話と実行座談会」(園芸農業の産地力強化)を開催します

公開日 2013年03月06日

更新日 2014年03月31日

平成24年度 第4回「対話と実行座談会」

日時:平成24年12月1日 18時30分から20時30分まで
場所:「龍馬伝」 幕末志士社中
出席者:本県園芸農業の産地力強化に取り組まれている方々6名

座談会要旨

1 開会
2 知事の県政方針の話
  (1)「対話と実行」について
  (2)第2期産業振興計画について
3 参加者意見発表および意見交換
  (1)Aさん意見発表および意見交換
  (2)Bさん意見発表および意見交換
  (3)Cさん意見発表および意見交換
  (4)Dさん意見発表および意見交換
  (5)Eさん意見発表および意見交換
  (6)Fさん意見発表および意見交換
4 県民の方からの「ご意見」紹介
5 閉会(知事あいさつ)

配布資料
・「第2期高知県産業振興計画PR版」 [PDFファイル/32.5MB]
・産業成長戦略(農業分野)の概要 [PDFファイル/1.2MB]


1 開会
(司会)
 第4回「対話と実行座談会」を開催いたします。
 この「対話と実行座談会」は、知事が県民の皆さま方から直接、地域の実情や課題をお聞かせいただき、県政に反映させていくことを目的に、平成20年度から実施をしております。
 本年度は、県の進めている政策の中から4つのテーマを設定し、座談会を開催させていただくこととしており、本日はその第4回目ということで、本年度最後の座談会となっております。
 参加者の皆さまにおかれましては、お忙しい中、貴重なお時間にお集まりいただき、まことにありがとうございました。
 さて、本日の会のテーマは「園芸農業の産地力強化」であります。本県が全国的に見て比較的優位にある農業でも、農業従事者は平成17年から平成22年までの5年間で約6千人減少しており、農業担い手の高齢化や確保が課題となっております。
 第1期の産業振興計画では、新たな担い手の確保・育成対策に力を入れて取り組んできた結果、新規就農者は平成20年度は114名だったのに対して、平成23年度は234名、平成24年度は221名を確保することができました。しかしながら、全体として農業従事者が減少傾向で推移していることに変わりはなく、これからもこの傾向が続くことが予測されます。
そこで、本県農業および地産外商戦略の要である園芸農業をこれからも維持発展させていくために、家族経営から脱却し、雇用を主体とした大規模経営を行っている皆さまの思いをお話しいただき、中核となる担い手をどう確保・育成していくべきかについて意見交換をさせていただきたいと思います。

 このあと、参加者の紹介をし、会の進め方についての説明が行われました

2 知事の県政方針の話

(1)「対話と実行」について
(知事)
 本日は土曜日の夕方という大変おくつろぎの時間帯、また、ご多忙の時間帯にこの「対話と実行座談会」にご参加をいただきまして、本当にありがとうございます。「対話と実行座談会」は、1期目の4年間で県内各地65回開催させていただきました。それぞれの地域でいろんな課題についてお話をさせていただきながら、産業振興計画等に反映させていただいてきたところです。
 今年度は、「対話と実行行脚」といって、1市町村を1日かけて回らせていただいています。土佐清水市や須崎市、佐川町にもお伺いし、現在(平成24年12月1日)10市町村にお伺いさせていただきました。
 今日は園芸農業について、非常に活発な取組をされている皆さま方にご参加をいただき、「園芸農業の産地力強化」をテーマに会を開催させていただきます。この時期に我々が盛んにやっているのは何か、いわゆる予算編成期のスタート地点に現在当たっております。今日、園芸農業の産地の強化ということで、それぞれ知識がある皆さまからいろいろと教えていただき、新しい産業振興計画の改定や新年度の予算に活かさせていただきたいと思っています。
 何と言いましても園芸農業は、本県にとりまして外貨を稼ぐことのできる基幹産業です。この産業の振興に向けて、どういうことをしていくべきなのか、是非お知恵を賜りたいと思いますので、よろしくお願いします。

(2)第2期産業振興計画について
(知事)
 第2期産業振興計画について簡単にお話をさせていただきます。また、詳しい点について意見交換をさせていただきたいと思います。
 こちらのパンフレットをご覧いただいて、少しお話をさせていただきたいと思います。3ページをご覧ください。真ん中にありますように、産業成長戦略として農業、林業、水産業、商工業、観光があります。さらには分野を超えた連携課題。これらが全部で331施策ありますが、この産業振興計画の中に盛り込んでおります。例えば地産外商を進めるために、地産外商公社を設けて売り込みをはかる。そして首都圏の拠点として「まるごと高知」を設定して売り込みを図りましょうということです。これが例えば地産外商にかかる産業成長戦略の1施策ということになります。こういう形で331施策を実施しています。
 例えば「観光」については、パビリオンを設けて、情報発信館でいろいろ情報発信をしましょう。「龍馬パスポート」などを設けてやっていきましょう。こういうものも観光系の1施策ということになるわけです。
 併せて、各地域の資源を活かして、それを地産外商にもつなげられるような取組にしていこう、そういう地域アクションプランの取組も進めています。
 23ページをご覧いただくと、その具体例が載っております。例えば高糖度のトマトの産地の確立を図ろう。それを加工して売っていこう。うるめをブランド化して売っていこうじゃないかとか。観光面では、例えば室戸ジオパークをやっていこう。さらには海洋堂ホビー館で観光客の誘客を図ろうなどそういう取組も入っています。
 33ページをご覧いただいたほうがもっとわかりやすいかもしれません。例えば米粉の取組や34ページ上にあるようなアンテナショップ「満天の星」の取組。36ページ、室戸ジオパーク。さらには佐川の地乳の取組や、四万十町でのクラインガルテンの取組などをしているところです。
 この一連の施策の中で、共通した考え方というものがあります。これは5ページをご覧ください。この5ページの下に産業振興計画の基本的な考え方が載っています。左にあるように、高知県は経済的に非常に根本的な課題をいくつか抱えていると思っています。
 実際に上のグラフを見ていただいたほうがいいかもしれません。有効求人倍率とか日銀が出している業況判断DIなどの推移のグラフです。このグラフほど高知県経済の問題点を物語っているグラフはないと思います。平成12年から21年ぐらいまで見ていただきますと、「全国はいざなぎ景気超えか」と言われるぐらいの好景気を過ごして、例えば有効求人倍率も1を超えるぐらいまで回復していました。でも高知県を見ていただくと、ほとんど変わらない水準でずっと低迷しています。右側の業況判断DI、全体として企業が景気についてどう思うかという指標ですが、こちらを見ていただきましても2001年ぐらいから2008年ぐらいまで、全国がどんなに良くなっても高知県はずっと低位で安定したままという状況でした。
 なぜこういうことになるのか、これは単に景気が良いとか悪いとか、もっと言えば景気が良くても高知県は低迷していたわけですから、景気が良い悪いを超えた根本的な課題があるのではないか。その根本的な課題に正面からぶつかっていって、解決をしようとしています。単なる景気浮揚策ではありません。むしろ体質強化を図っていく、そういう政策が産業振興計画ということになります。
 左下を見ていただきますと、4つの課題と書いています。何といいましても人口減少です。「人口が減るなら、呼んでくればいいじゃないか」と言われますが、そんな簡単なことではなく、高齢者世帯が30代、40代ぐらいの世帯に比べ、倍ぐらいの人口がおります。「人口の自然減状態」に陥って、高知県は既に22年経っています。
 足元の人口が減る。故に、県内市場がどんどん小さくなっていく。これに対してどうしていくのか。右側にあるように足元を固め、活力ある県外市場に打って出る。即ち、地産地消を徹底して、さらに地産外商を進めていこうと考えているわけです。
 例えば地産外商公社を設置し、「まるごと高知」を設置して県外への売り込みを盛んにはかろうとしています。
 農業分野でも、例えばパートナー量販店の方々にご協力いただき、県外での棚を設けさせていただき、売り込み活動をはかろうと取り組んでいます。
 県外へ打って出て行くためには、どうしても極度の競争に勝ち抜いていかなければいけません。そのためにも産業間の連携をはかり、付加価値を上げていくことが必要ですが、残念ながら左にありますように産業間の連携も非常に弱いのが高知県であります。
 例えば食品加工の分野は、「加工して売る」ということを統計的に最もやってこなかった県だとも言われています。農業算出額を分母にとって、分子に食品加工額をとってこの比率を見ると、全国第46番目でした。同じぐらいの規模の農業産出額の県と比べても、圧倒的に加工している量というのは少ない。その分、非常に高度な品質を持っているものを売り、外貨を稼いできているわけです。品質をさらに上げて、付加価値を上げていく。そのためにもいろいろ産業間の連携があってはどうか。さらには加工して売っていくなら、産業間の連携をもう一段強化できないか。こういう形での産業間の連携を強化する施策を一連のものとして、食品加工の振興であるとか、さらにはものづくりの地産地消センターを設けて推進をさせていただく取組などを続けているところです。
 ただもう一段、今日のテーマにも大いに関わりますが、第1次産業は非常に強味、ある意味、相対的に強みのある、いわゆる比較優位のあると思われるものです。外貨が稼げる貴重な産業です。しかし、この第1次産業については、担い手が非常に減ってしまっていて、このままでは強みが強みでなくなってしまうのではないかということに危機感を抱いております。就農者の確保のための取組や様々な技術の向上による付加価値の向上などに取組を進めようと努力をしております。
 もう1つ、実は資本や産業集積が乏しいという問題もあります。高知県は県外の人が100の設備投資をするとしたら、46ぐらいしか設備投資をしていません。9ページにグラフがあるので見ていただきたいのですが、工業品、こちらは産出額全国47番です。歴史的に太平洋ベルト地帯構造から完全に外れてしまったということもあるでしょう。ただ、人口減少が始まって22年以上経っています。そういう状況の中で新たな設備投資意欲が湧かない、そういうこともあり一番上の表にありますように、1事業所当たりの設備投資額全国を100として高知県は46という状況になっています。人も減っています。機械の投資も少なくなっています。こういうことで県内市場がますます縮んでいくという状況になっています。この負のスパイラルを何とか逆回転させないといけません。
 こういうことで、例えばこのものづくりについても、今日(平成24年12月1日)やっておりました「ものづくり総合技術展」。全部で1万5千人以上がこの3日間で来場されたのですが、県内のものづくりをもう一段強くする取組をやろうとしています。
 食品加工の分野でも、実際加工するのは県外という事例がたくさん起きています。そうではなく、できるだけ県内事業者さん同士で出合っていただきたい。それで「ものづくり地産地消センター」で常時相談に応じさせていただき、県内の生産者の方と加工者の皆さんがマッチングするような仕事をしようとしたり、さらに防災関連産業、特に南海トラフ巨大地震と併せて防災関連の産業の振興をはかっていくことができないだろうか、さらには設備投資支援の取組など全体としてのものづくりの強化を図りたいと思っています。
 後にも出てくる話ですが、さらに全体に関わることとして、産業人材、育成のための取組を進めようとしているところです。
 そういう中、1、2ページをご覧をいただきますと、全てについて数値目標と10年後の成功イメージを掲げてこの第2期産業振興計画を進めていきたいと考えています。
 農業の分野は、下にありますように現状930億円の農業産出額を4年後には1,000億円以上、10年後には1,050億円以上を目指していけないか。先ほど申し上げたような課題に対応していくためには、産地の力を強め、連携して付加価値を上げる仕事をして、さらには販売促進の仕事をしていく必要があります。いわば、川に例えれば川上から川中、川下まで一連の取組を進めていくということが重要になってこようかと思います。そういう取組を進めていくことで、4年後には1,000億円以上、10年後には1,050億円以上という数値目標を目指していけないかと思ってます。
 ちょっとしか上げてないようですが、農業従事者が年間1千人ぐらい自然に減少していくという状況の中で、こういうふうに右肩上がりの目標を掲げること自体大変なことです。いろんな技術開発や反収(※1反あたりの収入)を上げていくとか、機械化を進めるということなども含めて考え、何とかこれをしていきたいと思っています。究極の目指す姿は、一番上に大きい字で書いてありますが、地産外商が進み、各地域で若者が誇りと志を持って働ける高知県を目指すということです。
 残念ながら大きな工業団地で全てを解決するということがなかなかできるような地理的位置にも、インフラ状況にもありません。各地域で工業化が進んでいないから故に、逆に残っている資源を活かして、それを自分たちが地産外商につなげられるような生業にし、誇りを持って若い人に従事していただくような、そういう県を目指したいと思っているところです。
 特に農業については、11、12ページに取組について書かせていただいています。先ほど申し上げました農業産出額930億円というのが左側に書いていまして、4年後の目標産業算出額1,000億円。そして10年後の姿として1,050億円というのが一番右端に書いています。こちらにありますように、生産加工・流通・販売、これはPR版のパンフレットですから薄いですが、産業振興計画の冊子は分厚いもので、それぞれここに書いてある生産の部分、加工・流通・販売の取組について、誰がいつどこでどのようにやっていくか、5W1Hとそれぞれ工程をはっきりさせて取組を進めようとしているところです。
 ただ4年後から10年後にかけて、川上から川下までの取組を続けていくのみならず、もう一段ギアを上げていくことが必要ではないかと考えています。それが真ん中にあるこの黄色の部分です。さらなる飛躍へのポイントと書いています。「オランダ並みの生産性を目指す『新施設園芸システム』を県内各地に普及」と書いてありますが、新しい技術開発によって、ここから4年後までの取組をもう一段進め、これを10年後に更に、もう一段飛躍させることができないか、それを4年後以降始動させることができないかと思っています。そのための準備をこれから4年間やって、もうあと3年ということになろうかと思いますが、やっていくことで4年後以降に飛躍をはかりたいと考えています。
 ポンチ絵を1枚お配りさせていただいています。農業分野の産業成長戦略についてよりわかりやすい形でまとめさせていただいたのがこちらです。黄色で書いてあります。本県農産物の高付加価値化が、1ポツ。2ポツが中山間地域の農業・農村を支える仕組みを強化。3ポツが新たな担い手の確保・育成と経営体の強化と書いてあります。
 一番最初の高付加価値化をはかるために、まとまりのある園芸産地総合支援と書いてあります。学び教え合う場の強化であるとか、さらにはレンタルハウス整備事業の充実や集出荷等施設の再編集約をはかる。さらにはIPM技術(総合的・病害虫雑草管理技術)を普及していく。さらには新施設園芸システムの構築をはかっていく。環境保全型農業のトップランナーの地位を確立する取組を進める。3番目にありますように流通販売の支援強化をはかって、先ほど言いましたパートナーシップの強化、さらには新たな販売体制の構築をはかれないか、こういう取組をしていきたいと考えているところです。
 中山間対策、これも重要です。5番目に書いてあります集落営農の取組。特に「こうち型集落営農」の取組に力を入れたいと思っています。さらには6番目の6次産業化の取組をもう一段進めるようにしています。何と言いましても3ポツにあるような、新たな担い手の確保が必要です。1と2がうまくまわってこそ新たな担い手が確保できるということでしょうけれども、1と2の取組を行っていくと同時に、3にあるような新たな担い手の確保の取組、こちらも進めさせていただいております。
 今日、参加いただいた皆さん、以上のことはもうお詳しい皆さんであるかと思いますが、今後さらにこういう施策をより使い勝手の良いものに、より実効性があるものにしていきたいと思っておりまして、今日いろいろとお知恵を賜りまして、さらなる改善につなげさせていただきたいと思っています。
 これらの施策については、予想以上にうまくいったものもあります。残念ながら、こうやればうまくいくかと思ったけれども、うまくいかなかったといったものもあります。今後に是非改善を続けていきたい、毎年、産業振興計画は改定しておりますので、よろしくお願いします。

3 参加者意見発表および意見交換

(1)Aさん意見発表および意見交換
(参加者A)
 以前サラリーマンをしていまして、就農9年目になります。現在の課題は、法人化に向けた人材育成、後継者の育成を一番の問題点としています。また、施設ピーマンは冬春作中心になりますので、9月、10月、11月辺りに資金繰りが非常に厳しくなります。周年で収益が出るような作型、もしくは養液栽培の方にシフトすることも模索中です。
 次に地域全体での後継者の育成についてですが、成功事例をたくさん見せると後継者は出来ると信じています。また、地域の人にこだわらずIターンの受け入れを考えていくことが必要だと思います。そのために未だにネックになっているのは、農地の利用集積であり住宅等の受け入れの問題です。その辺りの環境整備をしていただければ非常に助かります。
 次に高知県の農業のあり方についてです。栽培や経営技術を数値化して経営に活かすこと。農業を始めて最初に一番困ったのが、数値化されているものが何もなくて、教えられることが「木をみてみろ」とか、そういったことが非常に多かったので、何か数値化できないものだろうかと思って数字をずっとおさえていっています。その中で環境的な問題、あと日々の管理といったもの、労働時間や雇用がどのくらいかかっているかなどを全て数値化していくことがやはり自分にとっては大事かなと思います。
 また、サラリーマンをしていましたので、日々これしろと言われてきたことが大体出来ていると思います。そこを活かしていくことが自分の経営の特徴になるかなと思っています。
 あとは、大規模経営に取り組む経営者集団を目指すということですが、目指すようなことではないのですが、経営規模が大きくなると、いろんな話が地域と合いにくくなってきますので、そういったところを含めてみんなで切磋琢磨しながら全体的な面積の底上げを地域でやっていければいいなと思っています。また、農業を始めてからずっと、3年後にこれをする、5年後にそれをする、10年後にこれをするという目標を立ててやってきたのですが、PDCAと言いますか、この辺りがあまり計画的に出来ていないような気もするので、自分も含めてしっかりここを考え直していくことが大事かなと思います。
 あと、横断的な販売先や流通、生産情報、技術等の情報の共有化が必要だと思います。農業をし始めた時は、ピーマンとは決めていませんでした。正直、果樹もやりました。花もやりました。多少かじりながらやってきた中で、当然マーケット等に行くわけですが、ここの市場は花があるけど、ここには野菜がないとか、いろんなことがあると思うので、もう少し売り先というのは考える余地があるのではないかと思います。
 また、生産技術の共有化についてですが、これは個人が費用対効果を考えて設備投資をして、それをリターンとして自分の知識、情報等にしていくわけですから、共有化というのが難しいかもしれませんが、大局的な面も必要ではないかなと思います。
 最後に、課題解決のため今後農業に希望することですが、消費者にどのように売られているか、生産者には見えていない部分もあるので、もう少し消費者をしっかりつかんでいくことが大事かなと思います。経営もしんどい、売り先もしんどい、環境もしんどい時代になってきましたので、経営の軸をぶらさないためにも川下を見ていたら間違いないと思っているので、そこをこれからもやっていきたいと思っています。

(知事)
 どうもありがとうございます。僕は農業大学校の学生に最近言っているのは、自分自身農業をしたことがないので、偉そうなことは言ってはいけないのですが、「農業は格好いいので、格好いい農業を是非やってもらいたい」ということです。面白いものだし、是非参加してもらいたいという話をするのですが、楽しい農業というとAさんのイメージだとどのような感じですか。

(参加者A)
 農業振興センターの方にいつ見ても楽しそうな顔をしているとよく言われます。農業を始めた時というのは、「これを投資すればこんなになるだろう」と予想してやっていたのですが、それがほとんど外れていました。就農5年目ぐらいからですが、それが当たるようになってきたので楽しいです。それに伴って、いろんな人と協力しながら人を増やし、栽培面積を増やして、そこで十分手が回り出したらまた人を増やしてという循環に持っていけたらと思っています。

(知事)
 確かに農業は個人経営ですし、それに自分で仮説を立てて、実際投資してみて結果がどうだったか。良い時も悪い時もあるのでしょうが、良い時なんかは本当に楽しいのでしょうね。

(参加者A)
 そうですね。

(知事)
 若い人にもっと参加してもらいたいとした時、先ほどのお話の中にあったと思いますが、1つはもっと数値化すべきということです。そうじゃないと若い人に教えられないということ。また、「生産技術についてももっと情報の共有化が出来ないだろうか」というお話がありましたが、県の方でも農業技術センターで数値化への取組を進めているのですが、より細かいところをした方がいいという感じでしょうか。

(参加者A)
そうですね。先ほど知事が説明された冊子にも載っていたように、平成22年に自分もオランダに視察に行かせていただき、その際に勉強させていただいた中にもあったのですが、オランダでは自分の企業体を誇りに思っており、また、オランダでは、経営というものを、大きく、より良く見せるような経営をしていて、そういうところに非常に感銘を受けました。そういうのを見るといろんな人が参加すれば経営も大きくなるのではないかなと思います。また、環境制御といった問題になってくると、大きな投資額になると思うのですが、その辺りも農業技術センターのお世話になって、是非安価なものができればいいなと思います。

(知事)
 是非、「こういうところを数値化した方かいいのではないか」などのご意見をお願いします。こちらは当たり前だと思って数値化していないものも、実はそうじゃないとか。もしくは、なかなか数値化するに至ってないということがあったりするかもしれませんので、是非教えていただければと思います。
 また、消費者にどのように売られているか生産者には見えていないというお話がありました。もっと川下から見て、消費者にどう受け止められているかというのが、もっと生産者にフィードバックされるようにすべきという話。そういうような販促をしてはどうかということですよね。
 今、県では、パートナー量販店での取組をしていますが、こういうのは不断の改善ですから。もっと改善していきたいと思いますが、さっき言われた川下から見るようにしているというお話、「もっとこういうふうなことをしてはどうか」みたいなアドバイスはあるのですか。

(参加者A)
 そうですね。消費者にとってわからない表示などが非常に多いと思うんです。今現在、例えばピーマンでいえば、通常の慣行栽培、エコシステム栽培、それから特別栽培。いろいろあると思います。そういったものが消費者にどれだけ届いていて、どういうものがあって、これを望んでいた人がどれだけいるのかということが生産者にはわかりづらいと思います。そこがモチベーションに影響すると思うので、消費者の声が届きやすい状態にしていただければと思います。

(知事)
 どういうことが特別なのかというのがわかりにくいということですか。

(参加者A)
 そうですね。あと、生産者がそこに関わることによって「楽しい農業」になると思います。金融機関で10年ほど勤めて、それから農業をすることになったのですが、1年間農業をするかどうか悩みました。農業をするかどうかで最後の決め手になったのは、「みんなが幸せになれる仕事だ」ということでした。例えば、花をもらったり、きれいなものをもらったりしたら嬉しいですよね。それを高い値段で買って、買うのを当たり前だとみんな思っています。流通の販売者、生産者、買う人、みんなが満足できる数少ない仕事だと思っていますので、今はこの仕事を誇りに思ってやっています。

(知事)
 なるほどですね。販売促進の関係は、今言われたように、どう特別なのかをもっとわかりやすく消費者の皆さん目線でやるべきであるだろうし、改善をしないといけないと思います。マンネリ化があるかもしれないし、販売先も、もっと工夫をするような売り方をしていきたいと思います。
 特別のものを特別のものとして、別の形で売っていけるような仕組みの構築に向けて、関係機関の皆さんが努力を重ねているんですよね。もう一段そういう構築が出来ないか、また、そういうものを後押しするためのイベント、「まるごと高知」のPRもそうですが、さきほど申したパートナー量販店での販促活動などに参加していただくことや、加えて言うと、昨年度横浜の赤レンガ倉庫でハウスを建てて販促をしたら都会の人に大変受けたそうです。そういう面白いやり方をしたりしながら注目も引くように努力していきたいと思います。

(2)Bさん意見発表および意見交換
(参加者B)
 香南市で農業をしています。現在の課題は栽培面積がまだ少ないということです。安定収入のため単価を決めて、契約販売をしていますがその割合が年間で40%くらいです。それをもう少し多くするためには、年間を通じて販売していけるようにする必要があります。多い時には沢山あるのですが、少ない時もあり、出荷量が安定していません。安定的に供給するためには、栽培面積にもう少し余裕がないと、これを伸ばすことができない状態です。他の作物についても同じだと思います。安定的に収入を得るためには、ある程度の販売量が必要です。また契約取引も量がなければそこで終わってしまう。
 雇用の問題点については、うちの場合、外国の実習生が現在6名おります。この人たちは3年たてば母国へ帰ります。3年したら、ある程度自分で考えて段取りができるようになる。少し段取りができるようになったと思ったら帰国してしまう。これには法的な問題があるので仕方がないのですが、この人たちがもっと長期にいられたら、いろいろ覚えて教える立場になるのになと思います。また、現在、常時雇用が5名と実習生6名とパート数名ですが、法人となると社会保険の関係があり、経費面でつらいところもあります。
 後継者については、娘がおり、将来的には継ぐ意思もあるようですが、一人では出来ないので従業員も一体となって経営や栽培を分担してできるようになればいいと思っています。また、その中で自分が就農したい、独立したいとなれば、またその人はうちでやったことを活用して、先に伸びていってもらえれば農業も発展していくし、「あそこでこんなことを学んだ」と次の人を紹介してくれる、そのような関係になっていったらいいなと思います。
 「楽しみを見つけなさい、作ったものがキレイに出来たら嬉しいよ」と言っています。でも、その子その子で自分の楽しみ、「農業をしてこうしたらこうなったと」いう成果を見る楽しみを見つけて欲しいということは常に言っています。
 農業のあり方というのは、うちの地域では水と基盤整備が問題です。水があって基盤整備されているところには、ほとんどハウスが建っています。中山間に行くと水がないのです。農業をするには水がいる。狭い田畑に施設を建てればコスト高になる。そうなると経営が困難になるのではないかと思います。それで、何とか県の方にもご協力いただき、基盤整備の手助けをお願いしたい。
 それと南海地震。うちの地域では、今ある施設は津波でほとんど浸かってしまいます。これにずっと不安を感じております。
 また、農業振興センターの職員、農協の関係など担当の方が替わりますよね。それはいろんなことを考えて、みんながいろんなことが出来るようにということなのでしょうが、市町村の役場もそうですが、替わればまた1からその方が勉強をして、こちらが相談に行った時にもすぐにわからない。もう少しあとの方を育ててから替わるというような体制になっていただけたらと思います。
 本当に1つの例ですが、自分のところがネギをライン化した時に、この設備投資をして本当に販売が出来るのか、採算が合うのかを悩みました。その時にJAなどが経費の面も計算してくれ、販売についても園芸連に相談をしてくれ、絶対に成功させると言って、自分でできない販売という点をJA、園芸連、担当の方たちによって手助けしてもらい、何とか今の体制を作り経営できるようになっています。
 農業振興センターの方にも、市町村役場の方にも、自分でできないところについて、マッチングできる人、協力を求めて一体となってやっていただけるような体制、指導をしていただきたいです。

(知事)
 どうもありがとうございました。研修生の話は、確かに3年経って技術が身についた頃に帰らないといけない。基本的には日本全国の規則なんですけど、全国的にはできれば日本人の若い人を優先ということに多分なっているのだろうと思うのですが、ただやはり担い手をもっと確保したいという観点からは、その地域の事情においては残ってもらいたいところもあったりするでしょうね。5年くらいだと大分違うんじゃないかという感じですか。

(参加者B)
 そうです。

(知事)
 そうですか。大体3年ぐらいになると、ある程度一人前ですか。まだですか。

(参加者B)
 まだだと思います。やっとわかってきたかなというところだと思います。

(知事)
 なるほど。せめて5年とかそんな感じでしょうかね。それから、基盤整備の話は特におっしゃるとおりで、これが本県の農業にも全体に関わる課題なんですが、中山間になればなるほど条件がよくない土地になってしまうから、基盤整備が必要ということなのでしょう。私も区画整理事業のところによく行かせていただくのですが、確かにビフォーアフターで見ると全然違いますよね。全体としての基盤整備というのは一時、予算が削られた時があったのですが、私は非常に重要ではないかと思っているところです。本当にそれぞれ、地域の事情もあると思いますので、それこそ農業振興センターなどで相談に乗らせていただいて、どういう風にしていくかということを考えていきたいと思います。今のお話で非常に気になるのは、農業振興センターの職員が替わるとまた1からみたいなところがある。ご迷惑をおかけしています。すみません。どうしても人事異動はさせないといけないので、もっとしっかり引継をということですかね。

(参加者B)
 栽培の面においても指導を仰いでいますが、この前までは作物の詳しい担当者がいたのですが替わられました。その後、担当者の方がいません。もっと自分たちが勉強しなくてはいけないのですが、やっぱり次を育ててから替わって欲しい。

(知事)
 「この地域の担当だからというのではなくて」というのがあってもいいのかもしれませんね。自分が職員のことを褒めたらダメなんですが、農業振興センターの普及員は多分全国でもトップクラスの技術と実力を持っていて、農業振興センターに貢献している。「替わったら1からになる」であるだとか。「最近、昔に比べて人の数が減ったので接触できる量が減った」という話は、私も何度か聞いたことがあって、数が減ったことはどうしても財政上、行政改革をしないといけないところがあって、そうなっているのですが、ただ人数が減った分、どう対応すべきかという辺りはもう一段工夫が必要なのかもしれません。
 それから、農業振興センターとJAさんが一緒になっての取組、これをもう少し詳しく教えてもらえませんか。

(参加者B)
 やはりJAさんにしても担当が変わる訳です。金融にしても資金にしても、栽培、営農関係にしても。ある程度技術を身につけてきて、「本当に指導が出来るようになったかな」と農家側が頼って相談に行けるとなった時に部署替え。そういうことが農協離れの1つの原因になるのではないかと思います。私の考えなのですが、「ある程度いい作物を作りたい。」「きれいに作れていったら販売にも強い力になる。」と考えています。それには自分たちも努力し、農家自身も努力し、またいろんな検査とか何とかそういうものは機関に頼らないといけない。もっと農協関係の方にも勉強していただいて、知識を深めてもらって指導してもらいたいと思います。

(知事)
 なるほど、わかりました。ありがとうございました。私も結構いろんなところで言われていますが、どうしても人事異動はしないといけない。その辺りとの兼ね合いなんですが。その上でどうするか。考えておきます。

(3)Cさん意見発表および意見交換
(参加者C)
 私は土佐文旦とショウガ、センリョウと欲張って3つもやっております。何故かというとやはりリスク分散を考えた時に、本当は百姓というのは一本でやるのが一番いいのですが、どうしても不安定なので、このように3品目やっております。
 現在の経営上の問題点ですが、スプリンクラー、モノレール等機械化はしましたが、土佐文旦は、やはりどうしても手作業や選定、人工授粉など人の手が必要です。また、収穫でも急傾斜地で重いものを持って働くということは、足腰の丈夫な人を雇わないといけませんので、その点やはり雇用の問題は大変です。また、ショウガは本当に投機性の高いものなので、私も父の代からずっとやっていますが、やはり乱高下します。過去には、中国産の輸入があった時は、作れば作るほど赤字になることがありました。最近はまたショウガブームで何とか持ち直して、ちょっと景気はいいんですが、これから先またそういう投機ものはどうなるか、ちょっと不安なところがあります。
 後継者については、私のところの地区は文旦、ショウガの複合経営が本当に多いところです。ここ数年はショウガの景気が割とよかったおかげで、Uターンなり新規就農者が結構います。20歳代で、「あなたどこの子?」と聞かないとわからないような若い子が結構いますので、それは頼もしいことですが、やはりどうしても後継者がいなくて辞めていく人は増えていくと思います。そうした時、その子たちに自分たちが何をしなければいけないかというと、剪定など、いろいろな技術をしっかり教え込んでいく。そういうことによって高品質な土佐文旦、ショウガを作り、後々の地域を大きくしていく。そうすれば必然とまた若い子が帰ってくるし、そういうことは自分たちがやっていかなければいけないことだと思います。
 次に高知県のあり方ですが、やはり高知県のイメージをどのように植え付けていくかではないかと思います。当然、土佐文旦なんかは、知事もご承知のとおり全国に行けばまだまだ伸びると思いますので、そういう試食宣伝は絶対にやっていかないといけないと思いますし、県の手助け、例えば知事のトップセールスをやっていただくとか、そういうことを励みにしてまだまだ売っていきたいと思います。また、ショウガ等はどうしても作業上の関係で、JAへ集まる傾向があります。今まで商売人とJAと掛け持ちなんかありましたけど、やはり作業上考えたら必然的に農協の方へ今は集まっているので、施設は構えていく必要があると思います。本当に文旦、ショウガは日本一作っているところですので、これをまだまだ伸ばしていきたいと思います。

(知事)
 ありがとうございました。Cさん、土佐文旦振興対策協議会、本当にお世話になりありがとうございました。土佐文旦の世界は大同団結ですもんね。これで一挙に進めていける体制ができましたね。素晴らしいと思います。

(参加者C)
 高知県中の方、農家が集まってそういう活動が出来るのは、本当にありがたいと思います。

(知事)
 本当に素晴らしいと思います。おっしゃられたように、ショウガは今、「まるごと高知」でもショウガの加工品が売れ筋で、「ショウガが風邪にいい」、「ダイエットにいい」そういうイメージが出来てきていて、実際に我々も「まるごと高知」でも基幹商品としてその加工品を売っていきたいと思っています。その高知県産ショウガというのが特に素晴らしいということを売っていきたいので、「まるごと高知」は実際には地産外商公社が運営していますが、この地産外商公社に販促部隊がいて、そこがテレビコマーシャルなどをしかけたりしています。テレビに売り込みをする部署が重点的に活動をしたら、昨年、「まるごと高知」がショウガのデパートのように結構テレビに取り上げられたりしまして、ものすごく売れました。ショウガの関係は、やはりマスコミが一番食いつきがよかったです。「ショウガは体にいい、風邪にいい、ダイエットにいい、それは高知県」みたいなイメージというのは大事です。やや出来つつあるところだと思いますが、これを徹底してやっていきたいと思っています。
 文旦は、それこそあまり知名度がないので、トップセールスで頑張りますが、大阪に行った時と東京に行った時の販促では全然違いますね。あれは確かにちょっと残念でしたね。大阪で文旦を持っていって販促活動すると、みんなどんどん買ってくれる感じだったし、さらにスーパーで山に置いていても買っていくわけです。ところが同じことを東京でやっても土佐文旦を知らないんですよね。

(参加者C)
 とにかく文旦はお客さんの口に入れること。それさえ出来れば、何とか手を出してくれるのですが。見た目のイメージがグレープフルーツなどの酸っぱい黄色のイメージが植え付けられているので、とにかくお客さんの口へ放り込めば何とかなるんですが、それが大変なんです。

(知事)
 そうですね。東京の某大手スーパーでこっちに文旦、こっちに愛媛産の何とかという感じで置かれていて、ちょっと離れたところから見ていたのですが、消費者の皆さんは基本的にその愛媛の商品を知っているから、愛媛の方から取っていきます。けれども、食べると確かにファンになってくれますよね。これから文旦も高知県の基幹になってくれるであろうものですから、さっき言ったパートナー量販店さんとか、そういうところで常設で棚を設けさせていただいたりしている。ものすごく人口の多いところでやっています。それから、テレビのコマーシャルなども含めて頑張っていきます。将来本当に楽しみなものですからね。頑張ります。

(参加者C)
 私どもも販促を延べ12、3回程度やっています。

(知事)
 行かれていますよね。頑張りましょう。

(参加者C)
 よろしくお願いします。

(知事)
 さっき言われた20代の若い子が結構いるという話は、本当に頼もしい話で、それでも減ってきているのでしょうけれど、どうしても人口が自然減していくので仕方のないところであるかもしれませんが、ただ、就こうとしてくれた20代の若者は是非大事にしたいし、是非仲間を呼び込んできてもらいたいですね。

(参加者C)
 その若い人たちなんかは、結局、「本当に百姓っていいね、お金もとれるね」と思ったら、どんどん後輩の子を育てることにつながると思います。いつも言っているのですが、「本当に良かったと思ったら後輩に教えなさい」と。そういう風にして技術伝承していかないと面白くないですよね。

(知事)
 そうか。若い人が後輩を教える。

(参加者C)
 自分が教えることによって、その若い子の売上や、技術が上がったと思ってもらえたら、それをとどめずに、後輩へ継続してもらいたいと思います。

(知事)
 県では、先ほど言われた「後継者同士が仲間意識を持って、まとまりのある園芸産地を目指し、学び教えあう場」を作らせていただいています。それでCさんも先生になって教えていただいていますよね。いわゆる篤農家の方に来ていただいて、我々と一緒に技術を教えて、学び教えあう場を出来るだけ県内に作る。結構地味なようで実効性があるのではないか。高知県のオリジナルの取組ですが、先ほど、Aさんも言われました。技術はそれぞれオリジナルなものなんだろうけど、できればもうちょっと共有できないだろうかと。今、県内で190ヵ所ぐらい。要するに篤農家の方に教えてもらうような勉強会をやってもらい、反収を上げていくという取組。実は反収を上げていく取組は、このあとまたお話しますが、オランダに学んでもう一段やってやろうかという話があるんです。ベースには技術を持った方に教えてもらう。特に若い人に対して教えてもらうという取組をやっていこうとしているんです。先ほど言われた仲間同士での勉強会みたいなものに相通ずるものがあると思うんです。

(参加者C)
 結局、身近な近所のおじさんにだったら聞きやすいとか、そういうところがあるじゃないですか。「地元でこんな会やるから集まらないか」みたいなので広めていったら、本当に地道な仕事と思うんですけど、それが必ず答えが出るはずなんです。長年鍛えた篤農家の技がその子に身に付いた時に、収量が上がるなり、品質が上がった時には、「ああ良かった」といってくれるんですよ。

(知事)
 そこでさっき言われたような、もう一段数値化というかそういうのがあった方がいいとか、そういうのはありますか。

(参加者C)
 数字ですか。反収をどれぐらいとか。

(知事)
 例えばこういう時は、こういう風にやったらいいとかいうところの、こういう風にというのを数字で表すとか。

(参加者C)
 やはり技術的なことが多いので、なかなかそういうマニュアル化は難しい。

(知事)
 難しいところがありますか。

(参加者C)
 気象条件に応じてこうしたらいいとか、そういうものはどれだけ引き出しを持っているかにかかっているので、その辺りをマニュアルというのは難しい。

(知事)
 作物にもよりますかね。確かに、文旦とか難しいかもしれませんね。

(参加者C)
 文旦は特に個々で全然技術が違うので、そこら辺もやはり一定した品質のものが出来れば、強みにもなると思います。

(知事)
ありがとうございました。また、先生をやっていただいているので、よろしくお願いします。

(4)Dさん意見発表および意見交換
(参加者D)
 佐川町から来ました。私は施設ニラ専作です。他の園芸作物もあるんですけど、寒冷、標高が100m近くあり、エネルギーも高騰しているので、地域では、地理的な問題もありまして、ニラ農家が多いのが現状です。
 私もAさんと同じようにUターンといいますか、就農したのですが、帰ってきても別に家も土地もあるわけじゃないし、Iターンに近いような感じで百姓を始めて25年になります。年齢的にも60歳ということでぼちぼちリタイアすることを考えながら、体力が保てるような範囲で今の経営を続けていきたいなというのが現状です。
 今、ニラに関しては、県下的にもそぐり手(※そぐる:稲藁などの下の方の葉などをとること)の問題が非常に大きいものとなっていますが、知事の冒頭の挨拶にありました「ものづくり総合技術展」でもニラのそぐり機、結束機というのもできておりますので、労力的にどうしようもなければそういう方向に行かざるを得ないのかなと思います。しかし、地域の経済といいますか、地域の方々には内職程度なんですけども、結束作業をしていただいて、半分老人の憩いの家みたいなところもあります。我々のところは作業場を作っているので、そこに来ていただいて、お茶構えておいて、「あとは適当にやってよ」という感じの結束作業をしています。作業場に来るのが楽しみということで、そういう意味では少し社会に貢献しているかなというところはあります。
 現在、研修生が県の制度で1名来ておりますが、仕事を教えるという意味でも、今、主力になってやってもらっていますが、それも間もなく終わりますので、今後、雇用もいれないと私と妻の2人の経営なので、面積的にもキツイかと思っております。
 問題というのは、私の方は販売も園芸連系統100%なので、販売なんかはCさんのようなことはありませんが、園芸連に一踏ん張りしてもらいたいなというのがあります。
 それから、後継者の問題ですが、新しい人は普及所や農協などの指導を中心にして部会内の研修をやっていますが、Iターン、Uターンの新規参入者の研修というのは、私ももう2人目を研修で受け入れているところです。現在、制度も非常に充実していまして、この研修制度もしかりですが、レンタルハウス事業、あと農地プランについても、就農してから手厚い助成があります。ただ1つ、あんまり手厚いので新規就農する方が資金的に甘いというのが私の実感です。4年、5年経って自立するまでに借金が大きくなっては困るので、就農出来る資金をある程度確保しておく、やはり1つの企業体なんです。そういう認識を持ってやっていただけるように行政サイドも指導をしていただけたらと思います。やっぱり本当に目に見えないお金は沢山いります。まして、家族がいたら本当に大変ですし、Uターンの方はまだ家があったりして楽なんですが、Iターンの方は大変だと思いますので、そこら辺はしっかりとサポートしていただきたいなと思います。
 それから、高知県の農業のあり方についてなんですが、これは地場産業として非常に重要だし、生活の場としても重要だと思います。私どもの町には虚空蔵山という山があり、高知から須崎市あたりまでは展望できますが、煙突はほとんど見えませんし、あるのは焼却場の煙突ぐらいなもので、働く場もありませんので、大いなる田舎の農業県ということで、特色ある園芸とか、そういう諸々文旦もショウガもそうですけども、そういうものの産地としてやっていくほうがいいんじゃないかなという風には考えております。
 それと企業的な農業と言われますが、基本はやっぱり家族経営の方が数でいうと、ほとんどだと思うんです。ですから、そこら辺りも、もちろん企業的に大規模経営というのは私らも夢を見るところではありますが、現実はそんなに甘くないんですね。ですので、小さい経営体も振興していくような、両者が一体となってやっていけるように農業県として発達していただけたらと思います。
 それから、新規就農や後継者の育成のところでも話しましたが、今からの人は経営をしっかりと勉強して、もちろん簿記など、それこそ経営を数値化するというところができれば、自分の問題点も見えてくるだろうし、ものは作ったけれど、生活が苦しい。何故かというところがなかなか見えていないというのが小さい経営ではほとんどだと思います。そこら辺もしっかりとサポートしていただくようにして欲しい。最初にしっかりとやっていただくようにお願いしたいと思います。
 それから、農家人口が減っているという話なんですが、これは農地が自由になる時代が来たんじゃないかというふうに私は歓迎をしているんです。私どもが就農をした頃には、なかなか農地の確保が難しかったんです。「今はもう作れなくなってきたから作ってよ」というふうな時代になって、非常に可能性としては大きくなっているんじゃないかと思います。それに付随して農地の流動化と農地の情報です。一部はやっておられるようですが、県内どこでも農地の世話をすぐ出来るような形を取っていただければ、新規就農者の人も規模拡大する人も、あの土地が空いているんだったらあそこでやろうかという展望も開けるんじゃないかと思いますので、非常に大事なことだと思います。
 最後になりますが、高知は陸の孤島で、大分道路も整備されてよくなりましたが、せっかく作ったものをどう運ぶかというのが問題になってくると思います。今はトラック輸送がほとんどだと思いますが、それだけでいいのかなとも思います。時代の流れとしてモーダルシフト(※トラックによる貨物輸送を、大量輸送が可能な海運または鉄道に転換すること)の問題もあると思います。フェリーもほとんどなくなりましたし、実際に1本の道がつぶれたらどうするのか、瀬戸大橋がつぶれたらどうするのかという危機管理につながる問題もあるのですが、もうちょっと考えてみてもいいのではないかなと思います。

(知事)
 なるほど。どうもありがとうございました。非常に勉強させていただきました。まず、おっしゃるとおりでトラックに96.6%依存している状況になっているものですから、モーダルシフトの話、本当はもう一段他のモードも持っていた方がいい。そうじゃないとガソリンが高騰したとき困りましたよね。トラックしかないからということで非常に苦労しました。ただ、残念ながらフェリーがなくなったのは、逆に言うと本四が繋がって非常に近くなったこともあります。今後関東などを視野に入れた時、やはり何とか出来ないものかなと思います。我々もせめて航路船でも来てもらえないものかといろいろと誘致を働きかけていますが、なかなか全国的にも厳しいところがあり、上手くいかないところがあります。ただ、今日(平成24年12月1日)、新聞にも載っていましたが、高知新港をもう一段バージョンアップしようということを考えており、高知新港の振興プランを作ろうという話をしています。実は新しくシーバース(※積荷を安全に搬出入するために海上に設置する桟橋)を開く取組をしています。太平洋側に開いて、後背地がある港としては高知新港は結構珍しい。他はもう全部使い切っているみたいなところがあって、そんなメリットも活かせられればと思っています。少し息が長い取組になるかもしれませんが、諦めている訳ではないので。

(参加者D)
 他の産業の荷物もあればいいんですが。

(知事)
 少ないですね。ただ、高知の荷物も結構県外の港に出ているんですよ。まだ完全にバースを活かしきれていないとかいうところもあったりするので、整備が途中で止まっていますが、もう一段踏み出そうとしています。ちょっとそういうことも含めて考えさせていただきたいと思います。
 農地のご紹介の話ですが、実は県全域的にいろいろと耕作放棄地も出てきている中、受託作業など取り組まれる方も増えています。そこで、法人化など進めていくことが農地の有効活用につながっていくという側面があるんですが、できれば新規に就農したいという若い人たちにそういう土地をマッチング出来るようになればと思います。そういうことから農業公社などで農地情報を集積する取組が出来てきたのですが、まだあまり量が多くないのと、先ほどBさんが言われたことなのですが、あまり条件がよくなかったりするんです。「この土地なら若い人にも使ってもらえるのではないか」ということをその土地の方ならご存知だと思うので、ご協力いただき、そういった情報をもう一段集積し、新規就農者を後押しさせていただく仕組みにつなげていけないか。そういう新しい仕組みを考えないといけないと思っています。残念ながら土地を新しい人に紹介する仕組みは、必ずしも上手くいってなくて、土地の情報は集まっても、ちょっと言葉は過ぎるかもしれませんが、使い勝手のよい土地は少ないというところが少しあります。

(参加者D)
 大体、悪い条件のところから誰かに使って欲しいなというのがあるようで。

(知事)
 そうですよね。そこを上手くできないかなと思っています。1つは受託、委託を上手く進めていくこと。もう1つは、本当に新規就農者の方に結び付ける。そのためにもいい土地の情報をマッチングさせるような仕組み、地元の土地の事情に詳しい方にもご協力いただくような仕組みを工夫させていただきたいと思います。

(参加者D)
 以前からよく感じるんですけど、各市町村の農業委員の活用をもう少ししていくべきじゃないかという思いがあります。農地の転用とか何とか、3条、4条、5条だけじゃなくて、やっぱり本来の農業を、地域の農業をどうしていくかというところへ踏み込んで農業委員会が活動すれば、もう少し良くなるのではないかなという気がします。

(知事)
 なるほど。わかりました。ありがとうございます。ご指摘、ちょっと考えさせていただきます。それと一番最初の技術と経営両方という話について、おっしゃるとおりだと思います。今、農業振興センターで経営力強化支援事業というのをやっていて、「技術と経営一体で支援を」という話をさせていただこうとしているようですが、特に若い人、新規就農者に言えるということですね。その経営の側面をもう少し考える必要があるということですね。

(参加者D)
新規就農者だけでなく、やっぱり中堅どころでも今までの、特に親から世襲した後継者の方というのは皆さんがそうというわけではないですが、経営感覚が非常に甘いというか、旧態依然の形の経営の方が多いようにも見受けられます。

(知事)
 法人化すると当然経営のことを考えていくことにはなるんでしょうが、その個人経営の方でも一定経営感覚が当然ながら必要でしょうから、そこら辺りなんでしょうね。

(参加者D)
 そうです。

(知事)
 最後にパンフレットの47ページをご覧いただきたいですが、ここに担い手の育成確保の取組を一覧にさせていただいています。上にカテゴリー分けしていますが、PR相談段階の取組として、例えばクラインガルデンとかいろんな移住促進の関係でのPR活動など、さらに技術習得段階でいけば、東京、大阪で「こうちアグリスクール」で学ぶ取組があり、さらに真ん中の方に書いてありますが、就農予定市町村等で実践研修が入っています。これは学ぶ人に15万円、受け入れ農家に5万円お支払いする仕組みの研修手当です。そのような段階があって、営農準備段階で資金の確保、それからレンタルハウス整備事業というものを使っていただく。そして、今、特に農水省が非常に思い切ってやり始めたものとして、先ほどご指摘がありましたが、「人・農地プラン」です。ここに青年就農給付金経営開始型で年間150万円づつ5年間支援を受けられると非常に手厚い仕組みになっていて、ある意味、国もかなり担い手作りは一生懸命です。このプラン以外のものは、基本的には県の制度としてやっていて、国のお金も使わせてもらっていますが、この「人・農地プラン」に位置づけて年間150万円という国の制度は我々も心強い味方かなと思っていますが、逆にちょっと手厚すぎるんじゃないかということでしょうか。

(参加者D)
 それこそ3年ぐらいで経済的に自立しないと5年間それに頼るようでは経営的に多分ダメだろうと踏んでます。

(知事)
 なるほど。先ほどの経営関係のコンサルタントみたいなこととの組み合せなど上手く考えたほうがいいかもしれませんね。貴重なご示唆ありがとうございました。

(5)Eさん意見発表および意見交換
(参加者E)
 須崎で養液栽培のミョウガを栽培しています。土耕栽培のミョウガに比べて養液栽培の場合は、割と気象条件等の影響を受けやすく収量が不安定で、年により収量が若干違ってきます。20から30%の増減は当たり前の状態がある中で、養液を最初に組んで2年くらいは誰が栽培しても比較的収量が取れます。3年目以降辺りから、収量に増減が出てきだして大体下がってくるのが通常です。ミョウガの収量をより安定させないといけないことから、先ほど知事も言われていたように、オランダ式の炭酸ガスなど環境制御の技術を考えていかないと、この先難しくなっていくかなと考えております。面積的には、今、1ha弱ですが、徐々に増やしてここまで来たのでこれでいいかなと思っていたんですが、先ほどBさんのまだうちは足りないという話を聞いて、これはもうちょっと頑張らないといけないかなと、ここに来て思ったところです。
 地域全体の後継者育成等については、須崎地区では比較的後継者は多いんじゃないかと考えております。特に、60から70a以上の施設の栽培農家にはほとんどいるんじゃないかと思います。しかし、昔は結構クラブ活動があって、技術的なこと、飲み会など、いろいろなことでの技術の継承なりがあったわけですが、最近は若干薄れていっているかなとも考えます。うちの農協では、若い後継者が他の地域に視察に行くような場の提供、「農協がバスを出すから行かないか」というような呼びかけを数年前からしています。こういった後継者が技術を継承していけるような勉強の場、そういうものが欲しいと思います。それがひいては、友達が出来たり、花嫁対策にもなっていくのではないかなと考えます。
 それから、高知県の農業のあり方について、やっぱり高知県の農業はどうしても施設園芸を主体として考えていく必要があると思います。そのためには、施設の場合には台風の多いこの土地では施設の大型化、また重装備が必要。さまざまな作物を夏場に作らないといけないとなると、いろいろな環境制御なども必要かと思います。そして、規模の拡大も必要かというようにも思います。規模の拡大については、高齢化の波によって作業が困難になり、空きハウスが出てきています。これをどういう風に活かすかなというようなことを思います。そして、重油や資材の高騰、生産コストが随分増えています。コスト低減もいろいろ言われていますが、その中でも重油の代替エネルギーのことも考えます。木質バイオマスなどもありますが、それには4t車以上の車が入らないとなかなか出来ないとか、ストック場所がないとの問題があるだろうと思います。効率的な加温設備の検討といいますか、四国電力も電気料を上げるようになるようですが、園芸用のエコキュート(※冷媒にフロンではなく二酸化炭素を使ったヒートポンプ技術)やナチュラルエコ(※重油ではなく、灯油やガス、バイオマス、電気などにより沸かした温水を循環させ、ハウス内を暖める技術)というようなものもよいのではないかと思います。
 あと課題解決への支援ですが、国や県の補助事業、私もいくつか補助事業を使わせてもらいましたが、建て替えや大型の施設ハウスにおいて、人数制限、受益者の下限があり、5人以上や3人以上いないと出来ないなどあるわけですが、そういうものについても県のレンタルであれば、1人でも利用できるように何とか工夫できないかなと思います。また、補助率のアップ、6割7割ではなくていいのですが、いろいろなところと合わせて半分ぐらいまで出ればありがたいと思います。それから、先ほども言いましたが中古ハウスが増えてくると思います。その中で自分のところの近くにはないけど、あのハウスが欲しいという場合もあると思います。そうした場合の移転費用や、品目が違ったら装備も違ってくるので、それに応じた施設の補助のようなものでも受益者が1人でもやれるというようなものがあればすごくいいと思います。
 それから、代替エネルギーのエコキュートやエコキュート+ナチュラルエコというようなものでも、これは大変装備が高額です。また、オランダ式の環境制御を高知県で確立していくことを知事も言われたので、確立を急いでいただき、導入の支援もお願いしたいと思っております。

(知事)
 どうもありがとうございました。Eさんから盛んにお話のありましたオランダの技術導入は、先ほど申し上げましたパンフレットにもはっきり書いてありますように、高知県の農業が飛躍していくために、是非この技術を受け入れていきたい。我々としても重視している施策です。このウェストラント市は市長さんが元々、国の農業大臣だったりして、そういう方がなるような園芸大国です。世界トップクラスの園芸大国オランダでもトップクラスの市なんです。そこと協定を結ばせてもらって、我々はいろいろと技術を学んでこようとしているところです。オランダ交流私も行っていろいろ見てきました。その技術のすごさと、経営体としての立派な会社。しかも最先端の会社です。素晴らしいものだなと思いました。
 今、農業技術センターの方で「こうち新施設園芸システム」ということで、いろいろ技術開発をしています。例えば、高軒高ハウスでの栽培や、また暖房の仕方については、例えばヒートポンプなどを研究したり、さらにCO2の濃度を変えて湿度などいろんなものの調整をして、生産拡大するにはどういうパターンがいいのだろうかという研究を重ねています。これを是非、第2期の産業振興計画の間に完成させて、高知県全域に普及できるようにしていきたいと思うのですが、ただ、できれば完成まで待ってとりかかるのではなく、これは使えるんじゃないかという技術については、随時それぞれに普及できるようにしていけないだろうかと考えています。例えばCO2の濃度を上げていく仕組みについてだと、比較的早く導入できるのではないか。研究して、且つ、出来るだけ早く、随時普及するというようなやり方で、結果として高知県に早くこの「こうち新施設園芸システム」というものが普及していけるようにしたいと思っているところです。
 他の県はそう簡単についてこられないはずですから、高知県として大いに先行して出来るだけ早く普及して、高知の新技術として確立していきたいと思っているところです。
 そういう中でいろいろと効率的な新加温システムの有りようなどそのようなことも含めて、是非やっていけるようにしたいと思います。
 あと、先ほど言われたいろんな補助事業の要件の緩和や、使いやすくするという話はいろんなものがあると思います。レンタルハウス整備事業などは改善していきましたが、今後も検討を加えさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
 中古ハウスの移転費用なども考えています。これがあると劇的に空きハウスが使えるようになってくる。とにかく空いたものをうまく次の人にバトンタッチ出来るようにする仕組みというのを作りたいと思いますので、検討させていただきます。
 また、技術継承のための勉強の場があった方がいいとの話が先ほどから出ていますが、「学び教えあう場」というのはまさにそうだと思います。いろいろ品目を超えた課題、環境制御技術や省エネ。そういうものの勉強会を出来れば、県域に人間関係も広がっていいんじゃないかということを考えたりしています。こちらについてもまたいろいろと考えていきたいと思います。

(6)Fさん意見発表および意見交換
(参加者F)
 土佐清水市のFです。私はナバナ6ha、ラッキョウ8haを栽培しています。ラッキョウは今年度から3名の任意団体でしています。農業14年目です。
 現在の経営上の問題点ですが、後継者はいるのですが、まだ学生です。この先、農業に限らずいろんな勉強をして、他の仕事を経験してから就農して欲しいと考えています。私たち夫婦も農業を始めるまで勤めていました。その働いていた経験がすごく役に立っています。他の仕事についていた事で農業以外の目線ができて良かったです。
 ラッキョウの栽培は、平成23年度に「強い農業づくり競争力強化生産総合対策事業」を活用して、3名の任意団体「しらすげ」で共同で洗い機から袋詰めまでの機械を導入しています。知事にも今年度の「対話と実行行脚」で来ていただき、ありがとうございました。平成24年度には、栽培から販売までを共同で行う体制づくりをし、誰か一人が欠けても運営し続けることが出来るようにしていきたいと考えています。その3名がそれぞれ経営者で、夫婦合わせて6名です。そのうち1人が欠けたとしても同じように運営して、雇用もしていけるように安定が図れるように今年度からしました。
 次に、地域全体での後継者育成についてですが、地域では農業経営は高齢化により規模縮小や離農の方が増えています。また、若い経営者の方の中には経営が厳しい人もいます。軽い気持ちで資本金もほとんど持たずに就農する人がいますが、夜道を街灯なしで歩くようなものだと思います。やっぱりいろんな支援があって、先ほどDさんが言われましたが、頼りすぎて甘い気持ちで始めたら必ず失敗します。給付金をもらいながらも、自分が農業を学び実習するうちに稼げるようになろうという気持ちが大事であって、何年もらえるからと安心していたら私が見た中では失敗される人が多いように思います。
 そういう自分たちのグループと一緒に農業を行ってくれる、やる気のある人材を求めています。個々のレベルを上げていくために、先ほど皆さま言われましたが、技術を教えあったり、意見交換や研修や実習など、私たちは毎年いろんなところに視察に行くのですが、他県に行くといろんなことを学べます。例えば、秋田県の人は、20代で46haお米を作っているそうです。高知県のレベルと他県の人の話を比べてみたらあまりにもギャップがあり、自分たちももっと頑張らないといけないと思って、すごい勉強になりました。野菜なども大体17ha作っているようです。
 高知県の農業のあり方についてですが、成功している農業経営者から生産技術や知識を学び、高品質な商品を作るとともに、農業経営についても勉強する。教える側も学ぶ側も日々向上しようという気持ちが大切です。
 農業経営はもちろんのこと、1人農業にならないように協力しあってやることが大事だと思います。やっぱり農業は個人、個々の経営なんですが、1人農業になったら、先ほども言いましたが、1人が欠けた時に同じような経営をするのは難しいと思うんです。安定した農業経営が出来るようにすることが大事だと思います。農業経営が出来る、出来ている農家にしか農業経営は教えることが出来ないと思っています。
 JAや普及所も、最低限の経営の仕方は教えていただくことが出来ると思うんですが、本当の経営というのは農業で稼げていて、その経営がちゃんと出来ている農家にしか教えることが出来ないんじゃないかと、最近特に思います。
 それと農業技術や農業経営が学べる場所を地域に作りたいと考えています。地域の人口は60人くらいでほとんどが60歳以上です。あと5年すると半分になると思います。空き家も3分の1くらいあります。
 高知県の農業のあり方について、私が一番思うことは、高知県内の農業経営者はもちろん、他県の農業経営者とも意見交換、情報交換、ノウハウの伝授などを行い、各専門作物で日本の農業レベルを上げ、他国に負けない農業国にすることが大切だと思っています。
 また、農業関係機関等に希望する支援なんですが、過疎化により休校になっている小学校や空き家、耕作放棄地を利用し、本気で農業をやりたいと思っている人を対象に、農業経営のノウハウを伝授したいことと同時に、もう一度地域を元気にしたいので、そのための支援があればお願いしたいです。
 例えば、農業体験でラッキョウの収穫から加工までの体験コースやナバナ収穫体験、自分で収穫したナバナを食育ソムリエと調理し、ナバナ料理を食べ田舎を味わう。農家民宿、田舎に泊まり地元の料理でおもてなしをする。田舎暮らし体験コースなどを思案中です。市や県、国に力を貸していただきながら過疎地の地域を元気にしていけたらと思います。そういう体験を通して、農業に関心を持って就農につながってくれたらと思っています。

(知事)
 ありがとうございました。私も地域に行かせていただきまして、本当に多くの皆さんとお話させていただいて勉強になりました。それから加工場にも行かせていただき、ラッキョウも食べさせていただきありがとうございました。
 今言われた農業技術や農業経営、これを共にしっかり学んでいくということは非常に重要。そのために、例えば法人の皆さん向け、それから個人経営向け、新規の人向け、またいろんなフェーズごとによく考えていく必要があるんでしょうね。どういう対応をしていくのかという話について、普及員の皆さんのチームの組み方のありようや、さらにはいろんなセミナーもあるのでそれらのありようを、今日皆さんからご意見をいただいたので、それを踏まえてもう一段考えてみたいと思っています。
 今、地域の話をされましたことについて、是非、今日はお伝えしたいなと思ったことがあります。集落活動センターというものを作っているのですが、中山間対策を抜本強化したいというのがこの第2期産業振興計画も含めて1つ県政上の大きな課題になっています。複数集落で助け合っていただいて、その複数集落の活動拠点のようなものを作り、そこでいろんな取組ができないだろうかということで、集落活動センターを考えています。これを例えば、小学校の廃校跡地などを利用していただいて作っていただくような取組ができないかと思っています。
 具体的には、ここにありますパンフレットの48ページをご覧いただきたいと思います。例えば小学校の廃校跡地、大体そういう建物は集落の中心地点にありますよね。その廃校跡地を改修していただいて、1つの教室には「集落活動サポート」として、いわば高齢者の皆さんのデイサービスのような「集いの場」みたいなもので使っていただく。隣の教室では、そういう皆さんにお弁当を作ったりするような取組をされたり、ちょっとした特産品づくり、例えば学校には大体キッチンがあるでしょうから、そこを改修していただいて、そうした特産品づくりなどにつなげていただく。さらにはヘリポートなどと上手く組み合わせることで、重いものはそこまで集団で持ってきてもらって、そこから先は高齢者の方がそれぞれ運んでいただくような形にするとか、そういったサポートをさせていただく場を作ろうとしています。この施設の改修費の2分の1ずつを県と市町村で負担。さらには、「高知ふるさと応援隊」と書いていますが、そういうものを支える若い人を3年間毎年100万円ずつ県で出して雇うという仕組みを設けています。こういう基本的なスペックにプラスαでそれぞれの土地の特徴的な取組というものを是非組み合わせていただければと思います。
 実は今日(平成24年12月1日)、仁淀川町の長者でこの集落活動センターの第3号が立ち上がりました。私も行っていたのですが、そこは棚田が非常に売りになっていて、今日もされていると思いますが、長者でキャンドルナイトというのをやられていて、大学生などと一緒に交流をするような取組ですが、それが1つの売りになっていると思うんです。さらに最初に出来た本山の汗見川は、元々小学校を宿泊施設に改修した施設をもっておられ、そこを活かしていくような取組をして外貨を稼ごうとしておられます。
 私が思うのは、例えばここでは農業技術や経営を教えるような学校をやるんだと。集落活動センターで教室を使ってやる方法や塾や合宿といったことも考えられるのではないかと思います。ナバナの収穫体験や農家民宿や暮らし体験というのは、そういうことがここで可能になるのではないかと思うんです。確かにそんなに簡単なことじゃないかもしれませんが、そういういろんな工夫を行うことの出来る1つの取組ではないかと思っていまして、今、県下で130ヵ所ぐらい作ろうと思っているんです。地域に行かせていただいた時も集会所がありましたよね。隣にも教室があったのですが、あれは学校ですか。

(参加者F)
 学校です。

(知事)
 活用できるパターンがあるのではないかなと思います。あの時一緒に来られていた土佐清水市の課長さんも大変ご理解があられるので、是非、こういうので使っていただければどうかなと思うのです。
 高知の中山間の農業に付加価値を上げていく取組を進めていくといった時、1つは技術を上げていいものを作る方法、もう1つは加工だと思います。加工を後押ししていくための仕組みをもう一段、我々も作らないといけないと思っています。加工の専門のプロと生産者の皆さんが出会えるような場、コラボがもっと出来るような場を作った方がいいのではないか。生産者の方は、必ずしも加工のプロではない。加工のプロは生産のプロではない。お互いのプロ同士が出会うことで、もっと加工が強化できる仕組みを考えたいと思っています。
 また、それぞれの集落で加工など新しいことをやってみようという人を増やすような取組が出来ないかと思っています。例えば「こうち型集落営農」ではいろんな作物を作っていますよね。その集落営農をされているところで「加工もやってみませんか」と働きかけることはできないか、さらには、集落活動センターのようにそもそも調理場を持っているところで加工をやっていただくことを後押し出来る仕組みは出来ないだろうかなど、考えていきたいと思っています。
 ちなみに、集落活動センターの取組は、センターを作るだけではなく、産業振興計画のいろんな仕組みを使っていただけるように、健康長寿県構想も同じなのですが、その計画全体として後押しをさせていただくようにしたい。そのために集落活動センターごとに県庁で支援チームというのを組んでいます。健康長寿県構想系と産業振興計画系と、その支援チームで一連の取組を、特に最初の段階をバックアップするように、またソフト面のことも考えたりしています。もしよかったらまたご検討もいただければと思います。

(参加者F)
 ありがとうございます。地域の存続は、今がもう最後のチャンスだと思ってやっています。お願いします。

(知事)
 ありがとうございました。

4.県民の方からの「ご意見」紹介 

(司会)
 事前に県民の方から意見をもらっています。1つだけ紹介をさせていただきます。知事に直接お願いのようなご意見なのですが、

(意見)
 ニュースやネット上での知事のコメントは、産地競争力の強化に結構大きいと思います。よろしければ尾﨑知事も、「高知でニラ飛ばしの大会が」とか、「一富士、二鷹、三土佐鷹ナスと申しますが」とか、「高知に帰ってご飯を食べるとやっぱり高知の米は違うと実感する」とか、少し高知の一次産品を意識したコメントをされてみてはいかがでしょうか。

(知事)
 わかりました。そのようにします。

5.閉会(知事あいさつ)

(知事)
それでは本当に皆さん今日はありがとうございました。大変ご多忙のところおいでいただきましてありがとうございます。
 Dさんが言われたこと、やっぱり高知は農業を大事にしていくべきじゃないのかというお話について、私も本当に賛成であります。残念ながら、高知県は工業という点においては全国で47番。もっと言うと、戦後の歴史の中でいろんな日本全体の産業振興政策に必ずしもついていけてないところがあって、太平洋ベルト地帯構想にも完全に外れてしまった。新産業都市構想こちらにも外れてしまった。香川や愛媛はそれに当たり、徳島も新産業都市構想に当たり、そういうことで仰ぎ見るような工業県になっています。
 関東近郊の県、例えば工場とかを誘致、企業団地などを作っても企業ですぐに埋まる。そういう県がたくさんある。そういうところはとてつもなくインフラが恵まれていて、例えば私の妻は栃木県出身なんですが、栃木は工場団地を作ったらすぐに埋まるんです。高速道路で東京港まで1時間で行けるような条件がありますから。
 残念ながら、高知県はそういう状況にはありません。しかし、逆に言えば、なかったおかげできれいな水がある、いい土地があるのですから、素晴らしい農作物が出来る状況にあるんだろうと思っています。ないものねだりをしてもダメなので、我々の強みを活かすことが大事だと思っており、是非この農業を今後も振興していくことが高知県の強みを活かす、我々の強みを伸ばす、そういう生き方ではないのかなと思っているところです。
 幸い、これから農業が再び見直されていく時期が必ず来ると思っています。中国やインドがだんだん台頭してくるという中で、世界的にも食糧を自国でいかに確保出来るかということが非常に重要になってくるでしょうし、安全で安心で高付加価値で美味しい、そういう食べ物というのを求めている人は世界中にたくさんいるだろうと思っています。
 先日、北川村のユズをフランスへ持っていったところ、大好評でありました。キティちゃんと連携をさせていただき、売り込みさせていただいたら大変好評で、フランスのシェフにも大変受けたと聞いています。高知県の農業が世界でも通用するかもしれない、そういう時期なのかもしれないと思っています。
 一次産業をドンと基軸にしながら、その関連産業、加工、さらには関連した民泊も含めていろんな観光というものを富士山のような形で、大きく育てていくような産業振興計画のもとで図っていきたいと思っているところです。ただ、そのためにはいろいろとまだまだ我々の施策としても改善をする必要があるところがたくさんあろうかと思います。今日いただいたご意見を踏まえさせていただき、よく咀嚼して我々の今後の施策に活かしていきたいと思っています。
 本当に今日は貴重なご意見をありがとうございました。今後とも頑張ってまいります。どうぞよろしくお願いします。

(終了)

 

テーマに関して事前に寄せられた御意見と対応方針

 

第4回「対話と実行座談会」を開催するに当たり、事前にテーマに関する質問を募集しました。
いただいた質問に対する県の対応方針について以下のとおり取りまとめました。

WORD [WORDファイル/18KB] PDF [PDFファイル/186KB]

 

この記事に関するお問い合わせ

高知県 総合企画部 広報広聴課

所在地: 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号(本庁舎2階)
電話: 広聴担当 088-823-9898
広報担当 088-823-9046
ファックス: 088-872-5494
メール: 080401@ken.pref.kochi.lg.jp

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