公開日 2022年09月21日
令和4年9月22日 令和4年9月県議会での知事提案説明
1 新型コロナウイルス感染症への対応
2 補正予算など
(1)9月補正予算
(2)今後の財政収支見通し
(3)サマーレビューの実施
3 経済の活性化
(1)経済影響対策
(2)関西圏との経済連携の強化
(3)デジタル化、グリーン化、グローバル化の取り組み
(4)観光振興の取り組みなど
4 日本一の健康長寿県づくり
(1)日本一の健康長寿県構想の推進
(2)国民健康保険の保険料水準の統一
5 教育の充実
(1)全国学力・学習状況調査の結果について
(2)部活動の地域移行について
(3)全国高等学校総合体育大会の開催
6 南海トラフ地震対策
7 中山間対策の充実・強化
8 少子化対策の充実・強化
9 議案
本日、議員各位のご出席をいただき、令和4年9月県議会定例会が開かれますことに厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ち、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員各位並びに県民の皆さんのご理解とご協力をお願いしたいと考えております。
(台風第14号による被害)
はじめに、先の台風第14号による被害などについてご説明申し上げます。
今月19日、本県に最接近した台風第14号により、住家のほか農業用ハウスや漁船などに被害が発生しました。被害に遭われた方々に、心からお見舞いを申し上げます。
今後、被害状況の調査を踏まえ、迅速な復旧に向けて必要な対策を速やかに進めるとともに、台風や豪雨が多い時期が続くことから、引き続き十分に警戒してまいります。
1 新型コロナウイルス感染症への対応
県内の新型コロナウイルス感染症の状況は、7月上旬から再び拡大に転じ、先月下旬には1日当たりの新規感染者が2千人を超えるなど、極めて高い水準が続きました。加えて、医療機関や高齢者施設におけるクラスターの発生などを背景に、中等症以上の入院患者が増加するとともに、発熱外来や救急医療が逼迫し、一般診療にも影響が出るなど、県内の医療現場は非常に厳しい状況となりました。
このため、先月16日には「BA.5対策強化宣言」を発出し、高齢の方や基礎疾患を有する方に不要不急の外出自粛をお願いしました。あわせて、医療現場における負担の軽減や検査体制の確保といった観点から、抗原検査キットの無料配布やオンラインなどにより確定診断が受けられる体制の整備を行い、その拡充に努めてきました。
その後、先月末以降は感染者数が徐々に減少に転じ、医療現場の状況にも改善が見られたことから、今月16日に「BA.5対策強化宣言」を終了しました。一方、新規感染者数は未だ高い水準にあり、新学期が始まった学校においてクラスターも発生するなどまだまだ気を緩められる状況にはありません。
こうした認識の下、引き続き、医療提供体制や検査、診療体制の確保などに取り組みます。さらに、国が示した方針に基づく感染者の全数届出の見直しへの対応のほか、オミクロン株に対応したワクチンの接種を着実に進め、次なる感染の拡大に備えて対策の充実、強化に努めます。
(全数届出の見直しへの対応)
国が今月8日に決定した新たな方針では、オミクロン株の特性を踏まえ、高齢者など重症化リスクの高い方への適切な医療提供を中心とする考え方に転換することが明示されました。この方針に伴い、26日から感染症法に基づく医師の届け出の対象が65歳以上の方や入院を要する方などに限定されることとなります。
届け出対象の限定により医療機関などの負担が軽減される一方で、感染者の7割相当が届け出の対象外となることから、こうした方々をしっかりとフォローする体制の構築が重要となります。このため、体調悪化時などに連絡や相談ができる「陽性者フォローアップセンター」を新たに設置することとしました。
今後、全ての方に安心して療養していただけるよう、広報や関係機関への周知を通じて、届け出の対象外となる方をフォローアップセンターへ確実につなげてまいります。
(ワクチン接種の推進)
ワクチン接種に関しては、3回目以降の追加接種にオミクロン株に対応した新しいワクチンが今週から順次導入されます。従来のワクチンと比べ、オミクロン株に対してより高い有効性が見込まれており、県内でも4回目接種対象者で未接種の方から接種が行われます。また、今月6日からは、5歳から11歳の子どもへの3回目の接種が開始されるとともに、接種の努力義務が適用されました。
感染の拡大を抑えるとともに、重症化しやすい高齢の方などを守るという観点から、県民の皆さんに積極的に接種していただけるよう、引き続き、あらゆる機会を通じてワクチンの安全性や有効性について発信していきます。あわせて、これらの接種が円滑に進むよう、国や市町村と緊密に連携しながら取り組みます。
2 補正予算など
(1)9月補正予算
今議会では、主に物価高騰や新型コロナウイルス感染症への対応を図るため、総額187億円余りの歳入歳出予算の補正並びに総額13億円余りの債務負担行為の追加及び補正を含む一般会計補正予算案を提出しております。
このうち、「原油価格・物価高騰対策」に関しては、原油価格や物価の高騰による影響を受けた事業者への支援を強化します。
具体的には、農業者の肥料及び飼料の購入費や公共交通事業者の路線維持に対する支援制度を創設するとともに、貨物運送事業者への支援を行います。加えて、医療施設や社会福祉施設の継続的なサービスの提供に向け、施設規模などに応じた給付金を支給します。
次に、「感染予防、感染拡大防止」に関しては、医療提供体制を維持するため、入院病床や宿泊療養施設の確保に必要な経費を増額するとともに、「陽性者フォローアップセンター」の設置など検査、診療体制の強化を図ります。
このほか、関西圏における外商拡大の取り組みや来年春から実施予定の観光博覧会の展開に係る経費をはじめ、高知工科大学新学群の新棟を整備するための設計に関する経費などを計上しております。
(2)今後の財政収支見通し
県の財政運営においては、中期的な展望の下、財政規律を維持しながら、県勢浮揚と県財政の持続可能性の両立を図ることが重要です。こうした観点から、昨年度の決算状況や今後の歳入の見込みなどを踏まえ、向こう6年間の中期的な財政収支について試算を行いました。その結果、今後の大規模事業などに必要な経費を見込んでもなお、安定的な財政運営に一定の見通しをつけることができております。
しかしながら、今後、新型コロナウイルス感染症や物価の高騰が県経済へ影響を及ぼすことも懸念され、当面は予断を許さない財政状況が続くものと予想されます。加えて、本県の財政運営は地方交付税制度など国の動向に大きく左右されます。
このため、引き続きこれらの動向を注視しながら、国に対し、地方交付税などの一般財源の確保について積極的に政策提言を行います。あわせて、事務事業のスクラップアンドビルドや行政のデジタル化を推進し、施策の有効性や効率性をさらに高めてまいります。
(3)サマーレビューの実施
先月から今月にかけて、今後の政策の大きな方向性について私と部局長との間で骨太の議論を行う、サマーレビューを実施しました。
このサマーレビューでは、各分野の中長期的な課題や取り組みの方針などに関して、部局長から問題提起や提案を受けて活発な議論を交わしました。
今回の議論を土台として、具体的な成果に結び付けることができるよう、先々の施策展開も意識しながら今後の予算編成において必要な事業を盛り込んでまいります。
3 経済の活性化
続いて、基本政策の取り組みなどについてご説明申し上げます。まず初めに、経済の活性化についてです。
県経済に関しては、依然としてコロナ禍にあるものの、個人消費で持ち直しの動きが一段と明確になりつつあり、設備投資なども回復の動きが続いています。一方で、原油価格や物価の高騰により、一次産業における生産コストや運輸業における運行コストの増加といったマイナスの影響が生じており、県経済の回復の妨げとなることが懸念されます。
このため、まずはコロナ禍からの回復途上にある県経済を下支えするべく、原油価格や物価の高騰による影響を受けた事業者への支援をきめ細かく行うとともに、観光や飲食、物販に関する需要喚起策を積極的に展開します。さらには、中長期的な観点から県経済の底上げを着実に図るため、関西圏との経済連携の強化をはじめとする第4期産業振興計画の取り組みを全力で進めます。
(1)経済影響対策
原油価格や物価の高騰については、先の6月補正予算において、農林水産事業者の燃料費に対する支援のほか、新分野への事業展開や省エネ設備の導入といった構造転換への支援など幅広い対策を講じました。
しかし、その後も影響の拡大が見られることから、国、市町村の支援策も踏まえながら、農業者の肥料や畜産事業者の飼料の価格上昇分に対する支援のほか、公共交通事業者の路線維持に要する経費への支援など、必要な追加対策を行うこととしました。
また、需要喚起策については、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、厳しい状況にある飲食店や関連事業者の需要回復に向けて、「食べて!飲んで!高知家応援キャンペーン」を今月18日に開始しました。「高知家あんしん会食推進の店」で利用できる25パーセントのプレミアム付きクーポンを額面で30億円分発行することとしており、このキャンペーンを通じて、県内各地で街の賑わいを取り戻したいと考えています。
加えて、本年度から新たに「高知を贈ろうキャンペーン」として、県民の皆さんに、日頃からお世話になっている方や知人、友人へ県産品を贈っていただくことで県内事業者を支援する取り組みを展開しています。
このキャンペーンにおいて、魅力的な県産品のギフト商品を創出、発掘するコンクールを実施したところ、想定を大きく上回る341件の応募をいただき、その中から選りすぐりの15品を決定しました。この15品も含め県産品を贈答品として積極的に利用していただけるよう、来月から県内量販店などにおけるプレゼント企画を開始します。
今後も、新型コロナウイルス感染症に加え、原油価格や物価の高騰による県経済への影響の長期化が見込まれます。引き続き県民の暮らしを守るため、各分野の状況を注視しながら適時必要な対策を講じます。
(2)関西圏との経済連携の強化
知事就任以来、大阪・関西万博に向けて高まる関西圏の活力を呼び込み、県経済の底上げを図るため、関西圏との経済連携の強化に力を入れて取り組んできました。その結果、観光分野では、大阪観光局などと連携して新たに作成した関西と高知を結ぶ外国人観光客向けモデルルートを活用する本県への周遊ツアーが予定されています。加えて、外商分野では、量販店における水産物の販売、あるいは製材品の出荷が好調に推移するなど、これまでの取り組みに対して一定の手応えを感じております。
一方、コロナ禍の影響を受けて予定どおりに進んでいない事業もあります。こうした分野においては、今まで以上にスピード感を持って取り組むとともに、各施策を一層レベルアップさせることにより、関西戦略をコロナ禍における県経済の反転攻勢の起爆剤にしたいと考えております。このため、県内事業者や有識者からなる「関西圏外商強化対策協議会」、さらには、「関西・高知経済連携強化アドバイザー会議」からご意見をいただきながら、先般、関西圏における外商の抜本強化策を取りまとめました。
具体的には、まず、大阪・関西万博も見据え、本県の魅力を強力にPRするための拠点施設として、食文化や観光などの情報を発信するアンテナショップの設置を進めてまいります。
設置については、大規模な再開発が進む大阪市の梅田に計画されている新たな商業施設へのテナント出店を目指しており、商業施設の開業に合わせて、令和6年春のオープンを予定しています。この周辺エリアは、関西圏で最も駅乗降客数が多く、今後、関西国際空港から直通の駅が開業することによるインバウンド観光客の増加も見込まれます。
こうしたエリアにアンテナショップを設置することにより、関西圏においても本県の情報をより多くの方にダイレクトかつタイムリーに提供することが可能となります。首都圏と比べて本県との距離が近いという優位性を最大限に生かした観光誘客や移住促進はもちろん、生鮮品や旬の食材などの販売拡大につなげます。なお、運営に関しては、地産外商公社が担うことにより、まるごと高知のノウハウや県内事業者とのネットワークを最大限に活用したいと考えております。
次に、本県の認知度のさらなる向上を目指して、プロモーションや外商活動についても一層の充実強化を図ります。具体的には、関西のメディアとタイアップした情報発信の強化や、連続テレビ小説「らんまん」を生かした観光プロモーションなどを進めます。また、外商活動については、ショールーム機能を有するアンテナショップでの個別商談をはじめ、事業者からニーズのある大規模商談会への出展や量販店における高知フェアの拡充などに積極的に取り組みます。
このうち、ものづくり分野では、大阪・関西万博と連携した国際見本市として「未来モノづくり国際EXPO」が来年5月にインテックス大阪で開催されます。この見本市は万博のテーマとも関連する「脱炭素」や「防災・減災」などに関する製品や技術を一堂に展示し、国内外に広く発信する場となっております。このため、県内企業の製品や技術をPRする絶好の機会と捉え、出展に向けた準備を進めています。
さらに、こうした一連の関西戦略の取り組みは、県内の市町村をはじめ、事業者や団体の皆さんと連携したオール高知の態勢で展開していくことが重要です。11月に予定しております関西のメディアとの情報交換会をはじめ、私自身が市町村長と連携したトップセールスを数多く展開し、観光客の誘致や県産品の外商拡大といった成果に結び付けてまいります。
(3)デジタル化、グリーン化、グローバル化の取り組み
次に、デジタル化、グリーン化、グローバル化という、新たな時代の潮流を指し示す3つのキーワードに関連する施策について、ご説明申し上げます。
(デジタル化の取り組み)
1つ目のキーワードであるデジタル化の取り組みに関しては、農業分野において、本県が普及を進めておりますNext次世代型こうち新施設園芸システムの核となるIoPクラウド「SAWACHI」の本格運用を本日から開始します。これにより、利用を希望する生産者は、ハウス内環境データや気象データ、市況データ、農産物の出荷量データなど、営農に役立つ様々な情報を入手できます。さらに、これらの情報を組み合わせた分析結果に基づいて指導員から最適な栽培指導を受けることで、より効果的なデータ駆動型農業を実践することが可能となります。
今後は、データ駆動型農業に取り組む生産者を早期に拡大し、県全体で営農の改善につなげます。このため、JAなどを通して産地に環境測定装置を一定期間無償貸与することで効果を実感していただくとともに、データ分析に基づく営農指導体制を一層強化します。あわせて、産学官連携の下、IoPクラウドに蓄積されたデータから、AI技術を活用して作物の生育状況などを可視化し、より最適な栽培管理につなげる取り組みを加速させます。
こうした取り組みを通じて、収量のさらなる増加や省エネ、省力化の一層の促進などIoPプロジェクトがもたらす効果をさらに高め、経験と勘に頼った農業からデータ駆動型農業への転換を進めます。
(グリーン化の取り組み)
2つ目のキーワードであるグリーン化に関しては、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、本年度は「オール高知での取り組み」と「経済と環境の好循環」の2点を特に意識して各施策を展開しています。
1点目の「オール高知での取り組み」では、今月10日に「高知県脱炭素シンポジウム」を開催し、オンラインも含め442人の方にご参加をいただきました。小泉進次郎元環境大臣による基調講演のほか、高校生や事業者、NPO、行政の代表によるパネルディスカッションなどを通じ、県民一人ひとりがCO2削減に向けてライフスタイルを変えることの重要性について理解を深める機会になったものと考えています。
さらに、個人や企業の環境負荷の低減を個別に見える化する「web版環境パスポート」の運用を今月から開始したほか、CO2削減につながる具体的な行動事例を紹介したパンフレットを作成し、来月から市町村や学校などに配布します。こうしたツールも効果的に活用しながら、脱炭素化を目指す機運の醸成を図り、一人ひとりの行動変容につなげます。
2点目の「経済と環境の好循環」では、木材利用のさらなる拡大を図るため、本年度、環境への負荷の低減に資する木造建築物を環境不動産として評価する手法と、その評価に応じた都市計画や財政上の優遇措置について検討を進めています。
具体的には、5月に立ち上げた有識者の検討委員会において議論をいただいており、今月、評価項目や評価手法に関する中間報告が取りまとめられました。この中間報告を踏まえて、引き続き、関係者の皆さんのご意見も伺いながら、木材の利用促進につながるよう、評価方法の確立と優遇措置の導入に向けてさらに検討を進めます。
また、本県の豊かな自然資源を活用した新たな再生可能エネルギーとして、海洋深層水を用いた海洋温度差発電の可能性調査を行います。今後、水温に関するデータの収集や建設コストの試算のほか、採算性向上のための検討などを行い、実現の可能性を探りながら、将来的には、民間企業や大学も巻き込んだ産学官による取り組みに発展させたいと考えています。
(グローバル化の取り組み)
3つ目のキーワードであるグローバル化に関しては、昨年の食品の輸出額が前年比で約16パーセント増となる18億8千万円となりました。中国での検疫強化の影響を受け、水産物の輸出が減少した一方で、海外での日本酒人気の高まりを受けて土佐酒の輸出額が前年比で約85パーセント増と大幅に伸びており、今後のさらなる拡大も見込まれます。
引き続き、輸出に取り組む事業者の市場調査や衛生管理への対応、商品開発、設備投資を強力に支援することに加え、食品海外ビジネスサポーターなどと連携し、販路拡大に向けた取り組みを進めます。
また、外国人材の確保では、先月、3年ぶりにベトナムへ経済交流のミッション団を派遣しました。現地ではラムドン省の行政機関をはじめ、大学や職業訓練学校などに本県の魅力や各産業分野における取り組みを紹介したほか、意見交換を行いました。訪問先からは、「高知の企業で技術を学ばせて、帰国後は、その技術を生かして経済を発展させたい」、「スマート農業の分野で技術交流を図りたい」といった前向きなお声をいただきました。さらに、現地の行政機関から、人材の送り出しについて本県と取り組みを進めていくことで合意を得ることができました。今回の訪問を契機として早期に本県への人材の送り出しが実現されるよう、引き続きラムドン省と協議を進めます。
このほか、インバウンド観光については、来月、シンガポールから本県への周遊ツアーが予定されるなど、ようやく回復の兆しが見えてきました。また、現在、台湾の航空会社から本県へのチャーター便の運航について提案をいただいており、実現に向けた協議を重ねています。アフターコロナも見据え、こうした流れを本県にしっかりと取り込むことができるよう積極的なセールス活動を展開し、外国人観光客の誘致を図ります。
(4)観光振興の取り組みなど
次に、国内の観光振興の取り組みでは、本年1月から7月にかけての県外観光客入込数の推計は198万人と、新型コロナウイルスの感染拡大前である令和元年と比べて約8割まで回復しています。さらに、先月は、よさこい祭りや帰省などもあり、お盆期間中の主要観光施設の利用者数が令和元年とほぼ同水準となりました。このように、本県観光は着実に回復に向かっているものと捉えております。
今後は、こうした回復基調をより確かなものとするため、現在展開している観光キャンペーンにおいて、本県の食の魅力をさらに発信していきます。あわせて、冬場の閑散期には、高知市が行う中央公園でのイベントとも連携し、高知城において大規模なイルミネーションイベントを行うなど、切れ目なく誘客を図り、来年3月から開催する観光博覧会「牧野博士の新休日~らんまんの舞台・高知~」につなげます。
この博覧会に関しては、先月行われた推進協議会においてロゴデザインや当面の事業計画が決定されました。加えて先週には、関西圏の旅行会社を対象とした説明会を開催し、私自ら博覧会に関するプレゼンテーションを行うなど、来春に向けたセールス活動を開始しました。引き続き、県外へのプロモーションや県内における周遊促進の取り組みをさらに加速させていきます。また、博覧会の成功には、県民一丸となった盛り上がりが不可欠であることから、県民の皆さんの機運醸成に向けて様々な取り組みを行っていきます。
さらに、連続テレビ小説「らんまん」を本県観光のPRにつなげていくためには、県外の牧野富太郎博士ゆかりの地との連携を進め、全国的な盛り上がりを作り出すことも重要です。このため、先月、練馬区長、神戸市長に直接お会いし、観光PRの相互実施などについて確認しました。
県内外の関係する皆さんとの連携の下、「らんまん」の放送を本県の観光振興に最大限に生かし、460万人観光を実現できるよう全力で取り組みを進めます。
(スポーツツーリズムの推進)
全国的な社会経済活動の回復を背景に、スポーツツーリズムによる交流人口拡大の動きが再び加速しつつあります。
こうした中、今月1日から6日にかけて、アジアの7つの国と地域から選手団を四万十市にお迎えし、ソフトボール男子アジアカップが開催されました。会場では連日、ワールドカップへの出場権を懸けた熱い戦いが繰り広げられ、県内外から訪れた多くの皆さんがアジアのトップ選手たちのプレーを間近で見ることができた貴重な機会となりました。
また、今月25日には宿毛市において、四国初開催となるプロの自転車ロードレース「ジャパンサイクルリーグ高知大会」が開催されます。加えて同日、高知市においても、子どもから大人まで誰もが楽しく参加できる水泳のイベント「水泳の日2022・高知」が開催され、全国から数多くの選手や関係者の来高が見込まれています。さらに来年2月には、高知龍馬マラソンを3年ぶりに1万人規模で開催する方針が実行委員会において決定され、ランナーの募集も始まりました。感染症対策を含め万全の態勢をとるべく、関係団体と共に準備を進めています。
こうした多様なスポーツ大会などを通じて、県民のスポーツ参加の拡大や競技力の向上を図るとともに、交流人口の拡大による地域経済の活性化につなげていきます。
4 日本一の健康長寿県づくり
次に、日本一の健康長寿県づくりの取り組みについてご説明申し上げます。
(1)日本一の健康長寿県構想の推進
第4期日本一の健康長寿県構想につきましては、「県民の誰もが住み慣れた地域で、健やかで心豊かに安心して暮らし続けることのできる高知県」の実現を目指し、3つの柱に基づく取り組みを着実に進めております。
まず、1つ目の柱の「健康寿命の延伸に向けた意識醸成と行動変容の促進」では、糖尿病予備群の重症化予防を進めるため、ICTを活用した保健指導を来月から開始します。具体的には、特定健診の受診者から対象者を抽出し、ICT機器を通じた血糖状態のモニタリングや、遠隔での保健指導を行うこととしており、効果の検証を行った上で、より効果的、効率的な保健指導につなげます。あわせて、令和2年度から取り組んでいる糖尿病性腎症患者に対する透析予防強化プログラムについて対象地域を広げ、重症化のリスク要因を持つ人、いわゆるハイリスク層に対するアプローチを一層強化します。
2つ目の柱の「地域で支え合う医療・介護・福祉サービス提供体制の確立とネットワークの強化」では、地域共生社会の推進として、8050問題などの複雑化、複合化した課題の解決に向け、多機関協働による包括的な支援体制の整備を進めています。
このうち、ヤングケアラーへの支援につきましては、本年度、県内の中高生を対象に、初めて実態調査を行いました。また、ヤングケアラーに対する理解の促進と相談窓口の周知を図るため、先月には、県内3会場でフォーラムを開催するとともに、テレビやSNSを通じた広報のほか、学生や公的機関への周知などを集中的に行っています。
今後は、実態調査の結果も踏まえ、ケアを担う子どもたちが社会から孤立せず、将来への見通しや希望を持って生活できるよう、教育機関と児童福祉部署などが一層緊密に連携し、包括的な支援体制の構築を進めます。
3つ目の柱の「子どもたちを守り育てる環境づくり」では、来年4月に国における子ども政策の司令塔を担う「こども家庭庁」が発足します。本年6月には準備室が設けられ、母子保健と児童福祉の支援機能を一体化する「こども家庭センター」の設置や、児童虐待防止対策の強化などについて先行して取り組みが進められております。
これらの施策は、本県がこれまで先んじて取り組んできた高知版ネウボラと方向性を同じくするものであり、支援体制のさらなる強化が期待できるものと考えております。一方で、「こども家庭センター」の実施主体となる市町村においては、具体的な体制整備における課題なども抱えています。このため、今後、詳細な制度設計に向けた動きをしっかりと注視し、新たな制度や施策が地域の実情に沿ったものとなるよう、必要に応じて全国知事会とも連携しながら、国に対して働きかけます。
(2)国民健康保険の保険料水準の統一
本県の国民健康保険は、急激に進む少子高齢化による加入者の減少に伴い、財政的に不安定な運営を行わざるを得ない小規模な市町村国保の増加が懸念されています。こうした本県の国保における構造的な課題を克服し、制度を安定的に運営していくためには、保険料水準の県内統一により県全体で支え合う仕組みに転換することが不可欠と考え、市町村と議論を進めてきました。
その結果、先月開催した県内全市町村と県による会議において、令和12年度の保険料水準の統一について合意に至りました。あわせて、統一により加入者の負担が急激に変化することのないよう、令和6年度から段階的に保険料の改定を行うことや、県全体で医療費の適正化に取り組むことなどを確認しました。
市町村間で現在の保険料や医療費の状況などに違いがある中において、今回、合意がいただけましたことは、将来にわたって県内国保を安定的に運営していく上で極めて重要なことと考えます。
今後は、来年6月に予定している具体的な制度設計の取りまとめに向けて、引き続き、市町村と丁寧に議論を進めます。加えて、加入者の理解を得るためには、医療費の適正化に向けた努力や県民がそれぞれの地域で安心して医療が受けられる体制の構築が重要です。こうした点について県がしっかりとリーダーシップを発揮しながら、市町村と一丸となって取り組みます。
5 教育の充実
次に、教育の充実に関する取り組みについてご説明申し上げます。
(1)全国学力・学習状況調査の結果について
「令和4年度全国学力・学習状況調査」の結果が7月末に公表されました。本県の小学校は、国語、算数ともに全国平均を上回り、4年ぶりに調査が行われた理科は若干平均を下回ったものの、総じて高い学力を維持しています。このことは、若年教員と経験豊富な教員がチームで学び合うメンター制などを活用して、授業改善に取り組んできたことが着実に成果につながっているものと考えております。
一方、これまで全国平均に近づいていた中学校は、国語、数学、理科全てにおいて全国との差が広がり、特に数学については全国平均を大きく下回る結果となりました。これまでも教科のタテ持ちをはじめとする組織的な取り組みを進めてきましたが、学力向上に向けたPDCAサイクルの徹底に弱さがあったことなどが要因だと受け止めています。
このため、改めて中学校における対策の強化が必要であると考えており、先日、私も参加する総合教育会議において学力向上対策をテーマに重点的に協議を行いました。今後、まずは直ちにできる対策として、デジタル学習教材を効果的に活用し、一人ひとりの理解度に応じた学習指導を充実させ、つまずきの防止につなげます。加えて、県、市町村の教育委員会と学校の3者で改善策を話し合う意見交換会の開催や、指導主事による学校訪問の強化などを進め、学力向上に関するPDCAサイクルの徹底と授業改善を図ります。
本県の子どもたちが学力の問題で希望の進路を叶えられないといったことは、何としてもなくしたい。そうした強い思いの下、第2期教育大綱に基づく各施策を一層推進します。
(2)部活動の地域移行について
深刻な少子化が進行する中において、学校部活動の持続可能性を高めることが全国的な課題となっています。このため、国の有識者会議において、公立中学校などの部活動の地域移行について検討が進められ、先般、政府に対し提言がなされました。この提言では、休日の部活動から段階的に地域移行していくこと、令和5年度から7年度までの3年間を改革集中期間として取り組むこと、各自治体において地域移行に向けた推進計画を策定することなどが示されています。
これを受けて本県では、市町村や学校関係者、関係団体などからなる検討会議を立ち上げ、議論をスタートさせました。先月開催した第1回の会議では、地域移行の必要性や課題などについて意見交換を行い、委員から「受け入れの責任や万一の事故に対する補償に関する制度の確立が必要」、「文化部の場合は受け皿団体が少ない」といったご意見をいただきました。
こうしたご意見を踏まえるとともに、生徒や保護者、地域の方々のご意見も伺いながら、子どもたちがスポーツや文化芸術活動に親しむ持続可能な環境の整備について、引き続き慎重に検討を重ねてまいります。
(3)全国高等学校総合体育大会の開催
7月から先月にかけての約1カ月間、四国を舞台に全国高等学校総合体育大会が開催され、本県では8競技10種目が行われました。
コロナ禍での大会にあって、感染防止対策を徹底しながら、学校関係者はもとより、宿泊施設や医療、救急の関係者など、多くの方々に大変ご尽力、ご協力をいただきました。今大会に関わっていただいた全ての皆さんと見守っていただいた県民の皆さんに、心から感謝を申し上げます。
また、今回の大会では、レスリングや弓道個人での優勝をはじめ、出場した本県の高校生たちが、これまでの努力で培った力を存分に発揮してくれました。加えて、出場選手だけではなく、多くの高校生が大会を支える側として、準備段階から大変活躍してくれました。
今大会を通じて高校生の皆さんが見せてくれた競技に全力で向き合う姿や、懸命に大会を支える姿をしっかりと受け止め、子どもたちが自らの夢や目標に向かって努力し、力を発揮することができる教育の推進に努めます。
6 南海トラフ地震対策
次に、南海トラフ地震対策についてご説明申し上げます。
本年度からスタートした第5期南海トラフ地震対策行動計画については、令和6年度末に想定死者数を約4千3百人にまで半減させることを目標として、10の重点課題を柱に取り組みを進めています。
この重点課題のうち、まず「要配慮者支援対策の着実な推進」では、自力での避難が困難な要配慮者の方々が確実に避難できるよう、市町村における個別避難計画の策定支援に取り組んでいます。計画の策定には、要配慮者一人ひとりの事情を把握しているケアマネジャーなどに関わっていただくことが効果的ですが、こうした福祉専門職の参画が十分に進んでおらず、計画策定が思うように進捗していない市町村も見られます。
このため、本年度は高知県介護支援専門員連絡協議会との連携を強化するほか、先行して専門職の参加が進んでいる黒潮町などの取り組みの横展開を図り、専門職の参画を促進しています。あわせて、補助金による財政支援を行い、市町村の取り組みを後押しします。
次に、「早期の復旧・復興に向けた取り組みの強化」については、発災後に一日でも早い復興を図ることができるよう、県が作成した指針を活用し、市町村の事前復興まちづくり計画の策定を支援しています。具体的には、先月までに沿岸19市町村全てにおいて、東日本大震災の課題や教訓、事前復興まちづくり計画の必要性などについて、関係職員との勉強会を開催しました。
こうした中、既に先行して取り組んでいる黒潮町では、佐賀地区における計画策定に着手されており、今後、地区長や関係者で構成する策定委員会の設置のほか、住民への説明会が予定されています。このような取り組みがスムーズに進むよう県としても積極的に関わり、技術的、財政的に支援します。さらに、他の市町村に対しても、先行事例の紹介や計画策定の進め方への助言といったきめ細かな支援を行い、令和6年度末までに沿岸19市町村全てで計画策定に着手できるよう後押しします。
7 中山間対策の充実・強化
次に、中山間対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
本年度抜本強化した中山間対策では、地域で暮らし続けたいという希望を叶えることができるよう、新たに小さな集落の維持、活性化に向けた仕組みづくりを進めています。加えて、中山間地域に共通する課題の解決を目指し、デジタル技術を活用した実証事業などに取り組んでいます。
このうち、小さな集落の維持、活性化では、小規模集落の活性化の仕組みづくりに対して助言をいただく専門家会議を5月に立ち上げました。現在、8市町村においてモデル集落を選定し、専門家会議からのアドバイスもいただきながら、集落の課題解決に向けて住民同士が話し合い、住民自ら新たな活動の実施につなげるといった取り組みを進めております。
また、デジタル技術を活用した中山間地域共通の課題解決の取り組みでは、県内8市町村においてドローンによる物資輸送や農業用水の遠隔管理などの実証事業がスタートしています。このほか、暮らしの基盤となる生活用品の確保に関して、物流を支える共同配送の仕組みの維持を図るため、新たに車両購入費を支援します。
こうした一連の施策を着実に進めることに加え、強化した空き家対策や移住促進策による担い手の確保など、集落の維持、活性化に向けた取り組みをさらに加速させ、地域の再興につなげます。
8 少子化対策の充実・強化
次に、少子化対策の充実、強化についてご説明申し上げます。
昨年の合計特殊出生率は全国が0.03ポイント減少し、1.30となる中、本県は前年から0.02ポイント増加し、1.45となりました。一方、婚姻数は2,332件で戦後最少となり、コロナ禍において、出会いの機会が減少していることに加え、若い世代の結婚や妊娠、出産、子育てに対する不安感が一層増したことなどが背景にあるのではないかと考えています。
こうした課題の解決に向け、来月からは、若い世代に広く浸透している
SNSを活用し、県の出会い支援事業や各市町村の子育て支援の取り組みなどを動画で発信するデジタルプロモーションを開始します。あわせて、少子化対策推進県民会議において取りまとめられた宣言に沿って、各構成団体の情報発信ツールや市町村の広報紙などを活用し、官民協働による広報を県民運動として強力に展開します。
今後も、結婚や子育てを希望する方々が前向きな気持ちを持てる機運の醸成に加え、出会いの機会の充実や産後ケアなど子育て支援の充実強化を図り、若い世代や子育て世代の安心感を高めてまいります。
9 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和4年度高知県一般会計補正予算など3件です。
条例議案は、高知県個人情報の保護に関する法律施行条例議案など11件です。
その他の議案は、高知県が当事者である和解に関する議案など8件です。
報告議案は、令和3年度高知県一般会計歳入歳出決算など23件であります。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。