公開日 2012年03月12日
更新日 2014年03月17日
<14>緊急プランの取組で生徒・学校に変化 [平成24年 3月12日〕
教育委員会では、深刻な中学校の学力問題をはじめ、いじめや不登校など本県が抱える教育課題の解決を図るため、平成20年7月に「学力向上・いじめ問題等対策計画(学ぶ力を育み 心に寄りそう 緊急プラン)」を策定し、「学力、体力をまずは全国水準に引き上げる」、「不登校や暴力行為の発生率をまずは全国水準まで改善する」ことを目標に、学校・学級改革や放課後改革など5つの改革と体力づくりに積極的に取り組んでまいりました。
前回は、子どもたちの学力や体力、不登校や暴力行為など心の問題について、具体的な改善内容をご紹介させていただきましたが、生徒や学校にも大きな変化が生まれてきています。今回は、その内容をご紹介します。
1.中学生の学習習慣の確立について
全国学力・学習状況調査結果を見てみますと、課題の大きかった中学生の学習習慣や宿題への取組状況は着実に改善しています。
図1 中学生の平日の授業時間以外の学習時間(「30分未満」、「全くしない」割合の推移)
<図1の説明>
「授業以外で1日当たり学習する時間」を調査したところ、調査初年度の平成19年度では、本県の中学生の25%が30分より少なく、また、全く勉強していない生徒も11.5%に上る状況でした。その後、少しずつ改善傾向が見られ、平成23年度※では、30分より少ない生徒の割合は14%に、全く勉強していない生徒は5%台にまで減少しています。
※H23は国の調査を利用して県独自で9~10月に調査
図2 高知県中学生 宿題の取組状況(H19とH23の比較)
<図2の説明>
調査初年度の平成19年度では、宿題を「している」「どちらかといえばしている」と答えた中学生の割合は71.4%でしたが、平成23年度では76.4%となり、取組の状況は少しずつ改善しています。
こうした改善の要因としては、「単元テスト」や教科ごとに作成した「学習シート」の活用をはじめ、「放課後学び場」の設置による家庭学習の習慣化、学習意欲の向上を図ってきたことなどが考えられます。
1−1)単元テスト、学習シートについて
学習内容の確実な定着に向け、県では児童生徒一人ひとりの習熟の度合いを把握・分析するための「単元テスト」や、授業や家庭学習、放課後学習に活用できる「学習シート」(表1)を作成し、普及してきました。
各学校でこうした教材の活用が進んだことが、児童生徒の学習習慣の改善につながっていると考えています。
表1 各教科の学習教材
教科 | 教材名 | 対象 | 内容 |
---|---|---|---|
国語 | 高知県国語学習シート | 小1~中3 | 目的に応じて書く力や、国語の学習の仕方を身に付ける。 |
算数 数学 |
算数・数学シート | 小4~中3 | 家庭学習等で活用することで学習内容の定着に必要な学習量を確保する。 |
理科 | 高知県理科思考力問題集 | 小5、中2 | 科学的な思考力や表現力を身につける。 |
英語 | 英語ライティングシート | 中1~中3 | 単語や基本的な表現を繰り返して書いて定着させ、まとまりのある文章を書けるように段階的に練習する。 |
1−2)放課後学び場について
「子どもたちの安全・安心な居場所」「宿題を中心とした学習活動を行うことにより、家庭学習の習慣化と学習意欲の向上を図る場」として、「放課後学び場」の設置拡大を進めてきました。その結果、平成23年度では約40%の中学校で、放課後に生徒たちが自主的に参加できる「放課後学習室」が設置されています(表2)。
「放課後学習室」では地域の方々が学校教員と一緒に生徒一人ひとりの進度に応じた学習指導をしており、参加した生徒は、基礎的な学習をはじめ、自分の進路に合わせて教材を選択する自主学習に意欲的に取り組んでいます。
表2 放課後子どもプラン実施状況 (※中核市を除く)
H19 | H20 | H21 | H22 | H23 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
小学校 | 放課後児童クラブ | 実施市町村数 | 21 | 21 | 20 | 19 | 19 |
クラブ数 | 62 | 70 | 65 | 59 | 64 | ||
放課後子ども教室 | 実施市町村数 | 16 | 26 | 30 | 31 | 31 | |
教室数 | 40 | 64 | 75 | 96 | 100 | ||
小学校計(クラブ数+教室数) | 102 | 134 | 140 | 155 | 164 | ||
小学校実施率 | - | 59% | 65% | 74% | 84% | ||
中学校 | 放課後学習室 | 実施市町村数 | - | - | 14 | 18 | 20 |
教室数 | - | - | 23 | 33 | 39 | ||
中学校実施率 | - | - | 25% | 36% | 42% |
2.学校における組織的な取組について
学校では、学校ごとの教育目標を立て、その達成に向けた方策を全教職員が共有し、組織的な取組を行う学校が増えてきました。そうした中、学校全体で授業改善に積極的に取り組む学校が増えてきており、特に中学校では、授業研究を伴う校内研修の実施回数が増加しています(図3)。
図3 授業研究を伴う実践的な校内研修の実施状況(中学校)
(全国・高知県とも、平成19年度と平成22年度(全国学力学習状況調査)の比較)
こうした背景には、平成20年度から全ての小中学校で策定してきた「学校改善プラン」により、学校におけるPDCAサイクルが徹底されてきたことが大きな要因として考えられます。
2−1)学校改善プランについて
本県では、各学校における効果的な学力向上対策の実践に向け、学力向上のための具体的な到達目標とそのための取組を定めた「学校改善プラン」を全ての公立小中学校で策定し、それに基づく組織的な実践を行ってきました。県教育委員会は学校訪問等を通じて、この学校改善プランの進捗状況を把握・点検するとともに各学校の目標達成に向けた様々な支援を行っており、徐々にではありますが、各学校の学力向上に向けたPDCAサイクルが確立されてきています。
3.次期「重点プラン」に向けて
このように、緊急プランに基づく取組は、学習習慣の定着や学校における組織的な取組などにおいて大きな成果もありましたが、中学生の学力をはじめ、小中学生の体力については依然として全国水準に達しておりませんし、生徒指導上の課題についても厳しい状況が続いており、まだまだ道半ばであります。
緊急プランは今年度末で終了することから、現在、教育委員会では、2月議会でのご議論を踏まえたうえで、「高知県教育振興基本計画 重点プラン」を策定し、引き続き教育改革に取り組んでいくことにしております。
次回からは、この新たな重点プランの取組についてご紹介させてもらいます。
【問い合わせ先】 教育委員会教育政策課 電話 088-821-4731 電子メール 310101@ken.pref.kochi.lg.jp
<13>改革をより確実なものに [平成23年12月 1日〕
私が知事に就任した平成19年当時、本県の教育は、残念ながら、子どもたちの学力や体力、不登校や暴力行為といった心の問題は、いずれも全国最低水準にありました。
この大変厳しい状況を真摯に受け止め、責任を持って対応すべく、平成20年7月に策定した「学力向上・いじめ問題等対策計画(学ぶ力を育み 心に寄りそう 緊急プラン)」に基づき、「授業を変える」「放課後を変える」教育改革に、教育委員会とともに全力で取り組んでまいりました。
この結果、こうした教育課題は、徐々にではありますが改善が見られるようになりました。
今回は、課題解決のために特に力を注いだ3つの取組について、どのような対策をとり、その結果、どのような改善がされたかを紹介します。
1 子どもたちが確実に基礎学力を身につけるために
これまでの「全国学力・学習状況調査」や到達度把握調査の結果を分析した上で、すべての学校が学力向上に向けた学校改善プランを立て、PDCAサイクルに基づく組織的な実践を行ってきました。また、放課後の学び場を充実するとともに、授業改善や家庭学習習慣の確立のために、「算数・数学シート」や「国語学習シート」など新たな教材も作成、活用してきました。
県内の各学校では、「算数・数学シート」を基礎学力定着のための教材として継続的に授業等に取り入れ、理解を深め応用力を高める内容の「学習シート」や成果を確認・評価する「単元テスト」などとの組み合わせも工夫して、活用しています。また、「国語学習シート」は、家庭学習の中で、楽しみながら文章を書いたり、語彙(ごい)を増やしたりすることができる教材として、小中学校の全学年で活用されています。
さらに今年度は、小・中学生の科学的思考力を高める「理科思考力問題集」や、中学生の語彙力や書く力を高める「英語ライティングシート」を新たに作成、活用し、理科・英語についても一層の学力向上に取り組んでいます。
(現在では)
昨年度実施された「全国学力・学習状況調査」では、小学校は全国平均正答率とほぼ同じ水準に達し、中学校は数学、国語ともに平成19年度からの改善率が全国第1位となりました。
【図1 全国学力・学習調査の結果(全国平均正答率を100とした場合の高知県(公立)のポイント)】
2 子どもたち・保護者の悩みや課題を解消するために
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の拡充、24時間いじめ電話相談の開設など、「いつでも・誰でも・どこでも相談できる」体制を整備しました。また、「楽しい学校生活を送るためのアンケート(Q−U)」を実施し、教職員の子どもたちについての理解を深めるとともに、温かな人間関係に包まれた学級づくりを推進してきました。
(現在では)
全国の小中学生を対象とする調査(「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査結果」)の平成19年度と22年度の高知県の調査結果を比較しますと、依然厳しい水準ながらも、不登校や暴力行為などの心の問題についても徐々に改善傾向にあります。
【図2 児童生徒の問題行動等 生徒指導上の諸問題に関する調査結果】
高知県 | 全国 | 全国順位(ワースト) | |
---|---|---|---|
平成22年 | 13.2人 | 11.4人 | 4位 |
平成19年 | 14.9人 | 12.0人 | 2位 |
高知県 | 全国 | 全国順位(ワースト) | |
---|---|---|---|
平成22年 | 8.0件 | 4.4件 | 6位 |
平成19年 | 9.3件 | 3.7件 | 2位 |
高知県 | 全国 | 全国順位(ワースト) | |
---|---|---|---|
平成22年 | 1.7% | 1.7% | 13位 |
平成19年 | 2.8% | 2.1% | 2位 |
3 子どもたちの体力向上のために
平成21年度に「こうちの子ども体力アップアクションプラン」を策定し、魅力ある体育学習・体育的活動の充実、運動習慣の定着など5つの重点施策を中心に取り組みを進めてきました。
例えば、各学校での体育授業を充実させ、多くの子どもたちに運動を好きになってもらうための取組として、武道や水泳、器械体操などの外部指導員を派遣して、担任教員等と協力して、主に技能面の指導をしてもらったり、小学校の体育の指導方針や具体的なプログラムをまとめた指導資料を作成し、各学校に配布したりといった取組も進めてきました。また、体力向上に対する子どもたちや教職員の意識を高めるために、小学5年生・中学2年生を対象とした県独自の体力調査を継続的に行っています。
(現在では)
「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(図3参照)において、平成20年度から平成22年度にかけての体力の伸び率は、小学校・中学校で、男子・女子とも全国トップとなっています。
【図3 全国体力・運動能力等調査結果(小学5年・中学2年)】
*まだまだ道半ば。今年度は改善傾向をより確実なものに
改革の成果は着実に表れているものの、中学生の学力、小中学生の体力については依然として全国水準には達しておりませんし、生徒指導上の課題についても、厳しい状況が続いており、まだまだ道半ばです。
緊急プランの最終年度にあたる今年度は、これまでの取組を一層強化し、改善傾向をより確実なものとしていきます。また、これまでの改善内容の検証を踏まえ、次期計画を策定し、教育改革の取組をさらに進化させていきます。
【問い合わせ先】 教育委員会教育政策課 電話 088-821-4731 電子メール 310101@ken.pref.kochi.lg.jp
<12>県立高校での学力向上対策と就職支援 [平成23年1月27日〕
高校生は卒業後に進学あるいは就職することによって、社会への第一歩を踏み出します。そのとき一人ひとりが希望する進路を選択し、将来の夢を実現していくためには、進路に対するしっかりとした目的意識とそれに応じた学力が身についていることが重要です。
(学力向上対策)
このためには、まず基礎学力の定着を図ることが必要です。中学校から高校への学習へスムーズに移れるような教材づくりを支援するほか、放課後や夏休みの補習への指導員の配置など生徒のわからないところを丁寧に補う取組を進めています。あわせて、学校ごとに生徒の学習実態に見合った指導のあり方を検討し、改善につなげています。
また、大学等へ進学するための学力の向上にも力を入れています。本県の平成22年度の大学等への進学率は36.9%で、年々上昇しており、公立高校から国公立大学への進学者、国公立の難関大学や医学部への合格者も、年度によってばらつきはありますが着実に増えています。高知市以外の高校からの進学者も増加しています。しかし、全国水準と比較するとまだ十分ではありません。
このため、教員の校内研修を充実するほか、成果をあげている他県の学校視察や授業改善のための教科研究などを通じて教員の指導力を高める取組を進めています。また、生徒の進路実現の意欲を高めるため、高知大学、高知女子大学、高知工科大学の県内大学だけでなく、東京大学や京都大学など県外大学も含めた大学のオープンキャンパスへのバスツアーを実施しています。
(就職支援)
一方、就職については、全国的な景気低迷の影響もあり、就職内定率は平成19年の90.1%をピークに下降傾向にあります。このため、労働局等と連携して地元の企業や団体に対し高校卒業生の採用を求めるとともに、就職を目指す高校生がコミュニケーション能力やマナーなど社会人として必要な知識等を身に付ける講習会を行っているほか、就職アドバイザー9名を就職希望者が多い18の学校に配置して事業所訪問による求人開拓や就職希望者への面接指導、個別相談指導にあたっています。
また、学校での学習内容や将来の進路等に関係する産業現場等で就業体験を行うインターンシップにも取り組んでいます。学校だけでは学ぶことのできない知識や技術に触れるとともに、勤労観や職業意識を養います。今年度は1月末現在で、1,627名の生徒が参加し、のべ332社の企業にご協力をいただきました。そのほかにも、農業を学ぶ生徒が先進農家等で実習を行ったり、普通科の生徒が農業、林業を体験できる場を設けるなど、多様な職業選択の機会を設けています。
高校生が将来の希望をもって社会に出て、その中で大いに活躍していくことが本県の未来を切り拓きます。今後も全力で取り組んでいきます。
〔問い合わせ先〕 教育委員会高等学校課 電話 088-821-4907 電子メール 311701@ken.pref.kochi.lg.jp
<11> 幼児教育の推進と親育ち支援 〔平成22年12月15日〕
国では、子どもを大切にする社会の実現などをめざして、新しい子どもをめぐる政策「子ども・子育て新システム」を検討しており、この基本制度要綱が6月に公表されました。
これには、保育所と幼稚園などを一体化する「こども園(仮称)」の制度や多様なニーズに応じた保育サービスの提供、保育と幼児教育資格の共通化、子ども子育て政策に関する財源の一元化などが盛り込まれ、平成25年度の法施行に向けて、具体的な仕組みの検討が現在進められています。
本県では、全国に先駆け、平成15年度から保育所や幼稚園など制度の異なる施設に関する行政窓口を県教育委員会の幼保支援課に一本化し、就学前の子どもたちがどこにいても質の高い保育・教育が受けられるよう取組を進めてきました。また、高知県教育振興基本計画では、子育ての早い段階(乳幼児期)での教育とその子どもを育てる親の力を高めることの重要性を明記し、積極的な取組を行っています。
そこで、今回は、県が取り組んでいる幼児教育と親育ちの支援について紹介します。
<幼児教育について>
乳幼児期は、主体性や人とかかわる力、思考力、感性、表現する力など、人格形成の基礎を培う極めて重要な時期です。保育所・幼稚園などでは、保育士や幼稚園教諭といった「保育者」が、一人ひとりの子どもの思いや育とうとしている力を理解し、子どもが自分らしさを発揮して遊びや生活に取り組んでいけるよう保育を行っています。教育委員会では、より良い保育の実現のため、この保育者の資質や専門性の向上に取り組んでいます。
この取組の一つとして、指導主事や幼保支援アドバイザーを保育所・幼稚園などに派遣し、実際の保育を通して保育・教育の改善を図る支援事業を行っており、昨年度は68の保育所・幼稚園で延べ130回の研修を実施しました。また、幼児期の教育の成果を円滑に小学校につなげていくため、保育所・幼稚園と小学校の教職員が、互いの保育・教育内容や指導方法、子どもの育ちについて共通理解するための連携活動を支援しています。
<親育ち支援について>
子どもは、親や身近な大人が自分を温かく包みこんでくれている、自分を愛してくれていると感じることで、誰かが自分のことを分かってくれているという気もちや今の自分が好きだという自尊感情が高まると言われています。それが、将来子どもが失敗や挫折などの困難を乗り越えていくときの力となります。
そのためには、幼い時期によりよい親子関係をしっかり築いておくことや保育所・幼稚園をはじめ社会全体で子どもたちを見守り、育てていくことが大切だと考えています。そこで、本県では昨年4月に専任の「子育て・親育ち推進監」を配置するとともに、幼保支援課に「親育ち支援チーム」を置き、親の子育て力の向上と良好な親子関係の構築に取り組んでいます。
具体的には、就学前の保育所・幼稚園等の保護者を対象とした講話や子育て相談の実施、保育現場で日常的に親育ち支援を行ってもらうための保育者への研修などを行っており、昨年度は1,420名の保護者と441名の保育者に参加していただきました。
さらに今年度は、これに加え保育所・幼稚園などで日常的に親育ちの支援を行えるよう、中核となる保育者の養成のための研修を実施しています。また、テレビやラジオ、新聞等を通じて子育てで大切にしたいことや子どもにかかわる時のポイント等をお伝えするなど、子育てに関する理解を深めていただけるよう広報活動も行っています。
今後も引き続き、県内の子どもたちの心身ともに健やかな成長を目指し、幼児教育のさらなる推進と、子育て力の向上に取り組んでいきます。
[お問い合わせ先] 教育委員会幼保支援課 電話 幼児教育088-821-4881 親育ち支援088-821-4889
電子メール 311601@ken.pref.kochi.lg.jp
<10> 子どもの読書活動の推進 〔平成22年12月 8日〕
読書は、子どもたちの豊かな心を育み、また、自らが学ぶ力を身に付けるために、大変重要な活動です。
現在、県内のほとんどの小中学校では、全校一斉読書の時間を設け、読書習慣の定着に取り組んでいますが、全国学力・学習状況調査の結果では、「家や図書館で読書を全く(ほとんど)しない」生徒の割合は、小学生で約4割、中学生で約5割となっているなど、授業以外での読書が十分でなく、また、読解力の向上にも結びついていないことが分かっています。このため、家庭や学校、また、地域での読書環境の充実が必要です。
こうしたことから、教育委員会では、子どもたちに自発的に本を読んでもらうこと、質の高い読書を行ってもらうことを目標として、特に、この時期にしっかりと本を読んでほしい中学生を対象として、次の3つの事業に取り組んでいます。
(1)読書楽力検定の実施
本に触れるきっかけづくりを狙いとして、文学や歴史、科学など多様なジャンルから出題し、図書館や図書室等で実際に本を開き、問題を解く検定です。全問正解者は「読書名人」となり、あとは正解率により1級から4級の認定証が贈られます。平成20年度から実施しており、過去2年間で受検者は3,861人。読書名人は13人です。
(2)「子ども司書」養成講座の開催
本好きで、読書活動に意欲のある中学生に「子ども司書」になってもらい、周りの友人に読書の楽しさや大切さを広めていく推進役として活動してもらうものです。そのための研修(基礎・専門研修16時間、実技研修18時間)を夏休みや土日に実施しており、昨年度と今年度、併せて75人が受講しています。
(3)「高知県の親が贈る133冊」の作成・配布
昨年度、全ての中学校の個人や団体から友だちに贈りたい1冊を推薦してもらい、「高知県の中学生が贈る133冊」というブックレビュー(推薦図書リスト)にまとめ、全中学生に配布しました。今年度は、その続編として中学生の保護者の皆様から親が子どもに贈りたい1冊を推薦していただき、「高知県の親が贈る133冊」を作成し、配布します。
また、小中学校の学校図書館には、県内20校に読書教育の専任の教員(学校図書館教育推進教諭)を配置するとともに、全ての小中学校に学校図書館活動を活性化するための「学校図書館活動ガイドブック」と、義務教育9年間で子どもたちにぜひ読んでほしいお勧め図書リストブック「きっとあるキミの心にひびく本」を配布するなど、学校の図書館をもっと使ってもらう取組を進めています。
現在、県内の13町村には公立図書館がなく、公民館などに図書室を置いているだけのところや、また、公立図書館があっても遠くて気軽に利用できない地区も多いなど、地域での読書環境には厳しいものがあります。
このため、昨年度から、読書環境の厳しい地域のある17市町村に「子どもの読書活動支援員」を配置しました。併せて、公民館図書室等の図書のある施設の整備や本の貸し出し業務、読み聞かせ会や読書イベントの開催等に取り組んでいます。
これらの事業を総合的に進めることで、学校はもちろんのこと、家庭や地域での読書活動を推進し、子どもたちの健やかな育ちや豊かな学びにつなげてまいりたいと考えています。
〔問い合わせ先〕
教育委員会生涯学習課 電話 088-821-4629 電子メール 310401@ken.pref.kochi.lg.jp
<9> 私立学校の教育力向上を支援します 〔平成22年10月 6日〕
学力向上をはじめとする教育改革を進めていくには、公立学校の改革とともに、県内の高校生の約25%、中学生の約16%が在籍する「私立学校」でも教育力の向上などに取り組んでいただくことが重要です。
県内の私立学校は、それぞれの建学の精神に基づいた教育を実践。進学やスポーツなどで多くの実績を残し、特色ある教育機会を提供するとともに、多くの人材を社会に送り出してきました。
これまで、県内の私立学校には、県が国の補助金を受けたうえで一定額を継ぎ足しして、各学校の経常的な運営経費に対して補助を行ってきましたが、私立学校の経営環境は、少子化などに伴って厳しさを増しており、教育活動をさらに充実させていくには、その財源が課題となります。
このため、本県では、5年間据え置いていた私立高等学校の運営費補助金の生徒一人あたりの補助額を本年度から引き上げ、教育内容の充実と保護者負担の軽減、学校経営の安定化を強化していただくこととしました。
また、これまでも、運営費補助金とは別に、伝統・文化やキャリア・職業教育など特色ある教育の実践に対して補助をしていましたが、これを充実し、各学校の特色ある取組をこれまで以上に支援することとしました。取組内容は学校によって違ってきますが、一人ひとりへの学習指導の充実や教員研修の実施などの学力向上対策や、大学等のオープンキャンパスへの参加促進、企業訪問や学校での講演会の実施などの進路指導の充実等が考えられます。
このほか、いわゆる高校無償化政策により、本年度から私立高校生のいる世帯には就学支援金が支給されることとなりましたが、国の制度では対象とならない留年生に対しても、経済的な理由で就学を断念することがないよう、県独自で支援金を支給することにしました。また、この就学支援金の有無にかかわらず、家庭の経済的理由から学校が授業料を減免した場合の支援も引き続き行っていきます。
これらの取組は、本県教育の一翼を担う私立学校がそれぞれの特性を生かした教育環境の充実を行うことで、子どもたちの能力が最大限発揮できるよう、また、生徒一人ひとりが将来の夢や希望に向かって進路選択ができるように実施するものです。このことが、県全体の教育力を高め、県内すべての子どもたちが未来を切り拓いていくことにつながるものと大いに期待しています。
〔担当課〕 私学・大学支援課 電話088-823-9135 電子メール140901@ken.pref.kochi.lg.jp
<8> 心を耕す教育のすすめ −道徳教育の推進ー 〔平成22年9月10日〕
土佐の豊かな自然と家族や友人に囲まれて育ち、数多くの出会いを果たす中で「志」を抱いた坂本龍馬。今、その龍馬のふるさと高知で、人と関わって逞しく生き抜く子どもたちは育っているのか。そう振り返ったとき、大変厳しい現状があります。
全国の小中学生を対象とする調査では、本県の不登校や暴力行為の発生率は改善しているものの、まだまだ全国水準より高い状態が続いています。また、「自分に良いところがあると思うか」という自尊感情に関する問いや、「人が困っているとき進んで助けているか」という人と関わることについての問い、「学校のきまりを守っているか」という規範意識についての問いに対して肯定的に回答する中学生は、いずれの設問も全国平均より3ポイント以上低く、より良い生き方や仲間との関わりを見出せず、悩み迷っている子どもたちの姿が浮き彫りになっています。
「心の教育は家庭の役割だ」「いや、学校で」などと議論をしている場合ではありません。子どもたちの心身の健やかな成長は、大人一人ひとりの使命であるとの思いを持って、本県の子どもたちの豊かな心を育んでいかなければなりません。
このため、今年度から3年間、子どもたちの「心を耕す」教育を進めており、その中核的な取組として、道徳教育を重点的に実施することとしています。具体的には、道徳教育の専門性を持った「道徳推進リーダー」を養成するとともに(本年度14名)、県内の地区ごとに重点推進校(本年度10校)を指定し、模範授業を公開したり、具体的な指導手法を提示するなどの取組を行っています。また、道徳の時間で使う読み物資料の各校への配布とそれを生かすための研修も行っています。
こうした取組を通して、子どもたちが自分の考えを述べ、友達と話し合い、考えを深め、自分自身でより良い生き方を自覚していくことができるよう道徳の授業の改善を支援していきます。なお、写真は、香美市立楠目小学校の道徳の授業の風景ですが、登場人物の行動について、肯定的に思えばピンク、否定的に思えばブルーを示す「心情円」を使って、それぞれの思いを語り合っています。
学校における道徳の時間が子どもたちの心に響き、心を耕すものとなれば、人との関わりに積極的になり、より逞しく生きていこうとする力をつけることができます。保護者や地域の皆様には、ご家庭で道徳の時間の様子を話題にしたり、道徳の時間を参観していただいたりして、家庭・地域・学校が連携した道徳教育が進むようご協力をいただきたいと思います。
龍馬のふるさと高知には、未来を切り拓いて逞しく生き抜く子どもたちが育つ、そう確信して、「心を耕す教育」を推進していきます。
【お問い合わせ先】 高知県教育委員会小中学校課 電話088-821-4638
電子メール 310301@ken.pref.kochi.lg.jp
心を耕す教育のマスコットキャラクター「高知Cocoron」
<7> 一人ひとりの子どもを大切にする学校づくり −不登校対策ー 〔平成22年9月7日〕
子どもたちの豊かな心を育み、また、学ぶ意欲を高めるためには、一人ひとりを大切にする学校づくり、学級づくりが不可欠です。学級生活の満足度が高い子どもは学業成績も高いという研究報告がありますが、こうした学級では、子どもが安心して過ごせ、学校での授業や活動に自信を持って取り組むことができます。
生徒指導上の諸問題に関する国の調査では、本県の小中学校における不登校や暴力行為の発生率は全国平均よりも高く、年々改善は見られるものの、厳しい状況にあることには変わりがありません。このため、これらの問題の解決を目指して、自分や他の人の大切さを理解すること、また、それが態度や行動に表れるようにすることなど、自尊感情を育む取組を進めています。今回は、その一つ、不登校対策について紹介します。
平成20年7月に策定した「学力向上・いじめ問題等対策計画(学力を育み心に寄りそう緊急プラン)」では、4年間で不登校の発生率を全国水準まで改善するという目標を掲げています。その取組の一つとして、県内すべての小中学校で児童生徒の状況を客観的に把握するため、「楽しい学校生活を送るためのアンケート(Q−U)」を行っています。このアンケートは、一人ひとりの児童生徒の学級における満足度や学級集団の中での状態を把握するもので、予防的な観点からのアプローチを行うことができることから、一人ひとりを大切にする学校・学級づくりに積極的に生かしています。これによって、小学校から中学校に進学した際に、小学校との生活様式の違いになじめず、不登校やいじめ等が急増するという、いわゆる「中1ギャップ」の解消につなげます。
また、「不登校・いじめ等対策小中連携事業」では、平成21年度から不登校対策に重点的に取り組む4市(香南市、高知市、土佐市、宿毛市)で、小学校から中学校への連続性のある取組を研究・実践しています。例えば、中学校1年生を対象とした集団宿泊活動(仲間づくり合宿)など人間関係づくりを促進するための活動や、それを支援する県教育委員会によるサポートチームの設置を行ってきました。4市からは、「長期欠席者や不登校児童生徒数が前年度と比較すると大きく減少した」、「数は大きく変化していないものの教職員の意識が高まり取組を前進させることができた」、「学校や学級の状態が落ち着いてきた」などの報告があり、少しずつ成果が出始めています。
今年度は、4市に加えて新たに6市町村(安芸市、四万十市、芸西村、いの町、佐川町、大月町)で重点中学校を指定して、このような取組を拡大しています。
近年、家庭や地域における子どもへの関わりが弱くなっていると言われています。不登校となる原因は様々ですが、子どものがんばりを褒めたり小さな成長を認めたりすることなど、小さい頃からの家庭や地域における声かけは、子どもの健やかな成長に極めて大きな意味を持ちます。学校や教育委員会の取組へのご理解のほか、地域での温かい声かけなどにご協力をお願いいたします。
〔お問い合わせ先〕 高知県教育委員会人権教育課 電話 088-821-4765 電子メール 310801@ken.pref.kochi.lg.jp
<6> 学力向上対策の成果 −平成22年度全国学力・学習状況調査の結果からー 〔平成22年9月6日〕
全国の小学校6年生と中学校3年生を対象に実施された「平成22年度全国学力・学習状況調査」の結果が公表されました。4回目となる今年の調査は、国の方針により全体を対象としない「抽出調査」として実施されましたが(本県の抽出率は小学校50.4%、中学校71.1%)、本県では、一人ひとりの子どもたちに確かな学力を保障するためには、全国的なデータと客観的に比較して子どもや学校ごとの状況を把握する必要があるという考えから、抽出されなかった学校も参加し、全ての学校で実施されました。
今回公表されたのは抽出分の結果ですので、過去3回の悉皆調査の結果と単純には比較できませんが、小学校はほぼ全国水準の正答率に、中学校は全国平均との差が縮まっており、本県の小中学生の学力は確実に改善しています。
小学校では、小学校国語の「活用」に関するB問題と、小学校算数の「知識」に関するA問題で全国平均を上回っているほか、それ以外の問題も全て正答率が上昇し、小学校はほぼ全国水準の正答率となりました(全国順位は、国語30位、算数20位)。
特に、昨年度、全国平均から引き離されつつあった算数のA問題が3.4ポイントアップし、全国平均を1.1ポイント上回る過去最高の結果となりました。これは各学校が単元テストの活用をはじめ早期に取組の改善を図ったことによるものだと考えています。
また、第1回目の平成19年度調査で、特に厳しい結果だった中学校は、これまでも年々全国との差を縮めてきましたが、今回もさらにその差が小さくなりました。平成19年度からの変化(伸び幅)は数学、国語とも全国1位です(小学校の伸び幅は国語が全国11位、算数が6位)。この伸びは、生徒の頑張りと保護者の皆様の協力の結果だと思います。また、学校現場や教育委員会が一昨年から取り組んできた学力向上対策の効果が表れたものです。しかし、全国順位は国語45位、数学46位と下位にあることには変わりがなく、教員への指導力強化の取組などこれまで中学校に特に注力して対策を講じてきたことを考えると、十分とはいえない結果でもあります。
小学校、中学校ごとの結果を詳しく見てみると課題も見えてきます。小学校の国語では、文章の構成や論理を考えて回答する問題や必要な情報を関係づけて書くことなどの正答率が低いままです。算数では、表やグラフの数値を読み取って回答を導き出すことや判断した理由を答える問題ができていません。
中学校の国語は、文脈によって漢字や語句を選ぶことや、資料・情報を分析して自分の考えを書くことなどに課題があります。数学は、これまで大きく開きがあった、式を目的に応じて変形する問題の正答率が65%を超えるなどの改善もみられますが、分数の入った方程式の正答率は低いままです。
特に算数・数学に言えることですが、B問題のような学んだ知識を生かして考えることや、知識と知識とを関連づけて新たな知識を獲得することなど、いわゆる「活用」に課題があります。こうした力は、反復練習だけでは十分ではなく、授業の中で、知識によって問題を解決できたという体験を重ねることで身に付いていくため、日々の授業の質を高めていく取組をさらに進めていかなければなりません。
衝撃的だった平成19年度の全国学力・学習状況調査の結果を受けて、県教育委員会はこれまで、家庭学習や学校における補習体制の充実に向けた様々な取組を行ってきました。人的な支援や教材の提供も含めて、学校を支援する施策は既にほぼ整ったといえます。今回の全国学力・学習状況調査の結果にも見られるように、学力の状況が改善傾向にあることや、家庭での学習時間が30分未満の生徒の割合が減少していることなど、その方向性に間違いはありません。後はこれを一人ひとりの子どもの学力の定着・向上に向けてどのように効果的に実行していくかにかかっています。個々の施策について、教育委員会とともに「配付した教材が各学級で実際に有効活用されているかどうか」「人的な配置が、実効性を持って機能しているか」を一つひとつ個別に検証し、各学校や市町村教育委員会にとって本当に何が必要なのかを明らかにしながら、具体的に「授業を変える」「放課後を変える」取組をさらに徹底してまいります。
〔担当課〕高知県教育委員会 小中学校課 電話088-821-4639 電子メール 310301@ken.pref.kochi.lg.jp
<5> 体力向上に向けた体育授業の改善 〔平成22年8月17日〕
平成20年度に初めて実施した「全国体力・運動能力、運動習慣等調査(全国体力テスト)」の結果が公表されてから2年が過ぎました。体力合計点で、小学校5年の男女がともに全国47位、中学校2年の男子45位、女子46位という結果は、少なからず本県に衝撃を与えました。
県教育委員会では、この結果を受けて「こうちの子ども体力アップアクションプラン」を策定するとともに、有識者や教員からなる「体力向上支援委員会」を設置。平成23年度までの3年間の計画で、体力向上のための具体的な取組を始めました。
平成21年度の調査では、体力合計点で、小学校5年の男子40位、女子が38位、中学校2年の男子42位、女子40位と改善し、前年度と比較した改善率は、小学校男女、中学校男女とも全国1位という結果となりましたが、調査結果を分析したところ、「体育授業を工夫している学校の体力点が高い傾向にある」こと、また、高知県は「体育授業を工夫している学校の割合が全国平均より低い」ことも分りました。このことは、当たり前のようですが、体力向上には体育授業が大きな役割を果たしていること、また、それぞれの学校の取組次第で体力向上が図られることを示しています。
アクションプランでは、「魅力ある体育学習・体育的活動の充実」「運動習慣の定着」「校内指導体制の確立」を掲げて、様々な取組を進めています。例えば、各学校への外部指導者の派遣があります。専門性が高くなる小学校高学年や中学校の武道等の授業に外部指導者を派遣し、担任教員等と協力しながら主に技能面を指導していただくものです。今年度は、6月中旬から水泳や器械運動、陸上運動、武道など、それぞれの学校の要望に沿った専門指導者を派遣しています。
また、小学校の体育(運動領域)には教科書がないため、指導の指針が教員任せとなりやすい面があります。そこで、平成23年度から実施される新学習指導要領の改訂のポイントや授業の参考となる単元計画など、日々の授業に活かせる内容を盛り込んだ指導資料を今年2月に作成し、小学校の全教員に配布しました。今年度は、新学習指導要領で体系化された技能について、その指導方法を分かりやすくまとめた改訂版を作成しており、2学期には配布できる予定です。
言うまでもありませんが、「できた!」という成功体験は、子どもたちに運動に対する自信を持たせるだけでなく、運動を好きにさせ、運動を積極的に行う態度を育てることにつながります。これには教員一人ひとりの指導力が求められますので、こうした資料を配布する際には、校内研修で内容の理解を深めるなど、各学校において体育授業の充実が図られる工夫をしています。
体育の授業が充実することで、本県の子どもたちが今まで以上に運動が好きになり、運動習慣が定着していくことで、心も体も元気な子どもたちになるよう取組を進めていきます。
【お問い合わせ先】
教育委員会スポーツ健康教育課 電話088-821-4929 電子メール310501@ken.pref.kochi.lg.jp
<4> 放課後対策の拡充 〔平成22年8月10日〕
学力の向上のためには、自学自習の基本である家庭学習の定着が欠かせません。それぞれの家庭で、保護者の皆さんが毎日の宿題を点検したり、励ましたりしながら子どもとのコミュニケーションを図り、家庭と学校が連携して子どもたちの学ぶ意欲を培う環境をつくることが必要です。
全国学力・学習状況調査で正答率がトップクラスの秋田県や福井県では、予習から授業、授業から復習へという学習サイクルを子どもたちが身につけられるよう、宿題を確実に行う習慣づけを、学校と各家庭が協力して進めています。
核家族世帯や共働き世帯が多い高知県で、この学習サイクルを定着させるためには、放課後児童クラブや放課後子ども教室といった「放課後学び場」が、学校と家庭をつなげる場として、また家庭に代わって学習ができる場として特に重要だと考えています。
現在、本県の約7割の小学校区に約230カ所の放課後児童クラブや放課後子ども教室が設置され、地域の指導員や教員OB、大学生や高校生など多くの方が協力して、子どもたちの放課後の学習を支援しています。ここでは、宿題や読書に黙々と取り組む上級生と、それをお手本に自ら宿題に励む下級生の姿などがみられます。
一方、中学校では、約3割の学校で放課後に生徒たちが自主的に参加できる「放課後学習室」を開設し、地域の方々が学校教員と一緒に生徒一人ひとりの進度に応じた学習指導をしています。平成22年度の全国学力・学習状況調査で見られるように、本県の中学生の13%は、平日、授業以外には30分未満しか勉強をしていない、全く勉強していない生徒も約7%いるなど、家庭学習の時間が全国に比べて少ない状況にあります。これまでの取組によって改善しつつありますが、家庭での学習が十分に定着しているとはいえません。
放課後学習室に参加する生徒たちは、中学校までに身につけなければならない基礎の学習や、自分の進路に合わせて教材を選択する自主学習に意欲的に取り組んでいます。
このような「放課後学び場」を今後さらに拡大していく必要があります。未設置の校区での立ち上げや、経済的理由などから利用を控えることがないよう利用料の減免制度も設けていただくなど、設置主体の市町村を支援します。
また、この取組には、何よりも、地域の子どもたち一人ひとりを見守っていただける方々が必要です。現在、県教育委員会が委託運営しているNPo生涯学習支援センターの「放課後学び場人材バンク」には約220名が登録しています。登録いただいた方々はもとより、「放課後学び場」を様々な形で応援いただいている皆様の力を合わせ、それぞれの地域の子どもたちの健やかな育ちと豊かな学びを保障できるよう取り組んでいきます。
〔お問い合わせ先〕
生涯学習課 電話 088-821-4897 電子メール310401@ken.pref.kochi.lg.jp
<3> 算数・数学と国語の学力向上対策 〔平成22年6月22日〕
学力の向上、つまり学習内容をしっかり定着させるためには、児童生徒一人ひとりの習熟の度合いを把握・分析したうえで、学習指導を行うこと、また、家庭学習も含めた学習の質の向上と量の確保が必要です。特に、論理的な思考を養い、他の教科の基礎ともなる「算数・数学」と「国語」の対策が急務です。
算数・数学については、これまで「単元テスト」を実施してきました。平成20年度に中学校において取組をスタートさせ、順次対象学年を拡大して本年度は小中学校のすべての学年で行う体制が整いました。これは〔平行四辺形と三角形の面積〕といった学習内容の小さなまとまり(単元)ごとに学校で行うテストで、小学校では2から4つの単元ごとに年間6回、中学校では1つの単元ごとに行い年間6から8回実施します。問題の配信や結果の入力などをWEBサイト上で行うことで、学習のそれぞれの段階で個人や学校単位の習熟度を、設定正答率や県全体の平均正答率と比較して評価することができます。その結果を見て、発展的な内容の「チャレンジ問題」に進むのか、あるいは基本的な内容の「フォローアップ」に取り組むのかといったように随時授業に生かすことができます。
今年はこれに加えて、小学校4年生から中学校3年生までの学年を対象として、家庭学習や放課後学習で使う「算数(数学)シート」と、授業などで活用できる「学習シート」を新たに作成し、各学校で活用を始めました。
この「算数(数学)シート」は、身に付いていなければ後の学年の学習に影響を及ぼす基本的な問題で構成されており、これに継続的に取り組むことで基礎学力を定着させることをねらいとしています。また、単元テストの問題とどう関連するかが分かるように作られているため、テストの結果をもとに、定着が不十分な問題についてはこのシートを利用して一人ひとりの事後指導に生かすことができます。
「学習シート」は、全国学力テストのB問題(応用を問うもの)に対応する内容で、各学年に6枚。主に授業で活用して論理的な思考方法についての学習を深めます。学年末には一年間の学習の定着状況を把握するための「確認テスト」を行います。
つまり、一年を通して、学校での通常の授業に加え、学習をより深めるための算数(数学)シートと学習シート、その成果を確認・評価する単元テストを組み合わせ、着実に学力の定着につなげていくということです。
国語については、これまで3回の全国学力・学習状況調査の結果から、小中学校とも、目的や意図に応じて話したり、書いたり、読んだりすることについて課題があることが明らかになりました。この分析結果をもとに、文脈に即して漢字やことばを活用する力や、短い文にまとめて書く力、文章を要約して読み取る力などが付けられるよう、授業内容の改善を図ることが求められています。具体的には「よりよい文章を視写したり、要約したりする活動」「意見や考えを短作文にまとめて書く活動」「漢字や言葉を広げて活用する活動」を日々の授業の中で重視する必要があります。
こうした活動を充実させるために家庭学習で活用する教材として、小中学校の全学年を対象とする独自の「国語学習シート」を作成することとしました。このシートは、各学年ごとに20枚で、「漢字」「語句」「短作文」「視写」「文章の要約」などのテーマごとに、楽しみながら文章を書いたり、語彙(ごい)を増やしたりすることができるものです。
例えば「漢字」については、各学年に「かん字じてんづくり」「手作り漢字辞典」「わたしの漢字学習ノート」といったシートが用意され、学年の進行に応じて「読み方」「筆順」「意味」「使い方」「熟語」「漢字の成り立ち」等を調べて書きこむようになっています。これを家庭学習や放課後学習等で利用することで、漢字に対する理解を深めながら自ら学ぶ力を身に付けることができます。現在作成中ですが、夏休み前を目途に、できたものから順次配布し、9月には全てのシートが各小中学校に届く予定となっています。
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<2> 全国学力・学習状況調査と学校改善プラン 〔平成22年5月26日〕
平成19年度に再開された全国学力・学習状況調査からは、本県の子どもたちの学力(国語、算数・数学)が全国と比較してどの水準にあるのかを客観的に見ることができます。
初年度の平成19年度には全国との大きな差が明らかになり、本県に大きな衝撃をもたらしました。これを受けて多方面からの学力向上対策に取り組んできた結果、その後の調査では、主に知識を問うA問題、主に活用の力を問うB問題ともに正答率が全国平均に近づくなど、学力の定着は徐々に進んできました。ただ、依然として全国平均との差は顕著であり、本県の学力レベルが厳しい状況にあることは変わりません。
本県の子どもたちの学力がいつからこうした状況にあったのかを見てみますと、昭和39年度の全国中学校学力調査の結果でも全国順位は現在とほぼ同様の状況にあります。40年以上にわたり、学力レベルは改善されないまま今日に至っているということです。平成9年度から10年間取り組んだ『土佐の教育改革』でも、「子どもたちの基礎学力の定着と学力の向上」を柱の一つに位置づけていたものの、具体的な成果に結びついていませんでした。
また、近年、本県の有効求人倍率は全国の半分程度で推移しているという厳しい経済・雇用情勢が続いており、県外に就職先を求める高校卒業者の割合も急速に高くなっています。就職においても、大学進学と同様に全国水準の学力や応用力を身につけていることが求められています。
人生で大切なことは、勉強することだけではない、良い大学や会社に入ることだけではない、それぞれの子どもの個性に応じて考えるべきだという意見もあります。しかし、それは将来についての選択肢があってこそ言えることです。学力が十分に身についていないために、その選択肢が狭められることがあっては断じてなりません。今、やらなければならないことは、子どもたちに自分の力で将来を切り開くことができる学力を身につけさせることです。平成20年度に策定した『学ぶ力を育み 心に寄りそう 緊急プラン』の中で、まずは学力を全国水準に引き上げることを目標に掲げ、県をあげて取り組んでいる最大の理由はここにあります。
平成19年度以降4回目となる今年度の全国学力・学習状況調査は、これまでの悉皆調査から抽出調査に変更され4月20日に行われましたが、本県では抽出されなかった全ての小中学校も参加を希望し、全県344校の一斉調査として実施されました。引き続き、これまでの学力向上の取組を検証することが可能となったことに加えて、それぞれの市町村や各学校の状況に応じた具体的な手立てを講じることができることになりました。全校参加には大きな意義があると考えており、全国的にも、抽出・希望を合わせて73.5%の小中学校が参加し、本県同様100%実施の県も13県を数えました。これは学力に関する全国調査の必要性を多くの関係者が認めた結果だと思います。
今回の調査の全体の結果は7月の後半までに公表される見通しですが、すでに教職員が調査問題を分析するとともに、解答用紙をコピーして学校独自に採点。その結果をもとに、学校の実情に応じて直ちに授業内容の見直しを行うなど、本年度の調査を織り込んだ取組も始まっています。こうした対応も含めて、各学校の学力向上対策の中核となるのが、『学力向上のための学校改善プラン』です。これは各学校が、全国学力・学習状況調査やこれまでに行ってきた到達度把握調査などの結果から自校の学力に関する課題を把握したうえで、学力向上のための具体的な到達目標とそのための取組を明確にしたものです。平成20年度から全公立小中学校で策定しており、日々の活動の中で全教職員が目的意識を共有し、組織として一体的に取り組む指標です。県教育委員会は学校訪問等を通じて、この学校改善プランの進捗状況を把握・点検するとともに目標達成に向けた様々な支援をしています。
全国学力・学習状況調査で明らかとなった本県の子どもたちの学力や学習状況に関する課題は小さくありませんが、学校改善プランによる各学校の対策が全ての教室で確実に実行されることこそが、確かな学力の定着につながると確信しています。
【お問い合わせ先】
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<1>高知県の教育改革を紹介します 〔平成22年4月30日〕
高知県では、厳しい状況にある学力や体力の問題、また不登校などの教育課題を解決するため、平成20年7月に「学力向上・いじめ問題等対策計画(学ぶ力を育み 心に寄りそう 緊急プラン)」を策定し、学校・学級改革や放課後改革など5つの改革と、運動習慣の定着化などの体力づくりに積極的に取り組んできました(平成21年3月25日及び4月14日付けトピックス『教育改革への取組』参照)。
こうした取組により、昨年の全国学力・学習状況調査では、中学生の学力は全国平均との差が徐々に縮まっていますし、全国体力・運動能力、運動習慣等調査では、小中学校とも対前年の改善率が全国トップという結果が出ています。また、不登校や暴力行為なども徐々にではありますが改善傾向にあり、明るい兆しも見え始めています。
このことは、一人ひとりの子どもたちの頑張りはもちろんのこと、地域や家庭においても、放課後や週末における学びの場の確保などでさまざまなご協力をいただいた結果であり、本当に県民の皆様にも感謝申し上げたいと思います。
しかし、全体の結果で見れば、全国水準と比較してまだまだ厳しい状況にあることは変わっていません。
県民誰もが幸せで安心して暮らしていける高知県にしていくためには、厳しい状況にある社会や経済の諸課題も、教育によって解決する気概を持って取り組まなければならないと考えています。このため、改善の兆しが見え始めた今、教育改革の取組をさらに加速するため、学力向上を始めとして具体的な対策を強化しました。
このシリーズでは、今年度の重点的な取り組みを順次紹介していきます。まず、次回は、「全国学力・学習状況調査」と学校改善プラン」についてご説明します。
【お問い合わせ先】
教育委員会教育政策課 電話 088-821-4731
電子メール 310101@ken.pref.kochi.lg.jp
ホームページ http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/310101/
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