公開日 2013年03月28日
更新日 2014年03月31日
(15)高知県版第2弾 南海トラフ巨大地震による震度分布・津波浸水予測の概要〔平成25年3月28日〕
前回は、下水道の地震・津波対策についてご紹介しました。
今回は、津波避難シェルターについてご紹介する予定でしたが、高知県版第2弾震度分布・津波浸水予測に内容を変更してご紹介します。
1 高知県版第2弾震度分布・津波浸水予測の概要
高知県では、今後進めていく地震・津波対策の根幹となる震度分布・津波浸水予測を昨年12月に公表しました。
今回の予測は、東日本大震災も踏まえ内閣府が昨年8月に公表した、現時点における最大クラスの震度分布・津波浸水予測をもとに、本県の最新の地形や地盤データを反映したものとなっています。そのなかで、津波による浸水については、河川や海岸の堤防が機能しない最悪の状態を想定して計算しました。
また、今回はより具体的なイメージをもって津波避難計画づくりなどの事前の備えを行っていただくため、揺れの強さや浸水の範囲だけでなく、いろいろなデータをお示ししています。
詳しくは、県庁ホームページでご覧ください。
URL http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/010201/nannkai-3.html
2 地震・津波を「正しく恐れる」ために
最大クラスの地震・津波の発生確率は極めて低いものですが、こうしたことも起こり得ることを念頭に置いて、県民の皆さまの生命を守る対策に取り組む必要があります。
ただ、次の地震・津波がこの想定どおり起こるとは限りませんし、いつ起こるのかも現在の科学では正確には分かりません。
県民の皆さまには、この想定を見ていたずらに怖がることなく、かといって油断することもなく、地震・津波の特性を正しく理解し、しっかりと備えていただきたいと思います。
また、今回の公表に際しては、この予測を見て何が分かるのか、地震・津波に対してどのように備えていくべきかをあわせてお示ししています。揺れや津波に関する情報と使い方の例は以下のとおりです。
県民の皆さまには、これらをご活用いただき、避難路・避難場所の再点検や避難訓練の実施などを進めていただくようお願いします。
○公表した情報
揺れに関する情報 | 分かる内容 |
(1)震度分布図 | どのくらい揺れが強いのか |
(2)地震継続時間分布図 | 体に感じる揺れ(震度3以上)が続く時間 |
津波に関する情報 | 分かる内容 |
(3)津波浸水予測時間図 | 避難行動が取れなくなる深さ(30cm)の津波がやってくる時間 |
(4)津波浸水予測図 | 津波による最大の浸水の深さと浸水する範囲 |
(5)津波浸水深時間変化図 | 津波からの避難を継続しなければならないおおよその時間 |
(6)津波浸水深・津波痕跡重ね合せ図 | 津波浸水予測や過去に発生した津波で「同じもの」は一つもないこと |
○使い方の例
例1) 避難に使える時間を確認する |
(3)の時間から(2)の時間を引き算する。 |
例2)避難場所を決める |
(4)により、例1で確認した時間内に行ける場所を選ぶ。 |
例3)避難場所の滞在時間をイメージする |
(5)でどのくらい津波が続くか、真夏や真冬で長時間避難しなければならないことを想定しておく |
例4)避難訓練をする |
例2で決めた避難場所までどのくらいで避難できるかを試す。その時間を縮めるために繰り返し訓練を行う。 |
3 県の取り組み
県では、発災直後の県民の皆さまの生命を守ることに直結する、津波避難対策や災害時における医療救護活動、総合防災拠点の整備などは、この最大クラスに対して備えることとして、全力で取り組みを進めています。
昨年3月には、県内で30mを超える津波高が想定されるなど、非常に厳しい結果が内閣府から公表されました。そこで、津波からの避難方法の選択に係るガイドラインの策定への着手や、「こうち防災備えちょき隊」の派遣など、最大クラスの津波から県民の皆さまの生命を確実に守るため、取り組みを加速してきました。
さらに、昨年5月には第1弾の津波浸水予測を公表し、津波避難場所の再選定を進めるとともに、市町村の実質的な財政負担をゼロにする新たな仕組みにより、具体的な津波避難対策も加速化して進めています。
一方で、応急、復旧・復興対策については、最大クラスに加えて発生頻度の高い地震・津波も視野に入れた検討を行い、対策に幅を持たせて備えていきます。
今後は、人的被害や建物被害などの被害想定を行い、南海トラフ巨大地震対策のトータルプランとして、復旧・復興に関わる対策についても盛り込んだ、新たな行動計画を年度内に概成させます。この計画に基づき、発災直後から応急期にかけての対策は、計画期間の平成27年度までの3年間で計画的に実施するとともに再点検を行い、期間内の概成を目指してまいります。
4 地震・津波に「ともに立ち向かう」ために
県では、発災直後の県民の皆さまの生命
どんなに大きな地震や津波でも、事前に備えることで必ず被害を減らすことができます。そのため、県では県民の皆さまの生命を守るさまざまな対策に、市町村とともに全力で取り組んでいます。
県民の皆さまも、次の3つのポイントを念頭に置いてきただき、それらに基づいた取り組みをぜひ進めていただくようお願いします。
○地震・津波に立ち向かうための3つのポイント
- 事前の備えが大切。あなたの命を守るのはあなた自身!
事前に備えておけば、被害は必ず減らすことができます。住宅の耐震化や家具の固定など、自分を守る事前の備えを実行しましょう。- まずは揺れから身を守る
揺れによってけがをすると迅速に避難できなくなります。まずは揺れから自分の身を守ることが重要です。
- まずは揺れから身を守る
- 思い込みは禁物。想定にとらわれるな!
実際の津波は、今回公表した津波浸水予測図の浸水域の境界線でピタリと止まるわけではありません。今回の想定は、多くの可能性の一つに過ぎませんので、どんな場合でも「我が家は安心」といった油断はせず、非常事態に備える意識を持ちましょう。- とにかく早く少しでも高い所へ
局所的な地面の凹凸や建物の影響などで、浸水深がさらに深くなる場合もあります。最善を尽くし少しでも安全な場所に避難しましょう。
- とにかく早く少しでも高い所へ
- 取り組みに無駄は無い。できることから実行を!
一つひとつの取り組みを積み重ねることで、日々の安全度が向上します。大切な家族を守るためにも、今すぐできることから取り組みましょう。- 例えば、寝室から
今すぐ住宅の耐震化に取りかかれなくても、家具を固定することで揺れに対する安全性が高まります。寝ている間に地震が起きても、とっさに避難できるよう、まずは寝室から対策を始めましょう。
- 例えば、寝室から
県では、人的被害を限りなくゼロに近づけ、被害を最小化し早期復興を可能とするよう、引き続き全庁体制で取り組んでいきます。
県民一丸となって地震・津波対策に取り組めば、必ず被害を大きく減らすことができますので、地震・津波を正しく恐れ、ともに立ち向かっていきましょう。
シリーズ『南海地震対策の加速化と抜本強化』を1年間ご愛読いただき、ありがとうございます。来年度も引き続き、南海トラフ巨大地震に備え、県が進める様々な取り組みを紹介しますので、ぜひご期待ください。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話 088-823-9096 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp
(14)県民の安全・安心の確保に向けて 1 土木部の取り組みの概要 下水道の地震・津波対策について 〔平成24年12月25日〕
昨年の東日本大震災では、大きな揺れと地盤の液状化により、東北から関東の広い範囲で、道路に埋設してあるマンホールや下水道管に大きな被害が発生しました。
また、家庭や工場などの汚水を処理する下水処理場や市街地の雨水を排除するためのポンプ場も、巨大津波などの影響により壊滅的な被害を受け、被災地において下水道の処理機能が長期間にわたり停止しました。
下水道施設は、生活に直結する身近な社会資本であるため、被災後に、たちまち必要となる水洗トイレが使用できず、避難所の衛生環境が悪化したり、市街地に汚水や雨水が溢れるなど、被災後も長期にわたり住民生活に大きな影響を及ぼしました。
現在、被災地では、緊急・応急的な対応により、一時的に下水道の機能を確保しているところですが、下水道施設には電気や機械設備を含む大規模なものが多く、復旧には膨大な費用と期間を要することから、完全復旧に至っていないのが実情です。
こうしたことを教訓として、県では、南海トラフの巨大地震に向け、県内の下水道施設の総合的な防災力の向上に取り組んでいます。
(写真 上段左から「マンホールの浮上り」 「冠水」 「仮設トイレ」。 下段左から「水没」 「波圧」 「漂流物」。
出典:国土交通省水管理・国土保全局ホームページ「下水道地震・津波対策技術検討委員会資料」)
1.本県の下水道の状況
県内の下水道施設は、県が管理する浦戸湾東部流域下水道(高知市、南国市、香美市)と16市町村が管理する60施設があります。
県が5月に公表した南海トラフ巨大地震時における浸水想定では、沿岸部の下水処理場やポンプ場の大半が浸水被害を受ける結果となり、中には15mの浸水により下水道施設全体が水没する施設もあります。
(浸水被害箇所;下水処理場14/20箇所、雨水ポンプ場34/41箇所)
本県でも東日本大震災と同様に、市街地には医療機関や避難場所となる学校などの公共施設、また都市機能が集中しているため、被災後における負傷者や避難者の生活環境の確保や社会活動の継続が重要な課題となります。
このため、県では、以下のとおり、浦戸湾東部流域下水道や市町村を含めた下水道施設の地震・津波対策を実施しています。
2.本県の下水道の地震・津波対策
(1)浦戸湾東部流域下水道の対策
浦戸湾東部流域下水道は、人口が集中する高知市、南国市、香美市の家庭などから出される35万人の汚水を処理するための下水道施設です。施設には、3市の汚水を受け入れるための汚水管11kmと下水処理場があります。
この下水処理場は、浦戸湾河口から約7km上流の川沿いにあるため、巨大地震時には津波による3~4mの浸水や地盤沈下に伴う長期浸水が想定されています。
このため、県では、被災後においても最低限必要な「人命の確保」「汚水の排除」「消毒」の機能を早期に確保するため、H24からH25までの2か年で緊急対策工事を実施することとしています。
人命の確保 (1)処理場内のグラウンド利用者や下水道管理者の避難場所である管理棟の耐震化。
汚水排除機能 (2)処理場から香美市までの汚水管11kmの内、耐震性を有しない汚水管315m及びマンホール2基の耐震化。
(3)関連3市の汚水を場内へ汲み上げるポンプ棟の耐震化。
消毒機能 (4)汚水をポンプ棟から塩素混和池へ送る送水管の二重化。
(5)消毒機能を有する塩素混和池の耐震化。
(2)市町村を含めた下水道施設の対策
市町村の下水道は、大半が沿岸域に設置されているため、巨大津波による浸水被害が想定されますが、地理的・社会的状況等が異なっており、被害想定や対策内容には大きな違いが生じてきます。
このため、県と市町村が一緒になって、県内の下水道施設の地震・津波対策を総合的に推進するため、学識者や専門家、下水道管理者などで構成する『高知県下水道地震・津波対策検討委員会』を全国に先駆けて設置し、検討を重ねているところです。
この委員会では、東日本大震災の事例や国の動向など新たな知見に基づき、その地域にとって、巨大地震発生時に必ず守るべき施設は何か、最優先される対策は何か、また被害を受けた下水道のサービスを早期に回復させる手法などについて検討し、地域の実情に即した下水道の地震・津波対策の方針を来年9月頃までに取りまとめる予定です。
下水道は皆さんの生活に直結する身近な社会資本です。
県では、今後も市町村と共に、日常における生活環境の改善や大雨時の浸水対策を推進するとともに、遅れている県内の下水道の地震・津波対策について、検討委員会を活用しながら、市町村と一体的な取り組みを促進してまいりますので、ご理解をよろしくお願いします。
次回は、「津波避難シェルター」についてご紹介します。
【問い合わせ先】公園下水道課 電話:088-823-9854 電子メール:171801@ken.pref.kochi.lg.jp
(13)県民の安全・安心の確保に向けて 1 土木部の取り組みの概要 南海トラフの巨大地震への土砂災害対策 〔平成24年12月25日〕
東日本大震災では、大津波が沿岸部に壊滅的な被害をもたらしただけでなく、宮城県や福島県を中心とした内陸部においても、震度6強以上の強い揺れによって、がけ崩れや地すべりなどの土砂災害が発生し、19名の尊い命が失われました。
高知県は、海岸部まで急峻な山地が迫る地形が多いうえ、降雨量も多く、日頃から土砂災害の危険性が高い状況にあります。また、3月31日に内閣府が公表した「南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高について」では、県内市町村の約9割が震度7以上の強い揺れに襲われるとの想定が出されています。
これらのことから、地震の揺れによるがけ崩れだけでなく、緩んだ地盤が地震後の降雨により崩れやすくなるなど、県内各地で土砂災害が発生する危険性が高まります。
そのため県では、土砂災害から人命を守るために、住民自らが危険を察知し、即座に「的確で安全な避難行動」に移せるように、『土砂災害からの被害者ゼロを目指して Mission「0(ゼロ)」プロジェクト』の取組を進めています。
また、海岸部まで急峻な山地が迫る地域では、津波が発生した際に、背後の高台へ、いかに避難できるかが課題となっていることから、県では、急傾斜地崩壊対策事業を活用した安全な避難路の確保にも取り組んでいます。
1 南海トラフの巨大地震による土砂災害対策(Mission「0(ゼロ)」プロジェクト)について
(1)土砂災害の危険性が高い区域の指定
高知県は、土砂災害の恐れのある土砂災害危険箇所が、全国で7番目に多い、18,112箇所あります。県では、この土砂災害危険箇所について、順次、基礎調査を行い、「土砂災害警戒区域」の指定を進めています。「土砂災害警戒区域」に指定されると、土砂災害の被害想定の範囲や避難所などを記した土砂災害ハザードマップの作成、災害時要援護者関連施設の警戒避難体制の整備などが図られます。
現在、人命保全上重要な施設のある区域11,781カ所について、優先して指定を進めているところで、平成24年7月末までに5,366カ所の指定を完了しました。
今後は、指定のスピードを500箇所/年から1000箇所/年へと倍増し、避難所を含む区域の指定を、平成28年度末までに完了することとしています。
(2)土砂災害警戒区域の周知
「土砂災害警戒区域」の指定に併せて、県では、土砂災害の被害想定の範囲を記した右の図面を作成し、防災学習会などを通じて、地区の住民の皆様にお知らせしています。
また、市町村がハザードマップを作成する際には、ベースとなる図面や情報を提供するなどの支援も行っています。
(3)安全な避難所等の確保
土砂災害危険箇所にある避難所や自力による避難が困難な方々がおられる災害時要援護者関連施設の安全を確保するため、土砂災害防止施設(砂防堰堤や地すべり防止施設、急傾斜地崩壊対策施設)整備を進めています。
県では、市町村と連携を図りながら、Mission「0(ゼロ)」プロジェクトを強力に推進し、住民の皆様の安全な避難を実現してまいります。
2 沿岸部の急傾斜地崩壊危険区域における津波対策について
(1)沿岸部の急傾斜地崩壊対策事業の促進
東日本大震災の教訓である高台への避難の重要性や、内閣府が公表した津波高の推計結果を受け、より高い場所へと逃げるための安全な避難路の確保が急務となっています。
沿岸部での急傾斜地崩壊事業は、人家を保全するだけでなく、津波が発生した際の避難路をがけ崩れから保全する役目も果たすことから、県では、沿岸部における急傾斜地崩壊事業に優先して取り組んでいます。
今年度は沿岸部の大月町小才角地区のほか4箇所で事業を実施しており、来年度も、引き続き、市町村と連携を図りながら、事業を推進していきます。
(2)急傾斜地崩壊対策擁壁への避難階段の整備
これまでは土砂災害対策としての急傾斜地崩壊対策を推進してきましたが、南海トラフの巨大地震に対する備えをすすめるなかで、沿岸部における津波対策として、擁壁の整備と併せて、高台へと避難できる維持管理用階段の整備もすすめています。
さらに、今年度よりは、急傾斜地崩壊対策が完了した箇所においても、既設擁壁への避難階段の整備に取り組んでいます。
今後も、津波からの避難困難地の解消に避難階段が必要とされる箇所において、地域や市町村と連携のうえ、避難階段の整備に取り組んでいきます。
(写真 急傾斜地崩壊対策擁壁の整備と併せた維持管理用階段を活用した避難路の整備例)
南海トラフ巨大地震が発生した際には、津波による沿岸部の被害だけでなく、内陸部においても土砂災害等により多くの被害が発生することが予測されます。
県では、ソフトとハードの取り組みを連携して行うことにより、地震の揺れや、その後の降雨による土砂災害、津波による被害を軽減するための対策を、スピード感を持って進めてまいります。
県民の皆様には、安全な避難所や避難経路の確認、気象情報の収集など、いざという時に「的確で安全な避難行動」に移ることができるように、日頃から防災意識を高めていただくようにお願いします。
(※下記の情報をもとに早めの避難をお願いします。)
(1) 土砂災害の危険性がある区域(土砂災害警戒区域、土砂災害危険箇所)
http://www.pref.kochi.lg.jp/~bousai/keikaikuiki0/index.html
http://www.pref.kochi.lg.jp/~bousai/kikenkuiki/index.html
(2) 避難するタイミング(降雨に伴う土砂災害警戒情報)
http://www.pref.kochi.lg.jp/~bousai/uryou/description.htm
(3)防災意識の向上(地域防災学習会や小学校での出前授業など)
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/171501/h20sonota.html
次回は、「高知県内の下水道地震・津波対策」についてご紹介します。
【問い合わせ先】防災砂防課 電話:088-823-9845 電子メール:171501@ken.pref.kochi.lg.jp
(12)県民の安全・安心の確保に向けて 1 土木部の取り組みの概要 河川施設の耐震対策について 〔平成24年11月9日〕
先の東日本大震災では強いゆれと巨大な津波によって、海岸の堤防だけでなく、河川堤防も破壊され、大きな被害が発生しました。
本県においても、南海トラフ巨大地震により、強いゆれと巨大な津波が県内各地を襲うことが予想されており、平成24年8月29日に内閣府から公表された発生し得る最大クラスの地震・津波の想定では、県内で、地震動について震度7が30市町村、津波に関しても全ての沿岸市町村で10mを超えるなど、非常にきびしい結果となっています。
この想定は発生頻度が極めて低く、最悪に最悪を重ね合わせた試算であり、決して次の南海地震を想定したものではありませんが、まずは命を守ることを基本に、こうしたことも起りえることを念頭においた対策を進めていかなければなりません。
1 河川堤防の耐震化
内閣府の発表した津波高では、海岸線で最大34mの津波が想定されています。こうした津波を防ぐ高さの堤防を整備していくことは、日常生活の面から、また、財源の面からも現実的ではありません。
しかしながら、少なくとも発生頻度の高い地震による津波には対応し、最悪レベルの津波であったとしても、強いゆれで壊れることなく、避難時間を少しでも確保できるような粘り強い堤防を整備していく必要があります。
こうしたことから、本県では昨年度から県管理河川の地震・津波対策の必要性を調べる基礎調査を行い、必要な箇所については順次対策を行っていくこととしています。
○国分川・鏡川・江ノ口川の耐震対策
国分川・鏡川・江ノ口川の重点区間(3.6km)では、平成20年度から、安政南海地震(M8.4)クラスを想定した堤防の耐震対策を進めています。
対策の工法としては、下図のとおり、堤防天端から川の流れに平行して、連続的に鋼矢板を打設し、鋼矢板で挟まれた部分の液状化による沈下を抑制することで、設計上の津波が堤防を越えないようにしています。
この工法は設計以上の津波が襲来し堤防を乗り越えた場合においても、堤防が鋼矢板で挟まれていることにより、津波によって侵食されることを防ぐため、粘り強い構造となっています。
平成23年度末時点で重点区間の約20%にあたる0.75kmが完了しており、今後も早期の完了に向け対策を進めてまいります。
※耐震対策のイメージ図
2.排水機場の耐震対策
南海トラフ巨大地震では、強いゆれと巨大な津波に加え、県の中央部が沈降することに伴い長期浸水が発生します。
東日本大震災でも長期浸水が発生し、発災後の復旧・復興に大きな支障をきたしました。
このような「長期浸水」の対策としては、堤防等により海や川からの浸水を防止する止水対策(堤防の地震対策)とあわせて、排水機場等によって堤防の内側に溜まった水を排出する排水対策(排水機場の地震対策)が必要となります。
こうしたことから、県では、長期浸水の発生が予想される高知市中心部に位置する排水機場において対策を進めています。平成22年度には、江ノ口川の排水機場の耐震対策が完了し、現在は、鹿児川・本江田川・下田川の排水機場について耐震対策を実施しています。さらに今後は、排水機場の浸水を防ぐ耐水対策も実施していくこととしています。
(下の写真 左:江ノ口川排水機場耐震工事(基礎部補強)の様子 右:国分川(青柳橋上流)での堤防耐震対策工事の様子)
南海トラフ巨大地震発生時の避難時間の確保と発生後の早期復旧に向け、河川堤防の地震対策や排水対策をさらに加速させていきますが、命を守るためには何より「揺れたら逃げる」ことが重要です。日頃から避難路や避難場所の確認を行うなど地震への備えをお願いします。
次回は、「地震急傾斜地崩壊対策」についてご紹介します。
【問い合わせ先】河川課 電話:088-823-9841 電子メール:170901@ken4.pref.kochi.lg.jp
(11)県民の安全・安心の確保に向けて 1 土木部の取り組みの概要 津波に備える陸こう・水門対策 〔平成24年10月15日〕
昨年の東日本大震災では、大規模地震とそれに伴う大津波により、海沿いの町や港湾、漁港施設が壊滅的な被害を受け、住民の避難誘導、河川や海岸の水門や陸こう(*)を閉鎖する作業に携わった多くの地元消防団などの方々が津波の犠牲となりました。
南海地震発生時には、津波の第一波が数分で到達すると予想される場所もあります。津波の浸水による被害軽減や避難時間の確保や台風の高潮、波浪対策のため、海岸の陸こうは常に閉鎖されていることが基本と考えています。
しかし、陸こうの閉鎖は、海岸部と背後地を分断することとなり、漁業活動や水産加工業、造船業などの経済活動や海岸の散策など日常生活の支障となることから、全ての陸こうを閉鎖することは困難です。
このため、各地域で、陸こうの閉鎖方法の検討を重ね、水門管理と併せて、地域の実情にあった、安全対策の向上に日々取り組んでいます。
*陸こう:堤防の人や車、漁船の出入口となっている開口部。金属ゲートや角材により開閉する。 |
1 陸こうの常時閉鎖の取り組み
高知県の海岸延長は713km、海岸堤防延長は248kmあり、県が管理している海岸堤防の陸こうは、1,173箇所あります。津波に限らず、台風時の高潮、波浪対策として、日頃から陸こうを常時閉鎖した状態とする対策を、次の2つに区分し、地元の皆様と協議しながら取り組んでいます。
1) 完全閉鎖する場合
・コンクリート工事による閉鎖=利用のない陸こうが対象
・施錠による閉鎖=利用頻度が低い陸こうが対象
2) 利用時のみ開放する場合=利用頻度が高い陸こうが対象
(1)完全閉鎖について
利用頻度の低い陸こうについては、平成21年度から、コンクリート工事による閉鎖に取り組み、平成24年3月末までに101箇所完了しました。
今年度より「海岸陸こう常時閉鎖推進事業」を新たに創設し、平成26年度までに完全閉鎖を加速し、206箇所となるよう取り組みを進めています。
また、昨年度からは、主として祭事や地域行事等の利用にのみ必要な陸こうについては、ゲートの施錠による常時閉鎖に取り組んでいます。
(右の写真 コンクリートによる開口部の完全閉鎖)
(2)利用時のみ開放について
陸こうの利用者が多く、完全閉鎖が困難な陸こうについては、利用者に管理していただくことを前提に、「通常は閉めて(無施錠)、通行時のみゲートを開ける」方法で常時閉鎖に取り組んでいます。
これにより、平成26年度までに完全閉鎖と合わせて、全体の51%にあたる585箇所の陸こうの常時閉鎖が実現する予定です。
さらに、残りの半数近くについても、地元利用者との協議を重ねご理解を得ながら、多くの陸こうが常時閉鎖となるように取り組んでいます。
(右の写真 利用時開放の取り組み)
(3)大規模陸こうの動力化
大きな陸こうの閉鎖作業には、複数の作業者で20分程度を要するものがあります。常時閉鎖出来ない大型の陸こうについては、日常の開閉操作時間を短縮するため、水圧などによる装置を使った操作の動力化についても検討を進めています。これについては、県内の防災関連産業との連携による新しい製品の開発にも取り組んでいます。
2 水門の津波対策の取り組み
海岸の水門は、地域の水路流末に設置された小さなものから、河口部に設置された大規模まで大小様々なものがあります。水門は、通常は開放していますが、津波や高潮の発生時には閉鎖しています。
小規模な水門は、津波対策としてゲートを日頃から半分閉めるなど、地域の排水量に応じた対策に取り組んでいます。
河口部にあるような大規模な水門は、閉鎖作業に10分から20分を要します。浦戸湾や須崎湾では、震度5強以上揺れでゲートが自動降下する整備が行われました。今後も、津波の市街地への浸入を防ぐため、大型の水門の自動閉鎖を計画的に取り組みます。
(右の写真 須崎港津波水門)
3 安全で確実な陸こう、水門の閉鎖操作の取り組み
海岸の陸こうや水門は、大半を地元の自治体や消防団、町内会、企業などの地域の皆様に操作・管理をお願いしており、その数は1,400箇所にもなります。
常時閉鎖の取り組みと合わせて、閉鎖操作をお願いする方々の安全を確保するための取り組みとして、今年度から標準的な委託契約書の内容を見直しました。
大きな改正点は、次の2点です。
1) 操作作業者の安全確保のために、操作時に危険が予想されるときは避難を優先する
2) 確実に閉操作を行うため、操作委託者を複数人とする
この見直しにより、南海地震発生時には避難を最優先することとなりました。また、東日本大震災のような遠地の地震についても、津波到達が予測される30分前には、避難場所に到着できる範囲で作業を行っていただくといった基準も設け、閉鎖操作にあたる方々の安全に十分に配慮いたしました。
今後は、日常の生活や経済活動に影響があり完全閉鎖ができない陸こうについても、利用時のみ開放として「開けたら閉める」という取り組みを徹底していかなければなりません。
県民の皆様には、不便をおかけしますが、毎年のように来襲する台風や南海地震による津波の被害を最小限にするため、この取り組みの趣旨をご理解の上、今後ともご協力をお願いします。
次回は、「河川施設の耐震対策について」ご紹介します。
【問い合わせ先】 港湾・海岸課 電話:088-823-9886 電子メール:175001@ken.pref.kochi.lg.jp
(10)県民の安全・安心の確保に向けて 1 土木部の取り組みの概要 緊急輸送道路の地震対策 〔平成24年9月19日〕
東日本大震災では、強い揺れや大津波により、鉄道、空港、港湾などの社会基盤が壊滅的な被害を受け、道路についても、国道が寸断されるなど、交通ネットワークは麻痺状態となりました。そのなかで高速道路は、震災後1日で復旧し、地震発生後の迅速な救援活動や、物資搬送等の緊急輸送道路として、大変重要な役割を果たしました。また、津波をせき止める堤防機能や、緊急避難場所としての活用など、道路の副次的な機能も注目されました。
高知県では、南海地震による被害を最小化するため、揺れと津波に強い「命の道」の整備を加速化しています。
1 緊急輸送道路(信頼性の高い道路ネットワーク)の確保
高知県では、地震直後から必要となる緊急輸送を円滑に、かつ確実に行うために、緊急輸送道路として、あらかじめ区間を設定し、計画的に整備を推進しています。
(1)緊急輸送道路の被害想定調査
緊急輸送道路について、津波による浸水、液状化、法面対策の状況、橋梁の耐震状況等から、地震時に通行不能となる恐れのある箇所について調査を実施しています。
調査結果をもとに、迂回路や陸路以外による輸送など、緊急輸送ルート確保のための対策の検討を行ってまいります。
(2)橋梁の耐震対策
緊急輸送道路にある橋梁について、揺れにより甚大な被害を受ける可能性のある橋梁104橋を抽出し、地震による破損を限定的なものにとどめ、落橋など致命的な被害を防止するための対策を行っており、平成27年度の完了を目指し、整備を進めています。
また、緊急輸送道路以外についても、落橋により孤立集落が発生する橋梁や、復旧に長期間を要する大規模な橋梁などの耐震補強計画を本年度策定し、緊急輸送道路の対策完了後、順次対策を実施してまいります。
(右の写真 橋梁の耐震補強状況)
(3)法面の防災対策
山間部の道路が多い高知県では、強い揺れによる道路法面からの落石を防止し、安全な通行を確保するため、法面防災対策を推進しています。
的確に対策を進めるため、本年度から、平成8~9年度に法面などの危険箇所を調査した道路防災総点検の再調査を実施してまいります。
(右の写真 法面の落石対策状況)
2 「道の駅」の防災拠点化
東日本大震災で「道の駅」は、自衛隊など被災地救援のための応援部隊の活動拠点や、住民の避難場所として大きな役割を果たしました。
このため高知県では、地震時の緊急車両等の走行ルートを考慮し、県管理道路沿いにある13箇所の「道の駅」において、防災拠点化の必要性や役割についての調査を実施しています。また、防災拠点化の必要性が高い「道の駅」を1箇所選定し、本年度、先行してモデル的に設計を行う予定です。
来年度以降引き続き、優先度の高い「道の駅」から、設計や整備を計画的に進めてまいります。
3 避難行動に役立てるための対策
高知県では、道路を利用する皆さまや沿線住民の方々の避難時の目印として、沿岸部の主な幹線道路の標識柱などに、海抜を標示した「海抜知~る」の設置を進めています。
今後は、年内に県が公表予定の第2弾津波浸水予測をもとに、津波による浸水が想定される区域や浸水高さなどを道路利用者に周知する標示方法について検討を行い、津波から逃げる対策に取り組んでまいります。
(右写真 「海抜知~る」の設置状況)
4 四国版「くしの歯作戦」の実現に向けて
南海地震発生時には、太平洋沿岸地域における大規模な地震・津波被害に対し、広域的な救助・救援活動が必要となります。このため、関係機関と協力し、迅速な応急対策および早期復旧に向けた体制づくりを進めていく必要があります。
国と四国4県では、東日本大震災で功を奏した「くしの歯作戦」に相当する緊急輸送ルートの確保、および以下のステップによる啓開・復旧オペレーション計画(活動計画)の策定を進めています。
(1) ステップ1
比較的被害が少ない瀬戸内側の横軸ラインを確保
(2) ステップ2
横軸ラインから太平洋沿岸地域へ乗り込むための
縦軸ラインの確保
(3) ステップ3
縦軸ラインから太平洋沿岸地域の国道55号から
国道56号の沿岸ラインを確保
(右写真 「四国版くしの歯作戦」のイメージ)
これらに基づき、緊急輸送ルートを確保するためには、まず「くしの歯」の根本となる高速道路網「四国8の字ネットワーク」のミッシングリンク(未連結区間)の解消や、瀬戸内側と高知県沿岸部を結ぶ高知自動車道や国道の信頼性向上が急務となっています。
道路は、南海地震から命を守る「命の道」として、また地域の活性化を支え、人や物の交流を活発にする「産業の道」として、県民の皆さまの暮らしを支える礎となるものです。
高知県では、四国8の字ネットワークをはじめ、地域の孤立を防ぐ橋梁の耐震対策や道路法面の防災対策を進め、道路の信頼性向上に全力で取り組んでまいります。
次回は、「津波に備える水門・陸こう対策」について、ご紹介します。
【問い合わせ先】 道路課 電話:088-823-9892 電子メール:170701@ken.pref.kochi.lg.jp
(9)県民の安全・安心の確保に向けて 1 土木部の取り組みの概要 地域防災力の維持確保対策 〔平成24年9月19日〕
昨年、3月11日に発生した東日本大震災から1年余りが経過し、被災地では、現在も復旧・復興に懸命に取り組んでおられます。
この震災においても建設産業の重要性が再認識されました。特に地震発生直後における道路啓開や応急復旧にあたっては、必要な人材や資機材を確保して、迅速な対応をされ、大きな役割を果たされました。
高知県で、南海トラフの巨大地震などの大規模災害が発生した場合にも、被害状況の情報収集やがれきの撤去、緊急輸送路の確保などを迅速に行うためには、地域をよく知る建設業の方々の協力が不可欠です。
県では、建設業の方々にこうした役割を十分に発揮していただくための課題を整理し、地域防災力の維持・確保に向けた効果的な対策を講じていく必要があると考えています。このため、有識者の方々からなる委員会での検討や建設業BCPの普及などに取り組んでいます。
1 高知県地域防災力維持確保対策検討委員会の設置
南海トラフの巨大地震への対応を含め、大規模災害時における県民の安全・安心を確保するため、建設業が担う公的な役割やその課題を整理し、行政と建設業界との連携のあり方や地域をよく知る建設業者の確保など、地域防災力を維持・確保していくための方策について有識者の方々からご意見をいただく検討委員会を設置し、8月6日に第1回を開催しました。
<第1回検討委員会の概要>
事務局から「建設業を取り巻く環境の変化等」について説明し、「今後の検討委員会の進め方」について協議していただきました。
(1)事務局説明
・ 建設業を取り巻く環境の変化
・ 県の入札契約制度
・ 東日本大震災における建設業の体験と教訓
・ 県と建設業界との連携の状況
・ 災害対応に関する企業の評価
(2)委員からの主な意見
・防災力というのは、災害外力を減らす力を地域がどれだけ持っているのか、有事の際に被害があっても耐えていく力があるのか、また、早期復旧に向けての事前準備がどれだけ進められているかといった要素をいうのではないかと思う。検討の中心となる「建設業の確保・育成と行政との連携」は、防災力の中枢をなすのではないかと思う。南海地震に見舞われた時に高知県がいち早く復旧していくためにも、より良い施策ができるような結果を出せればと考えている。
・地元の建設業者は、災害協定を国、県、市町村、民間と結んでおり、いざという時に協定が絡み合って動かないのではないかという心配もある。
・被災により制約を受けた人数の中で、地域にとって優先すべき作業は何なのか、それをどういうふうに行政と連携してやっていくのかといった議論が必要ではないか。
(3)今後の検討項目
ア 行政と建設業との連携の強化策の検討
・ 災害時の対応を迅速かつ的確に行うための方策
・ 建設業者の災害対応力の向上のための方策
イ 地域をよく知る建設業者の確保策の検討
・ 経営安定化のための方策
・ マンパワーを確保するための方策
本年度末にかけて、適時開催し、ご意見の取りまとめを行ってまいります。
県では、検討委員会で出されたご意見で実現可能なものから、取りまとめを待たず、随時実施していきたいと考えています。
2 建設業者のBCP策定の促進
地域防災力を維持・確保していくための具体的な取組のひとつとして、県では、建設業者自らが作成した事業継続計画、いわゆるBCPを県が認定する制度を、本年度からスタートしました。認定する際には、有識者のご意見もお聞きしながら審査します。
7月には、県内3箇所(中央部、東部、西部)で説明会を開催し、現在、本年度1回目の認定に向けて、建設業者の皆様からBCPの申込を受け付けているところです(申込期間:9月3日から9月28日)。今後、毎年2回の募集を行い、個々の会社にBCPを普及させていきたいと考えています。
BCPは、災害時に建設業の使命を果たすうえで必要不可欠であり、社会的評価や信頼性の一層の向上にもつながるものです。建設業者の皆様には、BCPの策定に積極的に取り組んでいただき、大規模災害時に迅速かつ的確に対応できる体制を確保していただきたいと考えています。
詳しくは、高知県建設業BCP認定制度のページに掲載しています。
URL:http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/170201/h24bcp.html
<建設業BCPの主な項目> <写真 説明会の様子(高知会場)>
・社屋等の被害想定
・重要業務の選定と目標時間の把握
・災害時の対応体制
・対応拠点の確保
・情報発信、情報共有
・人員と資機材の調達
・訓練の実施
南海トラフの巨大地震などの大規模災害が発生した場合には、広域的に甚大な被害が想定されています。それぞれの地域において、困難な局面に対処するためには、地域をよく知る建設業者や市町村、住民や自主防災組織の皆様と連携した取組が必要です。県では、地域の皆様との連携のもと、地域防災力の維持・確保に向けた様々な対策を実施していくとともに、いざという時に十分な対応が取れるよう、より実践的な訓練も行いながら、地域防災力の強化を図っていきたいと考えていますので、ご協力をよろしくお願いします。
次回は、「緊急輸送道路の地震対策」について、ご紹介します。
【問い合わせ先】
土木部土木政策課 電話:088-823-9822 電子メール 170201@ken.pref.kochi.lg.jp
土木部土木政策課 電話:088-823-9815 電子メール 170201@ken.pref.kochi.lg.jp
(8)県民の安全・安心の確保に向けて 1 土木部の取り組みの概要 住宅の耐震対策 〔平成24年9月10日〕
【住宅の耐震化の必要性】
本県には、昭和56年5月31日以前に着工された、いわゆる「旧耐震基準」の住宅が、およそ8.6万戸存在しており(平成22年、高知県住宅課推計)、次の南海地震の強い揺れによって、倒壊する可能性が高い住宅が多数含まれていると考えられます。平成7年に発生した阪神・淡路大震災では、亡くなられた人の95%以上が建物の倒壊によるものであったことが判明しています。
昨年の3月11日に発生した東日本大震災では、津波によって甚大な被害が発生しましたが、近い将来必ず発生する南海地震では、阪神・淡路大震災並みの強い揺れの後、東日本大震災よりも短い時間で、沿岸部に津波が到達すると想定されています。地震の強い揺れで倒壊した住宅の中から自力で脱出できなければ、その後に襲ってくる大津波や市街地火災から必ずしも命を守ることができなくなります。県民の皆様の命を守り、生活の基盤である住宅を守るためには、まず、住宅の耐震化を進めることが重要です。本県では、平成20年で約70%であった住宅の耐震化率を、平成32年に95%程度まで向上させることを目標に取り組んでいます。
【本県における住宅の耐震化の取り組み】
平成21年度に国が実施した政策レビューの結果によると、住宅の耐震化が進まない要因は、
(1)耐震化の必要性が十分認識されていないこと、
(2)耐震化にはコストがかかる(と思われている)こと、
(3)業者・工法などに対する信頼性が低いこと、
の3つであるといわれており、これらの要因の解決に向けて、県では、市町村や建築業界団体と協力して様々な取組みを行っています。
『耐震化の必要性』については、住宅の耐震化の必要性と耐震対策の補助制度を分かりやすく説明したリーフレットの配布や、県職員による防災イベント等での相談窓口の設置や、自主防災組織等への出前講座などを行っています。また、建築の専門家による常設の耐震相談窓口((社)高知県建築士事務所協会内088-825-1240)も設置しています。
(写真 下田小学校(四万十市)への出前講座)
『耐震化のコスト』については、住宅の耐震化を実施する住宅所有者の負担軽減を図るため、市町村と協力して、耐震診断、耐震改修設計、耐震改修工事とそれぞれの段階に応じた支援を行っています。最近では、既存の壁を活用した低コストで合理的な補強の方法が普及し、熟練した技術者が増加したことで、耐震改修の平均工事費が約235万円(平成17~19年度までの平均)から約181万円(平成20年度以降の平均)と、以前に比べて54万円程度安価にできるようになってきました。
(グラフ 耐震改修の実績と工事費)
県では、さらに住宅所有者の負担軽減を図るため、市町村と連携して、耐震改修工事費に対する補助について、従来の60万円に加えて平成22年度の途中から30万円を上乗せし、最大で90万円の補助を行っています。
こうした取り組みに加え、『業者・工法などに対する信頼性』を高めるため、補助金を受けて耐震化の事業を行う木造住宅耐震診断士(523名、平成24年8月時点、以下同じ)、設計事務所(222件)及び工務店(355件)を県が登録し、その名簿をホームページで公表しています。
さらに、住宅所有者が選任した木造住宅耐震診断士による現場確認や、市町村職員による現場検査等、住宅所有者が安心して耐震改修ができる体制も整えています。
(写真 住宅の耐震改修の事例)
これらの取り組みにより、平成20年度以降、毎年300棟程度であった耐震改修工事の実績が、平成23年度には、2倍を超える660棟に増加しています。
※住宅の耐震化の取組みや詳しい補助制度の内容については、高知県土木部住宅課ホームページ(http://www.pref.kochi.lg.jp/~jyuutaku/index.html)でご覧いただけます。
【地域の建築士による取り組み】
最後に、地域の建築士による耐震改修相談会など、住宅の耐震化の取り組みの輪が広がっていますのでご紹介いたします。
(写真 <左>南国市地域住宅研究会による「もくもく相談会」、
住宅の多くが、地元の建築士、工務店や大工さんによって建築されていることからも、これらの「顔が見える」地域の皆様の連携により、次の南海地震への備えとして、県民の皆様の命と生活の基盤となる住宅を守るため、住宅の耐震化がさらに進むことを期待しています。
県民の皆さまに置かれましても、住宅の耐震化や家具の固定、備蓄などについていま一度ご確認くださるよう、お願いします。
次回は、「地域防災力の維持確保対策」について、ご紹介します。
【問い合わせ先】 住宅課 電話:088-823-9856 電子メール 171901@ken.pref.kochi.lg.jp
(7)高知県総合防災訓練・地域防災フェスティバルについて 〔平成24年7月31日〕
前回は津波からの避難対策についてご紹介しました。
今回は、6月10日に宿毛湾港で開催された「高知県総合防災訓練・総合防災フェスティバル」についてご紹介します。
1 高知県総合防災訓練・地域防災フェスティバルの概要
高知県では、毎年、総合的な防災対策の確立を目的に、南海地震や豪雨等の実際の災害を想定して総合防災訓練を行っています。複数の市町村が参加する広域的な防災訓練としては1976年から開催しており、県や市町村、警察、消防、自衛隊などの各防災関係機関による実践的な訓練を行っています。
従来は、河川敷等の特設会場で、台風等の風水害を想定した水防工法や洪水からの避難、土砂災害対策の訓練をメインに行っていましたが、近年は南海地震への意識の高まりから震災対策に重点を置くようになり、平成12年度からは津波に対する避難訓練を取り入れ、場所も実際に津波が発生する沿岸部地域で行うなど、実践的な訓練となるよう工夫しています。
訓練会場は、県内を東部、中央東、中央、西部の4ブロックに分けて持ち回りとしており、今年度は、四万十市、宿毛市、土佐清水市、大月町、三原村、黒潮町で構成する西部ブロックで開催しました。
また、地域防災フェスティバルは、平成17年より防災訓練と併せて開催しており、起震車による地震体験や、防災用品の展示などを通じて、地域の方々に楽しみながら防災への意識を高めていただき、自主防災活動の推進や地域における防災意識の高揚を図っています。
2 今年度の訓練及びフェスティバル
今年度は、宿毛湾港をメイン会場に、74の機関約1,000名の方が参加し、約2,000名の方が来場されました。
(1)総合防災訓練
四国沖の南海トラフを震源とした巨大地震により、県内の一部地域で最大震度7を観測、これにより多数の家屋が倒壊したほか、火災や斜面の崩壊等により土砂に埋もれた家屋や車両が発生したとの想定のもと、被害情報の収集や、被災者の救出、道路・ライフラインの復旧などの訓練を行いました。主な訓練内容は次の通りです。
1)孤立地域支援訓練
・航空自衛隊や国土交通省などの航空機による被害情報の収集と伝達
・海上保安部や陸上自衛隊、海上自衛隊の航空機等による被災者の救出や救援物資の搬送
・県警ヘリによる孤立地域に表示された救助・物資要請のためのサインの確認など
2)組織的な災害救急医療活動訓練
・多数の傷病者を重症度と緊急性によって区分し、治療の優先度を決定するトリアージ
・医療機関やDMAT(災害派遣医療チーム)、陸上自衛隊と連携した広域搬送など
3)その他の訓練
・警察や民間事業者団体が連携して行う道路啓開(道路上の障害物の除去)
・消防防災ヘリ及び地元消防による高層ビル火災現場からの救出訓練や建物火災消火など
(2)地域防災フェスティバル
大雨体験や地震の揺れ体験、火災の煙体験などといった災害に関する体験コーナーのほか、住宅の耐震相談、地震に対する備え、津波発生の仕組み、応急手当の方法に関する学習コーナー等を24箇所設置し、地域の方々に楽しみながら防災への意識を高めていただき、自主防災活動の推進や地域における防災意識の高揚を図りました。
また、第2期産業振興計画において、大きな柱の一つとして掲げている「防災関連産業の振興」に向けた取り組みの一つとして、県内企業11社による防災関連製品の展示コーナーを設け、実際に防災製品に触れることで県内企業の技術力を実感していただくこともできました。
※今後も、9月2日に開催される県下一斉避難訓練や
11月29日~12月1日に開催される「ものづくり総合技術展」への出店などを予定しています。
詳しくは工業振興課HP(http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/150501/)をご覧下さい。
3 もしもへの備えを高めるために
県では、総合防災訓練のほかにも、南海地震を想定して他県や県内の市町村と共同で行う通信情報収集訓練や、災害時に患者を県外の医療施設に搬送するための広域医療搬送訓練などを通じて、南海地震などの大規模災害への対策を進めています。特に、9月2日には、県内の市町村と共同で、県民の皆様に避難路や避難場所を確認していただき、避難時の課題を洗い出し、津波避難計画に反映していただくことを目的とした、県下一斉避難訓練を行うこととしています。
南海地震のような大地震の場合、全ての地域で消防機関や警察などによる避難誘導を行うことは困難です。県民の皆様のいのちを守るためには、皆様自身が、「揺れたら逃げる」という意識を強く持っていただくことに加え、想定される災害から身を守るために日頃から訓練していただくことが必要です。ご近所にも声掛けをしていただくなど、県下一斉避難訓練には、ぜひ多くの方に参加いただきますようお願いします。
次回は、建築物の耐震対策についてご紹介します。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話:088-823-9317 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp
(6)津波からの避難対策について 〔平成24年7月2日〕
前回は5月10日に公表しました高知県版第1弾津波浸水予測の概要と今後の対応についてご紹介しました。
前回もご紹介しましたが、5月10日に県が公表した浸水予測(以下「新想定」という。)は、最悪に最悪を重ね合わせた試算であり、決して次の南海地震を想定したものではありません。しかしながら、こうしたことも起りえることを念頭におき、最悪レベルの津波に対しても、まずは県民の皆さまの生命を確実に守ることを基本とした対策を進めていきます。
今回は、津波からの避難対策について詳しくご紹介します。
1 津波避難対策の基本となる地域の津波避難計画
津波から命を守るための対策の基本は、いかに津波から逃げるか、ということです。それぞれの地域ごとに、地形や津波の到達時間など地域の特性を踏まえた避難方法を選択し、避難路や避難場所を整備した上で、日頃から実際に避難訓練を行い、来るべき災害に備えておくことが必要です。こうした、一連の計画が地域の津波避難計画であり、地域におけるハード・ソフト対策の基本となるものです。5月10日に公表した浸水予測は、地域ごとの津波避難対策を具体的に進めていくために、3月末に国が示した海岸線での津波高をもとに、県独自に浸水域と浸水深を試算したものです。
今回の新想定により、新たに県内で108の津波避難計画の策定が必要となっています。あわせて、既に策定済みであった地域の避難計画も最大レベルの津波を想定したものに見直しを行う必要があります。まずは各地域で避難場所や避難経路の策定を9月末を目途に行い、地域で見直した計画をもとにした避難施設の整備をさらに加速させていきたいと考えています。そのために、6月補正予算でも計画策定に必要となる経費について対応することとしておりますし、「こうち防災備えちょき隊」により、地域での話し合いにアドバイスする人材を派遣するなど、人的支援もしっかりと行っていくこととしています。
2 選択肢を広げ、適切な避難方法を選ぶための取り組み
地域毎の避難方法を決定していく際には、できるだけ多くの避難方法の中から、地域にあった避難方法を選択していくことが大切です。このため、県では様々な可能性を排除することなく、避難方法を検討し選択肢を増やす取り組みを進めています。
(1)避難タワーの設計指針について
まず、避難タワーの整備について、市町村から整備する際の強度や仕様に関する相談が寄せられているため、県では設計の前提条件や工事費の積算の考え方などについての指針の作成を行っています。
(2)津波避難シェルターについて
従来から整備してきた避難タワーについて、津波がある程度の高さまでなら上に逃げることが可能ですが、30メートルを超える津波となると、避難者の体力面の問題などの課題が出てきます。このため、県では避難方法の選択肢を広げるため、津波避難シェルターについての検討を行っています。4月から有識者を交えた検討会を設置して検討を進めており、10月を目途に概略の設計図や工事費用を取りまとめる予定です。
(3)事前復興の観点からの高台移転
地域住民の命や財産を守ることを考えれば、地震が起きる前に高台へ生活の場を移転する方法も1つの選択肢となってきます。しかしながら、国の現行の支援制度は住民全員の合意形成が必要となるなどの課題があります。このため、県では庁内に高台移転検討ワーキンググループを設置し、現行制度の課題の洗い出しを行うとともに、国に要件緩和などの政策提言を行っていくこととしています。
(4)地域にマッチした避難方法を選択する
このように、県では津波避難計画策定に際して選択肢を広げる取り組みを行っていますが、次に、どのようにして地域にあった避難方法を選択していくかということが、課題として出てきます。こうした課題に対応するため、今月11日に「津波避難方法の選択に係るガイドライン等の検討会」を設置し、8月中に様々な避難方法から地域の実情に応じて適切な選択をしていただくためのガイドラインをお示しできるよう、検討を進めています。
3 津波避難対策の加速化
県では、こうして策定された計画をもとに、ハード・ソフト対策を今後も一層加速化していきたいと考えています。例えば、避難施設の整備について、本年度からは市町村の実質的な財政負担をゼロにする仕組みを創設したことなどから、昨年度の整備箇所は、避難タワー8箇所、避難路・避難場所87箇所であったのに対して、現在のところ本年度は、それぞれ約4倍にあたる避難タワー33箇所、避難路・避難場所326箇所で整備が計画されています。更に今後、もう一段の加速化を図ってまいります。
県民の皆さまにおかれましても、自主防災組織への加入、地域での津波避難計画策定の協議への参加、実践的な避難訓練への参加などにより、自助・共助の取組がさらに充実するよう、ご協力をよろしくお願いします。
次回は6月10日に実施した高知県総合防災訓練についてご紹介します。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話:088-823-9317 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp
(5)高知県版第1弾津波浸水予測の概要と今後の県の対応 〔平成24年5月17日〕
前回は、「こうち防災備えちょき隊」の活動についてご紹介しました。
今回は、5月10日に公表しました高知県版第1弾津波浸水予測の概要と今後の対応についてご紹介します。
1 高知県版第1弾津波浸水予測の概要
高知県では、3月31日に内閣府が公表した津波高の推計結果を受け、現段階で推計できる津波による浸水域・浸水深を推計し、それに対する対策を早急に進めるため、第1弾の50mメッシュによる津波浸水予測を5月10日に公表しました。
今回の推計は、内閣府が公表した津波断層モデル全11ケースの内、高知県に極めて影響の大きい2ケースについて、地盤沈下を考慮するとともに海岸堤防などの最終防潮施設は機能しないという条件で推計したものであり、現段階における最悪レベルの浸水予測とみなせるものです。
今回の推計は必ずしも次の南海地震を想定したものではなく、最悪レベルを想定したものですので、県民の皆様には冷静に受け止めていただきますようお願いします。
詳しくは、高知県庁ホームページでご確認ください。
【高知県版第1弾】南海トラフの巨大地震による津波浸水予測について
URL http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/010201/nannkai.html
2 高知県版第2弾津波浸水予測
今年の秋頃には、県の総合的な津波避難対策の根幹とするため、第2弾の津波浸水予測を公表します。
第2弾の津波浸水予測では、第1弾の「最終防潮施設等が無い場合」に加え「最終防潮施設等が機能する場合」も推計し、避難時間を確保するための堤防の耐震化等も含めた多重防御を検討していきます。
さらに、的確な避難活動に繋げるための時間経過による浸水域の変化も推計し、過去に来襲した津波痕跡についても津波浸水予測図に表示することとしています。
なお、第2弾の津波浸水予測は、最新の地形データや港湾施設などの構造物データを反映した10mメッシュにより、地震の時間差発生や津波の河川遡上を考慮して推計するため、第1弾と差違が生じる場合がありますが、その際には避難場所の再点検を行い、津波避難対策に万全を期していきます。
3 最悪レベルでも命を守ることを目指して
先ほどご紹介しましたように、今回の推計は、必ずしも次の南海地震を想定したものではなく、最悪レベルを想定したものです。
しかしながら、県ではこうしたことも起こり得るということを念頭に置き、最悪レベルの津波に対しても県民の皆様の生命を確実に守ることを基本として、引き続き南海地震対策に最優先で取り組んでいきます。
○逃げる対策
津波避難対策については、地元代表者の皆様への説明会を市町村と共に6月末を目途に開催することとしており、地域における避難場所の確保や再選定についても9月末を目指して地域の皆様と一緒に進めていきたいと考えています。
避難場所の確保や再選定に際しては、できるだけ多くの選択肢から検討していただけるよう、これまで進めてきた高台や避難ビルへの避難に加え、津波避難シェルターへの避難の検討を進めています。併せて、事前復興の観点である高台への集団移転や現位置での高層化についても検討を進めています。
避難場所の選定作業に際しては、前回ご紹介しました「こうち防災備えちょき隊」が地域の皆様をサポートしていきます。
加えて、避難施設の整備における市町村負担が実質ゼロとなる新たな制度を本年度に創設するなど、避難場所の選定作業や避難施設の整備に対する財政的な支援もしっかりと行い、避難場所が選定できた地域は、早急に避難施設の整備に着手するよう進めていきます。
○県の諸計画の見直し・ハード施設整備
県では、行動計画や応急対策活動計画などの見直しが、第1弾の津波浸水予測を踏まえても遅れることのないよう、当初計画どおり今年度内に進めていきます。
海岸や河川堤防などのハード施設については、最大クラスの津波に対して整備することは、県民の皆様の生活・時間・財源の面から非現実的ですので、発生頻度の高い地震に対する整備を引き続き急いで進めていきます。その際にも、最大クラスの津波に対して粘り強い構造とし、人命を守るための避難時間を稼ぐような整備を進めていきます。
また、県立学校の耐震化の平成27年度完了を目指すなど、従来から進めてきた揺れ対策についてもしっかりと行い、迅速に避難するための住宅やブロック塀の耐震化についてもさらに進めていきます。
○国への働きかけ
南海地震対策を確かなものとするためには、国がこの巨大地震への備えを国策の中心に据え、不退転の決意で進めていくことが必要です。そのためには、「南海トラフ超巨大地震対策特別措置法(仮称)」の制定が必要と考えています。
事前復興の観点である高台への移転や津波避難シェルターなどの地域の実情に応じた避難施設の整備、さらには予知観測網の未整備地域である足摺岬沖から日向灘海域における予知・観測網の早期充実を図るため、引き続き他県知事と連携して特別措置法の制定を訴えていきます。
ご紹介しましたように、県では最悪レベルの津波が襲来したとしても、県民の皆様の命を確実に守ることを目指して、全力で立ち向かっていきます。
県民の皆様には、今回公表した第1弾の津波浸水予測により、津波避難場所の確保や見直しを積極的に進めていただきますようお願いします。
一方で、3月31日の内閣府の津波高の公表以降、津波の高さばかりが強調されて広まっている感がありますが、たとえ小さな津波でも大変危険ですので揺れを感じたらとにかく逃げるという意識を強く持っていただくよう、重ねてお願いします。
次回は、津波からの避難対策についてお知らせします。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話:088-823-9317 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp
(4)こうち防災備えちょき隊 〔平成24年5月1日〕
前回は、津波痕跡調査についてご紹介しました。
今回は、4月17日に発足した「こうち防災備えちょき隊」についてご紹介します。
1 備えちょき隊の創設
県では、南海地震対策の一つとして、「こうち防災備えちょき隊」を創設し、4月17日に発足式を行いました。隊員となった皆さんは、県の土木技術職員OBが主体となったNPO法人「地域の安全を図る会」と、日本防災士会高知県支部の皆さんで、現在163名の隊員がいます。隊員の皆さんの持つ防災に関する経験やノウハウを存分に活用し、地域の防災力向上を目指そうというのが設置の狙いです。今後は、県内大学の学識経験者などに、アドバイザーとして備えちょき隊に加わっていただく予定です。
2 備えちょき隊の活動内容
「こうち防災備えちょき隊」は、それぞれの地域において地震津波対策を地域の皆様自身により具体的に考えていただくため、隊員が希望のあった地域に出向き、次の活動を行います。
1)地域で開催される、南海地震に関する講座への講師派遣
2)地域で津波避難計画を策定する際に生じる疑問への、技術的なアドバイス
(疑問例:「どのように作っていけばよいのか」、「逃げる場所、逃げる道はどこが良いのか」など)
3)各地域で実施される避難訓練での、現地アドバイス
4)社会福祉施設や学校といった施設単位での、より実践的な防災アドバイス
3 備えちょき隊の活用について
地域や自主防災組織で、地震や津波対策としてなにかやってみよう、という時に、「こうち防災備えちょき隊」がお手伝いします。備えちょき隊の派遣に料金はかかりません。県南海地震対策課では、隊員派遣の相談を随時お伺いしていますので、お気軽にお問い合わせください。
(1) 講師派遣について
講師派遣をご希望の方は、県政出前講座の一環として派遣していますので、お手数ですが広報広聴課・県政出前講座のホームページ(http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/111301/koho-demaekouza-index.html)にある申込書を利用して、開催日の1ヶ月前までにお申し込みください。
講演時間 1時間程度
講演内容
●南海地震の講演を聴く機会のなかった方や南海地震のイメージが湧きにくいという方に、
南海地震から命を守るための正しい知識が得られるよう、基礎的なお話をします。
●南海地震のことは一応知っているが、家庭の備えはまだこれからという方に、
備えの必要性と簡単に始める具体的な備えの方法やコツをお話しします。
●南海地震について高知県がどんな対策を行っているか知りたい方に、
県が行う各種取組について紹介します。
(2) アドバイスの実施について
現場の技術的なアドバイスをご希望の方は、直接南海地震対策課へお問い合わせください。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話:088-823-9317 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp
社会福祉施設や学校からのご相談は、県庁の関係部署と一緒にお話を伺います。
次回は、津波からの避難対策についてお知らせします。
(3)津波痕跡調査の概要と今後の取り組み 〔平成24年4月20日〕
前回は、内閣府から平成24年3月31日に最悪のシナリオとして公表された、巨大津波に対する避難対策についてご紹介しました。
今回は、津波痕跡調査の概要と今後の取り組みについてご紹介します。
1 津波痕跡調査の概要
津波痕跡調査は、過去の南海地震による津波がどこまで到達したのかを文献や地質調査により確認し、津波浸水シミュレーションに津波痕跡を反映させ、より現実的な津波浸水予測図とすることを目的として、昨年度から実施しています。
昨年度は、文献や史跡により過去の南海地震による津波の浸水記録を調査し、261箇所の津波痕跡を確認しています。
さらに、地形の状況から津波による堆積物が保存されている可能性のある地域で地質調査を実施し、100~150年周期で来襲する津波のみでなく、より長期間の周期で起こりうる巨大津波についても把握することとしています。
2 今後の取り組み
本年度は、地質調査を昨年度に引き続き実施することに加え、過去の南海地震による津波を実際に体験した皆様からの聞き取り調査も実施することとしています。
調査により得られた津波痕跡は、並行して実施している津波浸水シミュレーションに反映し、津波浸水予測図に津波痕跡の位置を重ね合わせ、今年の秋頃に公表することとしています。
シミュレーションによる浸水予測に加え、実際に来襲した津波についても把握することが可能となりますので、県民の皆様には津波の浸水範囲をより現実のものとして実感していただき、的確な避難行動に繋げていただきたいと考えています。
ご紹介しました詳細な津波浸水予測図は秋頃に公表しますが、それまでの間にも津波からの避難対策を進めていく必要があります。
このため県では、津波浸水予測図の第一次報告を5月に公表する準備を進めています。
また、津波避難計画の策定などにアドバイスを行う「こうち防災備えちょき隊」を4月17日に設立し、新しい津波避難対策(大規模な津波避難地下シェルター等)の検討会を4月18日に立ち上げるなど、日々南海地震対策が進むよう取り組んでいます。
次回からは、「こうち防災備えちょき隊」など、地域の防災力の強化についてお知らせします。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話 088-823-9096 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp
(2)新しい津波避難対策(大津波から人の命を守る津波避難シェルター構想等) 〔平成24年4月13日〕
前回は、内閣府の有識者会議から、第一次報告として平成24年3月31日に発表された、「南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高の推計結果」について紹介しました。
今回は、この公表された最悪のシナリオに対する津波避難対策について紹介します。
1 公表された震度分布・津波高
前回も紹介しましたが、発表された推計結果は、30mを超える巨大津波の発生が想定されるなど、本県にとって非常に厳しい結果となりました。
この推計は、発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの地震・津波を想定したもので、次の南海地震が必ずそうなるというものでは決してありません。
しかしながら、県としては、こうしたことも起こりうるということを念頭に置き、南海地震対策をしっかりと進めていきます。
県民の皆様には、今回の推計を冷静に受け止めていただくようお願いします。
2 新しい津波避難対策
県では、市町村とともにこれまでも津波避難タワーや避難路・避難場所の整備など津波から避難する対策を進めており、今回の想定を受けて、今後さらに加速化することとしています。
しかしながら、今回公表された最悪のシナリオの場合、1mの津波が2分で到達する箇所や30mを超える巨大津波の発生が想定されており、高い場所へ逃げる対策が現実的でなくなる地域の発生が懸念されます。
このような場合においても、「何より尊い生命を確実に守る」ため、新しい津波避難対策(大規模な津波避難地下シェルター等)について産学官で検討を開始し、津波から逃げる手段の選択肢を増やし、地域の状況に応じた避難施設が整備できるよう進めていきます。
また、生命はもちろん、歴史や文化、地域に根差した産業など日々の暮らしを守るとの観点から、地震発生前の高台への移転や現地での土地の高層化を検討するため、南海地震対策再検討プロジェクトチームに高台移転ワーキンググループを設立し、検討を進めていきます。
県では、「県民の皆さまの生命を守る」ため、今回発表された南海トラフの巨大地震に対しても、真正面から取り組んでいきます。
県民の皆さまには、揺れたら逃げるという意識を強く持って、南海地震に備えていただきますよう重ねてお願いします。
次回は津波痕跡調査について紹介します。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話 088-823-9096 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp
(1)南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高の推計結果公表 〔平成24年4月9日〕
公表された震度分布・津波高の推計結果
内閣府から平成24年3月31日に「南海トラフの巨大地震モデル検討会」の第一次報告として、南海トラフの巨大地震による震度分布・津波高の推計結果が公表されました。
この概要と県の今後の対応についてご紹介します。
1 概要
県内では、最大の津波が20mを超える市町村が、沿岸部19市町村のうち10市町と半分を超えおり、東海から九州の広い範囲の中でも、突出した数字となっています。
また、揺れについても34市町村のうち30市町村が震度7と、同様に圧倒的に多くなっています。
今回の推計は、発生頻度は極めて低いものの、ひとたび発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの地震・津波を想定したものであり、次に起こる地震・津波を予測したものではありません。
しかしながら、こうしたことも起こりうるということを念頭に置きながら、県としては「県民の皆様の生命を守る」ための対策に最優先で取り組みます。
また、たとえ小さな津波でも危険ですので、揺れたら逃げるという意識を強く持っていただく等、県民の皆様には正しい理解をしていただくようお願いします。
2 県の対応
今回の想定を受けて、県では次の大きな2つの柱に基づいて対応をしていきます。
(1) 国への働きかけ
津波高は市町村単位で公表されており、最大の津波は市町村内のどこに来るのか、何分後に到達するのか、発生確率はどの程度か等の情報が十分でありませんので、より詳細な説明をしてもらう必要があります。さらに、今回の推計は「発生確率が極めて低いけれども甚大な被害をもたらすもの」に対してですので、発生頻度が高い地震に対しての被害想定がどのレベルになるか推計を出してもらう必要もあると考えています。
次に、この問題に国全体で取り組むことを明確にするため、特別措置法を制定して法律に基づいて対応していくことが必要ですし、これだけの巨大地震に対して国全体でどう備えるかという地震対策大綱を作ることが重要だと考えています。
国に対しては、太平洋沿岸の知事で構成している9県知会議で、政策提言としてこれまでも訴えてきましたが、南海トラフ巨大地震対策特別措置法(仮称)の制定、そしてそれに基づいた計画づくり、財政支援等について引き続き強く訴えていきます。
(2) 県の対策
平成24年度当初予算でも、津波避難タワーについては8基、避難路・避難場所の整備については153カ所、避難誘導灯等の整備については115基の実施を予定していますが、今回の推計結果の公表を受け、今後はこれをさらに加速化します。
この他にも、これまで見直しを進めてきた南海地震対策行動計画等の各計画は、今回の推計結果を踏まえ再度洗い出しを行い、当初予定通りの平成24年度中に見直しを完了させていきます。
さらに、地震動と津波浸水予測については、市町村が津波避難計画等の見直しの参考とできるよう、4月末に第1段の暫定値を、今年の秋頃には第2段の最終予測結果を公表します。
加えて、「こうち防災備えちょき隊」を県の技術職員OB等で組織し、地域の皆様が津波避難計画を作られる際等に、技術的なアドバイスを行っていきます。
今回は、3月31日に公表された地震動・津波高とそれに対する県の対応をご紹介しました。
県としては、ご紹介しました2つの大きな柱に基づいて、「県民の皆様の生命を守る」ことを第1目標として、しっかりと対策を進めてまいります。
公表された地震動・津波高は非常に厳しい数値となりましたが、あくまで最悪のケースを想定したものであって、次の南海地震が必ずそうなるというものでは決してありませんので、冷静に受け止めていただくよう重ねてお願いします。
次回は新しい津波避難対策(大津波から人の命を守る津波避難シェルター構想等)について紹介します。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話 088-823-9096 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp