公開日 2017年01月20日
(3)住宅・建築物における南海トラフ地震対策について [平成26年3月31日]
1 住宅・建築物の被害想定
昨年5月15日に県が公表した「南海トラフ地震による被害想定」では、最大クラスの地震が起きた場合、高知県内だけで全壊する建物は153,000棟、死者数は42,000人にのぼり、このうち5,200人は建物の倒壊によって亡くなると想定しています。
ただ、今後、住宅の耐震化や津波からの早期避難、津波避難空間の確保(避難路、津波避難タワー等の整備)をそれぞれ100%行うことができれば、全体の死者数を1,800人へと大幅に減らすことができるとも想定しています。
住宅の耐震化を行えば、倒壊による死者数を減らすのはもちろんのこと、火災による死者数も大幅に減らすことができます。
加えて、建物の被害が減ることで地震後も自宅に留まることが可能となり、避難者全体の数も少なくなります。
このため、県では、市町村や事業所などと連携して、住宅・建築物の耐震対策に取り組んでいます。
2 住宅の耐震化
阪神・淡路大震災では多くの建物が被害を受けましたが、その中でも特に耐震基準が導入された昭和56年以前に建築されたものに大きな被害が発生しました。このため県では、市町村と連携して、昭和56年以前に建築された住宅を対象に、耐震診断、耐震設計及び耐震改修工事の費用に対する補助を行っています。
耐震改修工事への補助件数の推移をみると、平成20年度から22年度までは年間約300棟程度でしたが、平成23年度からは600棟を超え、平成24年度末までに累計2,313棟の耐震改修工事が完了しました。さらに平成25年度は、1月末時点で700棟を超える工事が行われており、県内各地で年々、住宅の耐震化が進んでいます。
また、より合理的で低コストな耐震改修工事を行える工務店なども増えてきており、県及び市町村の補助制度を活用すれば、自己負担が100万円未満のケースが全体の7割に達しています。
住宅の耐震改修については、地域で行われる防災訓練等の際に耐震診断士等による個別相談を行ったり、地域の自主防災組織等からの要請があれば県や市町村の職員が地域に出向いて出前講座を行っていますので、こうした機会にぜひ、お気軽にご相談ください。
このほか、耐震改修工事に携わる事業者の方々に向けては、より合理的で低コストな耐震改修工法の講習会も逐次、開催しています。
住宅の耐震化の取り組みや詳しい補助制度の内容については、高知県土木部住宅課ホームページをご覧ください。
http://www.pref.kochi.lg.jp/~jyuutaku/index.html
3 建築物の耐震化への支援
本県では、耐震改修促進法の改正によって耐震診断の実施が義務化された病院、店舗、ホテル等の不特定多数の方々が利用する建築物及び幼稚園、保育所などのうち、大規模なものの耐震化を支援するため、市町村と共同で耐震診断、耐震改修設計、耐震改修工事を支援する補助制度を、平成25年度9月補正予算で全国に先駆けて創設しました。
大規模な建築物が地震で倒壊すると、そこを利用する人々に重大な被害を及ぼすだけなく、緊急輸送道路の通行を阻害して、迅速な救助、救援活動に重大な支障をきたす恐れがあります。
また、こうした建築物は、事前に耐震対策をしっかりと行っておくことで、地震後に避難所として多数の避難者を受け入れるなど、多くの県民の命を守ることにもつながります。
対象となる建築物の所有者の皆様には、補助制度を活用していただき、早急に耐震対策を進めていただきますようお願いいたします。
(参考)建築物の耐震改修の促進に関する法律(一般財団法人 日本建築防災協会)
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/tashin_law/index.html
4 これからの取り組み
地震が起これば、まず大きな揺れが襲ってきます。この揺れに住宅や建築物が耐えることによって、倒壊から命を守り、津波や火災から迅速に逃げることが可能になります。
県民の皆様には、ぜひ、耐震診断・耐震改修工事への各種補助制度や相談会等をご利用いただき、地震への備えを着実に進めていただきますようお願いいたします。
【問い合わせ先】住宅課 電話:088-823-9856 電子メール:171901@ken.pref.kochi.lg.jp
(2)高知県南海トラフ地震対策行動計画 [平成25年10月23日]
今回は、県の南海トラフ地震対策のトータルプラン「南海トラフ地震対策行動計画」についてご紹介します。
1 行動計画について
県では、平成21年4月に第1期の「南海地震対策行動計画」を作成し、被害の軽減や地震発生後の応急、復旧・復興のための事前の準備など、ハードとソフトの両面から様々な地震対策を進めてきました。
その後、東日本大震災が発生し、最新の知見に基づいた南海トラフ地震の震度分布や津波浸水予測、人的・物的被害の想定が公表されました。こうした被害想定や東日本大震災の教訓を踏まえ、抜本的に地震・津波対策の強化を図ることとし、今年6月、平成25年度から平成27年度までの3年間に取り組む第2期行動計画を作成したところです。
また、計画の名称については、南海地震に加え、東海、東南海地震が同時に発生すれば、県外からの支援が期待できないことがあり得るほどの広い範囲に災害をもたらす地震だという意識を県民の皆様にも持っていただきたいことから、「南海トラフ地震対策行動計画」に改めました。
<図は海上保安庁会場情報部と中央防災会議資料をもとに高知大学総合研究センター岡村眞特任教授が改変>
2 行動計画のポイント
今回作成した「南海トラフ地震対策行動計画」のポイントは、次のとおりです。
○発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの地震(L2)と、発生頻度の高い一定程度の地震(L1)の両方を前提において対策に幅を持たせ、この3年間で発生直後から応急期にかけての対策を概ね完了させるよう取り組んでいきます。
○建物の倒壊や火災、津波、ライフラインの停止など、地震発生後に起こり得る様々な「被害シナリオ」を詳細に想定し、必要な対策に抜かりがないようにしました。
(対策の総数は第1期計画の111項目から183項目へと大幅に増加)
○各種対策について、県、市町村、事業者、県民などそれぞれの立場で実施する主体を明らかにするとともに、県として県民の皆様や事業者、自主防災組織などの取り組みを後押しする取り組みも盛り込みました。
○一つ一つの取り組みについて、3年後の達成目標を掲げるとともに、達成までのプロセスが分かるように記載しました。
○県民共通の取組目標となるように、対策を着実に積み重ねることよって、死傷者をどこまで減らすことができるかを明記しました。
行動計画の詳しい内容については、南海地震対策課のホームページ(http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/010201/koudoukeikaku.html)をご覧ください。
3 南海トラフ地震対策のさらなる充実強化・加速化
行動計画を、スピード感を持って力強く実行していくため、このほど9月補正予算を編成しました。
地震による揺れ対策として、病院や旅館をはじめとする大規模建築物の耐震化を支援する制度を創設するほか、石油基地などの地震・津波対策の検討や、福祉避難所の指定の拡大など、地震発生直後から応急期にかけて県民の皆様の生命を守る対策をさらに加速していきます。
〔9月補正予算の主な項目〕
○大規模建築物などの耐震対策
不特定多数の方が利用する病院、店舗、旅館などの大規模な建築物や、災害対策の拠点となる建築物などの耐震対策に対して、耐震診断や耐震設計、改修工事も対象とする補助制度を全国に先駆けて創設し、耐震化を進めます。
○石油施設及び高圧ガス施設の地震・津波対策
県民生活に不可欠な燃料の確保や、油流出等による被害の軽減を図るため、石油・高圧ガス施設が集積している高知市タナスカ地区及び中ノ島地区周辺の地質調査等を行い、得られたデータを基に学識経験者等の意見を聞きながら、必要な対策の検討を進めていきます。
○福祉避難所の整備
介護が必要な高齢者や障害のある方など、一般の避難所では生活が困難な方々を受け入れる施設となる福祉避難所が早期に整備できるよう、最低限必要となる物資や資器材の整備を支援します。
4 これからの取り組み
県では、行動計画に基づき、建築物の耐震化、津波避難場所や堤防の整備、自主防災組織への支援など、県民の皆様の生命を守る取り組みを全力で進めていきます。県民の皆様も、想定される地震や津波が大きいからといたずらに怖がることなく、かといって発生頻度が低いからと油断することもなく「正しく恐れ」、身近なことから一つ一つ確実に備えを進めていただきたいと思います。
自分や大切な人の命を守るために、家具の固定や住宅の耐震化、津波からすぐに逃げる意識を持つなど、できることから一つずつ取り組みを進めていただき、ともに立ち向かっていきましょう。
【問い合わせ先】 南海地震対策課 電話 088-823-9386 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp
(1)南海トラフ地震による被害想定と県の取り組み [平成25年6月21日]
昨年度は、シリーズ「南海地震対策の加速化と抜本強化」として、県の進める様々な取り組みを紹介してきました。今年度は、新たな想定も踏まえてさらなるバージョンアップを果たした対策をシリーズで紹介していきます。
初回となる今回は、高知県版の「南海トラフ地震による被害想定」と県の取り組みついてご紹介します。
1 被害想定の概要
高知県では、昨年12月に公表した震度分布・津波浸水予測に基づいて、今後進める南海トラフ地震対策の前提となる被害想定を5月15日に公表しました。(下表1参照)
今回の被害想定では、それぞれの地域でより具体的に対策を進めることができるよう、市町村ごとに建物被害や人的被害などを算出しています。
表1 最大クラスの地震・津波による主な被害
最大クラスの地震・津波による被害は、非常に厳しい結果となっていますが、次の南海トラフで起こる地震・津波が必ずこうなるというものではなく、最悪の場合には、こういう被害も起こり得るというものです。
この数字だけを見ていたずらに怖がるのではなく、事前の備えをしっかりと進めていくことが大事です。
2 防災対策で被害は減らせる
今回の被害想定では、事前に備えることで被害を大きく減らせることを明らかにしています。(下表2参照)
例えば、避難路・避難場所や津波避難タワーを整備して、そこへ迅速に避難していただくことや、住宅の耐震化を進めることで、想定される死者数は大幅に減らすことができます。
表2 防災対策による被害の軽減
県では、東日本大震以降、市町村と協力して津波避難空間の整備にいち早く着手し、平成25年3月までに避難路・避難場所361カ所、津波避難タワー18基の整備が完了しています(下表3参照)。もし、この津波避難空間が無ければ、死者数は約53,000人であったことが計算で分かっており、これまでの取り組みですでに想定される死者数を約11,000人も減らしています。
そして、現在計画している津波避難空間を全て整備し、浸水域の方全員が迅速に避難すれば、死者数は約11,500人まで減らせます。これに加え、全ての住宅が耐震化されれば、死者数は約1,800人にまで減らすことができます。
さらに、津波避難空間の追加整備や避難訓練の実施による避難時間の短縮などによって、死者数は限りなくゼロに近づけていくことが可能であり、これからも行政と住民の方々とが力を合わせて防災対策に取り組んでいくことが重要です。
表3 津波避難空間の整備(H25.6時点)
津波避難タワー(奈半利町:H24.12 完成) 避難路(黒潮町:H24.8 完成)
3 これからの県の取り組み
県では、東日本大震災の発災直後から、避難路・避難場所の確保や住宅耐震化補助の拡充など、最大クラスの地震・津波から県民の皆さまの命を守る対策を加速化して進めてきました。
そして、今回の被害想定で負傷者数や避難者数など、地震・津波から助かった命を繋ぐための対策を具体化する前提が揃いましたので、これまで全力で進めてきた「地震発生直後の命を守る対策」に加え、「助かった命を繋いでいく対策(応急対策)」も本格化し、3年間でこれらの対策は概ね完成させるよう取り組んでいきます。
○地震発生直後の命を守る対策
最も急がれるのは、津波から命を守る避難路・避難場所の確保です。このことについては、今年度末までに計画総数の約7割を完了させるよう、市町村を全力で支援していきます。(上表3参照)
また、津波から自力で避難することが難しい方々が利用する社会福祉施設や幼稚園などの事前の高台移転を促進するため、今年度から県独自の支援制度を創設しました。
他方、津波や火災から迅速に避難するためにも、最初に襲ってくる強い揺れから身を守っていただくことが重要です。このため、住宅耐震化の一層の促進を図るとともに、簡易ながらも命を守ることができる部分的な耐震対策についての検討も進めていきます。
○助かった命を繋いでいく対策(応急対策)
地震・津波から助かった命を繋いでいくためには、最大クラスの地震・津波発生時においても、地域において確実に災害対応を行える体制を構築する必要があります。このため、全国からの応援部隊による救援活動や支援物資の集配等を行う「総合防災拠点」を県内8ヵ所に位置付け、必要な整備を今後3年間で完了させます。
その他にも、今回の被害想定を基に、避難所の再選定や食料備蓄の検討を市町村と連携して進めるとともに、地域が孤立した場合に備えて、例えば井戸水を有効活用するなど、避難所で一定期間自活できる体制づくりなども進めていきます。
ご紹介しましたように、県は市町村と協力して、最大クラスの地震・津波が発生したとしても県民の皆様の命を守るため、全庁を挙げて取り組んでいます。
ただ、地震が発生した直後の自分の命を守るのは、県民の皆様ご自身です。
身近にある避難場所の確認や家具の固定、住宅の耐震化など、できることから一つひとつ事前の備えを進めていただくようお願いします。
次回は、地震対策のトータルプラン「南海トラフ地震対策行動計画」についてご紹介します。
[問い合わせ先] 南海地震対策課 電話 088-823-9386 電子メール 010201@ken.pref.kochi.lg.jp