公開日 2010年03月31日
更新日 2014年03月31日
<30> 産業振興計画、実行元年の活動実績とさらなる挑戦 〔平成22年3月31日〕
このシリーズの最終回は、この1年間、「本気で実行!」の合言葉の下で、官民一体となって取り組んできた『高知県産業振興計画』。産業成長戦略と地域アクションプランのそれぞれの活動実績の一例を紹介します。
産業成長戦略に関しては、まず、地産外商戦略の進展があります。県産品の売り込みの機会が昨年度の5倍へと大幅に伸び、その中で146件の商談が成立したことは象徴的な成果と言えるのではないでしょうか。また、外商を進めるうえで重要な食品加工の分野では、県内各地で生産能力の増強など新しい加工施設の整備が進められました。
第一次産業のうち、農業分野では新規就農者が161人と、前年度に比べ41%の増加となるなど、新たな担い手の確保が進んでいます。また、篤農家の持つ栽培技術を学び、教えあう場が県内170ヵ所で設けられ、出荷量が前年に比べ1割以上増えた地域も出てきています。森林を生かした取組を進めてきた林業分野では、二酸化炭素吸収量のオフセット・クレジットを県が独自に発行できるプログラム認証を受けることができました。また、水産業では、黒潮町佐賀地区でカツオ船への活餌供給体制を確立した結果、同地区へのカツオの水揚げ量が対前年同期比3.2倍の54トン、水揚げ額は2.5倍の4,100万円となるなど、今後のさらなる効果が期待できる様々な成果が見えてきました。
商工業分野では、食品や天然素材、環境、健康福祉といった、今後の成長が期待される分野の企業研究会に延べ160社の参加をいただきました。今年度は4件の事業化プランを認定し事業が動き始めました。平成22年度は40件の認定を目標として、取組をさらに進めます。
観光分野では、土佐・龍馬であい博の開催に向け、龍馬伝の放送という絶好のチャンスも最大限に生かし、旅行会社などプロ向けの宣伝活動に力を入れました。その結果、(株)阪急交通社、(株)読売旅行、名鉄観光サービス(株)など様々な旅行代理店が、100を超える本県への旅行商品を販売しています。また、もう一歩先に進んでいただくための二次交通の整備など、受け入れ態勢の充実策にも官民協働で全力で取り組んできました。その結果、今年1月の県内主要旅館・ホテルの宿泊者数は前年同月に比べ7%増加し、観光施設入込客数も全体で33.1%増加しています。
産業振興計画始動!実行元年の活動実績 [PDFファイル/3.16MB]
一方、地域アクションプランでは、県内7つの地域で、それぞれ重点的に取り組んだ事業を中心に具体的な成果が出始めています。以下、地域ごとに特徴的な成果をピックアップしてご紹介します。
安芸地域では、「魚梁瀬森林鉄道遺産」や日本ジオパークに認定された室戸半島の海岸沿いの地質遺産を新しい観光資源として活用していく取り組みが進んでいます。北川村ではユズの搾汁施設の整備により、ユズ酢の生産量が昨年度の1,190tから2,070tへと伸びるなど大幅に生産性が向上しました。また、室戸市では民間の水産加工業者と県漁協が連携し、定置網で漁獲される魚の現地での加工事業も動き出し、雇用も生まれました。
物部川地域では、シイラの加工施設の整備により、一次加工による商品価値を高めていく体制が整いました。また、「地域の特産品づくり」などにより、シカ肉を使った“紅葉バーガー”など、南国市、香南市、香美市の3市で合計26品目の新商品が開発、販売されています。
高知市地域では、大河ドラマ「龍馬伝」を契機として、龍馬ゆかりの史跡を中心に6つのまち歩きコースの設定や、浦戸湾をめぐる観光遊覧船の整備など、その受け入れ態勢を整える観光関連の取組を充実させています。また、「中心商店街でのアンテナショップの開設」により、県産品アンテナショップ「てんこす」が2月に新京橋プラザにオープンし、中心商店街の新たな魅力となりました。
嶺北地域では、米粉や棚田で作られる地元産米、また碁石茶の生産・販売など地域固有の資源を生かした中山間地域の拠点ビジネスに取り組んでいます。また、土佐はちきん地鶏の生産拡大に向けた体制が整い、現地には新たな雇用が生まれましたし、取り扱い店舗は264店舗になるなど、販路も拡大しています。
仁淀川地域では、中四国最大の産地である茶や、特産の高糖度トマトや土佐文旦の販売拡大に向けた品質確保に取り組んでいます。また、特に土佐文旦については、そうした過程で生じる下級品などを、県内酒造会社と連携してリキュールとして加工するなど、新たな加工の取り組みも始まっています。
高幡地域では、カツオの町をアピールしていくため、商店主の方々が中心となって商品開発とテストマーケティングに取り組み、4月には大正町市場の前にファーストフード店を開設し、販売に取り組んでいます。また、「シイラを柱とした水産加工」の取組によって、低価格魚であったシイラの需要拡大につながり、新たな雇用が生まれました。
幡多地域では、清流四万十川や足摺岬など広域的な観光振興に「幡多広域観光協議会」を設立し体制を整えました。また、メジカなどの地域資源を活用した、地産地消・地産外商を目指す土佐清水元気プロジェクトの取り組みでは、農水産物の加工施設や冷凍施設を整備するなど、作業効率の向上が図られました。こうした事業の展開により新商品の開発やメジカの水揚げの増加につながるなどの効果が生じておりますし、新たな雇用も生まれました。
こうした県内各地での取り組みは、着実に実を結びつつあり、地域の活力向上、県内産業の成長と飛躍に向けての基礎固めができつつあります。
地域アクションプランの成果と今後の展開 [PDFファイル/8.95MB]
地域アクションプランについては、5月から6月にかけて地域ごとにシンポジウムを開催します。ここでは、各地域の取組の実践者の皆さんの成功体験ややりがい、これから取組を始めようとする方へのアドバイスなどを、取組事例の発表やパネルディスカッションの中でご紹介することとしています。それぞれの地域でどんなプランが動き出しているか、ご自分で取り組もうとする際の参考としていただくためにも、是非、お近くの会場に足をお運びいただきたいと思います。
これまで紹介したとおり、この一年間の実行により具体的な成果も表れ始めていますが、課題も多数あります。これまでの取組をさらなる大きな成果につなげていくためにも、実行の段階でいただいた県民の皆様や関係者からのご意見、ご提言、ご批判をしっかりと生かすことが不可欠だと考えています。PDCAサイクルの視点で検証を行い、このたび、5つの柱を中心に計画を改定しました。新年度の予算には改定に対応する予算も盛り込み、実行の2年目となる4月からは、「果敢に挑戦!」を合言葉に、取組をさらに加速させてまいります。
また、この政策トピックスでは、新年度から新シリーズとして産業振興計画の実行状況と成果について紹介します。まずは、改定の5つの柱について説明をしたいと思います。
〔担当課・お問い合わせ先〕
計画推進課 電話 088-823-9334 電子メール120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<29> 地域アクションプラン(7) 幡多地域の取組 〔平成22年3月26日〕
これまで、各地のアクションプランの取組を順に紹介してきましたが、最終回となる今回は幡多地域です。
当地域は、四万十川最下流域の四万十市、四国最南端・足摺岬の土佐清水市、豊富な水産資源とだるま夕日の宿毛市、鰹と黒糖の黒潮町、マグロ養殖・ダイビングの大月町、どぶろく・硯の三原村、それぞれに特徴のある6つの元気な市町村で構成されています。
この地域のアクションプランは37事業。これらは、いずれも新たな産業づくりや雇用と所得の効果的な創出・拡大などの視点から検討されたものです。その中から代表的な事業をご紹介します。
まず、1つ目は観光の取組です。
これまで、温暖な気候や清流四万十川、風光明媚な足摺岬、竜串などの自然を活かした観光が中心でしたが、もっと幡多地域の魅力を知ってもらうためには、新たな観光戦略が必要です。
このため、今年の大河ドラマ「龍馬伝」によって本県の歴史や人物などに注目が集まることを契機に、龍馬が海外に目を向けるきっかけを作ったジョン万次郎をもっとアピールしていきたいと考え、出身地である土佐清水市に、土佐・龍馬であい博のサテライト会場「土佐清水・ジョン万次郎くろしお社中」を設置しました。
ここでは、万次郎の足跡、幕末の動乱期に果たした役割、そのフロンティアスピリットを育んだ土佐清水の風土などを紹介しています。是非、ご家族でお出かけいただきたいと思います。
また、地域内全体での広域的な観光振興に取り組むため設立した「幡多広域観光協議会」では、これまでも教育旅行の誘致と受入、体験型メニューを主催する団体のレベルアップなど全体の観光の底上げに熱心に取り組んでいますが、第5回オーライ!日本大賞グランプリ(内閣総理大臣賞)を受賞するなど、その活動が高く評価されています。
今後、県外のお客様や圏域内の観光に携わる皆さんのニーズにより的確に応えられるよう、組織の法人化を目指して協議を進めてきました。来月中には一般社団法人としてスタートできる見込みであり、将来的には旅行商品の開発と販売を含めた総合的な観光・旅行サービスの提供ができるよう一層の取組を進めます。
〔お問い合せ先:幡多広域観光協議会(電話0880-31-0233)〕
2つ目は、新たな特産品づくりです。
高速道路通行料金の休日割引の効果などにより、地域の最西端の大月町にも多くの方が足を運んでいただけるようになり、道の駅でも多くの車両やお客様で賑わうことが増えてきました。これは、これまで以上にこの地域の魅力を知っていただき、また商品の販売増に繋げるチャンスでもあります。
大月町ふるさと振興公社では、地元で昔からつくられてきた干したサツマイモ「ひがしやま」の関連商品など、多くの地元産の新商品を開発し、道の駅「ふれあいパーク大月」で販売を始めています。また、ホームページの「ももいろ大月プロジェクト」で町特産の12の商品を詳しく紹介していますので、是非ご覧下さい。
〔お問い合せ先:ふれあいパーク大月(電話0880-73-1610)〕
3つ目は、中山間農業の代表的な作物であるユズの生産拡大です。
三原村は、人口1,800人。幡多地域でも最も小さな村ですが、これまで地域での評価が高い「三原米」を活かして、特区の指定を受けどぶろく(濁酒)を醸造・販売してきました。毎年11月3日の産業祭と併せて開催される「どぶろく祭り」は、村の一大イベントになっています。
一方で、過疎・高齢化や価格低迷等のため、米作り農家は減少しており、一部の農家では、もともと水田であった土地でのユズ栽培に取り組んでいます。灌水や施肥、剪定など行き届いた管理を行うことで、三原村産ユズの品質は市場で高い評価を受けています。このため、村では米に替わる収益性の高い有利作物としてユズを位置づけ、栽培面積を現状の約10haから、将来は10倍の100haとなるよう拡大を目指しています。三原村農業公社が中心となり進めているこの取組を支援することで、農家所得が増加し、村に若者が定住できる産業に育つことを期待しています。
これまで、東西に広い高知県の各地域で進められている、地域の特色を活かした個性あふれるアクションプランを紹介してまいりました。ユズやカツオなど農林水産物の生産から販売に向けた事業、「土佐・龍馬であい博」に関連した観光の振興など、本県の地域資源や今ある強みを伸ばす取組がその柱です。産業振興計画の地域アクションプランは、こうした地域資源を活かした取組が、地域のビジネスとして育ち、より大きな産業へと発展していくことを目指しています。県内にはまだまだ知られていない地域資源もたくさんあります。小さな取組が大きな可能性につながっています。今後も地域の皆様と力を合わせて、地域の皆様が希望を持って暮らしていける、そんな高知県を目指して、産業振興計画のさらなる加速化に取り組んでまいります。
〔担当、お問い合わせ先〕
幡多地域本部 電話 0880-35-8616
産業振興推進部計画推進課 電話 088-823-9334 電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<28> 地域アクションプラン(6) 高幡地域の取組 〔平成22年3月21日〕
高幡地域は、変化に富んだ横浪半島や四国カルスト、清流四万十川・新荘川といった、海・山・川の豊かな自然に恵まれた地域です。ここには、日本一の生産量を誇るミョウガ、ショウガなどの農産物、杉やヒノキなどの木材資源、鰹、シイラ、鯛、カンパチに代表される海産物、津野山神楽や龍馬脱藩の道などの歴史・文化遺産など多くの地域資源があります。
こうした地域資源を活かして、(1)滞在型・体験型観光の推進、(2)地域産物を活用した1.5次産業の振興、(3)森を活かす取組の推進、(4)農業のまとまりのある産地づくり、(5)中山間地域における多角的なビジネス展開、(6)中心市街地の賑わいづくりの6つの観点で、38の地域アクションプランの取組を進めています。この中から、特色のある事業をいくつか紹介します。
一つ目は、滞在型・体験型観光の推進です。
坂本龍馬にゆかりのある梼原町では、土佐・龍馬であい博のサテライト会場「ゆすはら・維新の道社中」が1月16日にオープンしました。これにあわせて観光ガイドの研修を行うとともに、龍馬脱藩の道や木造りの芝居小屋“ゆすはら座”など町の歴史文化を巡る観光ガイド付き散策コースを設定しました。
このほか、須崎市の漁業体験や農業体験のメニューの充実、津野町の森林セラピーロードの整備など、当地域の魅力を体感していただくための取組が進められています。
二つ目は、中土佐町で取り組んでいる鰹の商品開発です。
中土佐町は「鰹乃国」。鰹のたたきなどを目当てに多くの観光客が訪れています。今以上に鰹の町をアピールするため鰹の新しい食べ方を提案できないかと、町内の商店主4人で結成した「企画・ど久礼もん企業組合」では一昨年から商品開発とテストマーケティングに取り組んできました。
この結果、特に若い世代に評判の良かった、“クレティーヤ”、“カラヤン入りおにぎり”などを商品化することとなりました。4月に、観光客の集まる大正町市場の前にファーストフード店を開設し販売を始めます。
※クレティーヤ:鰹のメンチカツと野菜を米粉(こめこ)の薄焼き生地でくるんだ惣菜
※カラヤン :鰹を入れた辛口の焼き味噌
三つ目は、地域資源をまるごと活用する取組です。
津野町では、道の駅や高知市のアンテナショップなど直販施設での地域産品の販売に力を入れています。販売品目の生産者を増やすことや、商品を効率的に集荷することで、これまで外に出しにくかった地域の産品の販売強化を図ります。
また、観光ガイドの育成や観光案内の充実、地元の津野山茶を活かした食のメニューづくり、地域のイメージを盛り込んだ土産品開発など、地域の食材や自然・伝統文化など地域資源を余すことなく活かす取り組みを進めています。
四つ目は、四万十町での滞在型市民農園(クラインガルテン)の整備です。
これは、農業や田舎暮らしをしてみたいと希望される方に、実際に地域に住んでもらい、農業やその土地の自然や文化を体験していただくことで、本格的な就農や移住につなげるための施設です。コテージ付の滞在型農園(15区画)と日帰り型農園(16区画)の2タイプがあり、それぞれ50平方メートルの農地を利用できます。コテージについては、町外の方を中心として、好評のうちに利用者募集が終了し、4月1日にオープンする予定です。
〔お問い合わせ:四万十町農林水産課 TEL 0880-22-3113〕
このほかにも、車で訪れる皆さんに、まち全体をあたかも高速道路のサービスエリアのように食事や買い物、休憩などで活用していただく須崎市の取組や、地域で獲れるシイラを使った新たな商品開発を行う四万十町の興津漁協四万十マヒマヒ丸企業組合の取組、魚の鮮度保持のためにシャーベット状の海水氷である“スラリーアイス”を活用する中土佐町の取組など、特徴的な事業が進んでおり、こうした取組を全力で支援していきたいと思っています。
〔お問い合わせ先〕
高幡地域本部 電話0889-40-0205
計画推進課 電話 088-823-9334 電子メール120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<27> 地域アクションプラン(5) 仁淀川地域の取組 〔平成22年3月15日〕
仁淀川地域は、四国第三の河川、清流・仁淀川の流域6市町村(土佐市、いの町、佐川町、越知町、仁淀川町、日高村)で構成され、源流域の急峻な山岳地域から海岸部に至るまでの多彩な姿を持っています。
豊かな自然と仁淀川の水に恵まれたこの地域は、古くから木材産業や施設園芸、川と海での水産業、また、製紙業など独自の地場産業などが盛んな地域で、県都高知市に接しているほか、国道を経由して松山市とのアクセスも容易であり、特に観光など交流を期待する分野で大きな可能性を持っています。
仁淀川地域のアクションプランでは、こうした地域の特性を最大限に生かした35の取組を支援しています。この中から、重点的に進めている2つの取組を紹介します。
1つ目は、観光の振興です。仁淀川流域には、カルストや棚田、沈下橋など特徴的な地形と風景があります。また、小村神社(日高村)のご神体の大刀は、古墳時代のものながら出土品でない点で全国的にも希少で、国宝に指定されていますし、清滝寺(土佐市)では、重要文化財の木造薬師如来立像が見られます。さらに、平家の落人伝説など、歴史文化が息づいています。
こうした地域の魅力を背景に、これまでも地域に滞在し体験いただく観光メニューを提供してきました。アクションプランでは、観光に関する事業者など地域の皆さんが、土佐和紙工芸村やいの町紙の博物館での和紙の手漉き体験、ホエールウォッチング、鰹のたたき作り体験など、従来からの観光メニューのブラッシュアップ(磨き上げ)を行うほか、周辺地域とも連携する新たなモデルツアーの企画など工夫を凝らした取組を進めています。
また、観光や食の情報を幅広く提供していくための流域共通のパンフレットの作成やホームページ、ブログなどネット上での効果的なPRなど、情報発信に向けた取り組みを進めており、仁淀川流域全体での観光振興を図っていきます。
高知市から気軽に足を延ばしていただける距離ですので、県内はもちろん全国の皆様に、この仁淀川流域を体験していただきたいと考えています。
2つめは、農産物の販売の促進です。
意外に知られていませんが高知県は中四国最大の茶の生産地で、特に仁淀川地域は県内生産量の70%を占めています。霧が多いという茶の栽培に適した気象条件に恵まれていることや生産者の栽培努力によって、品質への評価も大変高く、これまで主に宇治茶や静岡茶などの県外の高級茶のブレンド用として出荷されてきました。
その一方で、仁淀川流域産として消費者に販売する量は限定的で、一般での知名度は高くありませんでした。また、原材料の原産地表示が求められるようになったほか、ペットボトル商品が増加してきたことなどにより、県外高級茶の原料としての本県茶葉の需要は減少しています。
このため、自前のブランド“仁淀川流域茶”の確立を目指し、共通のロゴやポスターを作成してPRに努めているほか、お茶のおいしい飲み方にこだわった店頭での試飲販売など、販路開拓と販売の拡大に取り組んでいます。
このほか、中流域の日高村では以前から高糖度のトマトの生産に取り組み、これまで “シュガートマト”“ピュアトマト”のブランドで販売してきました。近年の栽培技術の向上によってより糖度が高いトマトの生産が可能になってきたことから、また、安心安全を求める消費者ニーズの高まりに応えるため、高い糖度の計測と生産履歴を確認できるシステムを導入し、新しいブランドを立ち上げ、2月に出荷を開始しました。
また、下流域の土佐市は“土佐文旦”の発祥の地であり、県内生産量の約6割を占める主要産地として知られています。今後、県外に販売を拡大していくためには、これまで以上の品質確保が重要ですので、一個一個の糖度を確認できる出荷設備を導入しました。あわせて、規格外の文旦の果汁を使った“文旦リキュール”など新たな製品の開発を行うなど、土佐文旦の知名度の向上と消費の底上げにつなげるよう取り組みます。
こうした取組のほか、薬用作物であるミシマサイコやサンショウ、シキミ・サカキなどの特用林産物の生産の拡大、一本釣りのウルメイワシ“宇佐のウルメ”のブランド化、地域の伝統産業である土佐和紙を使った商品開発など、多くの取組があります。
こうした農産物をはじめとする地域の産品を生かす取組は、食を中心とした観光メニューや土産物としての販売などと相互に連携し、広がりをもった産業として育っていくことが期待できます。
今後も、地域経済の活性化に効果を上げることができるよう、市町村とともに地域の特徴を生かした取組を支援していきます。是非、多くの皆様のご来訪、と仁淀川関連ブランドへのご声援をお願いします。
〔担当課・お問い合わせ先〕
仁淀川地域本部 電話 088-852-7256
計画推進課 電話 088-823-9334 電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<26> 地域アクションプラン(4) 嶺北地域の取組 〔平成22年3月5日〕
四国の中央部、吉野川源流域の本山町、大豊町、土佐町、大川村で構成される嶺北地域は、森林面積が約90%を占める中山間地域で、美しい自然と豊かな地域資源に恵まれています。嶺北地域アクションプランでは、こうした地域の特性を踏まえた産業創出の取組など18項目を掲げています。この中から、いくつかの取組をご紹介します。
1つ目は、「米粉」を活用したビジネスの展開です。JA土佐れいほくでは、米を製粉した米粉(こめこ)の製造とその加工品の製造販売に取り組んでいます。
ここの米粉の特徴は、製粉時のデンプンの損傷が少なく、また、きめが細かく適度なしっとり感があり、素材として高い評価をいただいています。加工品としても米粉入りうどんや米粉を主原料とした“土佐竜馬麺”を売り出しています。
また、土佐町の女性グループ“米米ハート”では米粉を使って作る100種類を超えるパンや菓子を販売しており、町内外で大変好評です。
今後は、「嶺北と言えば米粉。米粉といえば嶺北。」となるよう「米粉の里」としての情報発信にも取り組み、地産地消とあわせて、関西圏など県外へも販売を広げていただきたいと思います。
[お問い合わせ先:JA土佐れいほく0887-82-1677、米米ハート0887-82-0074]
2つ目は、米のブランド化です。本山町の農家を中心とする本山町特産品ブランド化推進協議会では、地元産米のブランド化に取り組んでいます。水や土壌に恵まれ、また寒暖差の大きな地域の棚田で、環境に配慮し、室戸海洋深層水を活用して生産する当地の米は、味、大きさ、色合い等にこだわっています。平成21年産の新米からは、“土佐天空の郷”のブランド名で販売を始めました。
11月に開催された米・食味鑑定分析コンクール(米・食味鑑定士協会、福島県天栄村主催)では、水田環境部門で特別賞を受賞し、またテレビでも紹介されるなど、嶺北ブランドを全国に向けてアピールしています。地元のものに付加価値を付ける取り組みを進めることで、地域農業に希望が持てるようになる一つの良い事例だと考えています。
[お問合せ先:本山町特産品ブランド化推進協議会事務局(本山町農業公社)0887-76-4333]
3つ目は、地域の独特の資源をビジネスに結びつけることです。その一つに、大豊町碁石茶生産組合が生産・販売する“碁石茶”があります。
碁石茶は、お茶と乳酸菌という組み合わせの「後発酵」という独特の製法により生産され「まぼろしのお茶」といわれています。日本各地の豊かな食文化を守り育てるために設けられた、(財)食品産業センターによる表示基準『本場の本物』の認定を平成19年2月に受け、また、平成20年度には高知県地場産業賞を受賞するなど、県内外で認知度が高まっています。様々な地域資源を生かして、多角的な事業に取り組んでいる大豊町の(株)大豊ゆとりファームでは、同生産組合の一員として、碁石茶の生産・販売などに取り組み、中山間地域における拠点ビジネスとして展開していくことにしています。
[お問合せ先:大豊町碁石茶生産組合0887-73-1818]
4つ目は、本県が開発した“土佐はちきん地鶏”を、大川村における新たな産業とする取組です。土佐はちきん地鶏は、ブロイラーに比べて脂肪が2分の1以下と大変ヘルシーで、うまみ成分のグルタミン酸や甘み成分のアラニンは2倍以上です。さらに肉のしまりと適度な歯ごたえもあり、一度食べていただいた方からは大変好評で、取り扱う飲食店等も増えてきました。大川村では、生産の拡大に向けた施設整備を進めるなど、村の産業として大きく育てようとしています。
[お問合せ先:大川村ふるさとむら公社・(株)むらびと本舗0887-84-2201、同高知営業所088-803-6306]
5つ目は、木工製品の製造・販売による地域の活性化です。本山町商工会青年部では、嶺北材を使って人にやさしい木製品の企画・販売を進めてきましたが、この中で、地元の小学校等に販売した間伐材を生かした机や椅子が大変好評であったことから、これを契機に“ばうむ合同会社”を起業しました。現在、レーザー加工機を導入し、木製のノベルティグッズの製作をはじめ多くの製品を開発、木材の利用促進に意欲的に取り組んでいます。この他、農産物や地場加工品などの地域資源を、安心・安全な商品として企画・販売することや、地域の産業おこしにつながる人材の育成などに取り組んでいます。中山間地域で起業した事業体として、今後の成長と活躍を期待しています。
[お問合せ先:ばうむ合同会社 0887-76-3355]
嶺北地域では、このほかにも、環境に配慮して生産した米ナスやパプリカなどの“れいほく八菜”やユズの加工拠点づくり、住宅の構造材をキット化して販売する“れいほくスケルトン”、地域の特産品をインターネットで販売する“土佐さめうらe商店街”の運営など、地域の特性を最大限生かした取組を進めています。
こうした地域のみなさんの思いを産業振興につなげ、将来にわたって安心して暮らせる地域の実現に向けて、地域アクションプランをはじめとする産業振興計画での支援を行っていきたいと思っています。ぜひ、産業振興、地域活性化のワンストップの窓口である「嶺北地域本部」にお気軽にご相談、ご提案ください。
[お問合せ先]
嶺北地域本部 電話 0887-70-1015
計画推進課 電話 088-823-9334 電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<25> 豊かな森林資源を生かしきる!〔林業〕 〔平成22年3月2日〕
高知県は、面積の約84パーセントが林野である全国でも有数の“山”の国です。その山では、長い間、そこに住む人々が豊かな森林資源を守り育て、水源を守り、暮らしを営んできました。
産業振興計画の林業分野では、この森林資源を生かして所得の向上を図ることを目指し、山の産業を元気にします。
そのための取組の一つに、「森の工場」があります。これは、森林所有者の協力によって複数の森林をひとまとめに集約することで、作業道の開設や高性能林業機械の導入を行いやすくし、工場のように計画的・効率的に木を切り出すものです。本年度は41工場、約6千百ヘクタールを追加し、この結果、これまでに合計88工場、約2万9千ヘクタールが設置されました。
県内の森林の所有規模が小さく、まとまりのある作業ができにくいことが、木材生産が停滞している一因であることから、今後もこうした森の工場による生産の集約化を拡大していきます。
一方、景気の低迷などによって住宅などの木材需要が大きく落ち込み、価格も下落するなど林業にとって大変厳しい状況が続いています。このため、生産コストの管理をはじめ経営感覚を持った林業経営が必要です。
このため、森林所有者に対し経営指導などにあたる「森林施業プランナー」の育成を進めることとし、地域の森林整備の中核的な担い手である森林組合の中堅職員を対象とした研修を実施しています。あわせて、森林組合の幹部職員に向けても経営マネジメントに関する研修を行っています。
研修の効果もあり、各地域の森林組合で、林業経営に対する意識の変化が進んでいます。昨年11月に森林組合連合会の会長が、自らの退路を断ってでも組織を挙げて間伐に取り組む、という決意を述べられたこともそうした表れであり、今後の成果を期待しています。
また、木材の需要を拡大していくことも課題です。昨年度から、県産材を利用した木造住宅に対して100万円を上限に助成する制度を設けました。今年度は306戸(2月15日現在)に助成、公共施設では23カ所、民間施設でも5カ所で木造・木質化が進められました。また、学校などの26団体42施設で木製の机・椅子などが導入されました。
このように県内での木材需要の拡大を進めていく一方で、県外にも県産材を売り込み、販売量を増やしていかなくてはなりません。このため、県産材を使っていただいた住宅について、二酸化炭素固定証書を発行し環境価値の「見える化」によって付加価値を付けることや、消費地の工務店等を対象とする住宅セミナーの開催などを行ってきました。来年度はこのほか、消費地の市場等の協力を得ながら、本県産材の一時保管や荷捌きを行う流通拠点を関東、東海及び関西圏で確保することや、関東及び関西での展示会の開催を行うなど一層の県産材の「地産外商」に取り組みます。
また、昨年9月に韓国の木浦市で行った、高知港とアジア6港の友好提携港のネットワーク「INAP」の総会に合わせて経済ミッションを組み、現地の企業訪問などを行いました。その中で、県内の木材産業関連企業4社が、韓国木造建築協会の会員企業との懇談会や商談会を通じて「れいほくスケルトン(※)」やヒノキの木材製品などをPRし好評を博しました。
コンクリート住宅の多い韓国でも近年は、木造住宅への関心が高まってきたとお聞きしています。10月と11月には同協会の会員企業の担当者が来県し、本県の整備された森林やスギやヒノキの製材品、木造建築物を見学していただくなど、取引に向けた交流を行いました。実際にいくつかの商談が進んでおりますので、ニーズへの対応など信頼関係を築き、新たな販路の一つに育っていくことを期待しています。
(※) れいほくスケルトンとは、木造住宅の基本構造体をキット化したのもの。柱や梁(はり)など構造材の切る、削るといった作業をあらかじめ行うことで、建築する工務店などの負担が軽減されます。
このほか、県内の各地域では、森林の持つ効果をこころと身体の健康に生かす「森林セラピー」や、多様な効果が見直されている木炭の生産など、森林を生かす取り組みが動き始めています。また、環境ビジネスの面においても、CO2排出削減プロジェクトによる全国初のオフセット・クレジットの創出とその販売を行いましたほか、今月8日には、間伐森林のCO2吸収量を県が認証する、「高知県J−VER制度」もスタートしました。
林業・木材産業を取り巻く状況は依然として厳しく、手応えを感じるようになるまでには、継続的な取組が必要だと考えています。そのため、生産から加工、販売に至るまであらゆる可能性を探り、林業分野の大きな目標である、豊かな森林資源を活用した所得の向上と雇用の創出を目指して、関係者と一体となって取り組んでいきます。
〔担当課・問い合わせ先〕
林業環境政策課
電話 088-821-4871 電子メール 030101@ken.pref.kochi.lg.jp
<24> 地域アクションプラン(3) 物部川地域の取組 〔平成22年2月18日〕
物部川地域は、南国市・香南市・香美市の3つの市からなっています。中心を流れる物部川は、藩政時代から香長平野などの農業用水や鮎などの漁業に、近年は水力発電にも利用されるなど、地域の産業や生活に大きく関わっており、そのために川を通した結びつきも強いところです。
このため、地域アクションプラン22項目の事業を進めるうえでも、流域で一体的に取り組みやすい地域だと考えています。例えば農業は、平野部ではニラやシシトウなどの園芸作物、山間部、特に上流の中山間ではユズといったように、流域の特性を生かした品目ごとに産地でまとまり、生産から販売まで一貫して取り組んでいますし、観光では、地域全体の資源を活用する地域体験型観光メニューの商品化などに取り組んでいます。
このほか、現在進んでいる主だった取組を紹介します。
一つ目は、園芸農業の支援です。
香南市夜須町では、温暖な気候を生かして、高品質なメロン「エメラルドメロン」の栽培とブランド化に取り組んできましたが、地域アクションプランでは、より安定した生産量と品質の確保を図るため、県農業技術センターが開発した日射比例制御かん水システムを導入し、難しい水の管理をある程度自動化して行うこととしています。また、あわせて防虫ネットや青色蛍光灯の利用など環境保全型の栽培を進めることで、安全・安心で高品質な“夜須のメロン”を売り出していきます。このような消費者からの産地への信頼を確立する取組を他の品目にも広げ、地域の園芸農業全体の振興を図っていくこととしています。
二つ目は、地域の重要な資源である農産物など一次産品を加工し、商品化する取組の支援です。
地域内の各地で商品開発に取り組んでおり、これまでに、らっきょう・シイラを使ったバーガー“潮風バーガー”や柚子のマーマレード“しおゆず”、山北みかんを使った“文佳人 山北みかんリキュール”などの商品が生まれています。一次産品を加工して付加価値を高めることは、産業振興計画の大きなテーマの一つであり、今後も様々な地域資源を使った商品開発が進むことを期待しています。
三つ目は、地産地消と食育の取組の支援です。
南国市は、学校給食の「地産地消」と食を通して考える教育「食育」の先進地です。平成9年度に市内の中山間地域でとれた米を学校給食に導入して以来、地産地消と食育を進めてきました。今年度からは、給食での地元野菜の供給割合をより高めるために、給食に使う野菜をJAの直販所から市内の全ての小学校(13校)と市立幼稚園(1園)に毎朝配送する体制をとっています。今後は学校だけでなく、量販店などの業務筋にもこの取組を広げ、地元野菜の販売拡大を行っていく予定となっています。
ここ物部川地域は、肥沃な土地、製造品出荷額が県全体の4割を占めるという工業集積、空港や鉄道、高速道路といった交通インフラ、アンパンマンミュージアムをはじめとする観光資源など、産業振興のための資源が多い地域です。今後も、地域の皆様とともにアクションプランのさらなる磨き上げを行い、この地域のポテンシャル(潜在的な力)を生かし切っていきたいと考えています。
〔担当課・お問い合わせ先〕
物部川地域本部 電話0887‐57‐0015 計画推進課 電話088‐823‐9334
電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<23> 地域アクションプラン(2) 安芸地域の取組 〔平成22年2月4日〕
安芸地域は、室戸市、東洋町、奈半利町、田野町、安田町、北川村、馬路村、安芸市、芸西村の東部9市町村からなるエリアです。この地域は、山・川・海の豊かな自然に恵まれ、古くから第一次産業を中心に栄えてきました。中でも、平野部のハウス園芸地帯で栽培されるナスや山間部のユズ栽培はそれぞれ日本一の生産量を誇るなど、農業に強みを持っています。
地域アクションプランには、こうした地域の資源、強みを最大限に活かす視点で、34事業を盛り込んでいます。その主な取組を紹介します。
まず1つ目に観光関連の事業があります。
先月から大河ドラマ「龍馬伝」が始まりましたが、このドラマは安芸市出身で三菱グループの創始者、岩崎弥太郎の視点で坂本龍馬を描くもので、香川照之さん扮する弥太郎が全編に登場します。安芸市には生家をはじめ弥太郎の足跡が数多くありますし、ドラマにあわせて開催しています「土佐・龍馬であい博」のサテライト会場 “安芸・岩崎弥太郎こころざし社中”では、「志」をコンセプトに、弥太郎の軌跡を紹介しています。この機会に多くの皆様に当地域に足を運んでいただきたいと思います。
このため、この地域での滞在がより魅力あるものとなるよう、弥太郎が志しを立てたと言われる妙見山への散策道の整備や、生家をはじめとする市内の見所を巡るウォーキングコース、レンタサイクルコースを準備しています。また、特産品の開発・商品化を支援することで、魅力ある土産物の充実を図っています。
また、北川村にある「中岡慎太郎館」についても、映像による解説や展示パネルの更新といった展示内容のリニューアルに対し支援をしました。来場者の皆様に龍馬の盟友、慎太郎の魅力を大いに感じていただけると思います。〔お問い合わせ先:北川村立中岡慎太郎館(電話0887-38-8600)〕
また、昨年の6月に国の重要文化財に指定された「魚梁瀬森林鉄道遺産」や、日本ジオパークに認定された室戸半島の海岸沿いに露出する特異な地質遺産を、新しい観光資源として磨き上げ、活用していく取組も進めています。
こうした安芸地域の観光の魅力をもっと知っていただけるよう、地域の見どころや食べどころ、買い物どころ、また、分野別の体験メニューの情報などを紹介するパンフレット「土佐東方見聞録」と、映像で地域を紹介するDVDの作成も支援しました。サテライト会場や定期周遊バス等で紹介するほか、旅行エージェント等への営業活動でも使用し、観光客の増加につなげていきます。
2つ目は、生産量日本一を誇るユズの生産性向上の取組です。
地域の基幹品目であるユズの生産性と品質の向上を図るため、新植・改植を進めるほか、将来にわたってユズ園を適正に管理していくための仕組みづくりに取り組んでいます。また、今年度は、北川村のユズの搾汁施設の機能拡充を支援し、作業効率の向上とユズ酢の増産を図りました。
3つ目は、地域の伝統的な産品である土佐備長炭の生産拡大です。
室戸市を中心とする地域は、紀州産と並んで高級品と称される「土佐備長炭」の主産地です。中国産の炭の輸出規制などにより、国内産の需要が増加傾向にあることから、生産拡大と販売促進に取り組んでいます。本年度は、新たな共同窯・研修窯の設置を支援しています。これによって生産量の拡大を図りながら、新規製炭者の確保と育成を目指しています。
4つ目は、定置網で漁獲される魚の現地加工と販売の取り組みです。
県東部の海は、県内でも最も定置網漁業に適した海域です。定置網では、ブリ類やイサキなどの比較的高価格で取引される魚種も獲れますが、主体はサバ・メジカ・イワシなどです。大きな水産加工施設がなく、漁獲物の多くは生鮮のままで、低価格で取引されているのが現状です。このため、県内の水産加工業者と高知県漁協が連携して、現地で「しめ鯖」などに加工、販売展開することとし、そのための加工施設の整備を支援しました。これにより、サバなど低価格の魚種を高鮮度のまま加工し、高品質の水産加工品を製造することが可能となり、魚価の向上や雇用の拡大にもつながります。
以上、紹介した取組は地域アクションプランのほんの一部です。安芸地域にはこの他にもこれからの発展が楽しみな事業や取組が数多くあります。現在の事業計画を着実に成功に導くことはもちろん、市町村や地域の皆様とともに新たな取組の発掘も行い、地域産業の振興を図っていきます。
〔担当課・お問い合わせ先〕
安芸地域本部 電話0887‐34‐1270 計画推進課 電話088‐823‐9334
電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<22> 地域アクションプラン(1) 高知市地域の取組 〔平成22年1月12日〕
「本気で実行!」を合言葉に、4月から取り組んできた産業振興計画。その柱の一つである「地域アクションプラン」が、県内各地域で進んでいます。
地域アクションプランは、生活圏や商圏といった社会的なつながりを基に県内を7つの地域〔高知市地域、安芸地域、物部川地域、嶺北地域、仁淀川地域、高幡地域、幡多地域〕に区分し、それぞれの地域ごとに特徴を活かした産業振興の取組を進めるもので、現在221事業が計画されています。また、一度作ったら変えないというものではなく、実行段階で随時検証し、見直しや各地域での新たな取組を追加するなどの改定を行うほか、広く地域の産業の成長を目指していきます。
これから、県内7地域の状況を順次お知らせしていきますが、第1回目となる今回は、「高知市地域」です。
高知市地域は、他の6地域と異なり高知市1市だけで構成されていることや、産業・文化の中心地、県中央部の交通・物流の要衝であるという特徴があります。また、旧土佐山村、旧鏡村、旧春野町との合併によって、都市地域と田園地域・中山間地域、さらには臨海部をも併せ持つバランスのとれたエリアでもあります。
この地域の特性を生かしたアクションプランは37事業。県全体への波及効果を及ぼす視点を重視していますが、主な事業をご紹介します。
その1つに、まず、観光関連の取組があげられます。
今月から放送が始まった大河ドラマ「龍馬伝」を契機として、本県に多くの観光客の皆様にお越しいただけることが期待されます。高知市が龍馬の生まれた町であり、多くの足跡があるという強みを観光に活かすために、昨年10月から龍馬ゆかりの史跡を中心に6つのまち歩きのコースを設定しました。観光ガイドと一緒に市内を巡るこのまち歩きを定着させ、高知市観光の魅力を高めます。〔お問い合わせ先:高知市立龍馬の生まれたまち記念館(電話088-820-1115)〕
あわせて、新しい観光スポットとして定着しつつある浦戸湾を巡る観光遊覧船の充実を図ります。これまでご利用いただいた観光客の皆様からも要望が高い便数の増加と受け入れ態勢を整えるための支援を行い、より、高知を楽しんでいただき、少しでも長く滞在していただくことを考えています。〔お問い合わせ先:NPO法人きらりこうち都市(まち)づくり(電話090-5715-2990)〕
また、全国に広がるよさこい鳴子踊り。この「よさこい」をテーマにした映画『君が踊る、夏』(今秋公開予定)のロケを支援しました。この映画は、本県を舞台に人気若手俳優の溝端淳平さん演じる主人公が、解散したよさこいチームを復活させようとする物語ですが、本県の観光地などが多く登場します。こうした映像を通じて高知への関心が高まり観光客の増加につながるとともに、「よさこい」の本家としてのアピールもできるのではないかと考えています。
2つ目は、高知市でのアンテナショップの開設です。
高知市中央公園に隣接する新京橋プラザに県内の市町村の産品を常設で販売するアンテナショップを来月開設します。県内最大の消費地である高知市で各地域の産品を販売することは、県内での地産地消であると同時に、市町村にとっては販路を開拓する地産外商になります。また、テストマーケティングを行うことで魅力ある製品づくりにつなげることや、新しい立ち寄りスポットとして中心市街地活性化にも寄与することなど、多くの効果が期待できます。
3つ目は、中山間農業の代表的な作物であるユズの生産の拡大です。
高知市の中山間地域では主要な作物としてユズの栽培に取り組んでいます。このユズの栽培が中山間地域に若者が定住できるような産業となるよう、収穫したユズを衛生的で安定的に搾汁できる施設の整備を支援しました。これにより、搾汁したユズ酢の生産量の拡大につなげました。
このほか、中心市街地の活性化に取り組みます。
中心市街地は、郊外店の進出や消費行動の変化などによって、かつてのような賑わいは少なくなっていますが、今でもはりまや橋周辺から高知城までの東西に広がるエリアは、日曜市やひろめ市場などの観光資源も多く、よさこい祭りなど全県的なイベントの中心でもあります。このため、高知市との合同検討チームで、「歴史」と「文化」と「食」の3つをテーマとして中心市街地の具体的な活性化策を考えることとしました。
高知県全体の発展にもつながるまちづくり、あわせてポスト龍馬伝を見据え、継続して観光誘客にもつなげていける仕組みづくりに県、高知市が共同して取り組みます。
〔担当課・問い合わせ先〕
計画推進課・高知市地域本部 電話 088-823-9334 電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<21> テーマ別研究会の始動と販売力の強化 〔商工業〕〔平成21年12月25日〕
商工業分野の成長戦略では、「外貨を稼ぐ商工業」、「産業人材の育成」、「就労の場づくり」の3つの視点で、ものづくりの強化や研究開発の支援、商店街の活性化など様々な事業を進めています。今回は、こうした事業のうち、テーマごとの「研究会方式」の取組と、県外に向けて“外商”を進めるために販売力を強化する取組について紹介します。
【テーマ別研究会】
本県の産業全体の振興を考えたとき、従来からある産業分野・業種を伸ばしていくことはもちろんですが、 潜在力があり、成長が期待される分野の事業化を進めていくことも重要になります。そうした分野やそこで活躍されている事業者が持つ様々なアイデアや新しい試みを、早期の事業化に結びつけるために「高知県成長分野育成支援研究会」を設置しました。
対象とするテーマは、本県の資源や最近の社会的要請等を考えますと、「食品」、「天然素材」、「環境」、「健康福祉」の4つとしました。
研究会では、これらのテーマごとに、新たなビジネス展開に意欲のある企業・団体に参加していただき、異業種交流・マッチングなどを行いながら事業化プランを作成し、最終的には研究会での審査を経て「研究会発事業化プラン」に認定します。認定された事業化プランは、今年度新設した補助制度(ハード事業・ソフト事業)の対象とするほか、販路開拓・技術支援など県による「新事業創出支援チーム」による総合的な支援を行います。
【販売力の強化】
県内の製造業は、従業員数30人未満が約85パーセントと、小規模な事業者が多数を占めています。一部の企業を除いて、情報の発信や販路拡大の取組が弱く、特に県外への販売面で十分な成果を収めることが難しい状況があります。
そこで、県では、こうした事業者が県外で販路の開拓と、販売の拡大が図れるよう取組を進めています。
その第一は、商談会の開催です。県内製造業の受注の多くは県外からの発注ですので、販売を拡大していくには、県外企業へのPRが効果的です。このため、県と高知県産業振興センターが、関西などの有力企業と県内の製造業者が参加する商談会をセットします。今年度は、10月に徳島で開催し一部成約に結びつくなど、商談会開催の成果が出始めています。今年度中に、大阪市でも開催する予定です。
次に、展示会への出展があります。関西や首都圏等で開催される大規模な展示会に高知県のブースを設けて、県内の複数の事業者が出展することで、本県製造業のPRを行います。さきほどの商談会も含め、こうした展示会など県外企業への販路開拓では、高知県が前面に立つことで県内企業の信用力を高め、商談が進めやすくなるようにしています。今年度は、既に大阪と名古屋
で開催された展示会に出展し、2月には首都圏での展示会への出展も予定しています。こうした機会を通じて、多くの商談も成立していますので、引き続き県外での展示会への出展を進めていきます。
また、近年インターネットの利用は商取引においても必須となっており、企業情報や技術・製品の情報をネット上で求めることはごく当たり前のこととなっています。各企業には特長ある製品や独自の技術を有している一方で、それを必要とする企業に向けての発信が弱い面があります。このために、新たな発注先を開拓することを目的として、県内製造業の技術・製品情報のポータルサイト(インターネット上の玄関となるホームページ)を県が開設します。これも、県が関与することで、県内企業の情報を網羅的に、また効果的に提供し、受注の拡大につなげていきます。現在、制作を進めており来年3月にはオープンする予定です。
こうした取組を通じて、地域の資源や強みを活かした本県商工業の“地産外商”を進め、高知の製品をもっと全国に、また海外にも広めていきたいと考えています。
〔担当課・問い合わせ先〕
工業振興課 電話 088-823-9724 電子メール 150501@ken.pref.kochi.lg.jp
<20> “高知のうまい魚”を広めたい 〔水産業〕〔平成21年12月11日〕
高知の水産業は、古くから他の地域に先駆けて新たな技術や漁場を開拓し、大いに発展してきました。しかし、近年は、水産資源の減少や魚価の低迷、競争の激化などにより、遠洋漁業・近海漁業の縮小や漁業者の減少など大変厳しい状況にあります。
一方で、旅行雑誌のアンケートによれば、高知はカツオのたたきに代表されるように地元ならではのおいしい食べ物が多い所として連年トップクラスにランクされていますし、また、今日でも生産額が全国10位以内を維持する水産県であるなど、水産業は本県にとって重要な産業であることは明らかです。
産業振興計画は、こうした高知の水産業の強みを生かし、消費者の食に対する安全・安心志向や国産志向の高まりなどを追い風としながら、食卓の主菜となる“高知のうまい魚”を全国に広めることで、漁業者の所得の向上と地域の雇用の確保を目指しています。
このために掲げた4つの戦略と具体的な取組を紹介します。
1 「生産物(鮮魚)の売り上げ高を伸ばすための戦略」
「土佐の魚(いお)」を広く売り出すために、量と質の両面から取り組んでいます。
「量」を確保するために、まず、浮魚礁(土佐黒潮牧場)を魚がより集まりやすい所へ再配置します。このほか、位置が分からないため利活用が不十分な沈設型魚礁の位置の調査や魚の生育に欠かせない藻場や干潟の整備、放流効果を高めるためより大きく育てた稚魚を放流する取組などを進めています。
魚が集まる浮魚礁(土佐黒潮牧場)また、漁業を担っていただく方を増やすために、新たに漁業への就業を希望する方の研修費用や生活費を助成しています。独立時の漁船の購入は大きな負担となりますので、これを軽減するため漁協が行う漁船リース事業に助成を行っています。
「質」を確保するためには、何と言っても産地での鮮度保持と衛生管理、魚のサイズを揃える選別が重要となりますので、漁業者や漁協の皆様の意識を高めるための学習会を開催しています。
これからの産地市場は、殺菌冷海水による鮮度の管理や魚体選別機による素早い処理、衛生管理マニュアルの徹底など、高度な品質・衛生管理が求められていますので、先行しているすくも湾中央市場〔宿毛市〕に続き、地域の重要な市場である清水市場〔土佐清水市〕の整備を進めます。
一方、土佐の魚を売り出すには、こうした産地での取組に加えて、流通・販売面での対策も重要です。高知県漁協は、2年目となる直販店での販売、10店舗に拡大した県内量販店との直接取引など、今後の県内外への売り出しに向けて着実にノウハウを蓄積しています。また、県産水産物の販路拡大を図るため、県内外で開催される見本市・商談会の情報を県内の流通業者や加工業者の方々に提供しています。
2 「漁業費用を削減するための戦略」
漁業経営のコストを下げるためには個々の漁業者による経費の節減はもちろんですが、漁協の努力も必要です。燃油や漁業資材は、通常、全国組織である「全漁連」から段階を経て漁業者に供給されますが、高知県漁協では全漁連から直接仕入れることによって供給価格を下げる取組を進めています。また、県では、個々の漁業者の経費を節減するため、漁船エンジンを省エネ型へ転換するための助成を行っています。
3 「水産加工の産業化に向けた戦略」
外食や中食志向など食生活の変化や調理の簡便化などの消費者ニーズが高まっているなか、水産物を生鮮だけでなく加工して販売することも強化しなければなりません。産業振興計画をきっかけに、県内の各地でシイラ、サバ、キビナゴなどの前処理加工の取組が始まっています。こうした取組をさらに支援するとともに新たな掘り起こしに取り組んでいます。
また、各地域では地元グループによる地魚の加工が行われており、地域の特産品や土産品となるこうした取組を拡大していくことが所得・雇用の増加につながりますので、地域アクションプランなどを通じて、商品開発から流通・販売までを総合的に支援しています。
4 「滞在型誘客に向けた戦略」
滞在型・体験型観光において漁業は重要な要素です。すでに大都市地域からの修学旅行や研修旅行では漁業体験が取り入れられており、今後は、このような団体向けのサービスをさらに充実する一方、家族や少人数グループ向けなどのメニューを提供し、お客様を増やすことが必要です。漁村地域の皆様が取り組む観光資源の発掘からメニューづくり・運営体制など、地域の特徴を活かした活動を幅広くかつ段階に応じて支援しています。
さらに、このような戦略を実践する一方、戦略を加速化するために次の2つの視点を追加、拡充いたしました。
その1つ目は、「養殖生産物の流通・販売の強化」です。
高知県の養殖業は県全体の水産販売額の約30%を占めています。しかし、養殖生産物の流通・販売は県内外の民間企業に大きく依存しており、生産者の多くは販売への取組ができていませんでした。このため、県では、一定の品質とロットが確保できるよう生産者のグループづくりを進めるとともに、こうしたグループが行う流通・販売の取組を支援しています。
2つ目は「土佐の魚の消費拡大対策」です。
消費を拡大していくには、現在取り組んでいる品質や量の確保や流通・販売対策に加えて、積極的なPR活動が必要です。
店頭に並ぶ「土佐の魚」地魚購入に対するプレゼントキャンペーンなど量販店と連携した消費拡大や「高知県おさかなPR大使」によるPR活動、テレビCM、ホームページでのPR、県外観光客の方々に対する県産魚にこだわった飲食店情報の発信など、様々な方法で「土佐の魚」を売り込んでいます。
また、県産水産物の県外での認知度や評価を向上させるため、新たに県外消費地市場の関係者を高知に招いて地元の流通業者との交流会や現地の視察会も開催します。
〔担当課・問い合わせ先〕
水産政策課 電話 088-821-4605 電子メール 040101@ken.pref.kochi.lg.jp
<19> 高知の農産物を売り込む! 新需要開拓マーケティング事業 〔平成21年11月4日〕
野菜や果物、花きなどの園芸農業は、本県の農業産出額の約76パーセントを占めるなど県経済の中でも大変重要な分野ですが、一方で、家庭で野菜を食べる量が減ったり、中食や外食が増えてきたりといった消費行動の変化や、小売のなかで大きなシェアを持つ量販店の価格支配力が強まるといった流通構造の変化など、取り巻く環境が大きく変わっています。
このため、産業振興計画の成長戦略では「生産から流通販売までの一元的支援体制」を戦略の柱の一つとして位置付け、本県の園芸農業をこれまで以上に、こうした変化に柔軟に対応できるようにすることを目指しています。
この取組の一つとして、注目していただきたいのが「新需要開拓マーケティング事業」です。今年6月、量販店との協力関係づくりや中食外食などの業務関係への販路開拓を進めるための、官民協働による実行組織として「新需要開拓マーケティング協議会」を設立し、次の活動を行っています。
注)「中食」 市販の弁当やおかずなど、家庭や職場へ持ち帰って食べられる状態に調理した食品
(1)関東、関西地区における量販店等での高知フェアの開催
景気の低迷の影響で消費の冷え込みが続いていることから、量販店ではこれまで以上に価格競争が激しくなっていますが、一方で、価格だけでなく、消費者により安全で安心な食品を提供する動きや、産地直送を謳って差別化を図るなどの取組もいまや当たり前のことになってきました。
本県も、県産品をアピールして販売する「高知フェア」を開催していただくよう、これまでも働きかけてきましたが、この協議会の設立を機に、「関東・関西地区における販売拠点づくり」と「販売戦略を共有できるパートナーシップの構築」を目指して、更なる取組を進めていきます。
具体的には、価格だけではなく、環境保全型農業を県域全体・全品目に展開する本県独自の取組などに共感いただき、鮮度や安全安心といった面で消費者ニーズに応えようとしている量販店との信頼関係を築き上げたいと考えています。この11月からは、関東、関西地区でこうしたパートナーシップにご理解をいただいた量販店等で順次「高知フェア」を開催していただけることとなっていますし、併せて、量販店等のバイヤーなど流通・販売面での核となる方々を産地に招待して生産現場を見ていただくなど、双方の交流を深めることで、県産園芸品の長期にわたる安定的な取引と取扱品目の拡大を目指します。
(2)業務加工需要への対応
中食やレストラン、居酒屋に代表される外食産業向けなどの「業務加工需要」が増加しています。
こうした需要は消費全体の55%と家計消費を既に上回っており、この傾向は今後も継続していくと考えられますので、県産園芸品の販売拡大に向けてはこの需要に対応した販売戦略が必要です。
本県の園芸農業は、これまで市場での取引が中心でしたので、業務需要向けの直接契約は価格面でのリスクも生じますし、業務加工においては、「定時」「定量」「定価格」「定品質」が求められますので、産地にとっては、荷姿、集荷の仕組みを業務用にする必要があるなどの課題もあります。
まずは、飲食店、総菜業者、加工業者などの流通実態やニーズの把握に努め、課題やメリットを明らかにしたうえで、具体的に産地と相談し、必要な支援を行いながら、業務加工需要の販路の開拓と販売の拡大を図っていきます。
(3)特産果樹と県産花きのPRと販売の拡大
本県には、文旦や新高梨など香りや味わいのある特徴的な特産果実や、グロリオサやトルコギキョウ、オリエンタルユリなど全国でも高い品質を誇る高級花きがあります。
これらは全国的にも十分通用する産品ですが、これまで消費地でのPR活動が十分ではない面があります。このため、東京都心に出店が予定されているアンテナショップなどで販売PRするとともに、特に花きについては、本県産地の関係者が直接消費地に出向きデザイナーなど実需者への直接PRとニーズの把握を進めます。
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このように「新需要開拓マーケティング事業」は、量販店や業務加工需要に関する企業と、産地情報や消費者ニーズなどの情報を共有し、産地の取組のPRと生産・販売戦略を農業団体と県が一体で進めるものです。園芸品の流通を取り巻く環境は、大変厳しいものがあり、簡単に有利な販売に繋げられるものではないと思いますが、地産外商公社との連携をはじめ産地や農業団体、関係機関等が一丸となって取り組んでまいります。
〔担当課・問い合わせ先〕
地域農業推進課 電話088-821-4806 電子メール 160201@ken.pref.kochi.lg.jp
<18> 高知の一番の強みを伸ばします〔農業〕 〔平成21年10月15日〕
農業は全体的に産業基盤が弱い高知県の中で、いわゆる外貨を獲得できる産業として大変重要な位置を占めています。
ただ、本県農業を取り巻く状況には厳しいものがあります。農産物の産地間競争の激化に加え、量販店の価格支配力の増大、家庭での消費の減少、業務需要の拡大などによって消費や流通の構造が大きく変化していますし、農業者の高齢化の進行や後継者の減少に加え、農家の経営環境の悪化によって農業の担い手不足が深刻な問題となっています。一方で、消費者の食の安全・安心志向や環境問題についての関心が高まっており、環境保全型農業に取り組んでいる本県の強みを生かせる社会状況にもなりつつあります。
産業振興計画では、農業分野について、「競合に打ち勝つ高知ブランドを再構築」「新たな取組による農業・農村の発展」の2つを戦略の柱とし、その下に9つの取組方針を掲げ、農業者や農業団体、行政等の関係者が連携し、さらなる農家所得の向上とより魅力ある農業の実現を目指します。
以下、具体的な取組を紹介します。
まず、一つ目の戦略の柱は「競合に打ち勝つ高知ブランドを再構築」です。
市場ニーズに応え産地間競争を勝ち抜くには、生産から流通販売までの一貫した取組が必要です。このため、産地や農業団体と県が連携して、本県の強みである環境保全型農業で生産した安全で安心な高知野菜を量販店などの流通関係者にPRし、パートナーシップを構築する「新需要開拓マーケティング事業」などを実行。中食・外食等の業務筋への販路開拓や有利販売などに取り組みます。【(1)生産から流通・販売までの一元的支援体制の構築】
また、高い品質の農産物を安定して供給できる高知ブランドを再構築するために、生産者同士が栽培技術を学びあい教えあう「まとまりのある園芸産地育成事業」を実施し、産地全体のレベルアップを図ります。これによって、消費地からの高い評価と所得の向上も目指します。【(2)まとまりのある園芸産地の再構築】
食の安全・安心志向に対しては、IPM技術(*1)など環境保全型農業の技術を全県域、全品目に普及させること、GAP(*2)の取組や認証制度等を活用して品質の確保を図ることなどによって、他県が追随できない環境保全型農業のトップとなるよう取組を一層進めます。また、環境保全型農業の世界のトップランナーであるオランダ王国ウェストラント市と友好協定を結び、県内の農業者や関係者を対象とした講演会や技術研修会などの交流によって、国内でトップランナーの地位を築くスピードを加速させたいと考えています。【(3)環境保全型農業のトップランナーの地位を確立】
*1:IPM(Integrated Pest Management 総合的病害虫・雑草管理):病害虫や雑草の防除において、化学農薬だけにたよるのではなく天敵、防虫ネット、防蛾灯など様々な防除技術を組み合わせ、農作物の収量や品質に経済的な被害が出ない程度に発生を抑制しようとする考え方。
*2:GAP(Good Agricultural Practice):農産物の食品安全性や品質確保、環境負荷低減、労働安全の確保等を目的に、農業生産工程を点検し、記録し、見直し改善していく管理手法。
それぞれの地域で、将来にわたって農業で生活ができるための対策としては、「集落営農」の取組を進めます。共同作業や役割分担ができる集落営農は、担い手の確保や農業経営の継続に有効です。特に、過疎化や高齢化が進み、集落機能そのものの維持が困難になりつつある中山間地域で効果を発揮すると考えています。そのため、中山間地域において収益性の高い園芸品目や畜産を導入する「こうち型集落営農モデル育成事業」を実施するとともに、県内全域に集落営農の組織化を進め、農家所得の向上や集落の活性化につなげていきます。【(4)生活できる所得を確保するこうち型集落営農の実現】
品目対策については、県内各産地の主な品目ごとに生産から流通販売までを見通した総合戦略を立て、生産者や農業団体、行政が、それぞれの課題を共有し、協働して実践していくこととしています。現在のところ、野菜、果樹、花の園芸品目に加えて、米、茶、畜産など合計35品目について総合戦略を策定済みですが、今後も適宜、品目の追加を行います。【(5)品目別総合戦略の実践】
担い手の確保については、新規就農の促進と認定農業者の育成などを進めます。特に、就農を希望する方に対してはしっかりとした農業技術や経営管理能力を身につけていただくための研修の充実や「レンタルハウス整備事業」の拡充など初期投資の軽減支援を行っていきます。また、地域農業の新たな担い手として大きな役割が期待される「JA出資型法人」の設立を強力にサポートします。【(6)担い手の育成と生産資源の保全】
二つ目の戦略の柱は「新たな取組による農業・農村の発展」です。
本県の農産物は、これまで全般的に他県に比べて高い市場価格で取り引きされてきたことから、生鮮品での販売がほとんどでした。しかし、消費や流通の構造の変化や激化する産地間の競争などによって、これまでのような生鮮だけの販売に頼る取引では生き残りが難しくなっています。そこで、今まだ比較優位のある農産物を魅力ある商品に加工し、県内外に販売していかなくてはなりません。このために、原材料となる農産物の安定的供給や、参入する企業等の加工・流通・販売をトータルに支援していく体制づくりなど、関係部局が連携して取組を進めます。【(7)1.5次産業の推進】
また、学校給食で地元の産品を使うことによって「食育」の取組を進めます。将来を担う子ども達に本県の農畜産物や農業を身近に感じてもらい、本県農畜産物のファンづくりと消費の拡大、産地の生産意欲の向上などにつなげます。【(8)「高知の食」を活用した取組の拡大】
さらに、近年、農山村などに滞在して自然や文化、人々との交流を楽しむグリーン・ツーリズムが注目を集めていますが、本県でも農業と観光を組み合せた取組として、また、地域の情報を丸ごと発信して地域を活性化させる手段として、このグリーン・ツーリズムを広げていきたいと考えています。地域でとれる産物の生産、加工、販売など地域資源を磨きあげ、所得の向上につなげるほか、交流イベントや体験メニューなどの充実を図ります。モデル地域を選定して総合的な支援を行うとともに、他の地域にも広げていきたいと考えています。【(9)グリーン・ツーリズムの推進】
次回は、こうした取り組みの中から、特に「新需要開拓マーケティング事業」について詳しくご紹介します。
〔担当課・問い合わせ先〕
農業政策課 電話088-821-4510 電子メール162201@ken.pref.kochi.lg.jp
<17> 400万人観光を目指して「観光八策」に取り組みます〔観光産業〕 〔平成21年10月14日〕
観光は、一次産業をはじめとするあらゆる産業や業種への波及効果が高く、また即効性がある産業分野です。本県の産業振興を図るうえで、また、現下の雇用情勢や経済状況などの厳しい状況を考えますと、最優先で取り組まなければならない分野です。
この観光分野の成長戦略では、「滞在型・体験型観光の推進」をテーマに掲げ、“もう一歩”県内の各地へ行っていただく、“もうワンコイン”を県内で使っていただくことで、県外からの観光客の入り込み数を400万人に押し上げ、1,000億円産業へと成長する「観光ビッグバン」を目指しています。この成長戦略を実現するために現在進めている「観光八策」の具体的な取組を紹介します。
一策 効果的な観光PR、プロモーション活動の展開
来年1月から開催します「土佐・龍馬であい博」は、400万人観光実現のための起爆剤です。メイン会場となるJR高知駅前広場に、「龍馬伝」のストーリーや幕末維新・土佐の人物などを紹介するテーマ館「高知・龍馬ろまん社中」と、県産品等の販売や紹介、県内各地の旅行案内や宿泊予約などのコンシェルジュ機能を備えた高知観光情報発信館「とさてらす」を設置します。また、安芸市に「安芸・岩崎弥太郎こころざし社中」、梼原町の「ゆすはら・維新の道社中」、土佐清水市に「土佐清水・ジョン万次郎くろしお社中」の3カ所にサテライト会場を整備します。
こうした会場を拠点に、多くの観光客の皆様が、県内各地を周遊していただけるよう、様々な手段でプロモーション活動を行ってきました。4月以降、大手旅行会社に旅行商品の企画化をお願いしてきた結果、10月からは複数の新商品の販売が始まりましたし、現在は、テレビ、雑誌、インターネットの活用、キャラバン隊の派遣、各種PRイベント等を通じて、一般の観光客となる皆様に対して「土佐・龍馬であい博」のPRを全力で進めています。
*「土佐・龍馬であい博」の取組状況(9月3日の政策トピックス)
二策 県内の観光地を結ぶ交通手段の確保
本県への観光客を大きく増やすには、近畿圏、中四国圏だけでなく、関東圏以北などの遠方から入り込みを増やすことが必要です。このためには、航空機やJRなど遠方から来県される観光客の皆様の次の一歩となる二次交通を充実させることが大変重要となります。
より多くの観光地を効率よく回っていただくことができるよう、自由に観光地で乗り降りできる「MY遊バス」を11月1日から新たなコースで、平日にも運行します。また、運転手が観光ガイドとなって案内する「周遊観光タクシー」もスタートしました。今後、県東部と中央部の観光施設や史跡を巡るガイド付き定期観光バスも運行します。
こうした二次交通の利便性を観光客の皆様に分かりやすくお知らせするため、「土佐・龍馬であい博」の開幕に合わせて、主要な交通ターミナルへの案内板の設置とメイン会場への専任の案内スタッフの配置も行います。
三策 四国4県での受け入れ態勢の整備、PR活動の展開
本県には、四国八十八カ所巡りに代表されるように、四国が協同してPR活動等に取り組むことで、各県の相乗効果が期待できる観光資源があります。このために、四国4県と民間企業(鉄道会社、旅行会社、航空会社など)が参画する官民一体の広域観光推進組織「四国ツーリズム創造機構」を新たに立ち上げ、この機構を中心に全国に「四国観光」を売り込んでいきます。具体的には、首都圏、近畿、中国、九州などでの観光プロモーション活動や、航空会社とタイアップした誘客キャンペーンなど様々な取組を進めることによって「四国」のイメージアップに努めていきます。
四策 地域の自然・歴史・文化などを活かした県民参加による体験型観光資源の発掘と磨き上げの推進
滞在型・体験型観光を進めていくためには、各地の観光資源の魅力の向上が不可欠です。昨年の「花・人・土佐であい博」で芽生えました各地の取組をさらに磨き上げるため、観光分野の地域アクションプラン(ニューツーリズムの取組など全29事業)を具体的に推進しています。こうした事業を支援する「観光産業振興事業費補助金」に加えて、市町村などが行う観光施設の整備、観光案内板や誘導標識の設置、トイレの修繕などを補助する「観光施設等緊急魅力増進事業費補助金」も新設し、観光地の魅力づくりと受入態勢の整備を進めます。
五策 観光振興に寄与する人材の育成と活用
本県の魅力を直接観光客の皆様に伝える観光ガイドの果たす役割は非常に重要です。このため、ガイド力の向上のための研修を実施するほか、各地域で活動いただいている観光ガイド組織間の情報交換の場の設置やネットワーク化を進めます。また、観光ガイド組織、交通事業者、観光施設、旅館・ホテルなどの従業員を対象とした観光ガイドセミナーを開催して、これからの観光地づくりや観光客をおもてなしの心で温かく迎えるための研修を強化します。
このほか、外部アドバイザーの指導、助言によって、「土佐・龍馬であい博」の運営とそのPR、新たな観光プログラムの開発など、本県観光の一層の磨き上げを行います。
六策 地域コーディネート組織の整備
県内でできるだけ多くの観光地を周遊し、高知を感じていただくには、一定の広がりを持つエリアを「観光圏」として整備し、その地域の様々な情報や観光メニューを提供することが有効な手段です。まずは教育旅行の誘致と受入に実績がある「幡多広域観光協議会」の体制強化を支援し、観光施設や観光ルートなどの観光情報の提供、体験型観光や宿泊の予約など、観光客へのワンストップサービスを行うことのできる幡多地域の観光コーディネート組織への転換を図ります。
*5月14日の政策トピックス「四万十・足摺エリア(幡多地域)観光圏」
七策 国際観光の推進
海外からの観光客を呼び込むために、県内の旅館・ホテル事業者、ゴルフ場、観光施設、旅行会社、航空会社などで構成する「国際観光推進会議」で、ターゲットの絞り込みや嗜好調査、情報交換などを行っています。また、四国運輸局や四国ツーリズム創造機構と連携して、韓国、中国、台湾など東アジアの旅行会社や雑誌社を四国に招いて現地視察や商談会を行う「四国インバウンドフォーラム」や、高知県観光コンベンション協会が行うセールス事業等の充実を図り、外国からの誘客を図ります。
また、外国からのお客様のため、観光案内板や誘導標識の多言語標記を進めます。
八策 産業間連携による新たな可能性への挑戦
産業振興計画の大きなねらいの一つが、産業間の連携による県経済の活性化です。観光の分野でも「土佐・龍馬であい博」の開催を契機として、観光と連動した地域の特色ある特産品の情報発信や、グリーンツーリズム、ブルーツーリズム、森林セラピーなど、山・川・海などの自然をフィールドとした高知ならではの体験型観光のメニューづくりを進めます。このため、一次産業や商工業の各団体との情報共有と連携を推進し、地域の活動を支援します。
ここまで、「観光八策」の主な取組をご紹介しました。今後、「土佐・龍馬であい博」を核として、(1)「龍馬伝」の放送による観光のブームを一過性に終わらせないこと、(2)県外観光客を地域に呼び込める観光商品づくりを進めること、(3)県内全域を観光のフィールドにして経済波及効果を県内の隅々にいきわたらせること、の3つのコンセプトで取組を進め、本県観光の新たなステージを築いていきます。
〔担当課・問い合わせ先〕
観光政策課 電話 088-823-9606 E-Mail 020101@ken.pref.kochi.lg.jp
<16> 産業を支える人づくりを進めます 〔平成21年9月22日〕
産業の振興のためには、技術や技能をもった人材を生み出し、継続して産業を支えていく「人材育成・人材確保」が重要となります。
今回は、この「人材育成・人材確保」の取組について、製造業などの人材育成と第一次産業が直面する問題である担い手の確保、また、あらゆる産業を通じての就業支援の3つの観点から、それぞれの対策を紹介します。
<人材育成>
産業振興計画の目指す改革の第2の方向「産業間の連携の強化」では、本県の強みの“食”と観光の組み合わせなどに取り組むほか、農産物などの一次産品を加工などの技術や企画によって製品の価値を高める、高付加価値化を進めます。“強み”である一次産業と製造業などの二次産業の連携です。特に食品加工などでは、技術力が、新しい商品開発を進め、大きな販売につながっていくいわゆるブレイクスルー(突破口)になる場合がたくさんあります。
例えば、宗田かつおを使った姫かつおスティックのように、魅力のある製品や新商品を開発するには、食品にあった殺菌・保存技術や未利用資源の有効活用など様々な技術やアイデアが必要であり、そのための技術者の育成を行うことが重要となります。
*姫かつおスティックとは、豊富な栄養素を含みながら脂が多いために節としては利用できなかった梅雨メジカをスティック状に仕上げた食品です。
このため、次の3点について重点的に取り組んでいます。
(1)研修体制の充実
県工業技術センターを中心に、ものづくりを支える技術人材の育成に取り組んでいます。企業の皆様を対象として、生産管理や製造技術の向上のための材料試験・熱処理などの技術研修を行っており、例年の150人ほどから拡大し、今年はすでに300名を超える方に研修を受けていただきました。最終的には400人を超える見込みです。
(2)食品加工特別技術支援員
食品加工の分野では、商品開発の支援や、技術人材の育成、技術相談といった役割を担う食品加工特別技術支援員を工業技術センターに1名配置しました。支援員は、広く県内企業のニーズを把握して技術面での様々なアドバイスを行い、食品加工に関する総合的な支援を行っています。
(3)専門的分野における技術指導アドバイザー
機械や金属加工の分野など、より専門的な技術支援が必要な場合には、外部の専門家を技術指導アドバイザーとして登録し、各企業の技術課題の解決や商品開発を通じて技術者の育成に取り組んでいます。
こうした取組を通じて、優秀な技術人材が数多く育ち本県産業が活性化することをねらいとしています。また、本県から全国に、また、世界に羽ばたく企業へと成長されることとなれば素晴らしいと思います。
これらの支援制度に関心がありましたら、お気軽に県工業技術センターまでお問い合わせいただきたいと思います。
*お問い合わせ:県工業技術センター研究企画課(電話088-846-1167)
<担い手の確保>
担い手の確保は、産業振興計画の目指す改革の第3の方向「足腰を強め、新分野へ挑戦」の取組です。このトピックスのシリーズ<11>でもご紹介しましたが、改めて詳しくご説明します。
近年、少子・高齢化が進み、農業、林業、水産業などで、将来を担う後継者の不足が問題となってきました。こうした傾向が続くと、10年後には、本県の“強み”である第一次産業が強みでなくなります。そこで、「本県の第一次産業の担い手をいかに確保していくか」といったことが当面急がなければならない課題です。
まず、新しく就農する方を増やす取組を進めます。このため、県外から高知県への移住を希望する方や、本県で第一次産業への就業を希望する方々のいろんな相談をワンストップで行う「移住コンシェルジュ(総合案内人)」を新たに置くこととし、今月から3名の方が着任しました。生活環境や住居といった、移住するために必要な地域の情報を一元的に取りまとめるなど、きめ細やかに対応にあたります。
この移住コンシェルジュが中心となって、農業、林業、水産業、それぞれの担い手確保の窓口である「新規就農相談センター」、「林業労働力確保支援センター」、「漁業就業確保育成センター」をはじめ、各地域の農協、森林組合、漁協などの関係機関とも連携をしながら、ご相談いただいた方からの移住相談や地域とのマッチングを行う本格的な活動を10月から始めます。
「担い手の確保」の中でも特に、農業の担い手の確保に向けては、次のような取組を行います。
新しく就農する場合の大きな課題は「農地」と「住宅」、そして「技術」です。農地と住宅については、移住コンシェルジュが県や農業公社、市町村が保有している情報を広く収集・蓄積し、相談に当たります。技術については、新たに就農される方への研修を実施する市町村の拡大や、研修者を受け入れていただける指導農業士などの農家の確保に取り組むなど、技術の習得、農業を始める準備、そして実際に始めてからの経営の発展といった各段階において、きめ細かな対応を行います。
移住に重点的に取り組む市町村では、農地と住宅の情報と研修制度を1つのパッケージとして提供できる仕組みづくりを進めていますし、また、滞在型市民農園(クラインガルテン)で県内に一定期間滞在して、農業をしながら、地域の自然、文化、暮らしを体験していただき、本県での就農のきっかけとなるような仕組みづくりも行います。現在、四万十町で整備が進んでいます。
<就業支援>
高知県就職支援相談センター「ジョブカフェこうち」は、若者に対して、就職に関する様々な情報提供と相談・職業紹介を行っています。これまでは高知市にしか設置していませんでしたが、このサテライト施設を幡多地域(四万十市)へ設置しました。
また、高知県での居住を希望するUJIターンの希望者の受け入れを進めるなど、移住の促進に向けた体制を整え、様々な雇用、就業の希望に応えるよう取組を進めています。
*高知県就職支援相談センター
ジョブカフェこうち 電話 088-802-2025
ジョブカフェこうち・幡多サテライト 電話 0880-34-6860
「人材育成・人材確保」は産業の基盤です。産業を支えるのは人であり、その人づくりに努めることで本県産業の発展につなげていきたいと考えています。
〔担当、問い合わせ先〕 計画推進課 電話 088-823-9334
電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<15>産業振興計画と土佐・龍馬であい博の取組の状況〔平成21年9月3日〕
9月2日の定例記者会見で、“本気で実行”『高知県産業振興計画』の進捗状況と、その中でも特に来年1月に開幕する『土佐・龍馬であい博』の現在の取組について発表しました。
産業振興計画の実行元年である平成21年度になってから5か月が過ぎましたが、この間、県内各地域で推進体制を整えたほか、地域アクションプランの実行、地産地消・地産外商の取組、土佐・龍馬であい博の準備など、県庁をあげて計画を“実行”してきました。
詳しくは、当日発表した以下の資料をご覧ください。
・産業振興計画の進捗状況 [PDFファイル/330KB]
・土佐・龍馬であい博開幕前の誘客プラン [PDFファイル/6.04MB]
産業振興計画には、県民の皆様お一人おひとりが参画できるそれぞれの実行プランがあります。是非、多くの皆様の力をいただいて、高知県を元気にしていく、将来にわたって安心して暮らすことができる高知県にしていきたいと思っています。がんばります!
〔担当課、問い合せ先〕
(産業振興計画)
計画推進課 電話 088-823-9333 電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
(土佐・龍馬であい博)
土佐・龍馬であい博推進課 電話 088-823-9043 電子メール 020401@ken.pref.kochi.lg.jp
<14> 高知を売り出す! 高知県地産外商公社が発足 (平成21年8月11日)
高知県産業振興計画の大きな柱「地産外商戦略」を推進する組織である、一般財団法人高知県地産外商公社(通称:トレード・サポートKOCHI)が8月3日発足しました。
これまでも、県では、県産品の販路開拓と販売拡大に取り組んできましたが、この地産外商公社ができたことによって、よりスピーディかつ踏み込んだ形での活動が可能となり、地産外商戦略への取組は新しいステージを迎えたことになります。この地産外商公社では、県産品の販売支援だけでなく、商品開発の支援や本県観光・食文化の情報発信を行います。
具体的には、東京で計画している新しいアンテナショップの運営のほか、ホテルや百貨店・スーパーなどへの仲介・斡旋による県内事業者の営業活動支援、展示・商談会への出展など、県産品と情報を県外に売り込む総合的な窓口となります。また、こうした取組の場をテストマーケティング(試し売り)の場としても活用していただくことで商品開発の支援も行ってまいります。
この取組を速やかに実行に移すため、発足後150日間の具体的な行動の実施計画を定めました。今後、公社と県は緊密に連携し、地産外商を強力に進めてまいりますので、関係の皆様、県民の皆様のご理解とご支援をよろしくお願いします。
詳しくはこちら(8月3日の記者会見資料 [PDFファイル/11.21MB])
〔担当課・問い合わせ先〕 地産地商・外商課 電話 088-823-9738 電子メール 120901@ken.pref.kochi.lg.jp
<13> 産業振興計画の当面の動き (平成21年6月8日)
「産業振興計画」は既に具体的に動き出しました。以下に具体的な動きを整理したものをお示しします。
1 4月-5月の動き
(1) 推進体制 ―本気で実行―
・ 地域本部(産業振興推進地域本部)
各地域とも、5月末までに2回の地域本部を実施
第1回:実行支援チームを編成し、221プランすべてのフォローアップ体制を整備。
個別案件ごとに支援を開始
第2回:支援策や取組状況について確認。進捗管理表をもとに、課題と対応策について協議
・ 庁内情報共有会議
各分野の取組状況や国の経済危機対策の情報、地域本部等の動きなどを情報交換
(国の事業情報は、メーリングリストにより速やかに共有)
・ 地域資源活用共有会議
4月-5月 事前説明会(会議の構成メンバーに県の考え方と共有会議に望む ことを説明)
5月28日 幡多ブロック第1回会議を開催(他のブロックも順次開催予定)
【今後の取組の重点事項】
・第2回推進本部(6月29日、30日の2日間を予定。)
第1四半期の進捗状況の把握
6月末の推進本部で第1四半期の進捗状況の取りまとめを行う予定
(産業成長戦略及び地域アクションプラン 進捗管理シート(PDCA))
計画の次期改訂に向けて、重点的に拡充していく事項の洗い出し
(2) 広報活動 ―地域の盛り上がりを促し、県民運動へ―
・ 産業振興計画の実行に向けての住民説明会
実績:5/18幡多180名、5/20高幡145名、5/27嶺北260名、6/3安芸180名 6/4仁淀川230名
予定:6/9物部川
・ 県広報(広報紙、テレビ、ラジオ、ホームページ)実施中
【今後の取組の重点事項】
さらなる広報活動の徹底(広報月間)
PR版パンフレットの作成(6月中旬作成)・配布(※)
※各団体、市町村への配布のほか、地域本部を通じて配布
※県内のコンビニエンスストアや金融機関などにも配布
(3) 主な事業実施 ―元気発進―
・ 「土佐・龍馬であい博」のPR開始
PR用のポスター、パンフレット等を作成、配布
JR四国商品説明会や旅フェア2009に出展し、本格的なPR活動や旅行会社との商談をスタート
・ 総合補助金
事業審査アドバイザー7名でスタート。5月から財務と法律のアドバイザーを1名ずつ、各2名に増員して、
計9名体制とした。
4月の審査会(2回) 12件事業採択 →総合補助金一覧 [PDFファイル/178KB]
交付申請を受けて金額精査中 まもなく交付決定へ
5月の審査会(2回)で審査、事業採否の確定手続き中(12件)
・ アドバイザー派遣
市町村等の申請により、観光や食、海洋関係などのアドバイザーを派遣 計10回(7名)
2 「総合補助金」の事業採択が始まりました
産業振興計画を推進するエンジンの一つ「総合補助金(産業振興推進総合支援事業費補助金)」の初めての審査会が4月22日に行われました。
この総合補助金は、「地域アクションプラン」などを資金面で支援するもので、商品の企画から加工、販売にいたる物づくりや、地域資源を活かして交流人口を増やそうという観光事業など、幅広い事業を対象としています。
「実行元年!」のスタートとなる4月は、28日の2回目の審査会も含めて、12事業(補助額約2億3千万円)の事業採択を行いました。今回採択された事業は、ゆずやメジカ、茶などの付加価値を高め販売していくため、品質の向上や、販路の拡大、加工品の開発などに取り組むもので、地域資源の一層の活用と今後の産業化につながるものです。
事業主体は、市町村やJA、NPOなどの団体ですが、採択にあたっては、意欲やアイデア等が現実的か、より大きな事業効果を出すことができるかといった視点が大切になってまいります。何より、公費を投入するにあたって公正性はどうかということに留意しなければなりません。
また、単に補助金を出すだけでなく、いかに雇用の拡大や所得の増加、地域の活力向上などにつなげていくかがポイントです。県は、事業の成功に向けて事業実施者と一緒になって汗をかき、努力していきます。
このため、財務や経営、流通・販売、法務など7つの分野の専門家に、事業の意義や効果の面から審査していただくとともに、事業を成功させるために不可欠な消費者の立場に立った視点(マーケットイン)からの助言もいただいたうえで採択の決定をしました。
5月にも審査会を行い、12件の審査を行っているところですが、今後、221の地域アクションプランをはじめとした産業振興計画の取組が、花を咲かせ、多くの実を結ぶよう、引き続き力を尽くしていきたいと思います。
〔担当課・問い合わせ先〕 計画推進課 (計画第三担当) 電話 088-823-9742 電子メール120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<12> 中山間の産業づくり (平成21年6月3日)
本県の多くは中山間地域です。大規模な農地こそ少ないものの、豊かな山や川の資源に恵まれ、気候を生かした農作物や木材の供給など数々の産業を担ってきました。また、地域に受け継がれている様々な文化もあり、多くの人々が中山間地域で生まれ育ち、高知の「原風景」を守ってきました。
この中山間地域は、近年、過疎化、高齢化に直面し、地域での生活やコミュニティ機能を維持することが難しくなっているところも増えてきました。高知県全体で、人口減少で15年、高齢化で10年、全国に比べて先行していますが、とりわけ、中山間地域でその傾向が強くなっています。
産業振興計画では、中山間地域の産業振興が県全体の活性化に不可欠だと位置づけ、地域の豊富な資源を最大限に活かして、若者が定着できる「働く場の確保」と「所得の向上」を図り、“一定の収入を得ながら、安心して住み続ける”ことができる地域づくりを目指すこととしました。特に、次の3つの施策を中心に据えて、市町村や地域の企業、団体・グループの皆様とも一緒になって、中山間地域での取組を推進したいと考えています。
(1)小さなビジネスの育成(ビジネスの芽の発掘、育成)
特徴のある農産物や加工品など、これまで十分に活用されていない強みある地域資源を発掘・再評価し、「生きがいづくり」や「賑わいづくり」の取組から一歩進めて、所得の向上に繋がる「小さなビジネス」に育てあげていきます。具体的には、地域でのネットワークや情報交換の場づくり、製品化のアドバイスや販路の確保などに取り組みます。
(2)「拠点ビジネス」の推進(「小さなビジネス」から「まとまりのあるビジネス」へ)
農協や森林組合、第三セクターなど、地域の中核となる事業体を中心として、野菜や加工品の製造販売や、グリーンツーリズムなどの観光の取組など、いくつかの「小さなビジネス」をまとめることで、広がりを持った複合的なビジネス(拠点ビジネス)へとつなげていきます。
(3) 新事業、新分野への進出(「小さなビジネス」から「大規模ビジネス」へ)
地域の農地や山林等の資源を有効活用して、バイオマスなどの新たな事業を実施したり、建設業などの新分野進出に乗り出すことができるビジネスモデルを作ります。新たな活力を地域で興し、人材を呼び込む取組を進めます。
こうした取組の中から、先々の発展性が見込まれること事業や、経済波及効果の大きい事業が生まれてきた場合には、次回の計画を改定する際に、あたらしい「地域アクションプラン」(現在221事業)に位置付けていくことになります。 具体的な支援の方法としては、今年から、地域の皆様が取り組む事業の成長段階に応じ、きめ細かく資金・人・情報の面でバックアップします。
例えば、
・商品企画、開発や加工、販路拡大など、生産から販売までの取組などを総合的に支援する「産業振興推進総合支援事業費補助金」。
・課題を抱える事業者に専門的なアドバイザーを派遣する「産業振興推進アドバイザー制度」。
・一つの地域や個々の事業者だけでは発信しづらい、地域の産品や観光情報などを、一元的に発信するための新しいポータルサイトを県が開設し、地域の情報を首都圏などへ情報発信。などです。
→詳しくは、産業振興計画の支援策のページへ
こうした施策を県内7つのブロックごとに配置した「地域産業振興監」を中心に、県庁各出先機関や地域支援企画員が地元とも連携して進めていきます。お住まいの地域で取り組みたいこと、事業を進めるにあたって困っていることなどがありましたら、是非、ご相談ください。
〔担当課・問い合わせ先〕 地域づくり支援課 電話 088-823-9781 電子メール 120301@ken.pref.kochi.lg.jp
<11> 足腰を強め、新分野へ挑戦 (平成21年5月26日)
本県経済の抜本的な体質強化“改革”のための第三の基本方向は、『足腰を強め、新分野へ挑戦』することです。ここでは、「生産地の足腰の強化と担い手の育成」、「中山間地域の産業づくり」、「新産業の創出」の3つを取組の柱としています。以下に、その考え方と具体的な取組を紹介します。
「生産地の足腰の強化と担い手の育成」
本県の第一次産業は、他県に比べて強みがあります。しかし、この第一次産業の生産地は、少子化や高齢化の進行などによって厳しい状況に置かれています。就業者のデータを見てみますと、農業と林業は15年間でそれぞれ3分の2と5分の2に、水産業は20年間で2分の1まで減少しており、今のままでは、10年後には本県の強みが強みでなくなってしまうという危機感を持っています。このために、今から早急に具体的な対策を講じることが必要です。
この第一は、生産地の足腰の強化を図ることにより、生産地各々の所得を上げていこうとする取り組みです。具体的には、農業では、まとまりのある産地をつくるため、お互いに学びあい教えあう「ほ場」を170箇所整備します。技術やノウハウを得ることでヘクタール当たりの収量を上げ、所得の向上に具体的につなげていきます。また、安心・安全な農産物の提供という面では、本県には全国に誇れるIPM技術(注)がありますので、これを全県に普及させていきます。また、林業では、原木を切り出す施業地を集約し効率的な生産を行う「森の工場」の要件を見直し、対象地域を大幅に拡大します。水産業では、県漁協による流通販売事業を強力に支援することなどで、「土佐の魚(いお)」の付加価値を向上させます。
(注)「Integrated Pest Management〈総合的病害虫・雑草管理〉。化学農薬だけに頼らず、天敵や防虫ネットなどを組み合わせて、安全・安心な農産物を生産する技術
第二は、生産地における担い手の育成と確保です。 現在、事業をされている方々が継続して事業に取り組めるように支援していくことと併せ、新規就業の促進に向けた支援が必要だと考えています。今、全国的に多くの離職者が出ています。また、「団塊の世代」の皆様の退職の時期にもなっていますので、そうした方々に、高知県に来て、第一次産業の担い手になっていただきたいと考えています。
このため、県庁内に「移住コンシェルジュ(総合案内)」という窓口を設け、移住に関する情報を一元的に管理し、移住を希望される方にワンストップで対応していくこととしています。ここを窓口として、次に、研修と住居、生産手段の確保を「パッケージ化」することによって、新規就業を支援します。 農業を例にしますと、農業をやっていくために必要な技術が習得できるように、しっかりとした対策を講じていきます。例えば、研修手当につきましては、従来は月額10万円でしたが、これを15万円まで引き上げました。また、技術を教えていただく農業者の皆様には、今までは篤志でやっていただいていましたが、月額5万円の報償費をお支払いすることで、より多くの方にご参画いただき、教え手になっていただきたいと思います。
もう一つ、農業を行う際には資本が必要です。土地と家の確保という問題がありますので、そうしたことの斡旋に加え、初期投資を軽減するために、「レンタルハウス事業」の見直しを行い、使い勝手を良くするなど、就業支援を強化しました。さらに、JA出資型法人の設立を強力にバックアップします。個人経営ではなくいわゆるサラリーマンとして農業に就業していただく選択肢も用意して、担い手の確保を図っていきたいと思います。
この他にも、「クラインガルテン」、いわゆる滞在型市民農園といったものをつくり、農業体験を行っていただく方々を増やしていくことで、就農者の増加につなげていきたいと考えております。
「中山間地域の産業づくり」
この分野では、地域の団体や生産者グループ等による地域資源を活かした「小さなビジネス」を支援します。
ここから、地域の事業体が中心になり多角的に経営する「拠点ビジネス」へ、さらには、地域の生産資源を活用した事業者等による「新たなビジネス」へと、段階に応じてステップアップしていきます。個々の取組の熟度が一定程度高まれば、毎年度予定している産業振興計画の改訂時に、新しい地域アクションプランに位置付けていくことになります。このようにステップ・バイ・ステップで地域の所得の向上や雇用の創出に具体的につなげていきます。
「新産業の創出」
時代の流れにあわせて、新しい産業を創り出していくことも必要です。このため、まず、追い風の吹いている「環境」、「健康福祉」、「食品」、「天然素材」といった分野ごとに、県が「テーマ別研究会」を設置し、それに参加していただく企業等のプレーヤーを公募します。本県においては、個々の企業ではマーケットリサーチや新たな研究開発にまで手がまわらないという場合も多いと思いますので、まずは研究会で、事業化の初期段階で必要な計画や分析を行い、この成果を活かして事業化に取り組もうとされる企業等のプレーヤーに、ソフトとハードの両面での支援を行っていきたいと考えています。そのほかにも、まんがなどのコンテンツビジネスの推進組織を設置し、ビジネスマッチングにつながるデータベースシステムの構築やクリエーター育成などに取り組んでいくことを検討していきます。
こうした取組を通じて本県の強みを将来にわたって引き継いでいくことで、地域地域で若者たちが住み続けることができ、安心して子育てができる、そうした県づくりにつなげていきたいと思います。
次回は、この3つの取組の柱のうち「中山間地域の産業づくり」について、より詳しくお伝えします。
〔担当課・問い合わせ先〕 計画推進課 電話 088-823-9333 電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<10> 地域の食材を活用した商品開発をバックアップ (平成21年6月10日)
本県は、豊かな自然の中で育まれた様々な野菜や果物、新鮮で安全な魚介や肉類など、素晴らしい食べ物に恵まれています。
県内の皆様にはもちろん、有名な旅行雑誌の調査でも「地元ならではのおいしい食べ物が多かった」部門で本県が連年で1位、2位に選ばれるなど、県外から高知にお越しいただいた多くの皆さまからも高い評価をいただいています。これは本県の大きな強みです。
一方で、こうした素材そのものが大変良いために、その多くを生鮮品として消費・販売しており、より付加価値を生み出す加工の分野は、個々に頑張っておられる企業はありますが、全体としては弱いのが現状です。
このため、産業振興計画では、地域の豊富な食材を生かした「食品加工」の推進を、大きな取組の柱と位置付けています。特に、県内7ブロックの地域の皆さまの熱い思いが詰まった地域アクションプラン(221事業)には、シイラやウルメ、鰹など水産物の加工、新高梨や土佐文旦など農産物の加工、土佐褐毛牛や土佐はちきん地鶏など畜産物の加工など、「食品加工」の取組、47事業が盛り込まれています。
例えば、「鰹乃国」のまちづくりを進めてきた中土佐町では、鰹のタタキなどを目当てに訪れる観光客で賑わいを見せていますが、鰹そのものの漁獲量は減少傾向にあり、新鮮な本場の鰹ということだけでは先細りしていくことも危惧されます。こうしたことから、鰹を余すところなく使い、さらに鰹の価値を高めて、新たな顧客を獲得しようと、地域の関係者が実行委員会を立ち上げて、鰹のすり身を肉団子状にした「かつおボール」など新商品づくりに取り組んでいます。
また、柚子のさらなる活用や、宿毛特産の「直七(なおしち)」の商品化など、本県の特徴である“酢みかん”を売り出す取組もあります。これに限らず本県の風土が育んできた食文化には伝統的な加工技術があります。例えば、タケノコやミョウガ、リュウキュウを使った田舎寿司は本県の郷土料理の代表格ですが、これには地域で長く守ってきた加工の技術が詰まっています。こうした食文化や加工技術は、新たな加工産業のヒントを秘めている可能性があります。
このような様々なアイデアや活動を一つひとつ具体的な形にしていくことで、大きなマーケットである都市部で販売するとき、鮮度などのハンディキャップを克服することができますし、本県の素晴らしい食材を生かして消費者にアピールすることにもなります。
県では、事業者や地域の皆様がこうした食品加工の取組を進めていただくため、原材料の調達から企画、商品開発、加工、流通・販売までの各段階に応じた支援を行います。まず、資金面の支援である「総合補助金(産業振興推進総合支援事業費補助金)」、課題に応じて専門家の助言を得られる「産業振興推進アドバイザー」の派遣、加工や商品開発の技術力向上を支援する「食品加工特別技術支援員」「技術アドバイザー」の配置(県工業技術センター)などがあります。
さらに、流通・販売の支援では、地域での販売拠点の強化、見本市、商談会への出店の促進などマッチング機会の提供や、アンテナショップでのテストマーケティングなど、様々な取り組みを進めます。
食品加工の産業化に向けて、これらの支援策を着実に実行していくほか、地域産業推進本部を中心に県が事業者と「市場」とのパイプ役として、農・林・水産・商工・観光の各分野との連携、消費者の視点を大切にしたマーケットインの考え方を基本に取り組んでまいります。
[担当課・問い合わせ先] 地産地消・外商課 食品加工推進室 電話 088-823-9704 電子メール 120901@ken.pref.kochi.lg.jp
<9> 改革のための3つの基本方向2 産業間連携の強化 (平成21年4月24日)
改革のための第二の基本方向は、『産業間連携の強化』です。これまで、本県経済の浮揚を図るためには「地産外商」を進めていくことが必要であることをご紹介しました。
この地産外商を進めるためには、世界中から物が集まっている首都圏・近畿圏等の大規模市場でも通用するよう、商品の魅力、付加価値を上げていかなければなりません。さらに、「市場から遠く物流コストがかかる」、「生産が小規模でロットが揃わない」、などといった本県産業の不利な面をカバーするためにも、機能や性能の向上、デザインの検討、独自性やブランド化などによって商品の単価を上げることが特に重要となってきます。
また、高知の“強み”は、野菜や果物などの農産物、カツオや鮎に代表される海や川の水産物、豊富な森林資源などですが、県経済全体を底上げするには、この強みを他の産業に波及させることが必要です。この点からも、一次産業が生み出す素晴らしい野菜や魚などの素材をさらに磨き上げることに加え、一次産業と二次産業、三次産業が連携することで、本県で素材を加工して付加価値を高めるという活動を強化していかなければなりません。
産業間連携といったとき、特に重点をおく柱が2つあります。第一は、先ほどから一次産業と他の産業との連携と言ってきましたが、その典型である「食品加工」です。県の“貿易”の状況を示すデータでは、「食品加工(食料品製造業)」の分野は、四国でも唯一本県だけが赤字です。単位面積あたりの農業産出額が全国第5位である農業をはじめ、一次産業が善戦していますが、県内で付加価値を付ける取組を見ると、個々には健闘しておられるところも多数ありますが、残念ながら、全体としては他県に比べ極端に少ない状況にあります。この食品加工分野を伸ばすために、県としても産業振興計画の下で、戦略的な取組を進めます。
具体的には、原材料の調達から流通販売までの一貫した相談支援体制を整えること、企業や生産に関わる地域の方々に県工業技術センターでの研修や技術指導の充実を図ること、専門家によるアドバイスを行うことなど、“もの作り”を技術面から支援していきます(次回の政策トピックスで、この食品加工分野の支援策について詳しくご説明します)。
第二の柱は、すそ野が広い観光産業の戦略的展開を行うことです。旅行には代理店(旅行業)、交通機関(輸送業)、旅館ホテル(宿泊業)、土産物(製造業)・・・・と、たくさんの業種が関わっています。つまり、観光の取組を強化することで、多くの業種(=産業)へ効果が波及していくことが期待できるわけです。
滞在型・体験型の観光メニューを、首都圏など巨大マーケットへ戦略的に売り込み、4百万人観光の実現と1千億円産業への飛躍、“観光ビッグ・バン”を起こしたいと思います。 NHK大河ドラマ「龍馬伝」の放映まで、残り9ヶ月を切りました。
多くの方に本県にお越しいただけるよう、「花・人・土佐であい博」で培ったおもてなしの心や多くの経験を生かし、龍馬伝に合わせて行います「土佐・龍馬であい博」を成功させたいと思います。県民の皆様の積極的なご参加、ご協力をよろしくお願いいたします!
〔担当課・問い合わせ先〕 計画推進課 電話 088-823-9333 電子メール 120801@ken.pref.kochi.lg.jp
<8> 海外市場への挑戦! (平成21年4月14日)
江戸時代末期、土佐藩は大変な財政窮乏に陥り、そのとき行った政策が当時の藩の主要資源である「樟脳」「木材」「紙」を海外に輸出することでした。これによって藩財政を立て直すことができたと記録にあります。
時代は変わりましたが、現在でも経済活性化のためには、本県の強みのある資源を活力のある県外市場に売り込むことが不可欠ですし、更には、海外、例えば今後も成長が期待される中国や東南アジアなどへの輸出を視野に入れなければなりません。
リーマンショック以降、海外市場も厳しい状況が続いていますが、日本の人口減少が今後も続いていくと予測されることを踏まえれば、先々を見越して、より大きな市場、すなわち海外への展開についてコツコツと取り組んでいくべきではないか、ということです。 県内でも既に輸出に力を入れておられる企業はもちろんありますが、他方では、海外での販路の開拓や様々な手続きなどについて不案内な面もあり、機会を窺っているものの、なかなか海外展開には踏み出せない事業者の方々も多数いらっしゃるのではないかと思います。
こうしたことから、県のシンガポール事務所、上海事務所での情報収集を強化しますとともに、今年度から貿易商社などでの実務経験を持つ4名のコーディネータに高知県貿易協会に常駐していただき、海外市場を目指す県内企業を一つでも二つでも生み出していく取組を進めます。具体的には、コーディネータが企業を訪問するなどして、貿易業務全般や売れる商品づくりなど様々なアドバイスや相談に乗ることとしています。また貿易実績のある企業へのアフターケアを行うなど、輸出全般に幅広く支援をしてまいります。
このほか、マレーシアやタイ、中国の各地域などの国別、食品や工業製品、農林水産物などの分野別の勉強会を開催し、この中で、貿易実績のある企業の体験談や講演会、海外事務所を中心とした海外事情報告会、専門家や商社などによる輸出促進セミナーや個別相談会などを行います。また、海外での商談会の開催に向けても取り組みます。
また、今年度から中国の上海市で四国4県が連携して2つの事業を実施します。 一つは、「四国アンテナショップ開設事業」です。8月から来年3月までの8ヶ月間、外国人や中国人富裕層が多く居住する地域にある「ヤマトマーケティングギャラリー」の店舗の一部をお借りして、四国の産品の展示販売をします。
二つ目は、「四国産品常設売場開設事業」です。これは、6月から12月までの7ヶ月間、中国の高級スーパー「シティショップ」の2店舗の食品売場の一角を借りて、四国の食料品を販売し、その美味しさや安全性などを、市民のほか日本食レストランや百貨店を中心とする食品事業者などにアピールするものです。この事業によって県産品の中国でのPRを行うとともに、こうした期間限定の販売が本格的な輸出につながっていくよう取り組んでまいります。
〔担当課・問い合わせ先〕 地産地消・外商課(貿易振興担当) 電話 088-823-9752 電子メール120901@ken.pref.kochi.lg.jp
<7> 地産外商とは?? (平成21年4月6日)
「地産外商」は、本県経済の浮揚を図るための大きな柱です。人口が減少し県内の消費が縮小している状況のなかで、県内市場頼りのみでは先の展望は開けません。地域の様々な資源を、活力ある県外に売り出していく「地産外商」を推し進めていくことが是非とも必要です。
この「地産外商」を進めるうえでは、本県が首都圏などの大消費地から遠いということが問題となります。物流コストが高くなりますので、どうしてもそれを吸収することが必要です。また、野菜など「なま」のものは、首都圏近郊の産地と比べて到着までに時間がかかり、鮮度の面でもハンディキャップがあります。
こうした課題を克服し、地産外商を進めていくためには、今までと違う強み、より一層の付加価値をつけていかなくてはなりません。例えば、生鮮食品であれば、低農薬・無農薬の野菜作りなど環境保全型農業を進めて消費者に本県野菜の安全をアピールしていくことで一層付加価値をつけることが考えられます。また、素材を加工することで、高付加価値、高価格の商品作りをすることも考えられます。本県では、馬路村の「ゆずぽん」や「ごっくん馬路村」の取組は全国的に有名ですが、ああした取組をもっと進めていけないかということです。
今回は、こうしたことを踏まえて、本県が地産外商を進めていくための具体的な取組について、(1)地域資源の発掘、(2)商品づくり、(3)販路開拓・販売拡大の3点について、順にご紹介します。
【地域資源の発掘】
今あるものに加え、まずゼロから地域資源を洗い出し、活用することが必要です。各々の地域にどういうもの(資源)があるのか、事業の主体はどうするのか、地産地消でも紹介した「地域資源活用共有会議」で、地域資源の情報を発掘するとともに、関係者間で商品化に向けた協議などを進めていきます。また、この1月に、各産業分野の関係者や有識者の皆様で構成する「地産外商推進協議会」を設置しました。
この協議会では、地産外商につながる様々な情報、たとえば県外市場の売れ筋などのトレンド情報、県内の資源や素材とその生産者の情報、加工技術や必要な機材とそれを有する事業者の情報、販売先や販売ルートの情報などを集めて、実際に商品化を行おうとする民間事業者の皆様の取組をバックアップします。また、食品加工など成長が見込まれる分野の取組を進めるために、企業が参加してもらって研究会を開催し、「事業化プラン」の策定とその支援を行います。
【商品づくり】
単に地域にある資源を商品にしたからといって、それが売れるとは限りません。消費者に買いたいと思ってもらえるかどうか、この点を意識して商品を磨き上げていくことが重要です。すなわち、消費者目線のものづくり、いわゆるマーケットインの発想が必要となります。
そのため、県ではこうした商品づくりに取り組む事業者の皆様のために、専門家の派遣、アンテナショップなどを活用したテストマーケティングの場の提供など様々な支援を行っていきます。テスト販売を繰り返すことで商品は磨き上げられますが、首都圏などでこうした場を、県として構えるということです。
また、商品化の際の技術的な課題に対しては、県工業技術センターを中心として技術人材の育成を進めるほか、事業者にアドバイザーを派遣するなど、商品づくりを技術面からも支援します。
【販路開拓・販売拡大】
次に、販路の開拓や販売の拡大を図ります。首都圏は巨大なマーケットであり、ここでの販売が大きなポイントです。 このため、単に来店者に物を売るだけでなく、卸・小売業者や外食・中食業者など業務筋への売り込み、観光情報やふるさと情報などの発信、消費者嗜好を探るためのテストマーケティングなど、幅広い機能を持つアンテナショップを東京の都心部に設置します。いわば本県産品のセールス拠点を設けるということです。
また、この運営をはじめ、本県の地産外商戦略を担う官民協働型の組織を作ります。 このほか、新しいポータルサイトを開設し、消費者に県産品や観光などの旬の情報をインターネットを活用して発信していくとともに、県内でeコマースに取り組んでいる事業者のサイトも一元的に紹介していきます。
このほか、首都圏などで行われる見本市に高知県ブースを設けたり、商談に関するノウハウを習得できるセミナーを開催するなど、意欲がありながらもなかなか県外へ打って出るきっかけがつかめない事業者の皆様への支援と、県外での販売促進活動の機会の拡大に努めます。
こうした地産外商の各段階で、それぞれに応じた支援を行うために、県の組織も大きく見直しました。産業間の連携や計画の実行をコーディネートしていく「産業振興推進部」を設置しましたが、その中に「地産地消・外商課」を設け、地産地消から地産外商までを一元的に支援します。また、各地域にそれぞれに配置した「地域産業振興監」の下で、出先機関、地域支援企画員が一体となって地域での取組をワンストップで支援する「産業振興推進地域本部」を立ち上げます。
さらに、総額10億円の総合補助金を新設して、以上の「地域資源の発掘」「商品作り」「販路開拓・販売拡大」及び関連した設備投資を資金的にも支援します(この補助金については、後に詳しく説明します)。
馬路村農協の取組でも、様々な試行錯誤を繰り返し、軌道に乗るまで10年を要したとお聞きしました。短期間で目に見える成果を挙げることは容易なことではありませんが、他方で、本県産業の強化のためには、地産外商が大きな鍵となります。通常であれば成果が出るまで10年かかってしまうものを、官民協働で取り組むことで、これを5年に短縮できないか、あるいは、10の成功例しか期待できなかったものを、100の成功例に結び付けられないかといった思いで、県として戦略的に取り組みます。
県民の皆様、事業者の皆様の積極的な参加とチャレンジを期待しております。
<6> 地産地消とは?? (平成21年3月13日)
産業振興計画で打ち出した改革のための3つの基本方向の第一は、「足下を固め、活力ある県外市場に打って出る」ことです。この「足下を固める」取り組みが、地域で生産されたものを地域(県内)で使う(消費する)「地産地消」です。
全国に15年先駆けて人口が減少し始め、どんどん県内消費が縮小していく状況の中で、本県の経済を浮揚させるためには、県外の市場に打って出ることが必要となります。そのためには、まず地産地消を徹底し、県内にお金が落ちる、県内でお金が回る仕組みをつくり、県内の産業の力を強めることで足下を固めていくことが重要だと考えています。
このため県では、まず、地産地消を進めるうえで課題となる「地域資源の洗い出し」、「商品づくり・加工、ブラッシュアップ」、「販路開拓・販売拡大」という各段階で様々な支援を行っていきます。各段階の具体的な取組を紹介します。
【地域資源の洗い出し】
高知県内にはたくさんの素晴らしい資源があります。その中には、とてもいいものだが、他の地域では知られていない、限られた地域だけ流通している産品があります。また、ロット(一定のまとまり)が揃わなかったり、人手がなく定期的に集出荷できなかったりといった理由で流通にのせられていないものや、品質は同じだが規格に合わないハネモノとして十分に活用されていなかったものがあります。こうした地域資源を洗い出し、その強みを生かして商品化していくことを支援します。
そのために、市町村や生産者・団体、加工業者などで構成される「地域資源活用共有会議」を設けて、地域資源や地場産品の発掘や情報の共有、商品化に向けての戦略などの協議を進めていきます。
【商品づくり・加工、ブラッシュアップ】
次に、洗い出した地域資源をより付加価値の高い魅力的な商品に磨き上げていくことになりますが、その際には、何より消費者の視点にたったマーケットインの発想による商品づくりが大切です。品質自体が良いものであることはもちろん、パッケージやネーミングにいたるまで、商品の磨き上げのポイントはたくさんあります。生産者の皆様のこうした取組を支援するため、来年度は、総額10億円の総合補助金を打ち出したほか、専門家をアドバイザーとして派遣することや、県のアンテナショップ、eコマースサイトでのテストマーケティングの場の提供などを行ってまいります。
また、これまでは、高知県で生まれた産品を加工したり、製品化したりといった付加価値をつける工程を県外に頼ることが多く、生み出された利益が県外に流れたり、また本県製造業の発展という点でも課題がありました。そこで、県内でこうした加工を可能にすることによって所得向上につなげます。すなわち「地産地消でものづくり」です。具体的には、県内の製造業を一覧できるポータルサイトで受発注ができる仕組みや、一次産品を加工して販売するための「前処理加工施設」の整備などに対して支援をしていきます。
【販路開拓・販売拡大】
販売の段階では、生産者の販売機会の拡大につながる直販所などの取組を支援します。 例えば、品揃えなどの物品の情報を携帯電話サイトで発信することで、消費者が買いやすく、また、出品者にとっては出品や補充をしやすくなる取組が考えられます。
また、業務筋(量販店や外食産業など)への販売を行うための情報管理システムの導入や、地域の観光情報の窓口としての機能を整備するなど、直販所の魅力を高め、集客を進める取組なども支援の対象となります。また、市町村が、県内の最大の消費地である高知市でアンテナショップや産直市を開設することへの支援や、「おいしい風土高知サポーター」に登録いただいている店のご協力を得て県内産品の売場を増やすなど、高知市の消費者と生産地とのつながりを強化します。
さらに、生産者と業務筋や商店街などの販売者との商談会の開催、学校給食への地場産品の利用などを進めます。 こうして地産地消を強化しながら、次のステップである「活力ある県外市場に打って出る」こと、「地産外商」につなげます。
次回は、この地産外商についてです。
<5> 改革のための3つの基本方向 1 足下を固め、活力ある県外市場に打って出る (平成21年3月6日)
本県経済の抜本的な体質強化“改革”のための第一の基本方向は、『足下を固め、活力ある県外市場に打って出る』ことです。 ここでは、「地産地消の徹底」(足下を固める)、「地産外商の推進」(活力ある県外市場に打って出る)及び「海外販路開拓への挑戦」の3つを取組の柱としています。以下に、その考え方と具体的な取組を紹介します。
〇まず、「地産地消の徹底」についてです。 地産地消には2つの意味があります。
第一は地元で作ったものを地元で消費するということです。生産と消費との距離が物理的に近いことによって、獲れたての新鮮なものが手に入りやすいばかりでなく、輸送コストや二酸化炭素排出が抑えられますし、そして何より、生産者の「顔が見える」安心感が地元のものを使っていこうという愛着につながっていきます。地元で作ったものが地元で使われることになって、資金が地元で還流することになります。こうして、皆様が地元産品を積極的に買うことによって生産者の意欲も高まり、県内産業を強くすることになるわけです。
第二は、もの作りをするときはできるだけ県内で作る「地産地消でものづくり」ということです。高知でとれた素材、例えば鮮魚を県外で加工することがよく行われています。これを県内で加工することとなれば、県内で仕事が生まれ所得の向上につながります。
この地産地消を徹底していくために、直販所を販売面でも情報面でも地域の拠点とすることや、34万人の人口を擁する大消費地・高知市でアンテナショップを設置することなどを支援します。また、「
おいしい風土こうちサポーター」に登録いただいている量販店などの協力を得て、地域の産品の売り場の確保を進めます。また、ものづくりの地産地消である「県内での」商品化を促進するため、異業種間のマッチングや、施設整備への支援を行います。
〇しっかりと地固めをしたうえで、次は「地産外商の推進」です。
人口の減少、高齢化の進展などによって県内市場が縮小し続けていることを考えれば、より活力ある県外市場にものを売って、「外貨」を稼いでこなくては、所得を維持・向上させることはできません。特に、阪神、首都圏などの巨大マーケットへのアプローチが不可欠です。このための販売促進の拠点として、外食や中食(なかしょく。注)業者などへの売り込みやテストマーケティングなどを行う新しい「アンテナショップ」を首都圏に開設します。また、県産品や観光、移住・定住情報など高知の情報を丸ごと発信する、新しいポータルサイトを立ち上げます。
注)市販の弁当やおかずなど、家庭や職場へ持ち帰って食べられる状態に調理された食品
また、事業者や有識者の皆様と県による「地産外商推進協議会」を立ち上げ、地産外商に関する情報やアイデアを共有するほか、異なる分野間で連携する取組を協議するなど、地産外商を戦略的に進めます。
○さらに、地産外商を徹底し、「海外販路開拓への挑戦」をすること、すなわち輸出の振興を図ることも将来を見据えて今から進めていかなくてはなりません。
これまで県の海外事務所(上海、シンガポール)を中心に進めてきた取組に加えて、県内にも、分野別・国別のコーディネーターを新たに配置し、県内企業の輸出ニーズにきめ細かく応えていくなど、官民協働で輸出戦略づくりを進め、海外でのビジネスマッチングにつなげていきたいと考えています。
〇以上の3つの柱に共通する大事な視点が、「売れるものづくり」を進めることです。
本県には、恵まれた自然が育んだ一次産品、近代日本の礎を築いた先人達を生み出した風土、独創的な発想や技術など、全国に誇れるものがたくさんあります。こうした地域の資源をあらためて掘り起こし商品開発につなげていくために、「地域資源活用共有会議」を県内の各地域に設置します。
更に、商品化に際して重要になってくるのが“マーケットイン”(消費者の目線での商品開発)の発想に立つことです。
「これは珍しいものだから」、あるいは「一生懸命作ったものだから」絶対売れるはずといった“プロダクトアウト”(供給する側の理由や都合)の発想では、市場や消費者には受け入れられません。消費者から受け入れられるかどうかとの視点、即ち、マーケットインの観点が必要です。しかし、これを実現するためには、市場調査、テスト販売を繰り返す必要があり、莫大な手間と時間がかかります。特に、中山間地域や零細な事業者の方々には大変です。
ではどうするか。新しくアドバイザーを置いて、品質や商品デザイン、ネーミングなどの専門的なアドバイスを事業者が受けられる仕組みをつくります。また、消費者の購買傾向を把握するためのテストマーケティングを新たなアンテナショップやポータルサイト上で行っていただくことなどを考えています。
次回は、この3つの取組の柱のうち「地産地消」について、より詳しくお伝えします。
<4> 今、なぜ産業振興計画が必要なのか (平成21年2月25日)
今、なぜ産業振興計画というトータルプランを作るのか? なぜ、そこまでする必要があるのか? これまでにも、地域での座談会や昨年11月の中間取りまとめの際にも説明しましたので重なる点もあると思いますが、この計画づくりの出発点ですので、改めて私の考えを申し上げます。
大きく言って、2つあります。
第一に、本県の経済の厳しさというものは、全国の中でも群を抜いているということです。 具体的な数字を示しますと、一人当たり県民所得は全国第44位、その額は全国平均の7割です。さらに東京と比べれば5割しかありません。昨年末の有効求人倍率は0.43。つまり、2人の求人に対して1人分の仕事もない状況です。さらにこの有効求人倍率の推移をみると、平成12年までは全国の状況に連動した形でしたが、本県は前回の景気回復時期にはほとんど変わらず、全国の回復の波に乗れませんでした(グラフ)。これらの点は、全国の他県の動きについていけない本県経済の脆弱性を如実に物語っています。
第二に、こうした厳しい状況の背景には3つの構造問題があるということです。
1つめは、県内市場に過度に依存しているという問題です。県の内外の取引収支をあらわした「県際収支」について四国4県を見てみますと、愛媛と香川が“黒字”の一方、徳島と本県が“赤字”です。特に本県の赤字額は6千億円を超えており、突出しています。本県は、人口減少で15年、高齢化では10年、全国よりも先行していますが、このことは、過去、県内マーケットが縮小を続けてきたことを表しており、そしてこの傾向は今後も続くと予想されています。足下の県内市場が小さくなるのであれば、より活力ある県外から外貨を稼いでこなければならないはずです。しかし、県際収支の「大赤字」が指し示すところは、個々のキラリと光る取組がありながらも、残念ながら県全体としては外に打って出ていくことが十分にできていない、そういう状況です。県外や海外へモノを売っていく取組が非常に弱いということです。
2つめは、産業間の連携や展開の弱さです。例えば、農業産出額を分母に、食料品の製造出荷額を分子に取ってみますと、本県は全国46位です。せっかく第一次産業に強みを持ちながらも、その効果を第二次産業(加工など)、第三次産業(流通や観光など)に十分波及させることができていなかったわけです。また、観光分野においても、一人あたりの観光消費額は減少を続けています。お金を使うところがない観光地がたくさんあるなど、観光の「すそ野の広さ」が十分活かせていない状況です。
3つめは、強みと思っていたことが、足下から崩れ去ろうとしていることです。本県の第一次産業は、例えば1ヘクタール当たりの農業産出額が全国第5位であるなど、全国的に見ても比較的優位にあり、強みの部分ですが、その産地ほど少子化・高齢化が急速に進み、産業の担い手が不足しはじめています。実際にここ10年で農業の就業者数は約2割減少しています。このままでは、「強み」が強みでなくなってきます。
こうした根本的な課題を克服し、経済体質の強化を図ることなくして、経済の浮揚は望めません。そして、この3つの根本的な課題に立ち向かうためには、生産面から販売面にいたる対応策が必要になりますし、産業全体を見渡し、かつ、地域地域に目を向けたプランが必要となります。
以上のことから、当面の景気対策はもちろんですが、是非とも、トータルプラン〔産業振興計画〕の策定が必要だとの思いに至った次第です。
「高知県産業振興計画」は、本県の経済を回復し、県勢を上昇傾向に乗せていくために、上記の課題を踏まえて、(1)足下を固め、活力ある県外市場に打って出る、(2)産業間連携の強化、(3)足腰を強め新分野へ挑戦の、3つの基本方向を打ち出しました。
次回からは、この基本方向についてご紹介します。
<3> 高知県産業振興計画」の最終案をまとめました!!(平成21年2月20日)
この一年、最重点項目として取り組んできました「産業振興計画」の最終取りまとめ案を2月17日の産業振興計画検討委員会にお示しし、ご了承いただきました。
まずは、受田浩之委員長(高知大学副学長)のリーダーシップの下、これまで熱心にご議論をいただきました検討委員会委員・専門部会委員の皆様をはじめ、この計画づくりに携わっていただきました多くの県民の皆様に、厚くお礼を申し上げます。 ⇒検討委員会・専門部会委員名簿(PDF)
この計画づくりには、当初から各界各層の方々にご参画をいただきましたが、これは、事業活動のプレーヤーとなる皆様と一緒になって計画を作りあげることで、計画に位置づけた事業を実行する段階では着実に、しかもスピーディーに取組を進めることができるのではないかと考えたからです。県全体での議論、地域地域での議論、そして各産業分野の若手や担い手の皆様との意見交換など、優に1500人を超える皆様にこの計画づくりに携わっていただいたことになります。
昨年11月に中間取りまとめを発表した際には、本県には「食」、「自然と歴史」、そして「人」と、全国に誇るすばらしい“強み”がありながらも、それを十分に活かしきれていない、その状態を私は「眠れる獅子」というふうに表現をしました。そして、眠りから目を覚ますべく、本県経済の抜本的な体質強化に向けて「改革のための3つの基本方向」を打ち出しました。その後、今日に至るまでの間、検討委員会や専門部会で検討を重ねていただき、並行して進めてきた予算編成でも、時に深夜に至るまで庁内で徹底的に議論をしてきました。この結果、中間取りまとめ以降、大きく変わった点は3つです。
まず、1点目は「地域アクションプラン」を取りまとめたことです。
今回の計画案は、大きく分けると、計画の基本的な考え方を示した「総論」の部分と、産業分野ごとの戦略や産業間の連携を示した「産業成長戦略」、それに県内7つのブロックの「地域アクションプラン」の3つのパートから構成されます。中間段階では、お示しできなかった「地域アクションプラン」は、成長戦略を地域で具体化し、地域の魅力ある資源や活動を活かし伸ばしていくもので、合わせて220件を超える取組を盛り込みました。その中には、市町村や関係団体さらには地域で実際に事業に携わっておられる方々からのご意見やご提案によるものもあります。
2点目としては、産業成長戦略、地域アクションプランともに、「誰が、いつ、何をするのか(5W1H)」ということをさらに明確にしたことです。残念ながらこれまで県を含めた行政の計画は“計画倒れ”と評されることもあったわけですが、それはこうした視点が十分ではなかったからだと思っています。今回の計画では、着実に実行、そして成果を上げていくためにも、この点は何よりも重視したところです。
そして3点目は、中間取りまとめ以降の議論を踏まえて、大胆に事業の追加や内容の見直しを行った点です。その内容については、このページの中で順次ご紹介をしていきます。
こうして作り上げた計画の実行を強力に推進していくために、平成21年度は、総額10億円の総合補助金を含む、85億円近い関連予算を計上しました。また、県庁の体制を大きく変更することを考えています。計画推進のエンジンたる「産業振興推進部」を新たに設けますとともに、関係部が結集し私自身が本部長となる「産業振興推進本部」を立ち上げます。地域アクションプランの実行にあたっては、各ブロックに「地域産業振興監」を配置し、出先機関や地域支援企画員とともに計画を推進します。こうして財政面と人的体制の両面から各産業や地域の取組を支援していきます。
まもなく開会いたします2月定例県議会での議論やご意見も踏まえまして、この最終取りまとめ案も3月末に県として最終決定いたします。「仕込み」の段階からいよいよ「実行」のスタートを切る段階へと移ってまいるわけですが、この「実行」段階においては、私を含め県庁自身が誰よりも汗をかいてまいる所存です。そして、民間事業者の皆様、地域の皆様と手を携えさせていただいて、県勢浮揚に向けた県民運動としていきたいと考えていますので、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
次回は、シリーズ<4>「今、なぜ産業振興計画が必要なのか」について説明します。
<2> 大阪での“逆”商談会に県内企業24社が参加 (平成21年2月17日)
少し前の話ですが、昨年秋に、大阪市のマイドームおおさかで、『第12回買いまっせ!売れ筋商品発掘市』(大阪商工会議所主催)が開催されました。
この発掘市は、大手小売業者や外食産業、ホテルなど買い手がブースを設け、製造業者や卸売業者が、気に入ったブースに商材を売り込む形の商談会です。通常は、売り手側が商材を展示して、買い手となる企業の仕入れ担当者に売り込みますので、その点が“逆”の商談会です。
売り手が買い手を選べることや、通常の営業活動ではなかなか接触することができない多くの仕入れ担当者に集まっていただけることなど、売り手には大きなメリットがあります。 第12回目となる今回は、関西を代表する大手小売業、通販、外食、ホテルなど、過去最高の44社が買い手として参加しました。一方、売り手は、北は秋田県から南は鹿児島県までの529社。地元大阪府以外の都府県では、高知県からの参加企業が最も多く、24社が参加しました。
今回、参加した県内企業の商材は、素材を活かした食品や雑貨などが中心でしたが、反応は上々で、終了後に主催者が行った「成約見込みがある商談先の所在地は?」という仕入れ担当者へのアンケートの結果では、大阪府28件、三重県6件に次いで、高知県が4件でした。また、県内参加企業への追跡調査(回答16社)では、「後日に商談成立」が3件、「現在商談中」が11件、「現在アポイント中」が4件、また、今回の商談会が「非常に有効」又は「有効」と回答した企業が12社でした。
参加企業の数、成約の見込み件数など、高知県の「健闘」に主催者も驚いていましたが、多くの企業が積極的に参加し、こうした結果を出されたことで、本県産品の良さを改めて認識しましたし、「地産外商」の推進に大きな力を得ました。 このところ、大阪ではホテルやスーパーなどから高知の食材の問い合わせが増加しているそうです。これまでにも有名なホテルや百貨店などで、高知の食材を使った「高知フェア」が期間限定で開催されてきましたが、今年度は、商談中も含めて14件と増えています。そのほか、イタリア料理やフランス料理の専門店向けの卸売や通信販売でも、高知の食材が採用されるようになっています。どこも特色ある食材を懸命に探しているようです。
いよいよ産業振興計画の実行元年を迎えます。地産外商を進めるには、良い商材を作ることはもちろんですが、販売先が確保されなければ何にもなりません。“天下の台所”大阪では、このような商談会がいくつも開かれています。また、今後、産業振興計画の地産外商戦略に基づき、首都圏などでもこうした機会を増やしていきたいと考えております。県内の企業の皆様には、独自の営業活動のほか、是非、県外事務所も大いに活用していただき、“外商”にさらに力を入れていただきたいと思います。しつこいようですが、「やればできる!!」。県庁も汗をかきます。官民協働の取り組みが進展することを願ってやみません。
次回の政策トピックスからは、2月17日に取りまとめた産業振興計画最終取りまとめ案について、テーマ別に説明していきたいと思っています。
<1> 楽天市場「まち楽高知」について (平成21年2月17日)
インターネットの楽天市場に、高知県産品を集めた「まち楽高知」ができてから、2ヶ月が経過しましたが、このサイト開設後、高知県ショップの流通額は前年対比で23.8パーセントアップと大きく増えた、とお聞きしています。
「まち楽高知」の開設により、県内では評価されていても、県外での知名度が高いとは言えない県産品を、県の観光情報などとともにまとめて見ていただけるページができたことで、確実に消費者の目に触れる機会が増えました。「地産外商」していくためには、まずは県外の消費者の皆様に県産品を知っていただくことが重要ですので、まち楽高知の開設は大きな一歩になったと考えています。「やればできる!!」、「高知の産品を全国の人が待っている」。「地産外商」の進展に手応えを感じる事例です。
地産外商を進めるには、継続的に購入してもらえる魅力ある商品作りも大切です。21年度の県予算案には、商品企画や開発、加工、販路拡大のための取組などに幅広く活用していただける総合補助金やアドバイザーの派遣事業を盛り込んでいます。さらには、e−コマースセミナーの実施や既存のe−コマースショップで商品を扱っていただくためのマッチングなど、インターネット上で県産品を販売しようとする皆様のための支援もしてまいります。
今後は、県の情報発信のページである「まち楽高知~あったか高知で待ちゆうき~」を充実させるための企画を提案して、さらに多くの消費者にご覧いただき、県産品の売上アップにつなげていきたいと思います。また、ページをご覧いただいた方や県産品を買っていただいた方に実際に高知へ足を運んでいただき、地元ならではの旬の食べ物を味わっていただいたり、様々な体験観光メニューに参加いただいたりと、インターネットでの出会いを現実の交流に拡大させていきたいと思います。 ⇒「まち楽 高知」のページ
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